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日本買い支えの大本尊「日銀」自身の株価下落という危険なシグナル=東条雅彦

日本銀行の株価が下げ止まりません。2013年春にピークを付けた株価は35,000円台に突入しました。この日銀の株価は日本の今後を占う貴重な先行指標です。足元の株価下落が何を示しているのか解説します。(『ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』東条雅彦)

アベノミクスの終焉を示唆する日本銀行<8301>の株価下落

日銀株の悲惨な現状

日本銀行<証券コード8301>は、ジャスダックに上場しています。ジャスダックで売買されているのは日銀の出資証券という少し特殊な証券です。こちらが日本銀行の株価チャートになります。
(※)正確には「株価」ではなく「出資証券価格」と呼ぶのが正しいですが、わかりにくいので、本稿では「株価」と表現しています

日本銀行<8301> 週足(SBI証券提供)

2012年12月から2013年4月にかけて、株価31,000円から70,000円を超える上昇を記録しています。2倍以上に日銀の株価が上昇したのです。ところが、そこからどんどん値を落として、今月に入って35,000円台に突入しました。

2012年11月の衆議院解散頃から、「アベノミクス」という言葉が各メディアで多用しされ始めました。そして2012年12月26日に、第2次安倍内閣が発足します。

日銀の株価が爆上げしていた2012年12月から2013年4月頃は、アベノミクスへの期待感がとても強かったのです。半年も立たないうちに日銀の株価は2倍になりました。

しかし、アベノミクスでは景気が上向かないことが明るみになるつれ、日銀の株価はどんどん右肩下がりに落ちています。

アベノミクスは、日銀の「異次元緩和」という年間80兆円の国債買い切り政策が軸です。日銀の国債保有残高は400兆円に迫り、国債全体の3分の1を日銀が買い占めています。

2016年8月8日付の日本経済新聞が「国債保有額、日銀が突出 物価引き上げ効果は乏しく」と報じるなど、アベノミクスに対して辛口の評価をし始めています。

日本経済新聞が作成した国債保有額のGDP比グラフを確認すると、日銀の「異次元緩和」がトンデモナイ規模になっていて、多くの人がおそらく驚愕すると思います。

日銀(日本の中央銀行)、FRB(米国の中央銀行)、ECB(欧州の中央銀行)の3つを比較すると、日銀の国債保有額が経済規模(GDP)の約7割に迫っています。日本経済新聞も報じている通り、「緩和の限界は近い」と見て、間違いないでしょう。

異次元緩和は財政ファイナンスだ、と市場が認識し始めて、長期金利が上昇に転じるのも時間の問題です。

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そもそも何のために日銀はジャスダックに上場しているのか?

意外にも大昔、日銀は東証1部に上場していました。

1949年 東証一部に上場。同年6月には大証一部、名証一部にも上場
1960年 東証、大証、名証から上場廃止
1963年 店頭登録(現ジャスダック市場に公開)
出典:日本銀行 – Wikipedia

日銀は株式会社ではありません。市場で売買されているのは「株券」ではなく「出資証券」という特殊な証券です。日銀の出資証券を保有していても、出資者は経営に関与できません。

資本金は1億円で、そのうち政府が55%の5500万円を出資しています。残りの45%は政府以外の者が出資しています(内訳は後述します)。

なぜ日銀がジャスダックに上場しているのか?というと、日銀は政府から独立した法人であり、民間の資本を入れる必要があったためです。

ただ、個人投資家がこの日銀の出資証券を保有しても議決権はありませんし、あまり意味がない点には注意してください。一応、配当金もあるのですが、法律上の制限により1口に対して5円より多く出ることはありません。

そのため、日銀に投資している人はインカムゲインではなく、キャピタルゲインを狙っていると思います。

Next: 日銀の株価下落が「日本の財政破綻」の入り口になる理由とは?



