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日本はハメられたのか? 不自然すぎる東京オリンピック裏金疑惑の出所=高島康司

オリンピック東京招致における日本の金銭支払い疑惑は、最終的に五輪開催中止にまで至るかもしれない。これは安倍首相のロシア非公式訪問に対するアメリカからの圧力である可能性がある。(未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ・高島康司)

広島訪問の裏で、オバマ政権は安倍政権打倒に舵を切ったのか?

「不法な支払い」存在なら東京五輪は白紙に~海外報道

まずは簡単に経緯を確認する。

いま「国際陸連」のドーピング問題を調査している「世界反ドーピング機関(WADA)」の第三者委員会が公表した報告書で、東京が勝った20年夏季オリンピック招致に絡んで日本側が国際陸連に協賛金を支払ったと指摘されている。

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支払いは「国際陸連」主催の競技大会「ダイヤモンドリーグ」の協賛金として400万ドル(約4億7200万円)から500万ドル(約5億9000万円)が、2回に分けて支払われたのではないかとしている。

当時、「国際陸連」の会長であったディアク氏は、「IOC(国際オリンピック委員会)」の委員を務めていて、開催地決定の投票権があった。英大手紙の「ガーディアン」などによると、オリンピック招致のライバルだったイスタンブールは協賛金を支払わず、当時のディアク国際陸連会長の支持を失い、東京が開催権を獲得したとしている。

現在「IOC」は、「WADA」の第三者機関に対して資料の提出を求め、フランス検察庁がこの問題の具体的な調査に入っている。5月12日、イギリスの大衆紙「デイリー・メール」は、「日本の秘密支払いが証明されれば、ロンドンが2020年オリンピック開催へ」という題名の記事を掲載し、「東京オリンピック招致委員会」の銀行口座の存在が確認されたことを明らかにした。

同記事によるとフランス検察庁は、「東京オリンピック招致委員会」の銀行口座から、ディアク前会長の息子が所有するシンガポールの「Black Tidings社」への2回の支払いの調査を開始したことを明らかにした。少なくとも2億2000万円の支払いが行われた可能性が高いとしている。「Black Tidings社」は、「国際陸連」のドーピング疑惑で発生した資金のマネー・ロンダリングでフランス検察庁は捜査を行っていた。

記事によると、もし「東京オリンピック招致委員会」が「国際陸連」のドーピングスキャンダルの中心になっている会社に不法な支払いを行なったと結論した場合、「IOC」は2020年の東京開催の決定を白紙に戻し、ロンドンに開催地を変更する可能性があると報じた。

ロンドンは2012年の開催地であり、当時の施設がそのまま使える状態にある。

東京オリンピック中止なら安倍政権崩壊も

さて、これがこれまでの簡単な経緯である。このような疑惑に対し、遠藤オリンピック・パラリンピック担当相は疑惑を完全否定し、国会に喚問された竹田JOC会長は「契約書には守秘義務があり開示できない」としている。

いま日本のメディアでは、これは深刻な問題としては扱われていない。だがこれは、オリンピックの東京開催が中止になる可能性もある大問題であることは間違いない。いまフランス検察庁が調査しているのでいずれ近いうちに結論が出るだろうが、仮に日本の不当な支払いが証明された場合、国際的に日本の政権の責任が追求され、安倍首相の辞任が余儀無くされる可能性すら十分にある。安倍政権の崩壊である。

Next: 安倍首相のロシア非公式訪問に対するアメリカからの圧力か?



安倍首相のロシア非公式訪問に対するアメリカからの圧力か?

