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いかにも日柄調整が足りない日経平均は本当に大底をつけたのか?=山崎和邦

今回の相場の始動点は12年11月14の衆院解散決定の日だから、今年2月、6月の半値押しのWボトムを以て大底示現と見做せば日柄は未だ3年7カ月だ。(山崎和邦)

※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く【号外・山崎動画】も配信』2016年8月28日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。

大底示現の可能性も、依然として日柄調整は足りず

底を打つには早すぎる

大底は2月12日と6月24日の一文違いのW底で示現したのか、それは日柄からして早すぎるのではなかろうか。

普通、大相場の一循環(大底から大天井を経て次なる大底間まで)は単純平均でいえば6年だ。

今回の相場の始動点は12年11月14の衆院解散決定の日だから、今年2月、6月の半値押しのWボトムを以て大底示現と見做せば日柄は未だ3年7カ月だ。

それでは五輪後の不動産不況があり得る2021年か2022年か、そうするとアベノミクス相場始動から10年となる。

今から5~6年も大底探しの低迷期間を要するというのか、これは少々ツマラナい。

「天意、測るべからず」と言うが、今年2月、6月は、

  1. 今回の大相場の正確な半値押し(14809円)の僅か80円上、
  2. 且つ、PBR1倍まで僅かに半歩、
  3. 且つ、1円違いのW底

このような偶然があり得ようか?さすれば天意の示した大底だった、ということになるか。

日経平均は依然として日柄調整が足りない

経済成長期でも大底形成に一定の日柄を要する

参考資料

事実、既報で触れた「里帰りを果たした銘柄」たる日立、野村證券のほかに、アベノミクス相場の始動点まで帰った「里帰り銘柄」は著名銘柄で投信・年金・海外ファンド好みの銘柄が多い。その後の上昇も目立っている。

例:ホンダ<7267>、コマツ<6301>、三井物産<8031>、三菱商事<8058>、IHI<7013>、T&D HD<8795>、富士通<6702>、住友鉱<5713> 等

始動点まで下がっている「一旦大天井を付いた大相場は故郷を慕う」と言うから(本稿では平均株価で2~2倍半を指す)、著名銘柄で投信・年金・海外ファンド好みの銘柄は、一足先に里帰りを果たしたつもりだ、と天意の示すところかもしれない。

ところで東京五輪と言えば、1万7千台のベッドを用意する必要があるという。 都が選手村の開発業者に提案した内容はこうだ。

都心の一等地を格安な値段で民間業者に払い下げ、選手村を建設させる計画であり、建設費は業者が負担するが五輪後は選手村をマンションとして販売できる――

一等地を格安で仕入れるわけだから利益は大きい。問題は建設費用との見合いだろうが、今、本稿で考えるのは民間建設業者が利益を上げるか否かの問題でなく、選手村跡地の一等地マンションの大量供給が需給を狂わせ、マンション不況を招くという懸念である。83年ごろに新宿ワシントンホテルがしたように、証券化して小分けして多人数に分売するというやり方もある。サブプライムの破綻を想起する。

Next: 日本経済は今後永久にデフレなのか?



日本経済はデフレになるのか?

以下は、早見雄二郎氏(株式評論家)の言い分の要約。

消費が悪くなってきた。デフレに走り出した。 かっぱ寿司は1皿100円を平日限定90円に。 フォルクスはアルコール飲み放題10分間100円のキャンペーン、1時間600円。 完全にデフレに走り出した。

マンションが売れなくなってきた。今までは不動産にはお金が回っていた。 6月末、銀行の不動産向け貸出残高は68兆3200億円。 総貸出の不動産向けの割合は14.7%で過去最高。7月首都圏のマンション販売は8カ月連続前年を下回る。 契約率は2カ月連続、好調・不調の基準となる70%割れ。販売価格は7月平均5656万円、前月比-297万円。 5月まで12カ月連続値上がりしてきたが、販売価格が天井を打った。20階建て以上のタワーマンションの爆買いが無くなってきた。 高層マンションの売れ行きが悪くなった。

円高、株安で資産効果が無くなった。海外の投資用で買っていた投資家が売りに回って
きた。経済が悪循環になってきた。

4-6月の企業業績は全32業種種のうち22業種で悪化、2009年4-6月以来。 通期+1.7%増益が-0.5%減益見通しになった。 7月以降の企業の想定為替レートは107円(平均)。現在は100円前後。 まだ7円の円高。更なる下方修正も?安倍さんの昨年の為替に対する発言(失言)、日銀のマイナス金利の導入が余計に良くなかった。

昨年1ドル125円の頃、安倍さんは「急激な円安は日本に良いことではない」と言った。「これ以上の円安は」と聞こえた。アメリカに言わせられたか。その日をもって円安は止まった。

バブル崩壊以降、一貫して「今後は永久にデフレである」と御託宣した長谷川慶太郎氏(経済評論家)はいま現在も、デフレが続くと断言している。 彼ほど多くを予言し、多くを外し、多くを的中させた人はない。デフレは個人にとって幸福なのだと説く。

