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【8月米雇用統計】良すぎれば波乱も?意外に低い利上げのハードル、102~105円想定=ゆきママ

9月の利上げはあるのか?ということで、本日発表の8月米雇用統計は大注目のイベントとなっています。特にここ1~2週間は思惑で相場が進んできた分、いつも以上に大きな値動きとなりやすいと考えられますので、ぜひこの記事を読んで月に1度のお祭りイベントに備えていただければ幸いです。(『ゆきママのブログでは書けないFXレポート(無料板)』『お値段以上!?ゆきママの「週刊為替予測レポート」(有料板)』FXトレーダー/ブロガー・ゆきママ)

事前予想値に惑わされず「利上げに必要とされる数字」に注目を

今回は利上げがテーマ!そもそも利上げとは?

今回のメインテーマはズバリ「9月の利上げ」ということになりますから、単に事前予想値より数字が良かった、悪かったというのを見るだけでは不十分でしょう。

つまり、9月20~21日に開催されるFOMCで利上げが実施されるためには、どれぐらいの数字が求められているのかということを十分考えた上でトレード戦略を練っておかなければなりません。事前予想値からの良し悪しだけで飛びつくと、手痛い失敗をすることになってしまいかねませんから、十分注意しておきましょう。

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ちなみに、利上げについて知らない方はほとんどいないと思いますが、念のため簡単に解説しておくと、これまでの金融緩和(超低金利)でジャブジャブと市場に出回っていたお金を中央銀行が吸収するために、金利を引き上げるという金融引き締め政策となります。

要は景気が良くなってきたので過度のインフレを抑えるために経済に少しブレーキをかけることを目的としているわけですが、アメリカで利上げが行われるということは、市場に出回っているドルそのものが減って希少性が増すことにもなりますし、金利が上昇すればドルを保有しているだけで利益が見込めるわけですから、ドル需要が高まってドルが買われ易くなります。

そして、この利上げについて、アメリカの中央銀行制度を担うFRB(連邦準備制度理事会)メンバーが相次いで利上げは近いとし、8月米雇用統計が行動の決定を左右するとしていることから、利上げがあるのかどうかということを含め、いつも以上に注目されています。

というわけで、繰り返しになりますが、今回のイベントは「利上げが実施されるのかどうか」ということを念頭に置いた上で、見ていただければと思います。

利上げのチャンスは残り2回!FRBも内心焦ってる?

また、実はFRBが利上げをできるだけ早期に実施したいのではないかということも考えておく必要がありそうです。

やはり低金利を続けていると、どうしても株や不動産価格が上昇しやすく、資産バブルが発生しやすくなりますからね。NYダウは連日史上最高値を更新していますし、不動産価格はわずか4年で30%以上も上昇していますから、その兆候が始まっていると言っても過言ではないでしょう。

加えて、金利が低いままでいると、もし景気後退局面が発生した際に金利を引き下げるという手段が限られてしまいます。最近はゼロ金利からさらに引き下げてマイナス金利にするといった手法もありますが、その副作用は日銀を見れば明らかですからね。

したがって、これまで散々先送りし、確信が持てるまではと利上げを避けてきたFRBですが、Brexit(イギリスのEU離脱)問題も一旦落ち着き、アメリカ経済はもとより世界経済が安定し始めた今のタイミングはある意味で利上げをするためのチャンスと考えている可能性があります。

なんと、気がつけば金融政策を決定するためのFOMC(連邦公開市場委員会)が、今年は残すところ9月、11月、12月の3回しかありませんからね。しかも、伝統的に大統領選挙(投票日)の直前は影響を考慮して政策の変更を行うことを避ける傾向にありますから、実質的に利上げのチャンスは9月、12月の2回のみということになります。

こういった事情から、FRBが利上げをするために必要な数字は意外と低いのではないかと考えています。

Next: 利上げに必要な数字とは?/想定レートは1ドル=102.00~105.00円



先行指標はまずまず。利上げに必要な数字とは?

