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小学生で年間10万円「隠れ教育費」が家計を圧迫。穴だらけの“無償化”が教育格差・少子化の元凶に=原彰宏

義務教育に加えて高校などの授業料「無償化」が議論されていますが、本当に費用がゼロかというとそんなことはありません。無料にならない「隠れ教育費」が多々あります。給食費のようなはっきりと“見える”ものではなく、はっきりとされない費用負担が教育格差や少子化の悪化につながるとして問題になっています。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年4月10日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

教育費無償化と言っても出費はかさむ

教育費無償化はありがたいのですが…、子どもを学校に行かせるのにかかる費用は、何も授業料だけではありません。国家予算に関しても「○○関連費」なんて表現があるように、子どもの「教育」に関しても、授業料以外にも大きく必要なお金があるのです。

これを「学校関連費用」「学校外費用」と分けることができますね。

「学校外費用」は、必要とする人とそうでない人もいますが、それでも将来を考えれば学習塾に通わせたいとか、授業関係以外のことも習わせたいとか、本人の意向や親の思いも様々あるでしょうが、現実として経済状況によっては、子どもにその費用はかけられないということもあります。

それを「経済状況による“教育格差”」と言われるのかもしれません。

学校に通うことに関しての費用負担は平等に、学校以外のことに関してはそれぞれ経済事情に合わせるというものでしょうか。

話は本題から外れますが、日本の最高峰と言われる東京大学に現役合格した人には、「塾に通わずとも学校の授業や教科書だけで勉強すれば十分だ」と言う人も多くいます。

最近流行りの「子どもを東大に合格させた親の経験談を記した本」が売れているようですが、それによると、子ども部屋を与えず、リビングで周りがざわついている環境でも勉強ができる集中力の差が、学力の差につながるというのですね。

そういう意味では、学習塾に“通える”“通えない”が教育格差を生むとも言えないのかもしれません。

経済状況と教育格差、経済状況と子どもの学力、家計収入額と親の学力に何らかの関係があるということもあり、難しい問題ですね。

事実、貧富が教育格差につながっていく…

さて話を「教育に関する家計負担」に戻しますが、事実として、子どもの教育に関していくらお金をかけられるかは、まさに家庭の収入にもよるということは言えます。

今回テーマとなっている「隠れ教育費」に関しては、「学校関連費用」として、子どもを学校に通わせるのに「“有無をも言わさず”授業料以外に絶対に必要なお金」のことになります。

これは家庭の収入に関係なく、必ず払わなければならないものです。

子どもを学校に通わせるのに拒否できない出費、これが大きな家計負担となっていることは取り上げられない、まさに「隠れ教育費」が、子どもの教育機会を奪いかねないということです。

「教育機会の平等」の前に、この家庭経済状況が関わることは問題にならないのか?「教育費の無償化」と言うのなら、授業料も授業料以外のすべてを“無償化”にすべきではないか?…という議論になります。

では、具体的に「隠れ教育費」には何があるのでしょうか。

Next: 給食・教材・修学旅行…だけじゃない?「隠れ教育費」が家計を圧迫



「隠れ教育費」はどんな費用?

まず、憲法が保証している私たちの教育に関する文言の確認です。

憲法26条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。

(2)すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。

「教育を受ける権利」とは?

教育は、個人が人格を形成し、社会において有意義な生活を送るために不可欠な前提をなす。この意味で、「教育を受ける権利」は、精神的自由権としての側面を持つ。また、「教育を受ける権利」が保障されていることによって、人間に値する生存の基礎条件が保障されることになる。この意味で、「教育を受ける権利」の保障は憲法25条の生存権の保障における文化的側面をもつものである。

国民はすべて教育を受ける権利を有し、その保護する子女に教育を受けさせる義務を負うが、国民各人が自らなしうるところには限界がある。そこで、現代国家において「教育を受ける権利」は、国に対し合理的な教育制度と適切な教育の場を提供することを要求する「社会権」(国家に対し積極的な配慮を求めることができる権利)としての性格をも有していることになる。

ここにいう「教育」とは、学校教育に限られず、社会教育をも含む。したがって、「教育を受ける権利」については年齢上の制限はない(「学校教育」とは、学校において行われる教育、「社会教育」とは、家庭教育及び勤労の場所その他社会において行われる教育をいう)。

出典:平成15年2月 衆議院憲法調査会事務局「教育を受ける権利に関する基礎的資料 基本的人権の保障に関する調査小委員会 (平成15年2月13日の参考資料)」より抜粋