彼の20年間の常套句は「デフレは売り手に地獄、買い手に天国」だが、それは今後もますます続くから良い時代が来る、と今でも言っている(『世界大激変 次なる経済基調が定まった』 長谷川慶太郎著/東洋経済新報社)。

Next: 米利上げ~市場が抱えるリスクと不確実性



米利上げ~市場が抱えるリスクと不確実性

米利上げに伴う株価変動は「リスク」であり、先週号で述べたM9程度の首都圏直下型地震や富士山の大噴火は「不確実性」の領域である。

フランク・ナイトは有名なシカゴ学派の中でリスクと不確実性を分けて考えた。彼の考えによれば、リスクは何が起こりうるかが判っているときに直面するものであり、様々な物事が起こりうる多様な可能性のことである。

カジノのルーレットで考えるのはリスクだ。これに対して「不確実性」は「知らない」ということを難しく言ったものであり、個人が制約のないリスクに直面している状況を指す。

つまり、真の驚き、驚愕、想像も出来ない範囲、想定外のこと、未知なる未知のものに溢れた世界に生きることの危険性を言っているのだ。

日本語としては主に経済学分野で使われ、1978年にジョン・ケネス・ガルブレイスの著書のタイトルが『不確実性の時代』と訳されたことから広まった。

一般には、意思決定者のコントロールし得ない事象の生起の仕方にさまざまな可能性があり、しかもいずれの事象が確実に起こるか判明しないとき、これをリスクと分けて不確実性と言っている。

リスクと不確実性の違いを言えば、リスクは確率である程度計算できる。そういういう限られた危険性である。不確実性は想定外のこと、驚愕的なこと、未知なる未知である。

ラムズフェルド元米国務長官の回顧録によれば、リスクとは「Known Unknown」であり、不確実性は「Unknown Unknown」である(『真珠湾からバグダッドへ――ラムズフェルド回想録』 ドナルド・ラムズフェルド著・江口泰子他訳/幻冬舎)。

フランク・ナイトの経済学観は、重大な不確実性への正しい理解に基づくものだった。経済学の中心的な役割は専門的な面の理論化ではなくて、神秘性の発見と「宗教的とまではいかないが倫理的な問題」と見做していた。

筆者に言わせれば心理学的な問題である。社会科学や経済学では、物理学と違って人々の「期待」が大きな意味を持つ。未来の市場は、こうなりそうだという人々の考えや期待から強い影響を受けて動く。

そのため市場モデルや経済モデルを構築しようとする場合には、必ず人々の期待を如何
にモデル化するかという難しい問題に向き合わざるを得ない。市場は常に人間の心理に
ある限りない複雑さに直面する。全員が合理的期待をすると仮定すれば市場プレーヤーはこの問題を回避出来る。 ところが市場のプレーヤーは皆が例外なく合理的な期待をしているというわけではない。だから筆者は書斎派の投資家はみな外れると言うのだ。

ところで、マーケットで経験のある熟練プレーヤーが初心者プレーヤーよりも普通は強
いのは何故か。これは体験知として、以上述べたようなことをよく承知しているからだ。

Next: 世界株式市場のチャート上の位置を要約すると



世界株式市場のチャート上の位置を要約すると

日本
昨年6月大天井以降の右肩下がりで中段の保合。

NY
昨年5月の史上最高値を僅かに更新したまま上値で留まっている。

ドイツ
昨年4月の最高値示現以降の右肩下がりの上値抵抗線を僅かに突破した。

香港
昨年5月の最高値から右肩下がりのまま保合。

ブラジル
昨年5月の高値から今年1月までの右肩下がりを3月にブレークして昨年高値を更新した。

インド
昨年1月最高値から今年2月まで右肩下がり、その上値抵抗線をブレークして昨年最高値の少々手前まで上昇中。ただしルピーの為替相場は安いままだ。


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山崎和邦(やまざきかずくに)

1937年シンガポール生まれ。慶應義塾大学経済学部卒。野村證券入社後、1974年に同社支店長。退社後、三井ホーム九州支店長に、1990年、常務取締役・兼・三井ホームエンジニアリング社長。2001年同社を退社し、産業能率大学講師、2004年武蔵野学院大学教授。現在同大学大学院特任教授、同大学名誉教授。

大学院教授は世を忍ぶ仮の姿。実態は現職の投資家。投資歴54年、前半は野村證券で投資家の資金を運用、後半は自己資金で金融資産を構築、晩年は現役投資家で且つ「研究者」として大学院で実用経済学を講義。

趣味は狩猟(長野県下伊那郡で1シーズンに鹿、猪を3~5頭)、ゴルフ(オフィシャルHDCP12を30年堅持したが今は18)、居合(古流4段、全日本剣道連盟3段)。一番の趣味は何と言っても金融市場で金融資産を増やすこと。

著書に「投機学入門ー不滅の相場常勝哲学」(講談社文庫)、「投資詐欺」(同)、「株で4倍儲ける本」(中経出版)、「常識力で勝つ 超正統派株式投資法」(角川学芸出版)、近著3刷重版「賢者の投資、愚者の投資」(日本実業出版)等。

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