マネーボイス メニュー

NTT法改定めぐり通信大手3社とNTTの論戦激化…通信網は誰のものか?双方の主張と株価への影響=原彰宏

政府がNTT法の改正を検討しています。実は国が保有するNTT株を売却して、防衛費を捻出したいのだとか。この法改正をめぐって、楽天・ソフトバンク・KDDIの通信大手3社を巻き込み激しい論戦が繰り広げられています。(『 らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』原彰宏)

【関連】牛を殺せば助成金……政府に振り回される酪農家たち。過去最悪レベルの「牛乳ショック」で毎日生乳廃棄へ=原彰宏

※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年11月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

日本が保有するNTT株を売却可能に

政府による、NTT法改正提案。実は国が保有しているNTT株を売却できるように法案を改定したいようです。

なぜ、NTT株を売却するのか…。防衛費増大に、その費用を捻出するためだそうです。むむ。

※参考:(社説)NTT法見直し 防衛財源論と切り離せ:朝日新聞デジタル(2023年〓月〓日配信)

記事には「NTT株見直しと防衛財源論とは切り離して考えろ」とあります。

さらに記事を紹介しますと、

NTT法見直しの議論が、自民党と政府、それぞれで進んでいる。きっかけは防衛費の大幅増額に伴う財源問題だ。政府によるNTTへの規制や株式保有のあり方を点検することは大事だが、NTT株を売って財源に充てることばかりが先に立てば議論がゆがみかねない。通信インフラの将来像を見据えた検討が求められる……とあります。

ごもっともです。

売れば5兆円!防衛費に充てられるが…

見直し論議を主導する自民党は、防衛費増額の財源探しの中で、政府に残るNTT株をすべて売れば5兆円規模になることに着目していました。

そういえば6月、防衛財源についての提言で「完全民営化の選択肢も含め、速やかに検討すべきだ」としていました。

政府は防衛費を2023年度からの5年間で、43兆円程度とすることを閣議決定しています。

2027年度には2022年度と比べ3兆7,000億円増額されることとなりますが、その財源をどうするかが大きな課題となっています。

こうした自民党の動きを受けて、総務省の審議会でも検討が始まったのです。

Next: NTTの通信網は誰のもの?携帯各社が反対しているが…



NTT法とは

そもそもNTT法とは、1985年に旧日本電信電話公社の民営化に伴い、新NTTの姿を定めるためにできたもので、民営化しても公共的な役割を課すためのものです。

民営化した新NTTの肥大化を防ぎ、通信市場での競争を促すことを目的としています。

分割・再編などに伴い改正されてはきましたが、固定電話を全国あまねく提供し、研究開発の成果を独占せずに開示するという義務は維持されてきました。

NTT法では、そういった法の性質上、株式に関しては政府に3分の1以上の保有を義務づけています。

それでも政府の持ち株比率は、1980年代後半からの売却を経て3分の1近くまで下がってはきたのです。

今回の法律改正は、この最後の3分の1の株を売却することができるようにする改定になります。

NTTの通信網は誰のもの?

これに対してKDDIなど競合各社は、NTTが旧電電公社から全国の設備を引き継いだ経緯や、携帯通信事業でNTTの光ファイバー網を借りている現状から、廃止には強く反対しています。

NTTの通信網は誰のものなのか…。

楽天、ソフトバンク、KDDIの通信大手3社とNTTとの間で激しい論戦が繰り広げられています。

楽天グループの三木谷浩史社長は「『NTT法を廃止』して、国民の血税で作った唯一無二の光ファイバー網を完全自由な民間企業に任せるなど正気の沙汰とは思えない」と怒り心頭です。

NTTの通信インフラは税金で作ったものであり、NTT法を廃止してしまうとNTTが通信インフラを独占することになり不平等だと主張しています。

これに対してNTT側は「保有資産は最終的には株主に帰属するのでこの主張はナンセンスな話。光ファイバーはほぼ全て公社ではなく民営化後に敷設している」と主張しています。

確かに約40年前にできた法律です。微調整は必要なところも出てきてはいるでしょう。

通信インフラの発展のためにNTTへの政府の関与はどうあるべきかは、考えるべき事項かもしれません。

NTT法が競争を阻害している?