日銀の株価下落は「日本国債への信認」が低下している証拠

バブル景気真っ盛りの1988年には、日銀株は75万5000円で取引されていました。今の株価は35,000円です。

28年間の時を経て、価格が20分の1以下まで下落したのです。

日銀の株価下落が止まらないのは、日本国債及び通貨「円」への信認が下がっているためです。2015年度末の日銀のバランスシートを確認してみましょう。
※日本銀行Webサイトより兆円未満は切り捨て/数字を単純化して転記

<日銀のバランスシート>

(資産の部)405兆円
・国債 349兆円
・その他 56兆円
★資産の部合計:405兆円
(負債の部)402兆円
・預金 282兆円
・その他 120兆円
(純資産の部)3兆円
・準備金 3兆円
★負債及び純資産の部合計:405兆円

資産の部の86%は国債で占められています。日銀の出資証券の価値は、資産の大部分を占める日本国債の価値だと見なせます。

このことは、石油会社の株価が、資産の大部分を占める石油価格に連動するのと似たような理屈です。

国債価格は、日銀の「異次元緩和」により偽装できます。しかし、ジャスダックに上場している出資証券については、民間の市場参加者により値付けがされるため、ごまかしがききません

日銀の株価は、国債の価値や財政信用を測る目安にできるのです。

日銀に投資しているのは誰?

2016年3月末時点で、保有者は次の通りです。

<日銀の出資金額(単位:千円)(保有割合)>

政府:55,008 (55.0%)
個人:39,991 (40.0%)
金融機関:2,229 (2.2%)
公共団体等:181 (0.2%)
証券会社:41 (0.0%)
その他法人:2,546 (2.5%)

政府が55%を保有しています。また意外にも個人の保有が多く、40%を占めています。一方で金融機関(銀行)や証券会社はほとんど保有していません。

40%を占める個人のうち、どこの誰がどのくらい保有しているかまでは情報開示がされていません。

ただ、議決権のない証券であるため、大量保有しても何か権利を行使できるわけではありません。

Next: 日銀の株価がどこまで下がると「いよいよヤバイ」兆候なのか?



「政府の財政信用の指標」として日銀の株価を活用する際のポイント

先進国で一国の中央銀行が上場しているのは日本だけです。

米国のFRB(連邦準備制度)も、欧州のECB(欧州中央銀行)も、イギリスのイングランド銀行も上場していません。

ある意味、日銀の株価は貴重な指標だと言えます。

政府の財政信用が低下すると通常、国債の金利上昇から始まります。一般的には次のような経過をたどるとされます。
※出典:『日本の国家破産に備える資産防衛マニュアル』橘玲

・第1ステージ(国債下落、金利上昇)
・第2ステージ(円安、インフレ、国家債務膨張)
・第3ステージ(国債デフォルト、IMF管理下入り)

しかし、現在、日銀の異次元緩和により国債市場の価格は歪められています。

日銀の株価は操作されないという点で、財政信用における貴重な先行指標と言えます。(これが第0ステージになる。)

・第0ステージ(日銀の株価暴落)★
・第1ステージ(国債下落、金利上昇)
・第2ステージ(円安、インフレ、国家債務膨張)
・第3ステージ(国債デフォルト、IMF管理下入り)

日銀の株価は下落が止まらず、35,000円台まで値を落としました。今の株価がさらに落ちて、2012年11月につけた最安値30,500円を割り込むようになれば、財政信用が低下しているサインと受け取って良いでしょう。

アベノミクス開始で一時、7万円まで急上昇した日銀株。その後、化けの皮が剥がれて日銀株の下落が止まらなくなっていると認識すべきなのです。

Next: 今回のまとめ~投資家は日銀の株価を財政信用の先行指標とせよ



今回のまとめ~投資家は日銀の株価を財政信用の先行指標とせよ

「日銀がこれ以上国債を買えなくなる」
「『緩和の限界』も市場参加者は意識しつつある」
と日本経済新聞が報じるほど、アベノミクスは行き詰りを見せ始めている。

日銀が年間80兆円の国債を買い切る「異次元緩和」により、日本国債の価格は財政リスクが織り込まれにくい環境にある。そのため、国債下落、金利上昇が遅れる可能性が高い。

そこで、日銀によって操作されない点に着目し、日銀の株価を財政信用の先行指標として活用するのが良い。

・第0ステージ(日銀の株価暴落)★
・第1ステージ(国債下落、金利上昇)
・第2ステージ(円安、インフレ、国家債務膨張)
・第3ステージ(国債デフォルト、IMF管理下入り)

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ウォーレン・バフェットに学ぶ!1分でわかる株式投資~雪ダルマ式に資産が増える52の教え~』(2016年8月14日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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