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安倍昭恵首相夫人の「沖縄電撃訪問」でリベラル派が嵌った落とし穴=ちだい

首相夫人は一般人ではなく、政治家の一人と変わらない。そんな安倍昭恵が三宅洋平と知り合ったことで沖縄・高江を訪問したわけだが、これがビックリするほど炎上している。(『原発ニュース最新情報』ちだい)

※本記事は、『原発ニュース最新情報』2016年8月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

“裏切り者・三宅洋平”の吊し上げに走るリベラル派は何を失ったか

ファーストレディ・安倍昭恵

皆さんは、安倍昭恵をどんな人だと思っているだろうか。

もちろん、安倍首相夫人ということは、「ファーストレディ」であり、一般人ではなく、公人とみなすことができるだろう。

首相夫人には首相夫人らしい振る舞いが求められるし、いくら「私が結婚した人がたまたま総理大臣になっただけです」と言っても、深夜のドンキホーテでヤンキー座りしながらタバコを吸っていたら、「こんなことでいいのか?」と批判に晒されるだろう。

要するに、首相夫人は一般人ではなく、政治家の一人と変わらない。

そんな政治家とほぼ変わらない安倍昭恵が8月6日、ヘリパッド工事問題で揺れる沖縄の高江地区を訪れた。

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沖縄・高江地区

高江地区は、かねてから米軍のヘリパッドを建設しようとしている場所で、もし本当にヘリパッドが完成したら、墜落の危険の高いオスプレイが離着陸するほか、沖縄の自然が失われ、ここに生息する天然記念物に指定された動物たちの生態系を壊すことにもつながる。

そして、ここにヘリパッドを建設することに反対している人たちが最も嫌がっているのは、70年前の戦争の記憶である。沖縄には戦争を経験した人たちが今でも生きており、かつて米軍は、そんな高江の人たちを「仮想敵」として訓練していたことがある。

本当に撃たれることはないまでも、善良な地元民たちが銃口を向けられることはある。その様子を描いたのが『標的の村』という映画だ。

さまざまな理不尽が繰り返された歴史のある村にヘリパッドを建設するのだから、地元の人々が反対しないわけがない。あんなに悲惨な戦争を何の反省もなく繰り返そうとしているのだから、地元のおじい・おばあが激怒するのは当然だ。

本土で暮らす僕たちは、せいぜい「辺野古」の問題くらいしか知らない。

今でこそ偉そうにコラムを書いているが、そういう僕も高江の問題は知らなかったし、沖縄県知事選を追いかけるために辺野古を訪れた際に、地元の人から「もう一つ見ておいた方がいい場所がある」と言われ、初めて高江を訪れ、この問題を知った。

その時はまだ工事が中断されており、今は激しく抗議している市民グループの人たちにも束の間の平和が訪れていたように思う。

ただ、前々からアポを入れて訪れたのではなく、アポ無しで見に行ってしまったので、地元の人たちからは、めちゃくちゃ警戒されたのを覚えている。

あの時は映像作家の横川圭希さんと見に行って、横川さんがヒッピーっぽくて、僕がニートっぽい風貌だったこともあって、さすがに政府関係者ではない感じが伝わり、ただ見に来ただけだと理解してもらえたので、打ち解けてからはすぐに案内してもらえたが、これまで何度も騙されてきた歴史がそうさせたのかもしれないが、地元の人たちは明らかに僕たちを不審がっていた。

三宅洋平と安倍昭恵夫人

高江がそんな環境であることを理解していただいた上で、このたびの安倍昭恵の訪問である。

事の発端は、参院選の後、三宅洋平と安倍昭恵が対談をした際、安倍昭恵が安倍晋三に電話をかけ、三宅洋平と安倍晋三が話をしたのだが、結局、軽い挨拶程度にとどまり、あとで三宅洋平が「安倍首相に高江を見てくれと言えなかった」とツイートしたことから、昭恵の方から「私が見に行きたい」と提案され、それならと三宅洋平が高江に連れて行った。

