ソフトバンクという会社はあまりにも有名ですが、その事業の中身について正確に知っている人はそういないのではないでしょうか。バリュー株投資においても一筋縄ではいきません。ソフトバンクの価値について改めて分析します。(『バリュー株投資家の見方|つばめ投資顧問』栫井駿介)
プロフィール:栫井駿介(かこいしゅんすけ)
株式投資アドバイザー、証券アナリスト。1986年、鹿児島県生まれ。県立鶴丸高校、東京大学経済学部卒業。大手証券会社にて投資銀行業務に従事した後、2016年に独立しつばめ投資顧問設立。2011年、証券アナリスト第2次レベル試験合格。2015年、大前研一氏が主宰するBOND-BBTプログラムにてMBA取得。
ソフトバンクの「問題児」米スプリント事業をどう見るか?
ソフトバンクは3つに分けて考える
一般的にはソフトバンクは携帯通信会社と見られます。確かに、収益の大部分は携帯通信事業からもたらされます。
しかし、アメリカの携帯通信会社であるスプリントを買収したり、中国のオンラインショッピングモールを運営するアリババの筆頭株主であったりと、常に株式市場に話題を振りまいてくれる会社でもあります。
ソフトバンクを理解するには、会社の事業を3つに分けて考える必要があります。3つとは、携帯通信事業をはじめとする国内事業、アメリカのスプリント事業、そしてアリババに代表される投資事業です。
国内事業は「金のなる木」
日本の大手携帯キャリアは、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクの3社で固定された感じがあります。格安スマホも出てきていますが、大きな流れで言えば3社の寡占が揺らぐことはないでしょう。
かつてボーダフォン買収して携帯事業に参入したソフトバンクは、画期的な価格設定でシェアを取りに来ましたが、いまやその気概はなく3社横並びとなっています。悪い意味ではなく、ビジネスとしてはそれが正解でしょう。価格競争は当面起こりそうになく、利益を生みやすい環境にあります。
また、かつてはつながり状況が良くないと批判されていましたが、積極的な基地局への投資により、他社に劣らない電波状況を達成しています。更なる大きな投資が必要な状況でもありません。
つまり、ソフトバンクの携帯通信事業は、3,200万人の契約者から安定的に収益がもたらされる、経営学でいうところの「金のなる木」なのです。
同じように、ソフトバンクの金のなる木がもう一つあります。それがヤフーです。
ご存じのとおり、ヤフーは日本のインターネット業界において圧倒的な地位を築いていますから、黙っていてもジャブジャブお金が湧いてくる状況なのです。
ソフトバンクはヤフーの株式の36%を保有しています。ヤフーが成長することで、ソフトバンクはその果実を収穫できるのです。