撤退すれば株価3倍も?
ましてその他の事業が成長性がないと言ったら、モバイル事業に賭けてみるのはわかるんですが、通常の楽天市場の事業も十分に成長性がある事業ですから、それだけ買いたいと思っている投資家は少なくないんではないかと思います。
だからこそ、この金融の銀行とか証券を、単体でIPO上場させて、またモバイルを成り立たせるために、売却益を得ようとしているのです。
しかしそれってただ楽天の全体から見ると、せっかくこのお金のなる木である銀行とか証券を持っているんじゃなくて、それを外に出して得たお金で赤字を埋めようとしているのです。
つまり将来、金融事業から得られるはずだった利益を手放して、この赤字の穴埋めに使っているわけです。
それは今の楽天の株主にとっては、まさに価値を減損している。価値を破壊していると言わざるを得ないところがあるわけです。
ちなみにこの時価総額の試算について実際にどうなのかというところでいえば、例えば楽天のライバルであるZホールディングス、Yahoo!これ時価総額を、営業利益で割ると17.4倍。それからZOZO、服のアパレルのZOZOもこれが20倍という数字になります。
ですから、この10倍から15倍というよりも高い数字が出てて、かなりこの2~3兆円という数字でも控えめな予想。もっと高くてもおかしくないということが言えるのではないかと思います。
株価の行方は?
さて株価の行方です。現在、過去5年で44%下がったということになっています。
先ほど言いました通り、楽天モバイルがなかったら、ここから2倍から3倍の株価はあってもおかしくない。2倍ですから、1,500円から3倍の2,000円、さらにはもっと上、ヤフーとかZOZOを見るともっと高くてもおかしくないのではないかと思っています。
従って自分が、楽天の株主だとしたら何に期待するか。一刻も早くモバイル事業から撤退してくれ、そうしたら株価は2~3倍になるからということなってくるわけです。
最終的に三木谷さんがどこまでこの価値を考えているかというのはわかりませんですが、投資家的な見方からしたら、やはりそういうことを考えざるを得ないわけです。
もうちょっと拡大してみると、楽天は確かにこの楽天モバイルで皆さんの通信料を下げようという社会的な意義に取り組んでいるのかもしれない。かと思ったら、この0円プランを廃止してみたりとか、0円のユーザーなんかいなくていいと言ってみたり。社会的意義としても、もはやどうなんだと。
大手キャリアの方で安く入ろうと思ったら、もうそういうプランは用意されているわけです。そこに楽天モバイルが存在する意義って何なのか?というところに疑問を向けざるを得ないところがあるわけです。
楽天がやっていることは、旧日本軍におけるいわば、インパール作戦と言ってもいいんじゃないかというぐらい厳しい道を行っているということなのです。ときには、撤退も重要な戦略ではないか?と私は思うところです。
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『
バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問
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』(2022年08月25日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。