野村・大和あたりは日銀ETF買いの効果を株価2千円とも3千円とも言う。しかしそれは人工的カンヌキ相場が結局どうなるかということを歴史に学んでいない未熟な言い分だ。(山崎和邦)
※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く【号外・山崎動画】も配信』2016年8月21日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。割愛した本文、チャートもすぐにご覧いただけます。
日銀ETF買いの行き過ぎが生む「生体機能喪失相場」を懸念
【1】薄商いに立ちふさがる「100兆円超の壁」
17,000円±250円の間に累積売買残は100兆円強あったはずだ。 そうなると、今の出来高・売買代金ではこの密集地帯は抜け出せられない。
1日2.5~3兆円の売買代金ができないと脱しきれない。それに加えて東証の発表によれば、信用取引の残高は減少したという。
これは、戻り売りが軽くなって上昇しやすいということになるが、今の段階では縮小均衡指向となる。
【2】「日銀ETF買い」が生む、生体機能喪失相場
「日銀相場」とも言われ始めた昨今、野村・大和あたりはETF買いの市場効果を2千円とも3千円とも言っている。
しかしそれは、「人工的カンヌキ相場」が結局どうなるかということを歴史に学んでいない経験未熟な総研の若者の言い分か、よく見ても、投信を販売せねばならなず常に将来を明るく言わねばならない大手・中堅証券会社員の宿命としての言い分かと思われる。
過去の「人工的カンヌキ相場」としては、平成の世になってからだと、イラク派兵の際の「PKO(Peace Keeping Operation)」になぞらえて「PKO(Price Keeping Operation)」と揶揄されたときがそれである。
さらに古くの典型例としては1960年代、日本共同証券や日本証券保有組合の設立を通して投信の投げ物を拾い、東証ダウ平均(今の日経平均)の1,200円ラインを“死守”しようとしたことがあった。その結果どうなったかは、既報で詳述したとおりである。
日銀の努力は大いに多としてきたが、行き過ぎが生む生体機能喪失相場を本稿では懸念する。
日銀の本来の使命は、米FRBが2項目(通貨価値、雇用)を背負うのと違って通貨価値の維持一本だから、旧来のそれはインフレファイターであるべきだったが、今は、デフレファイターの使命を負っている。通貨価値が上昇するデフレに対しても戦わねばならず、そのためには株価も高くしておきたい。
俗称「日銀相場」は、何も安倍内閣に頼まれてやっているわけではない。
夏休み期間で内外の市場参加者が少ない故も大いにあるが、先行き強い相場ならこういう時も大商いは盛行した。投資家は儲かる機会があれば夏休みでも売買するものだ。夏休みだから夏枯れだ、なんていう者は、ヒト様のカネしか動かしたことがない人たちであろう。
Next: 日経平均とドル円の乖離拡大は何を意味するか?
【3】円急上昇
米経済の思わしくないデータの発表でドル安円高に振れた。本稿では円ドル1円につき日経平均250円と言ってきたが、概ねそれは続いている。
6月24日BREXITショックでドルは一時99円台半ば以下になったが、今回は、それ以来の初めて99円台半ばまで進んだ。
筆者は4月17日号で、長期円安説を撤回すると宣したが、こんなに急激に円高になると読んでいたわけではない。6月の99円台では日経平均は14,865円だったが、今回の99円台では16,000円台にいる。
これは「米利上げ近し=ドル高近し=円安近し」を織り込み始めたかとも思う。
※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く【号外・山崎動画】も配信』2016年8月21日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。割愛した以下の本文、チャートもすぐにご覧いただけます。
【4】NY株と原油価格連騰
【5】自社株買いは(大袈裟に言えば)邪道
【6】右肩下がりの中勢図はこうなる
【7】需給に勝る材料はない
【8】このボックス圏を抜けるには、円安・原油高騰・戦争勃発・天変地異
【9】日本経済の基調
【10】日銀が筆頭株主になる銘柄が増える(Bloomberg 8月15日配信)
【11】米大統領選の余波はBREXITの比ではない
【12】BREXITショックは予想外に軽く済んで実勢悪を織り込む段階に入った
【13】裏の裏は表か
【14】古くからの読者Oさんとの「歴史は繰り返す件」についての交信
【15】読者Yさんとの「中勢観について」の交信
山崎和邦(やまざきかずくに)
1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。
大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。
趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。
著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)、近著3刷重版「賢者の投資、愚者の投資」(日本実業出版)等。
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