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株式分割「ディズニー」オリエンタルランド株は買いか?株価上昇に2つの背景。投資しないほうがいい人も=佐々木悠

23年4月1日付けでディズニーランドなどを運営するオリエンタルランドの株式が、1株あたり5株の割合で分割されました。分割前は1株あたり2万2,000円前後だった株価は4,500円となり、個人投資家でも単元で買いやすい水準となりました。しかし、オリエンタルランドのPERは108倍です。日本の平均PERは15倍前後ですから、異常とも言える割高水準です。そんなオリエンタルランドのビジネスモデル・成長性を分析し、どんな人なら買って良いのかを考えます。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

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プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

TDRは年々人気が高まっている

オリエンタルランドの業績は2019年まで右肩上がりでした。1996年約1,700億円だった売上は2019年には約5,260億円に成長し、23年で3倍になりました。この間、原価率を下げるなどの取り組みで利益率も向上しています。現在はコロナ禍からの回復途上です。

出典:SPEEDAより作成

オリエンタルランドのセグメントは大きく3種に別れています。

  1. テーマパーク事業:ディズニーリゾートの運営
  2. ホテル事業:リゾート周辺ホテルの運営
  3. その他:イクスピアリ、モノレールの運営

22年3月期のセグメント別売上割合を見るとテーマパーク事業が約80%を占めます。私たちにもお馴染みのディズニーリゾートが主な収益源です。

出典:オリエンタルランド 22年3月期 決算短信より作成

この成長を支える、最大の強みはロイヤル顧客の存在です。年間入園者数の9割は2回以上の来園をしているリピーターです。この顧客はコロナ前は年間3,000万人に到達しました。

出典:SPEEDAより作成

なぜ顧客が増えるのでしょうか?理由は2つあると考えます。

顧客が増える理由その1:コンテンツのアップデート

オリエンタルランドは周年イベントや新規アトラクションへの投資に積極的です。常に新規アトラクションやイベントを計画し、顧客を飽きさせない、また来たいと思わせる仕組みを作っています。

オープン年 主要アトラクション・イベント
1983年 東京ディズニーランド開業、スペースマウンテン 
1987年 ビックサンダーマウンテン 
1992年 スプラッシュマウンテン 
2001年 東京ディズニーシー開業
2006年 タワー・オブ・テラー
2012年 トイストーリーマニア
2014年 ワンス・アポン・ア・タイム
2018年 ディズニー35周年イベント
2019年 ソアリン
2023年 ディズニー40周年イベント
2024年 ディズニーシー 新エリア解放予定
2027年 スペースマウンテン リニューアルオープン予定

出典:CASTELより作成

顧客が増える理由その2:競合がほとんどいない

あなたはディズニーの代わりになる施設を挙げられますか?

テーマパークは全国各地に存在していますが、ディズニーリゾートを超える完成度の施設はほとんどないと思います。

出典:オリエンタルランド 業界動向

対抗馬となり得るのはUSJですが、コロナ前の2019年の入場者数は1,450万人です。同年のディズニーの入場者数は3,255万人ですから、倍以上の差があります。テーマパークといえばディズニーであり、替えが効かない存在になっていると推察します。

Next: 今後も成長は続く?なぜ株価はここまで上がるのか



なぜ株価はここまで上がる?今後の成長を考える

オリエンタルランドの株価は綺麗な右肩上がりです。96年から業績は3倍になっているのに対し、株価は10倍です。業績の推移以上に株価が評価されていると感じます。

オリエンタルランド<4661> 月足(SBI証券提供)

この、株価に対する期待(23年4月5日現在のPERは約110倍)の根拠は何でしょうか?それは常に新しいコンテンツを作り続け、投資家に売上が伸びる期待を持たせることだと考えます。

目先、23年4月から24年3月まで40周年イベントが開催されます。5年前の35周年イベントで過去最高益を更新していることからも期待が高まります。

さらに2024年にディズニーシーで新規エリアのファンタジースプリングが開業し、27年にはスペースマウンテン周辺エリアがニューオープンする予定です。

外部要因ではコロナの収束に伴い、国内来園者が戻る可能性やインバウンドの回復も見込まれます。

さらにコロナによって得られたものもあります。それは客単価の向上です。2003年代の1人当たり売上高は9,200円前後だったのに対し、最新の2023年3月期の予想では1万5,759円と70%近く単価が向上しています。

出典:SPEEDAより作成

自治体からの要請で入場制限を強いられた代わりに、チケットの値上げやファストパスの有料化など、高付加価値戦略に舵を切りました。消費者視点で値上げは残念ですが、

値上げをしたからディズニーに行かないという顧客は少ないのではないのか、と推察します。

過去の来園者推移から年間3,000万人までは来場者が戻る可能性があります。2024年には2,600万人まで戻る見込みですが、客単価が向上している事をふまえると、今後数年以内に過去最高の営業利益1,300億円を更新する可能性も十分に考えられます。

Next: オリエンタルランド株を買って良い人・ダメな人は?優待狙いの是非も



あなたは買って良い人?ダメな人?優待狙いは?

以上のようにポジティブ要因が続くオリエンタルランドですが、リスクもあります。

人口減少が続く日本でしかビジネスを行っていないことや、パンデミックや気象変動など外部要因に弱い側面も露呈しています。さらに新エリア・アトラクションへの投資は継続的に必要であるため、設備投資でキャッシュを圧迫する可能性もあります。

そして注意していただきたいのが、株主優待です。株式分割で1株の値段は下がりましたが、実は株主優待の基準は500株保有に変更されています。つまり、優待を受けるための必要資金は変わっていないのです。100株買ったとしてもディズニーチケットは配られませんから、注意しましょう。

これらリスクと成長要因を受け入れて、今から買って良い人はどんな人でしょうか?

一言で表せば「買ったら離さない人」だと思います。

すでに割安・割高で判断できる企業ではありませんから、キャピタルゲインで儲けようとは考えず、家や車と同じように1つの資産として持ちつづける気持ちがある方は買っても良いでしょう。言い換えればディズニーが好きか否か、かつディズニーの今後の成長を信じているか、この気持ち次第で売買を判断すべきだと考えます。

オリエンタルランドのような成長株は、安い時に買おうと考えてもなかなか機会はありません(コロナショックなどの機会がないわけではありません)。長い目線で単元未満株なども活用しながら少しづつ買い進め、優待をもらうことを1つの目標としても面白いかもしれません。

長期的に500株保有を目指し株主優待を子供にプレゼントすることを目標にしても良いでしょう。他には今後もロイヤル顧客は存在する可能性が高いことから、長い目線で見れば株価は上がると信じて、買ったらほとんど株価は見ないという方も向いていると考えます。

いずれにせよ今からオリエンタルランドに投資する場合は、大切な宝物のように考えて、損得は気にせず、持っていることが価値と考えて投資してはいかがでしょうか。


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image by:Ned Snowman / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2023年4月9日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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