環境省が「クールビズ」を提唱してから、今年6月で20年。近年は、夏物販売を前倒して行うケースも増えており、この時期にあらためて関連する代表的な企業についてビジネス展開や業績、株価の動向などを確認しておきたい。(『 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット 』田嶋智太郎)
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プロフィール:田嶋智太郎(たじま ともたろう)
慶応義塾大学卒業後、現三菱UFJモルガン・スタンレー証券勤務を経て転身。転身後の一時期は大学教諭として「経営学概論」「生活情報論」を担当。過去30年余り、主に金融・経済全般から戦略的な企業経営、地域金融機関改革、引いては個人の資産形成、資産運用まで幅広い範囲を分析研究。民間企業や金融機関、新聞社、自治体、各種商工団体等の主催する講演会、セミナー、研修等において、累計3,000回超の講師を務めてきた。これまでに数々のテレビ番組へのレギュラー出演を経て、現在はマーケット・経済専門チャンネル『日経CNBC』のレギュラー・コメンテーターを務める。主な著書に『上昇する米国経済に乗って儲ける法』(自由国民社)などがある。
前倒しでスタートした「クールビズ」商戦
2005年に環境省が「クールビズ」を提唱してから6月で20年を迎える。
ジャケットやネクタイが当たり前だった職場での装いは変化し、アパレル各社は機能性を高めた快適な商品を提案するなど暑い夏を商機に変えてきた。温暖化が進行し「長い夏」が定着するなか、同じタイミングで熱中症対策の義務化も始まる。
ファーストリテイリンググループでオフィス服などを展開する中価格帯ブランド、プラステ(PLST)は春夏商品に注力する。近年は地球温暖化によって夏が長期化しており、夏服の需要が高まっている。夏場のオフィス服がカジュアルになりすぎることを気にする消費者も多い。機能性を重視し、「きちんとした日常服」をうたうプラステの強みを生かして販売強化を狙う。
同社が20~59歳の働く男女500人を対象に実施した夏場のオフィスファッションに関する意識調査では、半数近くの人が6~9月を超えてクールビズスタイルで勤務していたことが明らかになった。
紳士服大手の青山商事によると「夏物のインナーではこれまでポロシャツが人気だったが、近年はTシャツが逆転している」。同社が販売するTシャツの売り上げは24年に19年比で8倍に増加したという。
近年は、夏物販売を前倒して行うケースも増えており、この時期にあらためて関連する代表的な企業についてビジネス展開や業績、株価の動向などを確認しておきたい。
青山商事<8219>
今年、前面に打ち出すのは、ビジネス用Tシャツ「冷たいオフィT」。生地の表面につやのある質感が特徴で、触ると冷たく感じる素材を採用した。生産数を24年の3倍に増やしたうえで、今年は1カ月早い4月から販売を始めている。先週29日から、ミズノと共同企画した「ミズノアイスタッチ Tシャツ・ポロシャツ」の販売も開始。また、28日からは記録的な暑さ到来に備える「半袖ジャケット」の販売も開始。
近年は猛暑の影響もあって既存店の秋冬服が低調に推移。それだけに夏物販売を前倒しで強化する意味は大きい。また、オーダースーツブランド「クオリティオーダー・シタテ」の導入や、2022年にオーダースーツ「麻布テーラー」を買収するなどオーダー機能を強化。
26年3月期は、売上高が前期比2.6%増の1,998億円、営業利益は同11.3%増の140億円、純利益は同1.1%増の95億円を見込んでいる。株価は、昨年11月に配当方針の変更(今後は配当性向70%もしくはDOE3%のいずれか高い方を採用する方針)を発表したことで急騰した後、いったん調整局面を迎えるも今週26日には年初来高値を試す動きを見せている。
青山商事<8219> 週足(SBI証券提供)
足元の株価水準は、予想PER=11倍、PBR=0.59倍、予想配当利回り=6.25%と割安。
AOKIホールディングス<8214>
夏物の主力商品はジャケットから、ポロシャツなどインナーに代わっており、ネクタイも締められるポロシャツ「ビズポロ」の売り上げは、24年に前年比で15%増えたという。
スーツ既存店はパジャマスーツの販売が好調。先週28日には、通気性を高めたニット素材のワイシャツ「クイックリードライ」を発売したと発表。夏に向けて20~50代のビジネスパーソンに売り込む。
26年3月期もスーツはカジュアル系商品が牽引。ビジカジ業態で約20店出店する計画。
今期通期は、売上高が前期比2.8%増の1980億円、営業利益は同8.6%増の170億円、純利益は同0.3%増(前期は投資有価証券売却益計上)の96億円を見込んでいる。
AOKIホールディングス<8214> 週足(SBI証券提供)
年80円配当(前期は75円)を予想しており、配当性向は70.1%、足元の予想配当利回りは5.4%と魅力の水準。PBR=0,87倍で株価には割安感がある。
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三陽商会<8011>
前期は猛暑で秋冬物が苦戦。今期は、従来、秋物を展開していた8、9月から夏物のカットソーやシャツを秋の色に変える計画。袖なしのコートやニットなどの生産数を前年比4割増やし、気候変動に対応して巻き返す計画。また、気温の高い期間が長くなっていることから、5~7月に投入する夏物の商品生産数を24年比で10%増やす計画で臨んでいる。
同社が展開する衣料品ブランド「ポール・スチュアート」のTシャツは、後衿(えり)を高くしたり着丈を短めにするなどして、皮脂汚れの防止、ジャケットとのバランスを重視していることで話題。
26年2月期は、売上高が前期比3.3%増の625億円、営業利益は同21.5%増の33億円、純利益は同2.3%増の41億円を見込む。
三陽商会<8011> 週足(SBI証券提供)
年139円配当(前期は129円)を予想しており、配当性向は36.2%、足元の予想配当利回りは34.8%と魅力の水準。予想PER=8.9倍、PBR=0.78倍で株価には割安感がある。
ワークマン<7564>
4月に4月、熱中症につながるリスクを軽減する暑熱軽減ウェア「XShelter」シリーズを投入。暑さ指数を構成する気温や湿度など4つの要素に対応する「世界初のウエア」(同社)。発売から約2週間で売り上げは計画の3倍に達したという。近年は、ファンウェアなど暑熱を軽減する作業着が人気。
既存店はカジュアル服販売着実。値上げで粗利率改善。『ワークマン女子』から『ワークマンカラーズ』に店名変更。26年3月期はカラーズ店軸に約40店出店する計画としている。
26年3月期は、売上高が前期比7.5%増の1471.5億円、営業利益は同6.6%増の260億円、純利益は同7.2%増の181億円を見込んでいる。
ワークマン<7564> 週足(SBI証券提供)
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田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
田嶋智太郎の先読み・深読み!株式マーケット
』(2025年5月30日号)より一部抜粋
※タイトル・見出しはMONEY VOICE編集部による