楽天グループについて分析します。直近で2022年第2四半期決算が発表され、なんと8四半期連続営業赤字という状況です。8四半期ですから、丸2年ということになります。ずっと赤字を計上しているわけです。この赤字の原因というのが、楽天モバイル事業(携帯電話事業)になるわけなんですが、この赤字がいったい、いつ黒字化するのか?というのが大きな焦点になっているのです。私が見るところによると、楽天はこのモバイル事業を、そもそも続けていけるものなのか?と疑問を抱いているわけです。逆にモバイル事業がなかったら、楽天はどれだけ良くなるのか?どのような株価がつくのか?ということも、この記事では試算をしています。ぜひ楽天の株価や、事業に興味のある方はご覧になっていただければと思います。 (『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
8四半期連続赤字、累計5,000億円
まずこの利益のグラフです。8四半期連続赤字・累計5,000億円となっています。
このように四半期ごとの営業利益の推移を見るとずっと赤字が続いている。これは会社全体での数字です。これを分解してみますと、上図のようになるわけです。
モバイル以外、つまり携帯電話事業以外は実は堅調です。ずっと400億円から600億円の黒字を四半期で継続しているのです。
年間に直すと、2,000数百億円という数字になるんではないかと思います。しかし足を引っ張っているのがモバイル事業ということで、どんどん赤字が広がっている状況です。
四半期で1,000億円単位の赤字。これを1年に直すと4,000億円単位の赤字ということになるわけです。
これはかなり厳しいです。
せっかくモバイル以外の事業、つまり楽天市場とか楽天トラベル、楽天銀行、楽天証券、クレジットカード事業などから出た利益を丸々モバイルでつぶして、なお赤字を掘っている。
そのような状況になっているのです。
0円プラン終了で、22万回線減少
そんな中、いよいよこの赤字を改善しないと、どうにもならないということになりました。
これだけ赤字が膨れ上がってしまうと、いよいよ会社にお金がなくなってきます。さらにお金を借りようと思っても、こんな赤字を垂れ流し続けてる会社にお金貸せないということになります。
どんどん財務的に自らの首を絞めているわけです。これを解消するために何を行ったかというと、直近で「0円プラン」が終了したのです。
この0円プラン、1Gまでだったら料金は発生しません。「契約しても、0円でいいです」というプランをやっていました。
2021年1月から0円プランを開始しました。そこから契約数が、大きく伸び、200万回線だったのが、350万~450万そして500万と順調に伸びていきました。
ところが、ここにきて「0円プランはもうやってられない」と。当然ですよね、あれだけ赤字を計上し続けていたら、もう0円ではやっていけない。
0円ということは、タダです。お金もらわないというだけではなくて、彼らのために様々な投資費用をかけないといけないわけですから、とにかく無駄になっているのです。そこで0円プラン終了を発表しました。
そこでどうなったか?
2022年5月に0円プラン終了を発表すると、そこからの3ヶ月で22万回線の解約が起きたのです。
完全に終了するのは、まだこれからなんですけれども、10月をもって0円というのはポイントの還元なども含めて0円はなくなってしまう。ということは、それに向けてさらに解約が進むんではないかということが想定されるわけです。
もっとも0円ですから、回線の契約が減ったからといって、収益的にマイナスになるっていうものではないわけです。これを受けて、三木谷さんも「0円のユーザーがいなくなって良かった」というようなことを言っています。
ただこれは、あまり褒められた話ではなくて、「いやそもそも0円でユーザーを呼び込んだのは、あんたでしょ?」「それがいなくなっていいとは何事だ!」というところがあります。それはさておき、0円プランが終了したということです。
この0円プランが終了すると、これまで回線順調に増えてましたが、「そもそも楽天に入るメリットってなんだったんだっけ?」ということが出てくると思います。
それは当然です。料金的にお得だからということが(楽天と契約する)理由としてあったのではないかと思います。