義務教育である小中学校において、給食費負担を含め“完全な”無償化にはなっていないという指摘があるのです。

内容・予算・財源…岸田総理答弁でのこれらの言葉は、教育の“完全”無償化のための必要なプ
ロセスとしていますが、これに対し、「(給食費を含めた)義務教育の無償化」は、少子化対策としても検討されるべきことだと野党は強く主張しています。

「隠れ教育費」の本質は、給食費のようなはっきりと“見える”ものではなく、はっきりとされない費用負担をどう考えるかにあります。

具体的には、公立小学校の場合、制服や体操服、上履き、ドリルに書道用具、リコーダーなどの音楽教材、修学旅行や遠足の積立金、行事費用(卒業アルバムなど)にPTA会費など、様々なものがあります。

支払い先が分かれているだけに総額が把握しづらいことで、「隠れ」として、費用負担感を感じないけれど実際に家計を圧迫している状況になっています。

文部科学省によれば、これらをまとめると約6万6,000円にもなり、給食費を合わせると、家庭負担は年間10万円以上になるとされています。

これは小学校での話ですが、さらに中学にもなれば、約17万円にもなると言われています。公立高校では、授業料はタダでも、4月の入学時に25万円が必要だというケースもあるようです。

義務教育無償化にもかかわらず、これだけの負担が必要になります。これに塾代や習い事のお金がかかるのです。

いままで“当たり前”に負担するものと思われていたものが、長年給料が上がらない状況下での物価高による「可処分所得の減少」により、いろんな出費に対して負担感が増してきていることで、“隠れ”として意識していなかったことが、今あらためてクローズアップされているのでしょう。

体操服やシューズなどは学校指定のものが多く、量販店で安く買うということはできないですからね。

Next: どこまで国が面倒を見るべき?少子化にも直結する問題となっている



どこまで国が面倒を見るべき?

どこまで国が面倒を見るべきなのか。無償か、保護者負担か…。

子どもの世界において「人と違う」ということがいじめに繋がるというのもあり、親としては、他の子どもたちと同じようにしてあげたいという気持ちから、これらの負担を受け入れることになるのでしょうね。

学校指定だということは、兄弟間で引き継いだり、近所での譲り合いなどで、負担軽減を考えることもあるのでしょう。

文部科学省では、2年ごとに「子どもの学習費調査」を行っています。

「子どもの学習費調査」とは、全国の公立並びに私立の幼稚園、小学校、中学校、高等学校(全日制)に通う幼児児童生徒を対象にした統計調査で、 保護者が1年間に支出した子ども一人当たりの経費を、学校教育費・学校給食費・学校外活動費に分け、世帯の年間収入の実態とともに調査しています。
※参考:結果の概要-令和3年度子供の学習費調査:文部科学省

この「隠れ教育費」を扱った記事を東京新聞のWebサイトで見つけましたので、参考に載せておきます。
※参考:「隠れ教育費」とは? 文具に上履き…公立小で年平均6万円超 義務教育は”無償”なのに – 東京新聞(2022年1月28日配信)

「隠れ教育費」研究室というサイトもあります。

負担するのは国か、親か。少子化にも直結する問題となっている

教育費の保護者負担軽減は、少子化対策の一環とも取れますが、もちろん、これだけで少子化を止めることはできないでしょうが、子どもを持つことが「リスク」になるとする背景には、「教育費がかかる」という要素があることは否めません。

子どもを育てる費用はすべて国が持つ。
子どもを教育する費用はすべて国が持つ。

このような強いメッセージを出すことだけでも、少子化を止めることに有効であると言えるのかもしれません。

“無償化”と言われているのに、実際は「隠れ教育費」負担がある…。

教育に関する問題は、子どもを持つ親たちにすれば自分ごととして捉えられますが、子どもがいない家庭や、もう子育てが終わった人たちにすれば、自分ごととして捉えられない課題でもあります。

PTA問題がずっと指摘されながらも変わらないのは、子どもが学校にいる間だけの話なので、いっこうに変わらないのだと思いますね。子どもが学校にいる間だけ波風立てずにやり過ごせば良い…政治家としても、自身の票につながるかどうかの損得を考えがちです。

でも“国が社会が”子どもを育てる、国の未来を守るうえでも、国をあげて子育てに向き合っていくことは、何よりも重要なことだと、強く認識すべきなのですがね…。

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らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』(2023年4月10日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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