ホンダやJR東海などの高額株がこの10月、相次いで株式分割に踏み切った。最低投資金額が下がり株式を買いやすくなることで、複数の利点がある。10月1日を効力発行日として1株を3~5株に分割した主な銘柄を挙げておく。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年10月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
買いやすくなった「高嶺の花」銘柄を押し目買い
投資に必要な金額が大きいホンダやJR東海などの高額株がこの10月、相次いで株式分割に踏み切った。
東京証券取引所が望ましい最低投資金額とする「50万円未満」を上回る銘柄の分割は、2023年1~10月で60件強と前年同期の2.3倍に増える。24年に始まる新たな少額投資非課税制度(NISA)をにらみ、企業は個人マネーの取り込みへ投資家目線の取り組みを一段と強めている。
10月1日に分割した29社のうち19社は、分割前の価格での最終売買日だった27日時点で最低投資金額が50万円超。分割後は17社が50万円以下になる。
最低投資金額が下がり株式を買いやすくなることで、複数の利点がある。
過去に株式分割した企業では株主や売買高が増えており、株式の流動性が高まることも示唆されている。個人投資家にしてみれば、これまで「株価に上値期待があり、割安感もあるけれど株価が高くて出が出せない」と投資することを諦めていた銘柄に投資できるようになることで、やはり株価にはプラスというイメージが強まりやすい。
以下に、10月1日を効力発行日として1株を3~5株に分割した主な銘柄を挙げておく。
東海旅客鉄道<9022>
1対5の分割を実施して、だいぶ手掛けやすい水準になった。9月14日に年初来高値を更新した時点では、1単元で200万円近くの資金が必要だった。
言うまでもなく、足元は主力の東海道新幹線が観光需要を中心に新型コロナウイルス禍からの回復を続けている。インバウンドの伸びが想定を超えており。名古屋の百貨店(ジェイアール名古屋高島屋)も好調に稼いでいる。名古屋駅隣接の名古屋マリオットアソシアホテルも稼働率がアップ。スイートルームの改装などにより、高付加価値で高室料を実現している。
24年3月期は、売上高が前期比11.8%増の1兆5,660億円、営業利益は同14.8%増の4,300億円、純利益は同13.9%増の2,500億円を見込んでいるが、1Q実績の進捗率は営業利益で34%超、純利益で36%超と高め。通期業績の上方修正期待が高い。
株価は、今週で3週連続調整しており、足元で52週移動平均線が位置するところまで下押してきている。予想PER=12倍台、PBR=0.9倍割れと割安感が出てきており、そろそろ押し目買いの好機と考えられる。
寿スピリッツ<2222>
1対5の分割を実施。9月29日に初来高値を更新しており、その時点では1単元で120万円超の資金が必要だった(執筆時は1単元で24万円)。
周知の通り、同社は土産物を中心とした和・洋菓子の大手。全国の観光地に販売子会社を持ち、地域限定の観光土産菓子で最大手に位置づけられる。「ルタオ」「フランセ」など複数ブランドを抱える。
ここにきて人流活発化に伴い土産用の菓子需要が想定超える高い伸びとなっている。むろん、インバウンド消費も追い風。工場の稼働率上昇効果大きく、原材料高を軽くこなす。
第1四半期(4~6月)の連結営業利益は前年同期比2.7倍の30億5,800万円と同期としての過去最高を更新。通期予想は、売上高が前期比11.4%増の558.7億円、営業利益は同17.3%増の116.7億円、純利益は同11.9%増の78.5億円と過去最高を見込んでいる。
株式分割に伴って株主優待の内容を変更。「100株以上で3,000円相当のグループ商品」という内容は、お得度が高い。
Next: あの銘柄も手が出せる価格に。みんなが欲しがればさらに上がる?
マツキヨココカラ&カンパニー<3088>
1対3の株式分割を実施。8月14日に年初来高値を更新しており、その時点では1単元で100万円近い資金が必要だった(執筆時は1単元で27万円)。
足元は、人流が回復していることで日焼け止めなどの季節性商材や化粧品が好調。むろん、インバウンド需要の回復も集積に大きく寄与している。都心店を中心に客足が戻ったほか、リップなどのメーク向けの化粧品が伸びる。風邪薬など医薬品も好調に推移している。
4~6月期連結決算は、純利益が前年同期比51%増の119億円だった。24年3月期の通期予想では、売上高が前期比3.0%増の9800億円、営業利益は同3.6%増の645億円、純利益は同3.6%増の420億円と過去最高を見込んでいる。
株価は、足元で26週移動平均線が位置するところまで調整してきており、そろそろ押し目買いの好機が到来すると個人的には見る。
今回、株式分割を実施したのにも拘らず従前の株主優待制度の対象と内容は(商品券)変更せずに維持。つまり、実質的に制度が拡充された格好となった。
日本道路<1884>
1対5の分割を実施。9月28日に年初来高値を更新しており、その時点では1単元で100万円近い資金が必要だった(執筆時は1単元で18.5万円)。
清水建設子会社の道路舗装大手で、道路舗装工事やアスファルト合材の製造・販売などを展開。主力の建設事業は高速道路や主要幹線道路の舗装工事をはじめ、テストコースなど自動車業界、スポーツ施設、物流関連の3分野も注力する。
道路舗装など手持ち工事を順調消化。原材料高落ち着くうえ、施工管理徹底で採算改善。24年3月期は売上高が前期比5.6%増の1,640億円、営業利益は同75.6%増の100億円、純利益は同14.0%増の65億円を見込んでいる。
株価は、足元で26週移動平均線が位置するところまで調整してきており、予想PER=12倍台、PBR=0.83倍、予想配当利回り=3.2%台と割安感が感じられる。
Next: まだある買いやすくなった「高嶺の花」銘柄
品川リフラクトリーズ<5351>
1対5の分割を実施。9月28日に年初来高値を更新しており、その時点では1単元で86万円近い資金が必要だった(執筆時は1単元で14.3万円)。
耐火煉瓦など耐火物の製造販売が中核。オールドファンには、東京駅の赤レンガを全量製造・提供した「品川白煉瓦」の会社名でお馴染み。主な需要先は鉄鋼業界で、耐火物では国内で高シェアを誇る。JFEホールディングスの持分法適用関連会社となっている。
足元は、柱の耐火物が海外で伸長。国内は値上げ浸透が想定を超える。原料調達先見直しも効く。
9月7日に通期業績予想を上方修正。24年3月期は売上高が前期比16.0%増の1450億円、営業利益は同33.7%増の145億円、純利益は同80.6%増の150億円と過去最高更新を見込む。
株価は、足元で予想PER=4.5倍、実績PBR=0.98倍、予想配当利回り=4.74%と、かなり割安な水準に放置されている。 ※2023年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年10月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,100円)。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2023年10月6日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による