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決して荒唐無稽ではない「東京オリンピック中止」の噂、7つのシナリオ

「東京オリンピックは本当に開催されるのか?」最近ネットでもよく見かけるフレーズです。物騒な五輪中止の噂が囁かれるに至った背景、その実現可能性を探ってみましょう。(『らぽーる・マガジン』)

東京五輪は本当に開催されるのか?「もしかすると」7つの理由

理由1:日本経済はオリンピック開催に耐えられない?

実は、この話はずいぶん前から私の耳には届いていました。東京開催が決まってからさほど時間がたっていないときからでした。

オリンピック中止の根拠は経済的理由でした。日本経済がとてもオリンピック開催どころではなくなるというのが、オリンピック開催中止の根拠として語られていました。

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景気を支えるのは「企業の設備投資」と「個人消費」です。

東京オリンピック誘致で、内需が拡大することで、日本の景気はよくなるというシナリオが描かれていました。建設バブル、訪日外国人の増加、国内消費の増加などの効果を、東京オリンピックに求めたようです。

つまり、東京オリンピックが企業の設備投資を促し、日本国内での消費を拡大させるという期待がありました。

東京オリンピック招致が決まったころは、株価は上昇、円安も進んでいて、アベノミクスがまだ評価されていました。

日銀による物価目標2%の実現性には疑問が持たれてはいましたが、当時は、東京オリンピック開催不可能の話は荒唐無稽と、私の回りでも相手にされていませんでした。

ところが昨今、アベノミクスはもう賞味期限が切れたのではないかという議論が沸いてきて、日銀マイナス金利政策にも非難が殺到してきていて、ふたたび、この話が聞こえてくるようになったのです。

遠くブラジルにおいても、今の経済状況ではとてもオリンピックを開催している場合ではないと、リオデジャネイロ五輪の開催を危ぶむ声も出てきています。

可能性は高くないかもしれませんが、万一、ブラジルがオリンピック開催をギブアップすれば、東京としても、オリンピック開催辞退へのハードルは低くなることになりますね。

Next: 理由2:アメリカの景気後退(リセッション)の余波で開催中止になる



理由2:アメリカの景気後退(リセッション)の余波で開催中止になる?

東京オリンピック開催決定後の世界経済および日本経済は、原油価格の大幅下落でパニックになってしまいました。

中国経済の成長鈍化、ヨーロッパではシリア難民問題、いずれもすぐには解決できそうにない難題が相次いで出てきています。

それもあって、アメリカは追加利上げができない状況にまで追い込まれています。

そもそもアメリカはなぜ今のタイミングで利上げを急ぐのか。それは2017年から2018年にかけて景気後退(リセッション)局面に陥るとされているからです。

これに関してはIMFもそうですが、JPモルガン・チェースなどの金融機関も警鐘を鳴らしています。

FRBとしては、来る景気後退(リセッション)に備えるために、いまのうちに金利を持っておきたいということなのでしょう。

もう二度とQEと呼ばれる量的緩和政策には踏み切りたくないFRBは、景気後退(リセッション)に対して、中央銀行本来の金利政策、すなわち利下げで対処したい考えであることから、どうしてもここで利上げをしておきたいのでしょう。

東京オリンピック開催直前に、アメリカ経済はかなり厳しい状態に追い込まれている可能性があるのです。当然、日本市場は対岸の火事どころか、もろに大きな影響を受けることになると思われます。

投資家がリスク・オフとなれば、株は売られ、円が買われることになるでしょう。

理由3:「日本売り」のトリプル安で東京五輪どころではなくなる?

もっとも、円高については別の見方もあります。日本の構造改革が進んでいない、いわゆるアベノミクス第3の矢(民間需要を喚起する成長戦略)が不発に終わることで、「日本売り」が加速することも予想されるのです。

一部のマーケット関係者の間では、構造改革がすすまない日本に失望しての日本売り、すなわち日本株売り・債券売り・円売りのトリプル安を想定する人もいます。

そうなると、もう日本はオリンピックどころの騒ぎではなくなります。

海外投資家がアベノミクスに期待しているのは、なんといっても第3の矢「成長戦略」です。その絶対的な後押しをするはずのTPPが怪しい雲行きとなってきました。いまのアメリカ大統領候補者は、こぞってTPPには反対を表明しています。

TPPあっての成長戦略というところもあり、海外勢は、ますます日本経済の先行きに不安を感じているようです。

Next: 理由4:いくらのカネがかかるのか分からない五輪は開催できない



理由4:いくらのカネがかかるのか分からない五輪は開催できない?

