マネーボイス メニュー

Joseph Sohm / Shutterstock.com

近づく「官製ブラックマンデー」約束された急落のベストシナリオ=藤井まり子

利上げによる米国株式市場の大幅調整は免れないでしょう。しかし逆説的ですが、6月利上げは「米国市場の弱気相場入り」を回避するためにも必要なのです。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2017年5月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

押し目かトレンド転換か。アメリカ株式市場の来る大幅調整を読む

2018年春にリセッション入りの恐れ

4月にアメリカの失業率が10年ぶりに4.4ポイントもの低さを記録したこと、さらには、4月のアメリカ市場のVIX恐怖指数がこちらも同じく10年ぶりに10ポイント台を割り込んで9ポイント台をマークしたこと。この2つが、内外のマーケット関係者の間でかなり話題をさらっています。

結論から言えば、近いうちにイエレンFRBが金融緩和へと転換しない限りは、2017年秋にはアメリカの株式市場がピークアウト(=暴落)して、2018年春にはアメリカの実態経済の方もピークアウト、リセッション入りする可能性があります。

ただし、ここが重要なところですが、「イエレンFRBが金融緩和へ転換すれば」この限りではありません。「トランプノミックスの中間選挙までの成長戦略は、金融緩和にあり」と言われるゆえんは、ここらあたりにあります。

「失業率4.4%」の衝撃

4月の米雇用統計で、失業率が4.4ポイントを記録した「知らせ」を受けて、内外のマーケット関係者の間には衝撃が走りました。

「失業率4.4%」というのは、経験則的に、「景気循環的には、1年後あたりにアメリカ経済がピークアウトするかもしれない。すると、半年後あたりにはアメリカ株式市場は大幅調整か暴落を覚悟しなければならない?」ということです。

さらに、1年後の景気のピークアウトが本当ならば、イエレンFRBは「2016年12月の政策金利の引き上げ」を最後にすべきだったのではないか。3月と6月の利上げは、やはり余計だったのではないか。そう感じたのは、私だけではありませんでした。

年初にお伝えしておりますが、今年2017年は「7」の付く年です。「7」の付く年は、ブラックマンデーの起きた1987年、アジア通貨危機の起きた1997年、リーマンショックの前哨戦が始まった2007年と、暴落や危機の起きやすい年です。

そして、この「暴落」「危機」は、どういうわけか夏から秋にかけて起きています。

さらに、アメリカ経済は「金融立国(=資産立国、バブル立国)」を目指し始めた1990年代後半から、「ほぼ10年に1度のサイクルでバブルをつくっては消滅」させています。

私のブログの創刊時や「アベノミックスのロケットスタート」時にも、「景気循環的には、今の株高が続くのは、2017年から2018年あたりまでだろう」というざっくり予測は、皆様にくり返しお知らせしております。

上記グラフに示したように、景気循環的には、「イエレンFRBが金融緩和へと転じない」限りにおいては、「そろそろ1年後あたりに米国経済はピークアウトし始めて、株価はそれに半年先行して天井を打つ」かもしれないのです。

(もちろん、イエレンFRBが近いうちに金融緩和へ転じれば、この限りではありません。繰り返しになりますが、クリントン政権時代の景気回復期が極めて長かったのは、当時のグリーンスパンFRB議長が1998年のロシア通貨危機をきっかけにアメリカの金融政策を緩和へと転換したからです)

もうちょっと詳しく解説すると、「失業率4.4%」というのは、前回サブプライムバブル期の最低水準です。この最低水準は、景気拡大期の頂点で出現しやすいのです。この「失業率4.4%」あたりが記録されると、およそ1年後には実体経済はピークアウト、その後リセッション入りすることが多いのです。

すると、今回の「失業率4.4%」が、今回の「サブプライム危機後の景気回復の最低水準」とするならば、「アメリカの実体経済は(イエレンFRBが金融緩和へと転換しなければ)、だいたいは2018年4月頃にはピークアウトして、その後リセッション入りする」と、ざっくりと予測されます。

株価は実体経済よりも半年早く反応しますから、「アメリカ株がピークアウトするのは、(イエレンFRBが金融緩和へ転換しなければ)、だいたい2017年10月~11月頃」と、ざっくり予測できます。

