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24年で株価100倍「ユニクロ」株を今さら買うのはアリか?ZARA・SHEINに負けている分野とは=佐々木悠

今回はファストファッション最王手のファーストリテイリング(ユニクロ)を紹介します。この記事を読んでいるあなたも、いま着ている服のうち1つはユニクロの商品が含まれているのではないでしょうか?ユニクロのコンセプトである「Life Wear」の通り、私たちはユニクロ無しでは生活できないでしょう。なぜ、ユニクロはここまで我々の生活に根付いたのか、どんな強みがあるのか、成長ドライバーは何か、経営分析を行います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』佐々木悠)

プロフィール:佐々木悠(ささき はるか)
1996年、宮城県生まれ。東北学院高校、東京理科大学経営学部卒業。協同組織金融機関へ入社後、1級ファイナンシャル・プランニング技能士を取得。前職では投資信託を用いた資産形成提案や多重債務者への債務整理業務に従事。2022年につばめ投資顧問へ入社。

ユニクロ無しでは生活できない

ファーストリテイリングはユニクロ・GUを運営する世界的なアパレル小売企業です。いわゆるSPA(製造小売業)に分類され、商品の製造から、消費者への販売まで全てを運営する企業です。

業績は直近10年間を見ても売上・利益ともに右肩上がりです。コロナ禍で業績は下降しましたが、すでに回復しています。今期23年8月期決算では売上と営業利益で過去最高を更新予定です。

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出典:各年度有価証券報告書より作成

ファーストリテイリングの主な事業は4つです。直近で人気の商品と共に確認しましょう。

  • 国内ユニクロ事業:ヒートテック・エアリズム・感動パンツ、ジャケット
  • 海外ユニクロ事業:カシミヤ・メリノセーター
  • GU事業:ヘビーウェイトスウェット
  • グローバルブランド事業:Theoryの各種商品

最も主軸となるのは国内ユニクロ事業です。各事業の業績推移を見てみると10年にわたり安定的な収益を上げています。

一方で成長しているのが海外ユニクロ事業です。2018年ごろから海外が国内に追いつき始め、2022年8月決算では国内を抜きトップとなりました。

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出典:各年度有価証券報告書より作成

特に日本の利益が安定している理由はLife Wearのコンセプトが日本人に定着しているからであると考えます。

Life Wearとは、「世界中のあらゆる人の日常を快適にする究極の普段着を作る」ことです。

夏のエアリズム、冬のヒートテックは日本人にとって必需品と言って良いでしょう。冗談のような話ですが、毎年「去年買ったヒートテックどこいった?」となり、毎年同じ時期に同じ商品を買う人も少なくないのではないでしょうか。もはや洗剤や食品と同じレベルの生活必需品のような立ち位置だと考えます。

なぜユニクロはこのレベルまで私たちに浸透したのでしょうか?

計算され尽くした、商品開発・生産・在庫管理・マーケティング

ユニクロが私たちの生活に浸透した理由は単に「良い商品を作っているからではありません。

正確に言えば「顧客ニーズを収集し良い商品を開発。コストを抑えて適切な価格で販売。在庫を抱え過ぎないようにしながらも、欠品はしないように管理しているから」です。

このユニクロの活動を象徴しているのが2017年から始まった「有明プロジェクト」です。

柳井正社長の「無駄な物を作らない・売らない・運ばない」「顧客の要望が全て商品になり、その商品が顧客の期待を上回り、すぐ届くようにする」を実現するプロジェクトと言って良いでしょう。

有明プロジェクトは5つの軸から成り立っています。(内容を一部簡略化して説明しています)

  1. 顧客と直接繋がり、双方向に情報発信を行うーアプリを使用し顧客ニーズを収集
  2. 集めた声を商品化・商品を情報化ー年間50に及ぶ新商品開発
  3. 求めるものを”必要”なタイミング・量・数・輸送販売を行うーAI、アルゴリズムを駆使して最適な生産と在庫管理を行う
  4. いつでも・どこでも便利で楽しい購買体験ー店舗とECの融合。セルフレジやユニクロペイの導入
  5. 全社員の連動ー全社情報の一元管理

あなたもユニクロのセルフレジやアプリを使用した注文など、ストレスが無い買い物をしたことがあるのではないでしょうか?

期間限定コラボなどの人気の商品を除いてですが、在庫切れもほとんど見たことがありません。以下のスライドが示すとおり有明プロジェクトの重要なポイントはデジタルを中心とした開発・生産・管理・マーケティングを行うという事です。

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出典:ファーストリテイリングの飛躍を支える世界最高の「仕組み」を作るIT集団 – 日経ビジネス

日本の各企業がデジタル活用を挙げていますがファーストリテイリングほど解像度が高いIT戦略は珍しいと感じます。

データとAIに基づいた経営が上手くいっているからこそ、私たちは毎年ヒートテックを購入できるのです。

日本のアパレル業界では敵無しのファーストリテイリングですが、今後の改善すべき点や成長ドライバーもあります。まずは改善すべき点、ユニクロのEC(電子商取引、ネットショッピング)を考えていきます。

Next: ファストリはECへの対応が遅れている?業界首位「ZARA」との比較

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