2022年に自ら命を絶った児童・生徒(小中高生)は514人と過去最多となりました。自殺の理由として「学業不振」が一番多いということになっていますが、勉強ができないからということでしょうか。学業不振から見える未来を悲観しているのでしょうか。個人的見解ですが、自殺の主な要因を「学業不振」という言葉に閉じ込めてしまうのは、この問題の本質を見誤らせるような気がします。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)
※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年5月8日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
「子どもの自殺」過去最多
去年1年間に自ら命を絶った児童・生徒が514人と過去最多となりました。その内訳は以下となっています。
小学生:17人
中学生:143人
高校生(全日制):259人
高校生(定時制・通信制):89人
高校生(特別支援学級):6人
2023年3月14日に厚生労働省自殺対策推進室と警察庁生活安全局生活安全企画課が公表した「令和4年(2022年)中における自殺の状況」によると、「小中高生の自殺者数514人」という数字は、1980年に統計を開始してから初めて500人を超えたことになります。
※参考:令和4年中における自殺の状況(pdfファイル) – 厚生労働省・警察庁
また自殺者の全体像ですが、2022年の自殺者数は、前年比874人(4.2%)増の2万1,881人になっています。
男女別でみると、男性の自殺者数は女性の約2.1倍、男性は13年ぶりに増加、女性は3年連続で増加しました。
先程の数字ですが、「学生・生徒等」にまで広げると以下が加わって、2022年の自殺者数は1,063人となります。
大学生(学部):380人
大学生(夜間学部):4人
大学生(その他・不詳):54人
予備校生:10人
専修学校等:101人
小中高生の自殺者数は、新型コロナウイルス感染拡大後の2020年に499人(小学生14人、中学生146人、高校生339人)に増えましたが、2021年は473人(小学生11人、中学生148人、高校生314人)と減少していました。
この深刻な事態を受けて、小倉將信こども政策担当大臣は、子どもの自殺対策を強化するため「こども家庭庁」に担当部署を新たに設置する方針を明らかにしました。警察庁や文部科学省、厚生労働省などの関係省庁と連携して対策に取り組むとしています。「こども家庭庁」の支援局のもとに、新たに10人規模の担当室を設置する方針です。
子どもの自殺対策を巡っては、超党派の議員連盟が、先に、「こども家庭庁」に子どもの自殺対策を担当する専任の管理職を配置するなど、対策を強化するよう岸田総理大臣に求めていました。
統計から見れば、自殺者数は6月、9月、3月の順に多いようです。
新年度始まりとか、大型休暇明けとか、いわゆる「5月病」というのが関係しているのでしょうかね。専門家ではないので、軽々なことは言えませんが…。
厚生労働省のまとめでは、19歳以下の自殺の理由(複数の場合あり)は「学業不振」が最も多くなっているようです。その他、「進路に関する悩み(入試以外)」「入試に関する悩み」とあります。
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出生数80万人割れの裏で、子どもの自殺者が過去最悪の514人…
先進国である以上、高齢化社会になるのはある意味「宿命」ですが、少子化は、政府政策によって止めることはできます。
根底には子どもを育てる家庭の経済環境改善という問題があると思います。少子化対策は経済問題でもあると言っても、過言ではないでしょう。
2022年に国内で生まれた子どもの数は、統計のある1899年以降、初めて80万人を割り込んだとありますが、外国人と、海外で生まれた日本人の子どもを含む出生数が79万9,728人だったということです。
国内生まれの日本人に絞り込んだ出生数(概数)は6月に公表されますが、国の推計方法で計算すると77万人台と見込まれています。
40年前の1982年の出生数(国内で生まれた日本人の子ども)は、151.5万人で、40年間でほぼ半減することになります。
少子化対策については、改めて考察したいと思います。
果たして岸田政権の「異次元の少子化対策」は、きちんと的を射たものなのか、いわゆる“芯を食った”政策になっているのか、何が「異次元」なのかをきちんと検証していきます。
子どもの自殺理由、最多は「学業不振」だが…
子どもの自殺者数は、すごい人数になっていますねぇ。
自殺する理由が学業不振が一番多いということになっていますが、学業不振は勉強ができないからということでしょうか。
学業不振から見える未来を悲観しているのでしょうか。
自殺ということの先に「未来を悲観している」というのは理解できますが、個人的見解ですが、自殺の主な要因を「学業不振」という言葉に閉じ込めてしまうのは、子どもの自殺問題の本質を見誤らせるような気がするのですね。
・いじめは存在しないのか
・貧困問題は関係していないのか
「親ガチャ」という表現がクローズアップされている背景にあるものは何か…。少子化対策に「異次元」といって予算を付けることが、ことの解決の本質ではないような気がするのですがね。
「トー横キッズ」……この言葉を聞いたことがありますか。
新宿歌舞伎町にある新宿東宝ビルの横にある広場でたむろする若者たちを、2018年頃から、周辺の居酒屋や風俗店の店員や風俗嬢・キャバクラ嬢らが彼らを「トー横キッズ」と呼び始めたのです。
彼らはどこにも居場所がない、本来なら温かいはずの家庭にも居場所がないのです。
望まぬ妊娠でこの世に生を受けたことを知った子どもたちが、親から「あんたなんか生まれてこなければよかった」という罵声を浴びせられて家を飛び出した子どもたちも、トー横には多くいます。彼らの多くは、その腕には「リストカット」の跡がたくさんあります。自己肯定感が低く、自分自身の存在意義を見つけられない子たちが多くいます。
避妊薬ピルの認可は何年もかかっているのに、バイアグラの認可はあっという間のこの国で、彼らをどう守れば良いのでしょうか。
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この国は本当に弱者に優しいのか?
子どもの自殺者数が増えたというニュースの裏には、かなり複雑な事柄が絡み合ってると思います。
この国は、本当に弱者に優しいのでしょうか…。
「トー横キッズ」を通して見えるこの国の有り様は、また角度は違いますが、外国人労働者たちからの目線でも同じですが、まさに「ひどい」という形容詞を付けざるを得ない感じがするのですがね。
「子どもの自殺者数増加」というテーマを通して、単純に現象と捉えずに、その背景を深く深く探ることが大事なような気がするのですね。
・貧困問題
・自己肯定感・存在意義
・望まぬ妊娠の成れの果て
・ドメスティック・バイオレンス(DV)
・親の虐待
・(学校側が蓋をしている)いじめ問題
あなたには、子どもたちの心の悲鳴が聞こえてきませんか…?
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