そして、平たく言えば、セオリー通りの「秋の株価暴落、2018年のリセッション入り」が嫌だったから、トランプ政権が登場したわけです。

Next: 押し目か?弱気相場入りか?米株式市場の分岐点が近づいている



根拠無き楽観に支配されたアメリカ株式市場

4月のアメリカVIX指数」は、4月後半からの朝鮮半島での地政学リスクの後退を受けて、一時期10ポイントを割り込みました。こちらも、なんと10年ぶりの低水準でした。このこともやはり、内外マーケット関係者には衝撃でした。

4月のアメリカ株式市場は、「ITバブル期同様の根拠無き熱狂」とまで言わなくても、まさしく10年ぶりの「根拠無き楽観」「シュガーハイ状態」の極みだったのかもしれないのです。

「VIX恐怖指数」が10ポイントを割り込んだのは、2006年12月~2007年1月以来(10年ぶり)のことです。

サブプライムバブル時代の頂点にあった2006年~2007年を振り帰ると、VIX恐怖指数が10ポイントを割り込んだ「2006年12月~2007年1月」に遅れること2カ月の3月には、上海株式市場が暴落しています。そして、7月と10月にはアメリカ株が2度のピーク(ダブルトップ)を打って、その後続落していきます。

2006年12月~2007年1月は、VIX恐怖指数は「シュガーハイの極み」である「9ポイント台」を記録してから、およそ半年後あたりに株式市場がピークアウトしたわけです。実体経済の方も、株式市場におよそ半年遅れて、2007年12月にはピークをつけ、2008年1月からリセッション入りしていきます。2008年にはサブプライム危機が起きたのは、皆様ご記憶の通り。

少なくとも、サブプライムバブルとその崩壊の過程の2007年前後では、「VIX恐怖指数」がシュガーハイの極みである9ポイント台を付けると、およそその半年後の7月に株価がピークを付けて、さらにその半年後の12月に、実体経済がピークアウトしてリセッション入りするという「サイクル」でした。

そして、時代は巡り巡って10年後の2017年。2017年4月に「VIX恐怖指数がシュガーハイの極みであるかもしれない9ポイント台」を記録しました。同時並行的に4月には、上海株式市場の10%下落が起きました。

これを「10年前のサブプライムバブル時のサイクル」で予測すれば、イエレンFRBが金融緩和へ転換しなければ、「半年後の2017年11月には株式市場がピークアウト、その半年後の2018年5月には実体経済のピークアウト」という予測が可能になります。

この予測は、「失業率4.4%」から予測した「2017年~2018年の米国経済とアメリカ株式市場のざっくり予測」と、ぴたっと一致します。なにやらとても不気味です。

もちろん、サブプライム危機前の2007年と、ブプライム危機後の2017年の今のアメリカ経済とは、経済構造が違っています。潜在成長率はさらに悪化、自然利子率も低下しているので、バブルの生成と崩壊過程がまるっきり同じプロセスをたどるとは限りません。

たぶん、イエレンFRBは、「8月にFRBの人事が確定した」ならば、9月あたりから「金融緩和へと大転換」することでしょう。ですから、ぎりぎりセーフで「米国経済のリセッション入りとアメリカ株式市場の暴落」は回避されることでしょう(詳しい理由は4ページ目で後述)。

が、上述の「失業率:4.4%」から眺めても、「VIX恐怖指数:10ポイント割れ」から眺めても、イエレンFRBが金融緩和へと転換しなければ、「半年後の2017年10月から11月には株式市場がピークアウト、その半年後の2018年4月には実体経済のピークアウト」という「ざっくり予測」が成り立つことは、大いに注意すべき事柄でしょう。

そして、「そんなのは嫌だぁああああ~!」「株価の暴落も景気のピークアウトも嫌だぁああああ~!」「低金利が好きだぁああああ~!」「2%成長なんて嫌だあああああ!バブルをつくって3%成長がした~い!」と登場したのが、トランプ大統領だったのです!

Next: 2万円を超えられない日経平均。日銀も追加の金融緩和に向かう?



