クルマのEV化が進むなか、同時に車両重量の軽量化ニーズも高まっており、関連の技術・製品は引く手数多の状態にある。そこは“ニッポンの技術”の出番というところもあり、すでに世界のEVメーカー各社からの注目度が高まっている製品・関連企業を取り上げたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年11月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
電気自動車の普及で「軽量素材」に脚光
先週8日、総合繊維メーカーのセーレンが発表した2023年4~9月期の連結決算は、純利益が前年同期比11%増の57億円で、3年連続の最高益となった。欧米でカーシート材の新たな販路を開拓し、主力事業で大幅な増益につなげた。電気自動車(EV)の普及も軽量を売り物にする同社製品の追い風になっている。好調をけん引するのが車両資材向け合成皮革「クオーレ」。もともとカーシートに使われていた本革より軽さや強度に優れ、低コストだ。EV市場の拡大に伴い車両資材の軽量化は重要課題で、同社の強みとなっている。
4月にはハンガリーの新工場が量産体制に入り、川田浩司副社長は「欧州を基盤とする自動車メーカーに認知された」と説明する。現地には高価格帯のメーカーも多く、環境配慮型素材として本革からの転換需要をつかみつつある。クオーレの販売先が多角化し、中国の動向に左右されない事業環境が整いつつある。
クルマのEV化が進むなか、同時に車両重量の軽量化ニーズも高まっており、関連の技術・製品は引く手数多の状態にある。そこは“ニッポンの技術”の出番というところもあり、既に世界のEVメーカー各社からの注目度が高まっている製品、関連企業を以下に見ておく。
セーレン<3569>
総合繊維メーカーとして、天然繊維から合成繊維まで、糸から最終繊維製品まで、「衣料」分野から「非衣料」分野までの製品を企画、製造、販売。
主力の「車両資材事業」は、世界トップシェアのカーシート表皮材とエアバッグを製造・販売。合成皮革の「クオーレ」は、本革の4倍の耐久摩耗性、約2分の1の軽さ、幅広い快適機能性、豊かな意匠性などがウリ。
このたび2Q実績発表時に通期予想を上方修正。中国における日系メーカーの販売不振の影響はあるものの、自動車用シート材が客先の増産によって国内で回復して収益をけん引。24年3月期は、売上高が前期比5.8%増の1400億円、営業利益は同3.7%増の133億円、純利益は同0.7%増の111億円と過去最高を見込んでいる。
株価は、今年6月高値=2,502円をネックライン水準とするダブルボトムを形成中。同水準をクリアに上抜けるかが当面の注目ポイントになる。
住江織物<3501>
自動車・車両内装事業、インテリア事業が主力都市、機能資材事業も手掛ける老舗のインテリアメーカー。国会議事堂の赤じゅうたんを手掛けたことでも有名。
新幹線、電車、バス、船舶、航空機等の公共交通機関に、シート表皮材やカーテン、壁装材、床材にいたるまで内装材をトータルで提案。自動車・車両内装事業では、シート表皮材から天井材、フロアカーペット、カーマットまで内装材全般を供給する。
フロアカーペットに関しては、自動車室内の静寂性向上と、車両重量の軽量化を目的とした開発が光る。また、自動車走行時のボディの防護や騒音の低減が求められるホイールハウス部品などの外装部品についても、従来のプラスチック成型品に比べ、軽量で良好な音響性能を確保する工夫が施されている。
24年5月期は、売上高が前期比4.4%増の990億円、営業利益は同100.8%増(約2倍)の26億円、純利益は同305.7%増(約4倍)の111億円を見込み、年間配当は70円を予想(前期は55円)。利回りは3%を超える。予想PERは7.5倍と株価には割安感が漂う。
Next: 電気自動車の市場拡大はこれから。ともに成長する日本企業は?
ダイセル<4202>
有機合成化学に伝統的強みを持つ化学メーカー。タバコフィルター材料で国内トップシェア。
現在の稼ぎ頭は、自動車部品や家電製品などで金属に替わって使われる高機能樹脂の「エンプラ」。液晶フィルム材やエアバッグ基幹部品も展開している。
自動車や電子デバイスの需要が下期にかけて回復の見込み。主力のエンジニアリングプラスチック(エンプラ)分野で電気自動車(EV)の軽量化などに寄与する製品が堅調。
また、インドに自動車のエアバッグを膨らませるガス発生装置の工場を新設。年度内の稼働を目指す。
このたび2Q実績発表時に通期の利益予想を上方修正。徹底したコストダウンの実施に加え、政策保有株式の売却も進める。
24年3月期は、売上高が前期比4.5%増の5,620億円、営業利益は同28.4%増の610億円、純利益は同32.7%増の540億円と過去最高を見込んでいる。年間配当は50円を予想しており(前期は38円)、利回りは3.5%前後と高水準。
リョービ<5851>
同社が中長期テーマとして掲げてきた「セカイヲ軽クスルカンパニー」の実現に向けた努力が様々な形で実を結び始めている。世界トップクラスの独立系ダイカストメーカーで、最近の注目は言うまでもなくギガキャスト。アルミ鋳造設備で一体成型する新たな生産技術「ギガキャスト」を使った大型車体部品の生産に参入し、25年3月から主に国内の自動車メーカーなどからの部品受注を見込むとしている。
9月には、「ギガキャスト」による車体製造装置をUBEに発注したと発表。数十個の鋼板部品を1個のアルミ部品に置き換えて一体生成し、車体の製造コストを2割下げると同時に、車両重量の軽量化にも大きく貢献する。
23年12月期は、売上高が前期比8.2%増の2,700億円、営業利益は同50.7%増の105億円、純利益は同75.6%増の84億円を見込んでいる。株価は「ギガキャスト」の話題で6月初旬以降に大きく上昇し、10月に一旦調整入りしたが、再び戻りを試す動きに転じてきている。
Next: まだある自動車“軽量化”で業績拡大が見込める日本企業
森六HD<4249>
化学分野における「商社」機能と、自動車部品の「メーカー」機能を併せ持つ。1958年、ホンダ・スーパーカブに搭載するフロントカバーの樹脂化に成功しメーカーとしてスタート。
樹脂加工製品事業では、主に自動車四輪部品の開発から生産・販売まで一貫して行う。ホンダ向けのシェアが大きかったが、8月にはトヨタ向けに樹脂部品を供給することが決定したと発表。ホンダ初のEV=「Honda e」にはフロントグリルからアシスタントパネル、センターコンソールまで多数の同社製部品が採用されており、それぞれに軽量化が進められている。
11月14日に今期通期予想を大幅上方修正。24年3月期は、売上高が前期比4.2%増の1480億円、営業利益は同236.8%増(約3.3倍)の45億円、純利益は同93.1%増の26億円を見込む。
年間配当=100円予想で、利回りは3.8%前後。今週15日に年初来高値を更新し、目先はやや調整含みながら、再評価の動きは中長期的に続くと見られる。 ※2023年11月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2023年11月17日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,100円)。
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2023年11月17日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による