東京オリンピックには、思った以上にお金がかかるという負の側面もあります。

本来、東京オリンピックは安いコストでコンパクトに開催されるはずでした。しかしご多分にもれず、東京オリンピックにはたくさんの利権が群がり、その規模は膨れ上がる一方で、止めようがないないほどにオリンピック関連予算は膨れ上がってきています。

新国立競技場にかかる費用は、いままでのオリンピック・メイン会場総工費の比ではないぐらいに膨らんでいます。聖火台がつけられないというおまけつきです。

さらに、エンブレム盗用問題も記憶に新しいところです。

そして、ようやく新国立競技場の案が決まったかと思えば、つい最近も「契約書が存在しない」約2億3,000万円の五輪コンサルティング費用問題が明るみになっています(後述します)。

たしか猪瀬都知事(当時)は、都民税での基金4,000億円でまかなうと言っていましたよね。しかし実態は大違いです。

理由5:国民感情が東京オリンピックを中止に追い込む?

こうなると、最終的に東京オリンピックでいくらのお金がかかるのか分からなくなり、国民感情としても、五輪開催を支持できなくなります。

「熊本などの被災地や、いまだ復興半ばの東北の人たちにお金をまわすべきだ」「保育所不足問題で4,000億円あれば助かる」など、猪瀬さんの言葉を借りれば、「オール・ジャパン」で東京オリンピックに対してバッシングが浴びせられているのが現状です。

オリンピック開催の経済効果は数兆円から数十兆円と、色々なところで様々な試算がなされてはいますが、その恩恵は東京だけとも言われているのです。

国民感情が、もはや東京オリンピック開催に疑問を投げかけるようになってきていることは無視できません。政治は日和見ですからね。これ以上、国民がオリンピック開催に対して不満を持ち出したらどうなるかわかりません。

折しも、森喜朗大会組織委員会会長は、最初から計画には無理があったと発言しています。この発言、どう理解したらいいのでしょうか。

Next: 理由6:海外では電通の名前まで。東京誘致の贈収賄疑惑が命取りに



理由6:海外では電通の名前まで。東京誘致の贈収賄疑惑が命取りに?

また、東京五輪の誘致活動において、IOC国際オリンピック委員会の委員にお金を渡したという贈収賄疑惑が出始め、海外では大手広告代理店(電通)の名前まで取り沙汰されています。

これは先ほども述べた2億3,000万円の五輪コンサルティング費用にまつわる疑惑で、英ガーディアン紙が報じていることも気になります。この問題が大きくなれば、おのずと東京はオリンピック開催辞退に追い込まれるかもしれません。

一部海外メディアでは、東京が開催辞退となれば、オリンピックはロンドンで行われるのではとまで報じているのです。

理由7:舛添都知事の辞任をキッカケにドミノ倒しが発生する?

ここに来て、舛添東京都知事の公金私的流用問題が取り上げられ、毎日のようにワイドショーなどで報じられています。

野党が百条委員会設置に持ち込めば、舛添都知事の辞任もありえます。

百条委員会とは、地方公共団体の事務に関する調査を行うもので、ここでの資料提出等の要求を拒否すれば罰則が科せられるなど、強い権限を持っています。

猪瀬前都知事も、徳州会グループからの5,000万円受け取りに関して、百条委員会が設置されたことにより辞任に追い込まれました。

舛添氏辞任となれば、橋下徹前大阪市長が都知事選に出馬するのではとも噂されています。そしてその橋下氏は、テレビ番組でも、今の行政のあり方ではオリンピックは開催できないと言い、開催の取り止めもやむなしと発言しているのは気になるところです。

霞ヶ関の官僚と戦うことをモットーとしている橋下氏なだけに、東京オリンピックに向けてのお粗末な行政のやり方を、黙って見過ごすわけはないでしょうね。

安倍総理も、本音では舛添東京都知事を快くは思っていないはずです。かつて先頭を切って安倍政権を批判した人ですし、自民党を批判して割って出た人でもあります。現に、いまの舛添都知事への批判に対して、擁護する素振りは見せていません。

こうして見ると、膨大な費用がかかるとして、青島都知事(当時)が1995年に世界都市博覧会の開催中止を決定したようなことが、再び起こるかもしれませんね。

Next: 政府側から誰が実行委員に名を連ねてくるかが判断の鍵に



政府側から誰が実行委員に名を連ねてくるかが判断の鍵に

今回、いろんな角度から東京オリンピック開催可否の問題を取り上げましたが、今後に関しては、政府側から誰がオリンピック実行委員に名を連ねてくるかで、開催に向けての政府の考えや温度感が明らかになってくるはずです。

森喜朗会長は最期の名誉職ですからいいとして、実行部隊に有力議員が入ってくるなら開催に向けて本気、中止はないと見ることができるでしょう。

たとえば小泉進次郎議員が前面に出てきたら、東京オリンピック開催に向けてかなりの「本気度」が伺えると言えますが…はてさて、どうなることやら。投資家ならずとも、日本経済に大きな影響を与える東京オリンピック開催の行方を注視していく必要がありそうです。

【関連】都民の馬鹿と投資家の馬鹿~なぜ彼らは舛添要一を「高値掴み」してしまったのか?=炎

本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年5月26日)
※タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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