今週は約11ヶ月ぶりに1ドル=150円の大台に乗せ、直後に2分で3円近く下落するなど、為替介入も噂される不穏な値動きとなっています。そんな中で大注目の雇用統計を迎えることとなります。数字次第では大荒れもあり得るだけに、この記事を読んでしっかり現状を確認した上で備えておくことが重要かと思います。(ゆきママ)
売りが売りを呼ぶ米金利上昇スパイラル
ドル円が150円台の大台を突破した背景としては、やはり最近の米金利の上昇からのドル高が挙げられるでしょう。特に米長期金利(10年債利回り)は一時4.8%に達するなど、5.0%の大台目前に迫っています。
米国債10年 日足(SBI証券提供)
そして、この金利が上昇している理由としては、1つはタカ派FRB(米連邦準備制度理事会)メンバーの発言により“より高く、より長く”というFRB(米連邦準備制度理事会)のスタンスが強く意識されたこと。これを裏付けるように米経済指標が強いことが挙げられます。そういった意味でも今夜の雇用統計の数字は注目されるでしょう。
また、金利上昇=債券価格低下になるわけですが、多額の債券を抱えた金融機関がこの価格低下に耐えきれず、債券を売っているとの指摘もあります。要するに価格が下がるから売る、売りが売りを呼ぶ展開で、金利が上昇し続けているということです。
すでにシリコンバレー銀行の破綻時以上に米地銀株の空売り比率が高まっているとの報道もあり、債券価格の低下(金利の上昇)を懸念する声はより一層強まっています。
さらに、金利高による米ドルの調達コストの上昇から、手持ちの米国債を売ってドルを確保する動きもあるといった指摘もあります。
このように債券の売りが売りを呼ぶような流れとなり、米金利上昇スパイラルと言っても過言ではない状況になりつつあるのが現状です。
インフレ率もボチボチ落ち着きつつあり、市場の織り込みでは利上げ停止が優勢となりつつあるにも関わらず、なかなか金利が下がらないず、むしろ上がっています。
したがって、今夜の雇用統計がよほど悪い数字にならない限り、景気後退から利上げ停止を織り込み一段の金利低下という状況にはなりにくく、下がれば買われる米ドルの底堅さは変わらないと考えます。
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️ADP雇用報告は2年8ヶ月ぶりの低水準も雇用市場は引き続き堅調
今週の指標でサプライズとなったのは、8月分の雇用動態調査(JOLTS)の求人件数が予想の880.0万件から961.0万件と大きく上振れしたことでしょう。前回(7月分)の時は逆に予想を大きく下回り、金融引き締めの効果が意識されました。JOLTSはブレやすい指標ではありますが、まだまだ採用意欲そのものは旺盛なのでしょう。
雇用指標の結果(青は改善・赤は悪化、数値はいずれも速報値)
先に発表された雇用指標の結果を見ると、給与計算サービス大手のADP社の全米雇用報告の下振れが目立つ結果となっています。前月から比べてもそうですが、市場予想の15万人増からも大きく下振れ、2年8ヶ月ぶりの低水準となっています。
一方、新規失業保険申請件数はかなりの減少傾向が続いており、労働市場のタイトさ、選ばなければ職はいくらでもある状況が続いており、JOLTS求人件数の多さを裏付ける結果となっています。
また、ISM(全米供給管理協会)の雇用指数も非製造業部門は前月を下回ったものの、製造業部門の数字は大幅に改善して節目の50.0ポイントを上回っており、やはりトータルで見ると引き続き雇用市場は一定以上の強さがありそうです。
️トレンドが変わる可能性は低い。為替介入も警戒しながらロング!
雇用統計の数字が相場に流れを変えるかについてですが、非農業部門雇用者数(NFP)がマイナスに落ち込むとか、平均時給が前月比でマイナスになるといった極端な数字が出ない限りは難しいと言えるでしょう。
やはり雇用統計自体振れ幅の大きい経済指標でもありますし、全体の傾向が問題となりますので、予想を多少下回る程度ではトレンドが変わるようなイベントとはなり得ないでしょう。
ちなみに事前予想では、NFPが+17.0万人増、平均時給が前月比+0.3%・前年比+4.3%となっており、まずまず堅調な数字が見込まれています。
米金利上昇からのドル高というトレンドは変わりにくいですし、日銀の政策変更観測が後退したことで円売りも支えになっていますから、基本的には押し目買い・ロングという戦略になるでしょう。
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今夜の想定は1ドル=147.50〜151.00円
ドル円チャート(日足)
とりあえず今の水準で発表前に軽めに買ってギャンブルしてみるのも良さそうではあります。下値のサポートとしては、21日移動平均のある148.20〜148.30円レベルが機能しています。発表直後の瞬間的な値動きはともかくとして、発表後に148円台をズルズル割り込んでいく値動きとなればいったん損切りして様子見でしょうか。
逆に上値に関しては、149円台がかなり重たくなっており、149.10〜149.20円レベルで止められている状況です。ここを抜け、あっさり149.50円レベルも上回っていくのであれば、150.00円の大台を上回ることになるでしょう。
ただし、1ドル=150.00円前後の水準では神経質な値動きとなって乱高下もありそうですから、上がった場合は149円台後半でいったん利食いして、150.00円レベルをサポートとして安定するかどうかを確認してから、再度ロングした方が無難でしょう。
150円を超えた水準では、為替介入もあり得なくはありません。調子に乗ると痛い目を見る可能性がありますので、念のため警戒しておきましょう。
結論としては、基本的によほど弱いマイナス圏に落ち込むような数字がない限りは押し目買いの意識でトレードしたいですね。週明けの急落の147.30円レベルを底値と意識して、買っていけば問題ないように思います。
本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2023年10月6日)
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による