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PayPay「他社クレカ締め出し」延期の可能性。想定以上の批判にくわえドコモ“パケ詰まり”による「QR決済ができない」事案の続出も影響か?

スマホ決済において最大のシェアを持つPayPay。今年8月以降は「PayPayカード」以外の他社クレカの使用を停止するといった方針を掲げていたが、ここに来て停止の延期も含めた検討しているという話が浮上しているようだ。

これは今月20日、PayPayを傘下に持つソフトバンクが株式総会を開いた際に、同社の宮川潤一社長が「利用停止については延期も選択肢に(入れて)検討が始まったと(PayPayから)聞いている」と発言したもの。

PayPayは今年5月に、他社クレカの利用を8月から停止すると発表。7月初めには他社クレカの新規登録を停止し、8月からは自社のPayPayカード以外は利用できなくするといったスケジュールを掲げていた。

しかし、これまで他社クレカで支払う形でPayPayを利用していたユーザーからすれば、8月以降は新たにPayPayカードを作って登録するか、あるいは銀行口座などから事前にチャージする方法でないと、PayPayでの決済ができなくなるため、「改悪だ」などとその不便さを訴える声も多くあがっていたのだ。

“他社クレカ締め出し”が想定以上に不興を買った?

2018年10月からキャッシュレス決済サービスをはじめたPayPayは、瞬く間にそのユーザー数を増やしていき、サービス開始から3年10カ月という短期間で登録ユーザー5,000万人を突破

他のスマホ決済のなかには、ユーザー数を公表していないところもあるため、全体の正確なシェアは不明であるものの、今年2月に公表された18歳~69歳の男女2万5,000人を対象にした動向調査によれば、「現在利用しているスマホ決済サービスは?」という質問(複数回答)に対し、PayPayは41.2%と、楽天ペイ(19.4%)やd払い(18.8%)をおさえて最も多くの支持を得ることに。

また「最も利用しているスマホ決済サービスは?」という問い(単数回答)でも、PayPayが31.2%と、楽天ペイ(15.0%)やd払い(14.2%)などを突き放す結果となったようで、もっとも沢山のユーザーを抱え、さらにその多くがメインでPayPayを利用している状況なのは疑いのないところのようである。

ところが、そのスマホ決済に登録して大いに利用されることを期待されているクレジットカードのほうに関しては、PayPayカードの2023年3月期の取扱高が3兆6,000億円だったのに対し、ライバルと目される楽天カードは18兆円(22年12月期)と、かなりの大きな差が存在する状況だ。

もっとも、PayPay自体の決済取扱高に関しては、ここ数年10兆円超を毎年超えているとのこと。PayPay側とすれば、その利を生かしてPayPayカードの利用者と取扱高をより増やし、いわゆるPayPay経済圏を競合する楽天経済圏と肩を並べる規模に押し上げたいという思惑から、いわゆる“他社クレカ締め出し”といった施策に打って出る格好に。いうなれば、PayPayがいよいよ本格的に回収フェーズへと舵を切ったというのが、衆目の一致する見方だったのだ。

にもかかわらず、他社クレカの新規登録停止を予定していた7月を前にしたこのタイミングで、延期を検討するといった話になっているというのは、ユーザーからの「他社クレカの利用を継続してほしい」という声が想像以上に多かった、さらにいえばPayPayカードの新規契約の伸びも、期待ほどではなかったといったことも考えられそうなところ。

SNS上でも今回の展開に関しては、「想像以上に不評だったんですかね」「そう簡単に余分にクレカを作る人はいない」などの声があがっており、そりゃそうなるだろう……といった反応がほとんどといったところのようだ。

“パケ詰まり”でQRコード決済の欠点が露呈

いっぽう、PayPay側にとってはある意味で“勝負手”だったはずの他社クレカ締め出しだが、それをひとまずは引っ込めるに至りそうな今の状況と、もしかすると無関係ではないのでは……と考えられるのが、今年に入り取沙汰されているドコモ回線の“パケ詰まり”問題だ。

【関連】楽天モバイル、鳴り物入りの最強プランも「繋がらない」「バッテリーの減りが早い」の声。ローミング頼みの顧客満足度アップ戦略は早くも暗礁か

通信品質の問題といえば、この6月から“最強プラン”を鳴り物入りでスタートさせた楽天モバイルが、とにかく酷いといった話が先日大いに話題となったが、それ以前にドコモユーザーの間では今年に入ったあたりから、特に東京・名古屋・大阪といった都市部を中心に、電波は繋がっているようだがパケットが流れていない……といった声が、SNS上などで多くあがるように。

ドコモ側の説明によれば、「トラフィックの増大」「瞬速5Gエリア拡大の遅れ」「再開発などによるエリア変動」「特定周波数の逼迫」などの原因で、そういった現象が起きているというのだが、これにより例えば街中で買い物や食事をしたユーザーが、いざスマホ決済(QRコード決済)をしようとしたところ、QRコードがまったく表示がされずに“詰む”といった事態が続発しているという。

一度チャージすれば、電波の繋がっていないような場所でも使えるSuicaなどの交通系icカードとは違い、スマホの電波が入らない場所ではとんと使い物にならないのが、QRコード決済のいわば難点のひとつ。そんなデメリットが、このところの“パケ詰まり”によって、改めて顕在化する格好となっているというのだ。

PayPayに限らずQRコード決済を日頃よく使うユーザーにとっては、まさに由々しき事態といった、この“パケ詰まり”問題だが、ドコモ側によれば「2023年夏までにはしっかり解決していく」とのことで、事態解消まではまだしばらくかかりそうだという。

このように、いうなれば“PayPay離れ”どころか“QRコード決済離れ”すら起きかねないというのが今の状況。さすがにそんなタイミングで“他社クレカ締め出し”“回収フェーズ突入”といった勝負に出るのは、あまりに間が悪すぎる……というのも、今回のPayPay側の“方針転換”に僅かかもしれないが影響を与えた可能性がありそうだ。

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Image by: beeboys / Shutterstock.com

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