マネーボイス メニュー

From Wikimedia Commmons

ドル・円・人民元 為替における米中の「蜜月」と日本の一人負け=栗原将

6月6日から2日間にわたって行われた「米中戦略・経済対話」のため、アメリカのルー財務長官が北京を訪問しました。お互い、強い自己主張をするお国柄ですから、何かガチンコの論争でも起きるかとも思っていましたが、拍子抜けするほど、あっさりしているように感じます。(『海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』栗原将)

アメリカのルー財務長官が中国に手放しの称賛を送った理由

拍子抜けするほどあっさり終わった「米中戦略・経済対話」

6月6日から2日間にわたって行われた「米中戦略・経済対話」のため、アメリカのルー財務長官が北京を訪問しました。お互い、強い自己主張をするお国柄ですから、何かガチンコの論争でも起きるかとも思っていましたが、拍子抜けするほど、あっさりしているように感じます。

【関連】利上げめぐる米中の駆け引きは「アメリカ有利」 7月利上げの可能性高く=斎藤満

一昨年あたりには、ルー財務長官は中国に対し、かなり強い姿勢で、「為替レートは市場原理に基づくべきだ」と改善を要求していました。

ですが今回、北京では、「わずか数年前と比べて真の前進が見られた」と、もはや手放しの称賛モードとなっています。麻生財務大臣に対する“冷淡な態度”とは全く違いますね。

米ドル/円 週足(SBI証券提供)

米中の為替政策は完全なWin-Win?米国の狙いは

さて、ここからは、全くもってショーの独断、想像の話となります。

米中間で為替に関する密約がある」という噂が出回ったことがありましたが、密約という言葉が正しいかどうかは疑問だとしても、少なくとも現在と当面においては、米中両国が意図している為替政策は、完全にWin-Winの関係になっている。こう考えています。

まず、アメリカはドル安です。昨年まではドル高を“許容”してきたのですが、大統領選が近づき、いつもと同様、ドル安志向になってきました。

さらに大きな要因として加わったのが、共和党候補トランプ氏の台頭。現政権の民主党の政策と、その結果のドル高を徹底的に攻撃しています。

現政権は「次期政権も民主党のままで」と考えますから、ここは何としてもドル安に持っていきたいと考えるのが自然です。

Next: 一人負けの日本。中国は今何を考えているのか?



一方の中国は今何を考えているのか?

一方の中国。かつては、輸出企業が恩恵を受ける人民元安政策を進めていました。

これがアメリカから批判を受けていたのですが、潮目が変わったのが昨年夏の上海株ショック。上海株が暴落し、連れて起こったのが中国からの資本逃避です。

この頃は、日本時間で午前10時過ぎに発表される人民元レートにより、東証の株式やドル円も大きく揺さぶられていたのを思い出します。

中国の金融当局は、資本流出を抑えるべく、人民元を上げる方向に誘導しました。“平時”は「低めに誘導して輸出企業を支援する方向」だったのが、もはや“有事”となり、逆に「人民元高、ないし人民元が下がりすぎないようにした」というところですね。

この人民元高政策も“人為的”なものなのですが、アメリカがクレームを付けたというニュースは見ていません。

以前も書きましたように、為替は必ずペア通貨があります。米中だったら、ドル/人民元、となるわけですが、人民元が高くなれば相対的にドルは低くなる。これはアメリカにとっては非常に都合が良いことなのです。

今回、ルー財務長官が北京で、手放しの称賛をした経緯はこんなところだろうと思っています。為替において、当面、米中は完全に蜜月関係にあると言ってよろしいでしょう。

そこで割りを食わされるのは日本であり、実際にやられっぱなしになっているわけです。

【関連】ソウルは火の海?米韓日と北朝鮮もし戦わば~ストラトフォー最新予測=高島康司

海外投資とネットビジネスで海外移住、ハッピーライフ』(2016年6月9日)より
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

海外移住から帰国した50歳男子の北海道くらし日記

[無料 ほぼ日刊]
9年間のタイ、フィリピンでの海外移住生活から帰国し、北海道暮らしをはじめた50歳男子が、久々の日本生活から感じることや、海外生活のメリット・デメリット、そして、地方暮らしの実際について独自目線で語っていきます。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。