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なぜ日経平均バブル後高値圏も「持ち株だけ」上がらないのか?海外勢の動きに答え。日本人投資家が取るべき行動とは=栫井駿介

日経平均株価がバブル後最高値を更新しました。にもかかわらず、自分の持っている株だけ上がっていない……という方もいらっしゃるのではないでしょうか。その株が上がっていない理由を説明しますので、これから取るべき方向性を見出していただければと思います。(『 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』栫井駿介)

プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。

全部が上がっているわけではない?日経平均のカラクリ

日経平均株価は過去1年で15%以上も上がっています(6/5時点)。

日経平均株価 日足(SBI証券提供)

特にこの1ヶ月で特に上がっていて、バブル後最高値を更新するほどとなっています。

しかし、日経平均はバブル後高値を更新しているのに自分のポートフォリオは上がっていないという方、非常に多いのではないかと思います。
それはなぜなのか、数字を調べてみました。

上図は、過去1ヶ月の株価の推移を上昇と下落に分けて記したものです。
全銘柄で見ると(左上)、日経平均が10%以上上がっているなかで、上昇した銘柄は45.7%、下落した銘柄が54.3%と、下落した銘柄の方が多いという状況なのです。
銘柄の数で言えば下落した銘柄の方が多いということは、単純に考えるとあなたのポートフォリオも下がっている方が多いということになります。

なぜこういうことが起こるのかというと、私の調べでは時価総額によるものが大きいということです。
時価総額1,000億円未満の銘柄を見ると(右上)、上昇が41.9%、下落が58.1%となり、全銘柄と比べると上昇の割合がさらに小さくなっています。
つまり、時価総額が小さい銘柄ほど下落している割合が多くなっているということです。

逆に、時価総額1,000億円以上の銘柄(左下)では上昇が61.6%、下落が38.4%と逆転し、時価総額1兆円以上(右下)だと上昇が76.6%下落が23.4%とさらにはっきりしてきます。

簡単に言うと、今、日本株で上昇しているのは大型株だけというわけです。

なぜこういうことが起きるのでしょうか。

外国人投資家の動き

ここからは仮説も含まれてきますが、こういった状況になる背景には外国人投資家の影響が大きいです。
日本株といっても、取引主体の売買代金で考えると7割は外国人投資家です。
すなわち、外国人投資家が日本株のアップダウンを大きく左右しているということになります。

投資主体別売買動向を見ると、外国人投資家は4月以降ずっと買い越し続けていて、だからこそ日本の株価が上がっているのですが、彼らが何を買っているのかというと、それが大型株なのです。

海外投資家は規模が大きく、中・小型株は流動性の問題や情報の取得の難しさもあり、中・小型株はあまり買わず、大型株を買うことになります。

Next: なぜ海外勢は日本の大型株を買っている?日本人投資家はどうすべきか



なぜ海外勢は日本の大型株を買っている?

では、なぜ日本の大型株を買っているのかというと、ひとつには日本の株が割安で、その割安が解消される期待が高まっているという仮説があります。
しかし、それを鵜呑みにしてはいけないと私は考えています。
なぜなら、日本の上昇している銘柄を見ると、必ずしも割安株に資金が集まっているわけではないと感じるからです。
時価総額1兆円以上の銘柄を上昇している順に並べると、PBRが1倍を割っているような割安な銘柄は上位にはあまり無かったりします。
PBRが高い低いはあまり関係が無いように見えるわけです。
このことから、割安感の解消期待によるものではないと思われます。

ではなぜ外国人投資家が日本株を買っているかというと、トータルで言い表すことは難しいですが、彼らの性質として、お金が集まっているところにこぞって集まるという特性があります。
投資手法としてはいわゆる「順張り」ということです。
今日本株が上がっているからとりあえず日本株を買っておこうと考えている投資家が多いのではないかと思います。
また、諸外国に比べて日本は経済の落ち込みがそこまで見られていないことと、日銀が金融緩和を続けると言っていることで、買いやすい雰囲気ができているということもあります。
そして外国人投資家が日本株を買おうとした時に何を買うかというと、日本株について中・小型株の情報までは手に入れにくいので、とりあえず大型株を買うという”大型株インデックス”的な買い方になっているのだと思います。
その証拠に、すべての東証銘柄の加重平均であるトピックスは日経平均に比べて上がっていません。

