売れっ子音楽プロデューサーである松尾潔氏が7月1日、ジャニーズ批判を理由に15年間在籍していたスマイルカンパニーから突然にマネジメント契約を解除されたことをツイッターで呟いたことから、大きな騒ぎになっています。コンプライアンスや社会的責任を求められる本邦の上場大手広告主はすでに、ジャニタレを広告キャラクターに起用することを見送る動きを顕在化させている様子。横並びが強い業界だけに、この流れが広く波及することになれば、広告市場からジャニーズ事務所は排除され、そうこうしているうちにテレビのコンテンツやMCといった部分も消滅していく可能性が高まります。(『 今市的視点 IMAICHI POV 今市的視点 IMAICHI POV 』今市太郎)
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ジャニーズ批判の売れっ子プロデューサーを解雇?
松尾潔氏といえば本邦の音楽業界ではかなり著名なプロデューサーとして活躍しており、宇多田ヒカル・MISIA・SPEED・平井堅らのプロデュースとともに、EXILE・JUJU・SMAP・NEWS・ジャニーズWEST・東方神起らの楽曲制作にも携わってきていますので、この業界を知る人間から見れば一定の座を築いた売れっ子プロデューサーと評価される人物です。
その松尾氏が7月1日、15年間在籍していたスマイルカンパニーから突然にマネジメント契約を解除されたことをツイッターで呟いたことから、大きな騒ぎになっています。
正確を期すためにそのツイートを敢えて載せておきますと、以下になります。
15年間在籍したスマイルカンパニーとのマネージメント契約が中途で終了になりました。
私がメディアでジャニーズ事務所と藤島ジュリー景子社長に言及したのが理由です。
私をスマイルに誘ってくださった山下達郎さんも会社方針に賛成とのこと、残念です。
今までのサポートに感謝します。バイバイ!
— 松尾潔 (@kiyoshimatsuo) July 1, 2023
スマイルカンパニーといえば、そもそも山下達郎や竹内まりやのマネジメントを手がけるプロダクションであることから、ジャニーズ事務所の件で苦言を呈したことで切り捨てられ、山下達郎からも見限られたという内容は、凄まじい勢いでネットをかけめぐることとなりました。
日刊ゲンダイに掲載された松尾氏の冷静な長文から見えるもの
この手の押し問答は大体、登場する双方の言い分が異なるもので、のちのちまで大もめに揉めるものです。松尾氏は実に用意周到で、日刊ゲンダイに連載中の「松尾潔のメロウな木曜日~特別版~」に本件に関する長文の顛末記を掲載しています。
それによれば、この契約打ち切りを判断したのは現社長である創業者小杉理宇造氏の長男の小杉周水氏で、ジャニーズ事務所やジュリー社長の名前をメディアで口にすること自体を問題視して契約の途中打ち切りを切り出されたといいます。
しかも、松尾氏によれば涙を流しながら解約の弁をくり返したといいますから、この判断が彼のものだけではなく初代社長でジャニーズエンターテイメントの社長経験もあった父の小杉理宇造氏とジャニーズ事務所との密接な関係に起因した判断であったであろうこともやんわり伝わってくるところ。さらには、ジュディ社長に対する無形の恩義や忖度が微妙に働いた決定であることも否定はできない状況です。
松尾氏は今回の退場勧告が出された当初、自分をスマイルカンパニーに誘ってくれた山下氏が何等かの形で止めに入ってくれることを期待したようですが、実際はそんなに懇意な関係ではなかったようで、社長判断でさっさと退場勧告を食らうことになったようです。
ただこの件での松尾氏の対応はまさに用意周到の域に入っており、7月1日の140字のツイートでスマイルカンパニーと山下達郎に相当なダメージを与えることにまんまと成功しています。
Next: ラジオ放送を聴いてみれば、はじめから想定できた山下達郎氏の弁明
ラジオ放送を聴いてみれば、はじめから想定できた山下達郎氏の弁明
ここからは9日に放送されたラジオ番組『山下達郎のサンデー・ソングブック』を聴いたうえで原稿を加筆しています。
もともと音楽番組ですから、はじめの数分だけこの話題について山下達郎氏がコメントするというのは最初からたいしたものではないことは予め予見できましたが、スピーチは番組の中ほどで行われました。
内容は一字一句書き起こしませんが、まず松尾事務所からは顧問料をいただくことで契約をしているので、スマイルカンパニーの所属タレントではないため解雇関係がない中で解雇には当たらないことを明らかにしています。
また松尾氏が仄めかしていたほど近しい関係ではなかったようで、年に数回メールでやり取りする程度の距離感であったことも明らかにしています。松尾氏との事務所の社長判断にゆだねる形で契約終了となったのは間違いないが、山下氏自身がそのプロセスに関与したことは全くないとのこと。