Next: 「パワフルおばちゃん」安倍昭恵の真意と、三宅洋平の大炎上



友達の友達は安倍昭恵

あくまで中立的な立場で書いていることを断るために書くと、私は先日の参院選で三宅洋平の応援は何一つしていない。それまでまったく計画していなかったのに、なぜ突然の出馬表明に転じたのか、その経緯や理由を知って、まったく賛同できなかったからだ。

なので、べつに三宅洋平を擁護したい目的で書いているのではない。もし炎上の末に三宅洋平の政治生命が絶たれても、それはそれだ。

それでも、このたびの安倍昭恵の訪問を、遠くから対岸の火事を見るように眺めている僕は、べつに悪いことではなかったのではないかと思っている。

最初に「安倍昭恵をどんな人だと思っているか?」と質問したが、僕は一言で言うと「私は私のパワフルおばちゃん」だと認識している。

安倍晋三の妻であることなんて関係なく、自分のやり方でパワフルに行動するおばちゃんということだ。だから知り合いが多いし、気になった人にはどんどん会いに行き、時には批判している人にさえ会いに行って握手してしまう。

これが結果として安倍晋三を支えることになっているのは言うまでもないが、「妻は妻らしく」なんて考え方はせず、「晋三は晋三、私は私なので好きにやりますよ」のスタンスを貫いているように思える。

その中にも計算はあるのかもしれないが、二度もファーストレディの座を手にした女性が、ただ者でないことは間違いない。

だから、原発は必要ないし、なるべく戦争にならないように行動するべきだし、人権や自由は守られるべきだし、弱者を救済するべきだというリベラル的な考え方をしている僕と、安倍昭恵の距離は意外と近い。

友達の友達は安倍昭恵というレベルの近さだ。

三宅洋平の大炎上

そんな安倍昭恵が三宅洋平と知り合ったことで高江に行くことになったのだが、これがビックリするほど炎上している。

しかも、僕のタイムラインに流れてくるのは、安倍昭恵を批判する内容ではなく、アポ無しで連れて行った三宅洋平を批判するものが大半であり、三宅洋平がどれだけゴミクズ野郎なのかという話が盛り盛りに書いている。

「ファーストレディという重要な公人をアポ無しで連れてくるんじゃねぇ!」というのが批判の大半のようだが、手続き論を語るなら、実は、これが最も手っ取り早い方法だったような気もしてくる。

要するに「こんな重要なことは、ちゃんとアポを取れ」と言う人もいるが、もしそれをちゃんとやろうとしたら、本当にアポは取れたとは思えない。問題はここだ。

Next: “裏切り者・三宅洋平”を吊し上げるリベラル派に足りないもの



「アポ無し」は最も合理的な方法

僕がサラリーマンとして働いている会社は、経理出身のポンコツ社長がとにかくハンコを押さないため、ゴリゴリに黒字の企業にもかかわらず、倒産寸前の会社のように支払いが遅れまくっている。

テメエのくだらない保身のために、他社に多大なるご迷惑をおかけしてしまうことに対して、堂々と「部下が悪い」と言えてしまう頭の悪すぎるハゲには、いよいよ僕が鉄拳制裁をぶちかまし、それこそ過激派左翼ばりの革命が必要だと思っているところだが、どこぞの中小企業でさえ、これくらいのことが起こっていることを考えると、平和を死守するための最前線と言うべき高江で首相夫人を受け入れるかどうかという難しい判断に、あっさりハンコを押せる人はいないのではないかと思う。