2万円を超えられない日経平均

日本株式市場では、日経平均は上値を抑えられてなかなか2万円台に乗りません。

何が日経平均の上値を抑えているのか?」といえば、その原因は、日本国内の要因というよりも海外要因でしょう。すなわち、米国経済の「動機が不純な3月と6月の利上げによる失速懸念」と「中国経済の失速懸念」です。

世界の実態経済は、どうやら2016年半ばには大底を打って、そこそこ力強い成長軌道に乗っているようです。

ところが、イエレンFRBは、2015年12月の「1度目の政策金利委の引き上げ」に続いて、2016年12月に「2度目の政策金利の引き上げ」を行いました。「12月の利上げ」を「最後の利上げ」にすべきだったところを、イエレンFRBは「近い将来、金融緩和へ転じないといけなくなりそうだから、利上げできる今のうちに利上げしておこう」と、3月には慌てて利上げを断行しました。来月6月の「利上げ」もほぼ確実でしょう(確率はおよそ80%~100%)。

アメリカの実体経済は、遅かれ早かれいくばくか失速していくのではないでしょうか?

一方、中国。世界の中央銀行であるアメリカFRBの度重なる利上げで、米国経済よりも苦しんでいるのが中国経済です。

トランプ政権の手前、中国人民銀行は、人民元安政策は行えません。北京政府は、秋の共産党大開を控えて、中国経済の「痛みを伴う構造改革」に着手しています。

今の北京政府は、金融引き締めを行いながら、構造改革を断行するという「絶望的な離れ業」を継続しているのです。今後は中国経済はいくばくか失速していくかも知れません。

中国経済の失速懸念で、日本株式市場の上値が抑えられています。黒田日銀総裁は、イエレンFRBの金融緩和への大転換と足並みをそろえて、もう一度、追加の金融緩和を打つ必要が出てくるかも知れません。

Next: 「官製のブラックマンデー」はすぐそこまでやってきている



「官製のブラックマンデー」はすぐそこまでやってきている

2017年は「7」の付く年なので、暴落が起きやすいです。放っておけば、「2017年の秋」には、暴落が起きて、バブルがピークアウトしてしまうかもしれない。半年後の2018年春あたりには、アメリカ経済はリセッション入りする可能性もある。

かくして、「バブルが終わるなんて嫌だ!」「リセッション入りなんて嫌だぁああ!」ということで登場したのがトランプ政権。

ただし、大型減税と大型のインフラ投資と規制緩和を掲げる「トランプラリー」は、画竜点睛に欠けていました。今のトランプラリーは、イエレンFRBが金融緩和へ転換しない限りは、欠陥車なのです。

減税は、株価を上昇させますが、金融緩和とセットで行わない限り(減税の規模が大きいか小さいかに関わらず)経済成長を加速させないのです。そのトランプ減税も、ロシアゲート事件発覚でその実現性が怪しくなってきています。

そもそも、「2017年、比較的早い時期の株価の大幅修正」は、トランプラリーのベストシナリオでした。

今のアメリカのマーケットには、「大きなゆがみ」が存在しています。株式市場は極度にイケイケのシュガーハイ状態なのに、債券市場は実体経済が堅調な割に慎重極まりない。為替市場では、「ドルのインデックス指数」が、既にトランプラリー開始前の昨年秋の水準にまでドル安修正しています。これは、大規模減税でも大規模インフラ投資でも、もうトランプ大統領には何も期待していないということです。

為替市場は、マーケットの中で最も早く動きます。近いうちに、債券市場も株式市場も、為替市場に遅れて調整していくことでしょう。

年明けからのトランプラリーは、イエレンFRBが利上げできるくらいだから、「アメリカ経済の将来はかなり調子が良いのだろう」と株式市場関係者も頭を空っぽにして株式市場に賭けてきた可能性がかなり高いです。 マーケットの「ゆがみ」は、近いうちに修正・調整されることでしょう。

今のアメリカ経済は、賃金上昇率の低下と物価上昇率の低下という点では、暗い陰があります。近い将来、成長がスローダウンする可能性が懸念されています。物価上昇面から眺めると、アメリカ経済の 「長期停滞」の影がどうしても拭えないのです。