松尾氏がジャニー喜多川の性加害問題に対して一方的に憶測に基づいて一方的な批判をしたことが契約終了の一因であったことも認めています。ただ、ほかにも理由がいろいろあることも示唆しており、いろいろな材料が重なってこうした事態に陥ったことも口にしてます。
山下氏自身はジャニー喜多川の性加害については一連の報道が始まって初めて知ったとのことで、それが事実なら第三者委員会などを通じて明らかにすべきではあるものの、自分は何も知らないのでコメントの出しようもないとしています。
ただ山下氏の個人的感情でいえば、ジャニー喜多川が育てた才能あるタレントが多く輩出されたことについては今も高く評価しており、ジャニー氏への御恩は忘れないし、同氏のプロデューサーとしての才能は今も高く認めているとのこと。
ただし社会的、倫理的意味での性加害を容認するのは全くの別問題であると考えているそうで、ジャニーズ事務所に所属するタレントにも提供された楽曲にも何の罪もないと言い切っています。
このような山下氏の姿勢を忖度や長いものに巻かれていると解釈するならそれでも構わない。そう解釈する人には自分の音楽は不要であろう…と締めくくっています。
全般、山下氏らしい物言いになっており、絶大なファンはこのスピーチにかなり納得したようですが、それでも納得のいかない部分は残ります。
あえて火中の栗を拾わないはずの戦略が完全に裏目に出る始末
今回スマイルカンパニーが猛烈に問題視した松尾氏のジャニーズ事務所やジュリー社長に関する発言は、一般人の視点から見れば常軌を逸した過激なものではなく、あくまで冷静で全うな意見であったといえます。
またその指摘が一方的な憶測に基づくものであるという点にも、大きな齟齬を感じさせられます。
業界関係者が一切口を閉じて当該案件に対して何も発言しない中で、松尾氏が積極的にツイートしたことは間違いありませんが、ジュリー社長はまずは記者会見を開催すべきと言ったことや、タレント優先の原則を死守しなければこの国のこの業界は滅びると発言したこと、さらにジャニーズ問題はメディア全体のあり方の問題であるとしたことなどが“一方的な憶測に基づく批判である”と括ったのには相当な違和感を覚えさせられました。
1965年以降、延々と自社所属の青少年を強姦しまくって今やギネスブックに載るのではないかというご本人の重大な性犯罪疑惑は、その事業の上で成立してきたものでしょう。ジャニー氏の才能やジャニー氏への個人的恩義は別ものという山下氏の発想は一見、正しそうに見えますが、果たしてこの戦後最大の青少年への性加害問題の存在とご本人の高いタレント輩出&エンタテイメントを構築する才能を別のものとして評価できるのかどうか。これについては相当に大きな疑問が残るところで、まさに自己都合に落とし込む詭弁と捉えられても仕方ないものを感じます。
Next: メディア・広告から消滅も?業界には変化も現れ始めている
業界には変化も現れ始めている
松尾氏のスマイルカンパニー切り捨て問題が発覚しても、同氏によればテレビメディアや音楽誌などは一切取材に訪れず、依然としてテレビを中心にしてジャニーズ問題は見て見ぬふりをして嵐が過ぎ去るのを業界全体がひたすら待ち臨んでいる様子。
しかしながら、コンプライアンスや社会的責任を求められる本邦の上場大手広告主はすでに、ジャニタレを広告キャラクターに起用することを見送る動きを顕在化させています。
横並びが強い業界だけに、この流れが広く波及することになれば、広告市場からジャニーズ事務所は排除され、そうこうしているうちにテレビのコンテンツやMCといった部分も消滅していく可能性が高まります。
こうなってしまえば、「性加害があったなら悪いことだが、ジャニー喜多川にはエンターテイメントビジネスの高い才能があったし、所属タレントにも高い能力がある」と評価してジャニーズ事務所を今の形のまま存続させることには早晩、限界が来るものと思われます。
山下達郎氏が本邦の音楽業界で凄まじい成果を残す大きな存在であることは誰しも認めるところですが、ジャニー喜多川に対する発言は極めて前時代的で、これがこの先も通用するのかどうかは相当怪しくなっていることを感じます。
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『
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』(2023年7月9日号)より抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による
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