先行き不透明感が色濃い東京市場にあって、建設株が意外なほどの底堅さを見せている。足元の業績と株価推移がともに好調な建設株をいくつか挙げておきたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2024年10月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
マネーの逃避先として注目度を高める建設関連株
先行き不透明感が色濃い東京市場にあって、建設株が意外なほどの底堅さを見せている。日本株のプロ投資家が注目するのは粗利益率の改善などの変身ぶり。世界的な半導体株安の流れからレーザーテックや東京エレクトロンなどの株価が振るわないなか、半導体株からのマネーの退避先として建設株に注目する向きが増えているようにも思われる。
10月16日付の日経電子版では「その根底にあるのは『変身だ』」と指摘されている。市場では、人手不足という日本の構造的要因が建設株の「変身」を後押しするとの期待も高まっている。「中野サンプラザ」跡地の再開発が暗礁に乗り上げた事例しかりで、いま建設事業者は人手不足で供給能力が限られてしまっており、結果、採算のとれない案件の受注は減る傾向にあるという点に期待する向きもある模様。
もちろん、高度経済成長期に整備された社会インフラの老朽化に伴って、改修および再開発の需要が高まっていることや、政府主導で「防災・減災・国土強靭化」のための政策対応が進められていることなども建設事業者のビジネスチャンスを広げることに貢献している。
以下に、足元の業績と株価推移がともに好調な建設株を幾つか挙げておきたい。
大林組<1802>
昨年、英シルチェスター・インターナショナル・インベスターズから配当強化などの株主提案を受けた。大林組は株主提案には反対したものの、今年3月に自己資本利益率(ROE)の目標を「26年度までに10%以上」に引き上げるなどの改革に着手。DOE=5%程度の方針を掲げ、足元の配当利回りは4.2%台と魅力の水準にある。
足元は、手持ち工事が順調に進むほか、前期に買収した米国の水インフラ企業の寄与で増収基調が続く。建築工事の利益率が改善し、増益基調も強まっている。
25年3月期は、売上高が前期比7.9増の2兆5100億円、営業利益は同17.2%増の930億円、純利益は同15.9%増の870億円を見込んでいる。
大林組<1802> 日足(SBI証券提供)
7月19日に年初来高値を更新し、その後は調整含みながら、足元で1,800〜1,900円処でのレンジを形成しており、同レンジを上放れてくると、そこから上値余地が大きく広がるものと期待される。10月15日、みずほ証券は投資判断を「中立」から「買い」に格上げ、目標株価も1,120円から2,400円にまで引き上げた。
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大成建設<1801>
みずほ証券は、同社株について10月15日付で投資判断を「中立」から「買い」に、目標株価を4,550円から7,600円に大きく引き上げている。同証券のアナリストによれば「採算性を重視する姿勢に変わってきており、売上高総利益率(粗利益率)は改善する見込みが高い」という。
足元は、土木が道路修繕工事を順調にこなしているうえ、建築も徐々に採算性の高い工事が進捗。昨年12月に公開買い付けを終了して連結子会社化したピーエス・コンストラクション(1871、旧ピーエス三菱)が収益にフルに貢献してきている点も大きい。
また、6月には平和不動産を持ち分法適用会社とし、保有不動産を含めた同社の企業価値と買収額の差を反映した投資利益を計上。政策保有株の売却益も最終利益を押し上げる。
25年3月期は、売上高が前期比12.7%増の1兆9,900億円、営業利益は同228.5%増の870億円、純利益は同61.4%増の650億円を見込む。
大成建設<1801>
株価は9月3日に年初来高値を更新し、その後は調整局面入りしているが、足元で一目均衡表の日足「雲」上限までの戻りを見ており、この日足「雲」を上抜けるとリバウンドの動きが強まるものと思われる。
ダイダン<1980>
1933年の設立で空調のほか電気、水道衛生など設備工事全般を扱いビル保全システムを得意としている。省エネ支援サービス事業では病院や工場、民間ビルからの受注を重ねる。関西発祥ながら近年は首都圏シフトが着実に進む。
足元は、国内設備工事が半導体工場やEV用電池工場、医薬、データセンター向けなどで好調に推移。再開発関連が伸びているほかリニューアル工事も事務所、工場など大中規模案件が増加傾向。
25年3月期は、売上高が前期比26.6%増の2,500億円、営業利益は同37.9%増の150億円、純利益は同21.1%増の110億円と過去最高を更新する見通し。
ダイダン<1980> 日足(SBI証券提供)
株価は、5月28日に年初来高値を更新した後から調整局面にあるが、下値は一目均衡表の日足「雲」下限が支える格好となっており、足元の配当利回り=3.6%台という水準も下支え要因となる。 ※2024年10月中に初月無料の定期購読手続きを完了すると、以下の号がすぐに届きます。
※本記事は有料メルマガ『田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット』2024年10月27日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。 ※初月無料の定期購読のほか、1ヶ月単位でバックナンバーをご購入いただけます(1ヶ月分:税込1,100円)。
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』(2024年10月27日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による