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使い道なくても増税?「森林環境税」住民税に上乗せで1人1000円徴収のずる賢さ。一度手にした財源は手放さない財務省=原彰宏

2024年度から1人あたり1,000円を徴収することになる新しい税を知っていますか?その名は「森林環境税」と言います。東日本大震災の復興財源として、平成26年度から年1,000円上乗せされているのが令和5年度で終了するので、その代わりに「森林環境税」を新たに住民税に同額の1,000円を上乗せされるという流れなのでしょうか。なんだそうか。さすが財務省は、一度手にした財源は手放さないのですね……って、皆さんは納得できるのでしょうか?(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

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※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年6月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

1人あたり1,000円の「森林環境税」徴収へ

2024年度から1人1,000円が徴収されることになる新しい税を知っていますか?その名は「森林環境税」と言います。

政府は皆さんの大事な税金を預かるわけですから、当然、新しい税の話も国民一人ひとりに周知徹底して理解を得ているはず…。ですから「森林環境税」のことを知らない人は、日本国民だったらいないでしょう。

「税金」は“納める”もので、“取られる”という表現はおかしいのですが、日本では日常に使われていて、「税金」とは、私たちが汗水流してがんばって稼いだお金が国に不当に“搾取”されるものというイメージが強いようです。

ということで、ここでも「森林環境税」は住民税に“しれ”っと上乗せされて、意識させないままで“取られる”と表現します。

「ステルス増税」という表現も世間にはあるようで、本当にこの国の政府は国民に信用されていないのですね。

住民税に上乗せといえば、もう皆さんもお忘れかと思いますが、「復興税」というのが、今も上乗せ徴収されているのです。

東日本大震災の復興財源として、平成26年度から年1,000円上乗せされているのが令和5年度で終了するので、その代わりに「森林環境税」を新たに住民税に同額の1,000円を上乗せされる……という流れなのでしょうか。

なんだそうか。さすが財務省は、一度手にした財源は手放さないのですね……って、皆さんは納得できるのでしょうか?

いったい何に使われるのか?

総務省のホームページの「森林環境税」説明文章を拾ってみました。

森林環境税とは、2024(令和6)年度から国内に住所のある個人に対して課税される国税であり、市町村において、個人住民税均等割と併せて1人年額1,000円が徴収されます。その税収の全額が、国によって森林環境譲与税として都道府県・市町村へ譲与されます。

※参考:総務省|地方税制度|森林環境税及び森林環境譲与税

また「税の使い道」の説明として、以下のようにあります。

森林環境譲与税は、市町村においては、「森林整備及びその促進に関する費用」に、また、都道府県においては「森林整備を実施する市町村の支援等に関する費用」に充てることとされています。都道府県・市町村は、インターネットなどを利用してその使い道を公表しなければなりません。

出典:同上

また、ご丁寧に「活用例」も載っています。以下に転載します。

<活用例>
 ・木質バイオマスを利用した道路融雪の実施【青森県西目屋村】
 ・5市町村による森林経営管理制度に基づく森林整備の実施【長野県大町市、池田町、白馬村、松川村、小谷村】
 ・スケートボードセクションの制作を通じた青少年への木育啓発教育の実施【兵庫県尼崎市】
 ・林業研修制度による担い手の確保【高知県仁淀川町】
 ・航空レーザー測量等を活用した森林の境界明確化【鳥取県鳥取市】

出典:同上

ただ「復興税」の延長としての「森林環境税」という文脈で見てしまうと、これらの説明がすべて後付の、取ってつけたようなものに感じてしまい、「森林環境税」の存在意義を強調しているだけのようにしか思えなくなってしまうのですよね。

それでもその説明に付き合うかたちで見ていきますと、「森林環境税」は、2015年にフランスで開かれたCOP21で採択された「パリ協定」の枠組みのもと、温室効果ガスの排出削減目標の達成や災害の防止などを達成するため、2019年に法律が成立したものだそうです。

当然、安倍政権の時でしたが、こんな話し合いしていたのですね。恥ずかしながら、ぜんぜん記憶にないです。

日本は、国土面積の約7割を森林が占め、世界の先進国の中でも有数の森林大国。木材価格の低迷や、所有者や境界がわからない森林の増加、林業就業者の不足などが深刻な課題となっています。

だから「森林環境税」は必要なんですって。

この税の納税者を約6,200万人とすると、税収は1年で620億円に上るといわれています。その税収は全額が「森林環境譲与税」として全国すべての都道府県や市町村に配分されます。

Next: 「森林環境譲与税」って何?集めた税金が流用される可能性も



ところで「森林環境譲与税」って何?