朝日新聞社説では「長期的な観点から議論を尽くすことこそが重要である。防衛財源の帳尻合わせに終わらせてはならない」と記事を締めくくっています。

政府の「防衛費増額費補填」という下心はともかくとして、米大手「GAFA」などとの競争で
NTT法が制約となっているという指摘もあります。

NTT法では、研究開発の成果を独占せずに開示するという義務を設けていますが、この部分は、
共同技術開発するパートナー企業にすれば懸念材料になりかねません。

固定電話事業は赤字で、経営上の負担が増えています。

経営の自由度を高めるために法改正……自民党の主張です。

Next: 外資に買われたらどうなる?株価への影響も



外資に買われたらどうなる?

一方で、政府の株式売却には、外資などによる買収を懸念しての慎重論も出ています。

政府の保有株比率を引き下げれば、海外資本に買い占められ、国の重要インフラである通信を握られる懸念があります。

政府が大量のNTT株を売却する場合、株価に大きな影響を与える可能性もあります。

国際競争力の向上と、経済安全保障……この天秤をどう調整するのかが難しいですね。

有料メルマガ好評配信中。初月無料です

この記事の著者・原彰宏さんのメルマガ

【関連】「NHKが映らなくても受信料を払え」裁判所まで不思議なことを言う日本。国民から毟り取った金でNHK職員は法外なまでの高給取り=鈴木傾城

<初月無料購読ですぐ読める! 11月配信済みバックナンバー>

※2023年11月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。

2023年11月配信分
  • らぽ~る・マガジン第606号「『基金』の闇」(11/20)
  • らぽ~る・マガジン第605号「2024年度は医療・介護・障害のトリプル改定」(11/13)
  • らぽ~る・マガジン第604号「岸田政権「経済対策」と消費税減税廃止議論」(11/6)

いますぐ初月無料購読!


※本記事は、『らぽーる・マガジン』 2023年11月27日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

<こちらも必読! 月単位で購入できるバックナンバー>

※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込330円)。

2023年10月配信分
  • らぽ~る・マガジン第603号「性別変更に“要手術”は『違憲』」(10/30)
  • らぽ~る・マガジン第602号「性犯罪歴チェック「日本版DBS」法案提出先送り」(10/23)
  • らぽ~る・マガジン第601号-2「頑張って、複雑な中東問題を考えてみます…(後編)」(10/22)
  • らぽ~る・マガジン第601号「頑張って、複雑な中東問題を考えてみます…」(10/16)
  • らぽ~る・マガジン第600号「なぜ給食費無償化が進まないのか…少子化対策を考える」(10/9)
  • らぽ~る・マガジン第599号「ラーメン『1000円の壁』」(10/3)
  • らぽ~る・マガジン第599号「本文配信は明日に延期させてください…」(10/2)

2023年10月のバックナンバーを購入する

【関連】日本人は本当に生産性が低かった。私たちの年収が世界最速で下がるワケ=吉田繁治

【関連】「彼氏にしたい職業」上位はぜんぶ地雷、玉の輿に乗りたいなら○○な男を選べ=午堂登紀雄

image by:Tada Images / Shutterstock.com

らぽーる・マガジン らぽーる・マガジン 』(2023年11月27日号)より
※記事タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による

初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中

らぽーる・マガジン

[月額330円(税込) 毎週月曜日]
絶対に知るべき重要な情報なのに、テレビなどが取り上げないことで広く知らされていないニュースを掘り起こし、また、報道されてはいるけどその本質がきちんと伝わっていない情報も検証していきます。情報誌は二部構成、一部はマーケット情報、マーケットの裏側で何が動いているのかを検証。二部では、政治や時事問題、いま足元で何が起こっているのかを掘り下げていきます。“脱”情報弱者を求める人、今よりさらに情報リテラシーを高めたい人はぜひお読みください。CFP®資格の投資ジャーナリストが、毎週月曜日にお届けします。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。