昨年も為替介入があった1ドル=145円に到達し、神田財務官をはじめ口先介入が激しくなってきました。そんな中で迎える雇用統計ですが、ここまでの相場の流れからドル円の上値メド、そして為替介入はあるのかを含め解説していきたいと思います。(ゆきママ)
景気と利上げがテーマとなり、ほどほどの心地よい数字が理想的
相場の流れとしては、景気と利上げが再びメインテーマとなってきました。先月の主要中銀の金融政策イベントでは、多少景気を犠牲にしてでも、利上げによる金融引き締めをしてインフレを抑え込む方向が示され、市場の動きもやや変わってきた感があります。
欧州の経済が停滞していることは織り込み済みではあったものの、今週に入って米国の経済指標が悪化したことを受け、景気見通しへの懸念からリスクオフ(回避)の動きとなり、円高・ドル高気味に。
さらに、昨日発表された米ADP雇用報告、米ISM非製造業景況感指数などは予想を大きく上回る結果となるも、逆に経済が強くても利上げや高金利の継続が意識される格好となり、結局は株価が下げてリスクオフの流れとなっています。
経済指標が弱いとダメ、しかし指標が強すぎても利上げによるダメージを意識する形で株安・円高になってドル円もクロス円も上値が重くなってしまうわけですから、今日の雇用統計というのは、弱すぎもせず、かといって強すぎもしないというほどほどの結果にならないと値動き的には行って来いの全戻しとなってしまいそうです。
雇用者数増は織り込み済みで平均時給が鍵か
それでは、先に発表されている雇用指標の数字を確認しながら、今日の展望と戦略について考えていきたいと思います。
雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
ところどころ弱さも見られますが、基本的には強いという他ありません。製造業はともかくとして、非製造業(サービス業)は引き続き強靭と言えるでしょう。
ADP社による雇用報告は+49.7万人増と驚異的な数字でした。また、同社のリサーチ以外でも、解雇者数の減少が示されるなど、やはり雇用市場は力強いと評価する他ありません。
となると、今日の雇用統計もまずまず強めの数字が織り込まれているでしょう。ただし、今回の場合は強すぎる方が利上げの増加を意識させてしまうため、予想を下回ってくる方が株価にとってもプラスですし、ドル円やクロス円にとっても押し上げ材料になりそうではあります。
毎回重要ですが、インフレに直結する平均時給(賃金上昇率)は特に注目され、雇用者数が多めでも平均時給が弱めならインフレ後退で市場の懸念というのは和らぎそうなので、その数字を意識しながらトレードしたいところでしょう。
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どう転んでも最終的には上!今夜の想定は1ドル=143.50〜144.80円
雇用統計以外の数字を見る限り、米国の経済はまずまず堅調ですから、利上げが嫌気されている今の市場状況を踏まえると、予想を下回るやや弱めの結果というのがドル円・クロス円の押し上げに寄与しそうです。
強かったら強かったで金利上昇からのドル高にはなりますが、株価が上昇を見せない限りは上値も限定的でしょう。
1ドル=144〜145円前後では本邦政府筋からも口先介入が幾度となく行われており、ここを上回っていくハードルはやや高くなっていることは意識しておきたいですね。
ドル円チャート(日足)
非農業部門雇用者数のコンセンサス予想は+22.5万人増となっていますが、+10〜30万人程度なら引き続き県庁という見方になるでしょう。マイナスにでも落ち込まない限りはサプライズではないので、特段どうこうということはありません。予想を上回ってくれば、発表直後は上昇するでしょうが、基本的には全戻しの行って来い想定。
注目の平均時給のコンセンサス予想は前月比+0.3%・前年比+4.2%となっており、前回5月分(+0.3%・+4.3%)と比べても減速感はなく、強めの想定となっています。やはりこれが予想を下回ってこない限りは、市場の緊張感も緩和されないので、予想並だと上値は重たいでしょう。
前月比でマイナスになってしまうとドル安が意識されますが、+0.0〜+0.1%ぐらいにおさまるのであれば、インフレ後退からの株高によるリスクオン(選好)の円安で、ドル円もクロス円も押し上げられやすいか。非農業部門雇用者数が予想並で平均時給が予想を下回ってきた場合は、ポンド円などのクロス円をロングするのが良さそうです。
日銀がぼっち緩和を継続していることで、極端な円高にはなりにくい環境を踏まえると、やはりトレードとしてはロング・押し目買いという戦略にはなります。
ドル円であれば、143.50〜143.80円は非常に強めのサポートを形成していますから、今の144円割れの水準からロングして、あとは結果を見てどうかという話ですね。
理想的な数字、株高にならない限り145円台を目指していくのは厳しいでしょうが、雇用統計が強ければ強かったで、結局は日米金利差拡大からのドル円上昇という方向にはなりますし、よほど弱くない限りは利上げも継続するということで、ドル円・クロス円の方向は上ですからね。
結論としては、1ドル=143.50〜144.80円レベルのレンジを意識して押し目買い・ロングで入っていくのが良いでしょう。
また、弱めの数字が出た場合はドル安で、株価が上がっていくなら円安になりますから、この場合はクロス円、特にポンド円のロングを狙っていくと良いと思います。現在183円前半レベルですが、186~187円ぐらいまでは上値余地がありますので、183円台からなら追っかけても良さそうです。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年7月7日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による