TOPIX 日足(SBI証券提供)

大型で買いやすいところに集まっていて、外国人投資家の「雰囲気買い」という部分が大きいと考えられます。

ただ、株価にはジョージ・ソロスの言う『再帰性』というものがあり、株価が上がっているところにはさらに資金が集まってくるという特殊な性質があります。
普段は日本の中・小型株を買っている人でも、今は大型株を買っていないとパフォーマンスが上がらないということで大型株を買うようになり、どんどん大型株にお金が集まり、結果として一部の大型株だけが上がって日経平均が最高値を記録するという状況になっているのです。

下落の原因は個々にあり。冷静に注視すべし!

冒頭に戻りますと、あなたの株が上がっていないのは、業績などファンダメンタルズが悪いわけではない可能性も十分にあるわけです(もちろん本当に悪い場合もありますが)。

特に中・小型株で上がっていないものに関しては、業績や今後の先行きに不安が無いのであれば、余計な心配をする必要はないと考えています。

今後も日本の大型株だけが上がっていくかというとそういうことでもなく、株価が上がると利益確定の売りが入り、資金は次のところへと移動して行きます。

それを追いかけるという投資手法もありますが、腰を据えた長期の投資家ならそれほど気にすることではないと思います。

いま株価が大きく上がっている銘柄の上位に並ぶのは半導体関連銘柄で、生成AIブームの影響があり、これは雰囲気買いではなく実需によるものですが、半導体関連以外で上位のT&Dやエーザイを見ると、その前に下がった分が戻っただけに過ぎないという状況です。

最終的には個別で動向を見ることが投資家にとって大事なことだと思います。

Next: 相場は過熱状態?長期投資家はどう対応すべきか



相場は過熱状態?長期投資家はどう対応すべきか

では、大型株で下がっている銘柄はどういうものがあるのかというと、一番下落しているものは楽天です。
公募増資もあり、携帯電話事業が赤字と、明らかにファンダメンタルズが悪い銘柄は下がっています。

日本郵政も業績が右肩下がりなので株価も下がっていますが、日本ペイントなどはその前に上がった分の調整で下がっているに過ぎないと思われます。

下落の原因を個別でよく観察することで、少なくとも心を落ち着かせることはできるのではないでしょうか。
そのうえで、最後は自分の納得できる売買方針を取っていただけたらと思います。

今後どうなるか、という予想は難しいですが、相場全体としては過熱感があるように私は感じています。
今は大型株に資金が集まっていますが、これはやがて去っていくことも考えられますし、景気後退が間近に迫っていると言われているなか、目先では楽観しすぎない方がいいかと思います。

短期的な視点で見ると、いま半導体が盛り上がっていて、ファンダメンタルズの方が盛り上がるのではないかという動きがあるので、そういった銘柄に注目してみるもの面白いと思いますが、一方で中・長期的にはいま下がっている中・小型株のなかにお宝が眠っている可能性もあるので、そういった観点でも銘柄探しをしていきたいです。

(※編注:今回の記事は動画でも解説されています。ご興味をお持ちの方は、ぜひチャンネル登録してほかの解説動画もご視聴ください。)


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image by:yoshi0511 / Shutterstock.com

バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問 』(2023年5月26日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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【毎日少し賢くなる投資情報】長期投資の王道であるバリュー株投資家の視点から、ニュースの解説や銘柄分析、投資情報を発信します。<筆者紹介>栫井駿介(かこいしゅんすけ)。東京大学経済学部卒業、海外MBA修了。大手証券会社に勤務した後、つばめ投資顧問を設立。

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