このように見ると、この問題はなんの背景もなくいきなり出てきた唐突性を感じざるを得ない。数カ月間、ロシアのテニス選手、マリア・シャラポアが持病の治療用に服用していた薬がドーピングに当たると「WADA」に指摘されたと同様の唐突性だ。

いずれ詳しく記事にするつもりだが、「WADA」はアメリカとイギリスの国策機関としての特徴が強い組織である。スポーツ選手とスポーツイベントの国際的な公明正大さを維持するための機関ではない。

米国務省は、「フリーダムハウス」や「オープンソサエティー」などのNGOを他国の政権を転換させるための道具として使うことはすでによく知られている。

2000年から2005年に中央アジアの旧ソビエト共和国で続いた「カラー革命」や、2010年12月から始まり中東全域を席巻した「アラブの春」はその典型だ。

最近「パナマ文書」を公開した「ICIJ」も、CIAと米国際援助庁の指示で動く国策機関である。「WADA」もまさにこのような機関のひとつなのだ。これは記事を改めて詳しく書く。

もちろん、「JOC(日本オリンピック協会)」が東京五輪の招致のために使った金額はこの程度のものではないはずだ。日本の五輪誘致はそれこそ想像を越えた金まみれの状態である可能性は高い。

しかし、「WADA」のような機関から、東京オリンピック招致のための巨額の金銭の不正支払いが問題となる文書が出てきたとしたのなら、これには別な目的が背後にあると見た方がよい。

以前の記事(アメリカに追い詰められる安倍政権 オバマの逆鱗に触れた日本の独自外交)でも書いたように、アメリカは国連などの国際機関を使い、政策変更を迫ることがよくある。

安倍首相がオバマ大統領のロシア非公式訪問中止の要請を断った直後、「国連女子差別撤廃委員会」を通して、従軍慰安婦への配慮の不十分さ、女子高生ビジネスの禁止などが勧告されたのはその例だ。

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オバマ政権の逆鱗に触れたロシア訪問

しかしその後も安倍政権は、ロシア訪問に向けての緊密な交渉を継続させたため、米財務省が半年ごとに議会に提出する為替報告書のなかで、日本を為替誘導のための監視リストに載せた。

これは一時的ながらも日本株の大きな下落を招いた。これも米政府からの明確なメッセージであると理解してよいだろう。

もちろんすべての出来事を、米政府の圧力と関連づけることは危険だ。

だが、オバマ政権が幾度も不快感を表明しているロシアを5月6日に非公式訪問し、その後もロシアの副首相が来日して関係の強化に向けた緊密な交渉を続けている現在のタイミングと状況を見ると、やはり今回の東京オリンピック招致に関する疑惑は、アメリカの安倍政権に対する明確な圧力という文脈で理解したほうがよいはずだ。

広島訪問の裏で、安倍政権打倒に舵を切ったオバマ

だが、東京オリンピック招致の白紙撤回の可能性すらある今回の圧力は、これまでの圧力とは質的に異なっている。

もし日本の不正支払いが証明され、本当に招致の中止が示唆された場合、国際的な非難から安倍首相は責任を取らざるを得なくなり、辞任に追い込まれる可能性も十分にある。むしろオバマ政権はこの方向に舵を完全に切ったと見ることもできる。

一方、オバマ大統領は26日に開催される伊勢志摩のG7サミットの後、現職の大統領として初めて広島を訪問し、核兵器の廃絶を訴えるスピーチをすることになっている。

これは安倍政権に強い圧力をかける強面のアメリカとは逆の顔だ。両者は一致しない。

しかし、長くなるので歴史的な事例はいちいち示さないが、アメリカの歴代の政権は相手国の国民の反発を懐柔する目的で硬軟合わせた対応を行い、圧力をかけてくることはよく見られることである。

オバマ大統領の広島訪問にはこうした意図があると見ることができる。

Next: ロシア接近が安倍政権の命取りに。次は麻生政権か?



ロシア接近が安倍政権の命取りに。次は麻生政権か?

このメルマガでは、安倍政権のロシア接近が政権の命取りになりかねないことを何度も指摘してきた。

今回の東京オリンピックの招致を巡る問題は、安倍政権を追い詰める圧力が頂点に達した可能性があることを示唆している。

まだ確実に断言できる段階ではないが、この問題がこれからどうなるのか注視しなければならない。筆者が読んだ一部シンクタンクの分析記事では、第2次麻生内閣の誕生を予想しているものもある。

これはアベノミクスなど安倍政権の基本政策を受け継ぎながらも、ロシアとの接近は断念する政権になるはずだ。果たしてこの方向に動くのかどうか、注視しなければならない。


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未来を見る! 『ヤスの備忘録』連動メルマガ(2016年5月20日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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