それでは、先行指標を交えながら、利上げに必要な数字を具体的に考えていきましょう。先行指標は以下のようになっています。

先行指標(数値はいずれも速報値)

全体的にやや悪化しています。とはいえ、大幅に下振れしているかといえばそうではなく、製造業の雇用指数の悪化がやや気になる程度です。ちなみに、今回はISM非製造業指数の発表がまだ行われていません。

そして、今回の非農業部門雇用者数の事前予想値は+18.0万人となっていますが、これぐらいの数字が出てくるのであれば、市場としては万々歳でしょう。

そもそも、イエレンFRB議長などは+10万人前後の雇用増で十分としていることもありますし、先ほども書いたように利上げのハードルは低いといった指摘もありますから、この予想値を大幅に下回って+10万人を割り込むようなネガティブサプライズとならなければ、初動はともかくとして底堅い値動きが続くのではないかと考えています。

トレンドを見ても、非農業部門雇用者数は過去2か月で+54.2万人ですから、今回+5.8万人であれば3か月間の平均で+20万人の節目を超えます。過去6か月で平均+20万人という数字を目指すとなると、今回は+24.5万人が必要となりますが、12か月間では+14.6万人となっています。

これらを総合すると、基本的には+14~15万人を超えてくればほぼ問題なさそうですので、雇用者数に関しては過度に懸念する必要はないと思われます。

また、平均時給(賃金上昇率)の事前予想値は、前月比+0.2%・前年比+2.5%となっています。目標にはまだまだ遠いので物足りない数字ではありますが、ハードルの低さから、これも大きく下回らない限りは問題ないでしょう。

ただし、前月比で+0.0%と伸びがなく横ばいといった数字が出た場合には、労働市場の引き締まり方が足りないといった見方になる可能性がありますので、少なくとも前月比で上昇することは最低線としておきたいところです。

想定レートは1ドル=102.00~105.00円。米長期金利、株価には要警戒!

今回はよほど酷い数字が出ない限りは大暴落という結果にはつながりにくそうです。11時20分現在のレートも1ドル=103.30円と過熱感はそれほどありませんから、予想値並、あるいはちょっと弱い程度の数字であれば9月利上げを徐々に織り込みつつ底堅く推移しそうですので、基本的には上方向、または押し目狙いの戦略をメインシナリオにしたいと思います。

米ドル・円チャート

上のドル・円チャートを見ていただければわかると思いますが、今年に入ってからは未だ雲抜け(一目均衡表の雲の上限)は達成できておらず、3度跳ね返されていますので105円を上値目処としています。ただし、ここを抜けた場合にはトレンド転換も十分考えられますので、しっかり超えた場合は一段高も見ておきましょう。

それから、仮に弱い結果となったとしても、前述したようなFRBの状況を踏まえると、過度なドル売りというのは難しそうなので、下値に関してもそれほど警戒していません。

ただし、非農業部門雇用者数がまさかの10万人割れといった数字や、賃金上昇率がマイナスとなった場合には、アメリカ経済そのものに再び疑義が生じることになりますから、100円割れ近辺ぐらいまでは見ておく必要がありそうです。

そして、問題はむしろ非常に良好な結果が出るようなポジティブサプライズとなった時にどうするかということでしょう。最新のFedウォッチを見ると、市場が想定している9月の利上げ確率はわずか27%と3割にも満たない数字となっていることがわかります。

このことは、まだまだ9月利上げというシナリオを真剣に考慮していないということの現れでもありますが、もし今回の雇用統計で良好な数字が出れば、市場は利上げリスクに向き合う必要に嫌でも迫られるでしょう。

したがって、むしろ予想を大きく上回る数字が出た際は、利上げリスクを懸念して、これまで堅調だった株式市場や債券市場が不安定化し、そのことがドルの上値を抑えることにもつながりかねませんので、トレードする際は株価や米長期金利(10年債利回り)の動向に警戒することをお忘れなく。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2016年9月2日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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