国民からお金を徴収するのが「森林環境税」、これが2024年度からスタート。国民1人当たりの住民税に1,000円を上乗せする形で徴収します。

都道府県・市区町村に配られるのが「森林環境譲与税」、これは徴税する前に2019年から先行して配られています。

つまり、国民からお金を取るのが「森林環境税」、国が都道府県・市区町村に配るお金の名称が「森林環境譲与税」ということですね。

その配分方法は、都道府県に対して、私有林人工林面積、林業就業者数及び人口による「客観的な基準」で按分して譲与されています(林野庁HPより抜粋)。

客観的な基準……?

森林環境譲与税は、50%が「私有林人工林面積」、20%が「林業就業者数」、30%が「人口」の比率によって配分されます。

「人口」が配分要素として大きなウェイトを占めているので、森林保護のための税金は、東京都渋谷区にも支給されているのです。

森林がなくても、人口が多い自治体には多額の譲与税が配分されます。そうすると例えば、一見森林とは縁遠そうな都市部の自治体にも多額の税金が配られることになります。

渋谷区のどこに森があるのかな。渋谷区では木こりさんが働いているのかな…。

私有林や人工林の面積がゼロの東京・渋谷区では、昨年度までの3年間で4,600万円余りが交付されていますが、全額を基金として積み立てています。

実は、税徴収する前から、まるで交付金のように都道府県・市区町村にばらまきを始めた2019年度からの3年間で、全国の市町村に約840億円が配分されましたが、その47%にあたる395億円が活用されていないというのです。

その配分された多くは、基金に積み立てられたということです。

この制度っていったい何なのでしょうね…。

「復興予算流用問題」

ツイッターでは、 太陽光パネルを作るために森林伐採しているのでは?という矛盾点を指摘する声もあります。

地球温暖化のためといえば、何でも許されると思っているのでしょうか。確かに「震災復興のため」と言われれば、文句は言えませんでしたけどね。

その「復興税」の使われ方にも、怪しいものがあります。

財務省HPによれば……「復興特別所得税及び復興特別法人税につきましては、復旧・復興事業の財源に充てられることが「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法」第七十二条第一項で定められております」となっています。

しかし、ネット上では「復興予算流用問題」という言葉が散見されます。「復興予算の大部分が被災地とは全く関係の無いところに流用された…」とあるのです。

かつて、復興税が、九州の観光事業や、東北とは関係にないところの橋建設に使われていたとか、防衛学校の補修に使われたという報道があったように記憶しています。

「現代ビジネス」ネット記事で、2020年3月11日掲載の「税金が驚くほどムダに…大震災から9年、「復興予算流用問題」を問う」という、ジャーナリストの福場ひとみ氏の記事を見つけました。

私の“うろ覚え”の記憶を確認するような内容になっています。

復興税の延長線上にあるかのような「森林環境税」
しかも、復興税と同額の1,000円
徴収の仕方も「住民税に上乗せ」というまったく同じ

……天引きの“住民税上乗せ”って、たしかに痛税感が薄れるような感覚ですね。

Next: 本当に必要か?所得の多い少ないには関係のない「一律1,000円徴収」



所得の多い少ないには関係のない「一律1,000円徴収」

前述の「森林環境譲与税の半分近くは使われていない」ということに関して、NHK報道でこのような記事を見つけました。

※参考:1人1000円取られる税金 なのに活用されない!? 森林環境税とは | NHK政治マガジン(2022年11月24日配信)

町の面積のおよそ85%、1万1,400ヘクタールを森林が占める“森林だらけ”の三重県度会町が、これまで配られた「森林環境譲与税」をほとんど使っていないという例を紹介しています。

正確には「使っていない」ではなく「使えない」「使い方がわからない」だそうです。

なんてことですかね…。マンパワーが足らず、具体的な使いみちを決められないままになっているのが活用できていない理由の1つだと、職員は語っているそうです。

NHKの取材記事によりますと「町内の手つかずの森林を整備するために、新しい税金は必要だと思います。しかし、専門の担当職員がおらず国などから具体的な活用方法が示されてこなかったので、どのように使えばいいのかわからなかった」と答えているようです。

地方自治体が自活する知恵がないという、なんともお粗末な話で、こんな運営状況で、国民からの税徴収だけを決めるなんて、どういうことでしょう。

使い道がないのに税金徴収?

使いみちがないのに税金を取っている…。

「花粉症対策にでも使ってくれれば良いのに」なんて意見もあります。

・徴税ありきの制度設計
・森がない都道府県・市区町村にも配分という疑問

……令和5年度で終わる「復興税」の延長線上の税制と考えれば、こんなでたらめとも取れる制度の建付けも理解できます。

ようは税金さえ取れれば良いのですかね。一度手にした財源は、何が何でも手放さない。

住民税に一律一定額上乗せという、痛税感を薄めるような“せこい”と言わざるをえない「森林環境税」徴収は、来年度(2024年度)から始まります。

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※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

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