きっと、正式にアポを取ろうとしたら、首相が変わるまでウダウダするか、断るという選択をするのではないだろうか。

ということは、安倍昭恵に現状を知ってもらい、晋三にも伝えてもらおうと思った時には、手段を問わないのなら「アポ無し」が最も合理的な方法であると言える。

批判する人はたくさんいるだろうが、それ以外の方法が見つからないのだ。

「アポ無し」訪問に対する拒否感の正体

安倍昭恵の突然の訪問を拒否するのには、いくつかの理由があると思う。まず、いきなり来られても説明ができないし、説明する人が不在なこともあるだろう。

さらに、相手の思惑が分からないので、貶めるために来ているのかもしれないという不信感もある。

下手に動いたら足元を掬われるかもしれないので、リスクを避けるためにも、しっかりとした準備をしたい。味方のはずの三宅洋平に「もう少しうまくできないのかよ!」という憤りを感じる気持ちまでは理解できる。

しかし、三宅洋平を吊し上げて批判をしている人たちには、「不測の事態をプラスに変える力」が欠乏しているような気がしてならない。

今のリベラル派に足りないもの

ビジネスをしていると、予想もしないアクシデントに襲われることは珍しいことではない。あらかじめ、さまざまなリスクに備えるものの、大抵の場合は、まったく想定していなかったことが起こる。

しかし、僕にビジネスを教えてくれている経営のカリスマは、こういう不測の事態が起こった時こそ、「いかに帳尻を合わせられるか」を問う。

「準備万端の時に来るチャンスなんて、チャンスではない。本当のチャンスは絶対に準備していない時に来るんだ。そこそこしか準備していない時に逆転できるだけの帳尻を合わせる努力ができるかどうか」だと言う。

つまり、今回やらなければならなかったのは、「安倍昭恵が突然来たけど、きっちり説明しましたよ。今後はアポを入れてくれれば、いつでも説明できる体制を整えるので、また来てくださいよ」というメッセージを発信することだったのではないだろうか。

「なんで突然来るんだよ。ふざけるな、三宅洋平!」というメッセージばかり発信されているようだが、「突然来た安倍昭恵にも高江の惨状を知ってもらい、晋三に言ってもらうんだ」ぐらいの心意気がなければ、変えられるものも変えられない。

単なる精神論のように思われるかもしれないが、ポジティブなメッセージがないところに人の関心は集まらない。名だたるリベラル側の文化人たちが、ただただ三宅洋平を責め立てていたようだが、そんな無駄な言論で世の中を変えられるはずがない。

Next: 拝啓、安倍昭恵様。貴女に伝えたいことはシンプルだ



伝えたいことはシンプル

パワフルおばちゃんは、きっとネットをチェックしているだろうから、もしかしたら、このコラムを読んでいるかもしれない。伝えることはシンプルだ。

沖縄の人たちは、これ以上、基地を作ってほしくないのだ。ところが、日本の政府は基地の移設や新設ばかりで、ちっとも基地を減らしてくれない。

それどころか、北朝鮮のミサイルや中国の海洋進出など、周辺諸国の情勢を理由に基地を増やす方向にしか進んでいない

少なくとも法治国家を名乗るのなら、時間がかかっても法律に則って進めるべきだし、駐車禁止ではない場所の車を勝手に移動させたり、阻止しようとする市民を車で押し倒したり、警察が無法地帯にしている高江の現状は、ぜひとも安倍昭恵や安倍晋三にも知ってほしい

日本政府がヘリパッド建設に反対する国民たちにどれだけ酷いことをしているのか。胸を痛める政治家でなければ、「国民のための政治」とは言えないのではないだろうか。単なる「利権を取ってきてあげるだけの政治屋」は、最終的にこの国を滅ぼすことになる。

次に過酷事故が起これば国家存亡の危機になることを知りながら、ろくにリスク対策もできないままに原発を再稼働させている様子を見れば、それは一目瞭然だろう。反対する側もポジティブにしっかりメッセージを出し、多くの無関心な人々に注目してもらうべきだろう。


※本記事は、『原発ニュース最新情報』2016年8月12日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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原発ニュース最新情報』(2016年8月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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