そういった中、イエレンFRBの3月の利上げは「動機は不純」だった疑いがあります。「近い将来、政権に金融緩和を迫られそうだから、金利を引き上げられる今のうちに急いで金利を引き上げた」疑いがあります。

同じように、イエレンFRBの6月利上げも「動機が不純」。しかしながら、イエレンFRBは6月に利上げを断行することでしょう。「8月のFRB人事」の正式決定までは、イエレンFRBは利上げの手綱を緩めないでしょう。

(トランプ大統領もイエレンFRB議長も「近い将来、金融緩和に転じて、高圧経済を造り出して、大型バブルを造ってでもアメリカ経済の構造改革を推進していこう」という点では、意見が一致しています)

2回におよぶ「動機が不純」な利上げで、アメリカ株式市場の大幅調整は免れないでしょう。

「100歩」譲って、イエレンFRBが6月の利上げを見送ったならば、何が起きるのか? そもそも、イエレンFRBはかねてより「アメリカの株価はバリエーションから眺めると高すぎる」と警鐘を鳴らしているので、6月利上げを見送るなんてことが起こりうるのだろうか?

6月に早々と利上げを見送れば、下手をすると、8月に「FRB議長の人事」が正式決定する前に、トランプ大統領との政治的な取引が終了してしまうことにもなり、イエレンFRB議長としては「とても損」になります。

イエレンFRB議長としては、FRB人事が無事終了するまでは、トランプの奥歯をがたがた言わせたいはずです。利上げの手綱は緩めないでしょう。そういった意味でも、6月利上げの見送りは起こりえない

万が一、6月利上げを見送るとすれば、アメリカ株がイケイケになり過ぎて、秋には20%以上の大幅調整や暴落を巻き起こすことなってしまうかもしれません。「20%以上の下落」では、(大幅調整を超えて)アメリカ株式市場を「弱気相場入り」させてしまう危険があります.。

6月利上げは、「アメリカ株式市場の弱気相場入り」を回避するためにも必要なのです。また、アメリカ株式市場を「健全に調整させる」ためにも必要でしょう。今のアメリカ株式市場で「健全なガス抜き」を起こすためにも、さらには、「その後の息の長い株価上昇」を形成するためにも、6月利上げがぜひとも必要なのではないでしょうか。
続きはご購読ください

メルマガ購読開始で今すぐ読める!5月配信済みバックナンバー

・官製のブラックマンデーは、すぐそこまでやってきている!(5/23)
・次の大幅調整局面に向けて「鋭気」を養っておこう!(5/19)
・竜の目になったイエレンFRB「トランプノミックス第二幕」の幕開けはいつ?(5/16)
・潮目が大きく変わるとき♪「濡れ手に粟」で稼ぐとき!(5/12)
・トランプノミックス2.0に「絶好の買い場」はあるのか?(5/9)
・大型バブルの予感♪ それでもリスクは高まっている!(5/2)


※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2017年5月23日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

【関連】現実味帯びる「トランプ辞任ショック」市場が怯える2つのリスクとは=斎藤満

【関連】2017年後半、真のリスクは「トランプ弾劾」ではなく「中国」にあり=栫井駿介

【関連】FinTechの本質。新しい「信用」のルールが経済を数倍に拡大する=大前研一

藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2017年5月23日号)より一部抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

有料メルマガ好評配信中

藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート

[月額16,500円(税込)/月 毎月第1金曜日・第2金曜日・第3金曜日・第4金曜日(祝祭日・年末年始を除く)]
「マクロ金融・資産形成 de あそぼ♪」の筆者:藤井まり子が、金融資産3,000万円以上の読者に向けて送る「富裕層向けの資産形成のプレミアム・レポート」。第一メルマガ「~de あそぼ♪~」が、「結論と要約だけ知りたいし、具体的に何をしたらよいの教えてほしい」と熱望しておられる愛読者様に、是非ともお勧めです。この第二プレミアム・メルマガの購読者の方々は、ゴールド会員として、よりきめ細やかなアドバイスも、常時双方向で無料提供します♪年金不安なんか、ぶっ飛ばしましょう♪

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。