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予想PER12.4倍まで売られた日本株は「やり過ぎ」/上値時期・水準は修正=馬渕治好

馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』は、めまぐるしく変化する世界の経済や市場の動きなどについて、ブーケ・ド・フルーレット代表の馬渕治好氏が分かりやすく解説するメルマガです。今回は6月16日(木)の株安・円高をうけての号外(16日17:30配信分)をご紹介します。

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安倍政権発足後の予想PERは概ね13~16倍で推移している

足元の日本株・ドル円相場は売られ過ぎ

直前の当メールマガジン通常号(6/12付)で述べたように、今週は国内株価は安く始まった後、落ち着きを取り戻そうが、FOMC、日銀金融政策決定会合や、次週の英国の国民投票を前に、様子見気分が広がるだろう、と見込んでいました。

しかし実際の相場付きは、内外ともに株価や外貨相場(対円)の底入れが予想以上に遅れているうえ、特に日本株と米ドル円相場の下落度合いがかなりのものとなっています。

足元の相場水準については、やり過ぎ(日本株は売られ過ぎ、米ドル円相場は米ドル安・円高に行き過ぎ)との見解は変えていません。

6/16(木)の株安と円高は、日銀の金融政策決定会合を受けたタイミングであり、そのため「追加緩和を期待していた向きが失望して、日本株を売り円を買った」との解説が多くみられます。確かに、これも当メールマガジンで解説し続けてきたように、ヘッジファンド等の一部の短期筋に、まだ日銀が何かサプライズをやってくれるという期待(あるいは警戒)が根強くあったことは事実です。

ただしそうした短期筋も、6月に日銀が動くというより、7月辺りではないか、との観測が多数だったように思います。国内投資家も含めて、日銀が動かなかったため、驚いたような向きはほとんどなく、見込み通りと感じた投資家が多かったのではないでしょうか。

投機筋による売り崩し

ではなぜ大きく相場が振れたかと言えば、このところ日本株安・円高気味で推移していたため、そちら方向に投機的な商いを入れれば相場が振れるかもしれない、と見込んだ投機筋が、日銀の金融政策決定会合の結果がどうあれそうした仕掛けを入れようと決め打ちしており、会合の結果が出て、株高・円安に持って行かれるリスクがないことが確認できたので、株や外貨の売り崩しに動いた、といったところが真相であるように推察します。

足元は、内外の実体経済をきちんと踏まえ、正しく日本株の買い持ち・外貨の買い持ちを行なった素直な投資家が、投げ売りを余儀なくされ投機の食い物にされている感が強いです。

こうしたポジションの投げが目先は残念ながら続く可能性が高く、次週の英国の国民投票を前に、日本株や外貨を大いに買おう、という投資家も少ないと見込まれるため、短期的には(来週半ば辺りまでは)底値探りの動きを余儀なくされると懸念します。

ただし、たとえば日本株の水準を考えるために、予想PER(ファクトセットの集計によるアナリストの予想利益を用いたもの)をみると、安倍政権発足後の予想PERは概ね13~16倍で動いており、それを上下にはみ出す場合は、売られ過ぎあるいは買われ過ぎを示していました。

Next: 木曜終値ベースの予想PERは12.4倍/年末までの相場見通し



木曜終値ベースの予想PERは12.4倍

6/16(木)の終値(日経平均が15434.14円)で推計すると、予想PERは12.4倍と13倍を大きく割り込んでおり、企業収益の2016年度に予想される水準と比べると、売られ過ぎになっていると言えます。

またこの水準は、今年2/12(金)に終わる週の(週平均としての)最低値である11.9倍に近い値です。こうした点からも、目先の下値探りが一巡すれば、株価は底入れ・反転に向かうと予想します。

これまでの相場見通し

なお、年内の株価や米ドル円相場の見通しとしては、月次見通し資料「花の一里塚」やセミナー講演資料などでは、日経平均の下値を16500円、米ドル円の下値を107円と予想していました。ここ数日、既にその下値目途を割り込んでいたわけですが、早晩実際の相場がレンジ内に戻ると考えていました。しかし前述したような当面の波乱を踏まえると、日経平均は2月安値とほぼ同水準の15000円、米ドル円相場は(米ドルの対円での)最近の最安値を更新して102円辺りまでの押しはありうる情勢と言えます。

ただ、目先は国内株価や外貨が売られ過ぎており、経済実態等には(たとえ英国がEUを離脱したとしても)大きな悪化は生じていないことなどから、日本株や米ドル円相場が下げ続けるような展開は、全く見込んでいません。

その後は、月次見通し資料や講演資料等における市場見通しでは、年央(当初は6~7月と想定)にかけて、たとえば日本株であれば、参院選前の経済対策等を好感して、日経平均は2万円を超える実力があるが、その後は好材料が剥落し、年末には再度18000円前後に下押しする、と想定していました。

米ドル円相場も、今後は米国経済の堅調さや連銀の利上げ(7月を想定)を受けて、120円に達しうるものの、それから年末にかけては、大統領・議会選挙に向けて政治的に内向きの空気が広がることなどにより、米ドル高に対するけん制が盛んとなり、112円程度に押す、との予想でした。

上値の時期と高さを修正、年末の水準は現水準より上と予想

しかし、国内株価の高値のタイミングとしては、参院選前と想定していた第二次補正予算を含む経済対策が、秋口(9月頃?)にずれ、日銀も追加緩和を7月にうつ可能性があることから、当初より後ずれして、8月頃が高値となりそうです。

また、国内株価、米ドル円相場ともに、足元これほど投資家のポジションが傷んでしまうと、上昇力がある程度限定的になったことは否めません。述べたような政府・日銀の動きについても、対策が出た方がプラスではありますが、株価を目覚ましく押し上げ、著しい円安を引き起こすような策はありません。

このため、残念ながら、日経平均の今年の高値は2万円に達せず、米ドル円相場も110円台のどこかまでの戻りにとどまる、と見通しを下方修正します。

ただ、そうであっても、8月頃から下落に向かった場合の、年末の日経平均株価や米ドル円相場の位置は、現水準よりは上だと予想しています。

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馬渕治好の週刊「世界経済・市場花だより」』(2016年6月16日号外)より
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