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「橋下徹のデタラメ改憲劇場」を憲法改正派の私が警戒する理由=内閣官房参与 藤井聡

記事提供:『三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年6月6日号より
※本記事のタイトル・本文見出し・太字はMONEY VOICE編集部によるものです

日本の未来を決める憲法改正議論に、デマや嘘は決して許されない

「憲法が変わるなら何でもいい」わけではない

今、憲法改正の議論がにわかに脚光を浴びつつあります。

筆者はもちろん現憲法には、その成立経緯はもちろんのこと、国民の権利の義務とバランス問題や憲法九条問題などを踏まえれば、より「正しい・善い」憲法に改正すべきであると考えています

しかし、憲法を変えるのなら何でもいいというわけではありません。少なくとも下記の2点が保証されることは、憲法改正の絶対条件です。

(憲法改正の第1条件)我が国に関連するあらゆる「事実」を可能な限り見据え、それらを踏まえた上で、その改正が「国益」の視点から求められると判断できる。

(憲法改正の第2条件)国民の「理性的議論」を経た適正なプロセスが採用される。

つまり、憲法改正は、その中身も制定プロセスも正当なものでなければならない、という次第です。したがって、この2点が確保されない憲法改正に対しては、必然的に「反対」の立場をとらざるを得なくなります。

【関連】大阪人はなぜ「維新」に惹かれるか~橋下徹の東京コンプレックス戦略=藤井聡

憲法改正の住民投票では、ウソやデマの撲滅が絶対条件

さて、この前者の「第1条件」については、これまでも様々に議論されてきました。例えば、尖閣諸島等の状況を踏まえれば、現状の憲法9条の「中身」は不適切ではないかなどが議論されてきました。

一方、後者の「第2条件」についての議論は必ずしも十分ではない様に思われます。ですがもちろん、具体的な憲法改正プロセスを考える上では、避けては通れない問題です。

ただし、この「第2条件」には若干の異論があり得ます。国益を増進できるなら、プロセスなんてどうでもいい、という意見があり得るからです。

しかし、国益のための「第1条件」を保証するためにも、その手続きの正当性についての「第2条件」は不可欠です。なぜなら、この「第2条件」が保証されなければ、早晩「第1条件」を無視した改正が実現してしまうことは避けがたいからです。

とりわけ、憲法改正には「住民投票」が必要ですが、この「住民投票」で客観的な事実情報が「隠蔽」されたり、ウソや詭弁にまみれた「デマ」が大量に喧伝されれば、国民の理性的判断は不可能となります。これこそ「第2条件」が成立しない事態――なのですが、そうなればその住民投票は単なる「悪夢」と化してしまいます。

Next: 憲法改正議論に「橋下徹がしゃしゃり出てくる」ことの危険性



デマと隠蔽が横行した「大阪都構想」住民投票の教訓

実際、2015年の「大阪都構想の住民投票」は、まさにそんな「悪夢」そのものだったのです。

当時、大阪市長でもあった橋下徹氏率いる「大阪維新の会」は、大阪都構想=大阪市廃止解体(以下、都構想と略記)を主張し、最終的に、大阪市民を対象とした住民投票に持ち込みました。

この「構想」の最も「基本的事実」は、

(事実1)「大阪市の廃止
(事実2)「大阪市」が所持している権限と財源の一部を「大阪府」に譲り渡す

というもの。ところが、これら事実は市民にはほとんど周知されませんでした

例えば、大阪市長が開催した「説明会」では、「大阪市が廃止される」という最も基本的な(事実1)は、39回の説明会の中でただの一度も口頭説明されていなかったことが、その後の発話テキスト分析から明らかにされています。そして(事実2)については、その事実とは完全に乖離する、過剰に楽観的な財政見通しが繰り返し説明されたことも明らかにされています。
http://www.union-services.com/pps/pps%20data/2_5.pdf

しかも橋下市長からは、「国が都構想について問題なしと言った」等の、少なくとも4つの「虚偽」説明をしていたことも明らかにされています。
http://www.union-services.com/pps/pps%20data/2_5.pdf

ただし、「大阪維新の会」主催のタウンミーティングでは、さらに激しいデマやウソが喧伝されました。

例えば、そのタウンミーティングは、明らかに「人をだます」ために作られたと思わざるを得ない「詐欺パネル」が多用されました。
https://ameblo.jp/datoushinzoabe/entry-11995190678.html
(その様子は、下記レポートに詳しく記載されています)
https://www.dailyshincho.jp/article/2015/04230900/?all=1

とりわけ、住民投票の直前に放映されたテレビでの討論番組では、橋下市長の発言の48%、つまり「発言のほぼ半分」が「詭弁」(論理的ウソ)に該当するものであったことも、発話分析の学術研究から明らかにされています(なお、その対抗論者の詭弁率はわずか2.6%)。
https://www.jstage.jst.go.jp/article/shes/14/2/14_155/_pdf

さらに橋下維新は、上記(事実1)(事実2)の様な「事実」を主張する「学者」に対しては、理性的な「反論」をするのではなく、ただ単に言論をやめさせるための激しい「言論弾圧」の圧力を、自らが所持する市長や政党の「公権力」を使ってかけ続けました。
http://satoshi-fujii.com/pressure/

つまり、「都構想」の住民投票では「デマや隠蔽」が激しく横行したのです。

その結果、大阪市民には「都構想」についての客観的な「事実」がほとんど周知されないままに住民投票当日を迎える、という悪夢の様な状況となってしまいました。

実際、住民投票直後のサンプリング調査より、90%以上の人々が「都構想」の中身を「誤解」していたことが明らかにされています(上記の事実1、事実2の理解正解率はわずか8.7%)。
http://trans.kuciv.kyoto-u.ac.jp/tba/wp-content/uploads/2016/06/tanaka.kspring.pdf

なおこの調査データから、人々は事実を知らなければ賛成していたが(賛成率64.5%)、事実を知っていれば反対していた反対率87.5%)ことも明らかにされています。つまり、今回はたまたま僅かな差で否決されましたが、もう少し「橋下達のデマや隠蔽」の勢いが強ければ(あるいは、それに対する抵抗=レジスタンスがもう少し弱ければ)、事実を知る人なら誰も賛成しない様な「都構想」が、「可決」されていたに違いなかったのです。

誠にもって、恐ろしい話です。

Next: 憲法改正のための「橋下大臣入閣」を絶対に阻止すべし



憲法改正のための「橋下大臣入閣」を絶対に阻止すべし

以上の都構想の事例は、住民投票時の「デマや隠蔽」は、恐るべき力を発揮して人々の判断を捻じ曲げ、投票結果に大きく左右するということを、雄弁に物語っています。

だからこそ、憲法改正においては、この「大阪の悪夢」の再来は絶対に避けねばなりません――しかし残念ながら、それが実現する可能性がにわかに現実味を帯び始めています。

すなわち、「橋下氏の力」が「憲法改正のための推進力」として「期待されている」との観測が今、新聞紙上で報道されているのです。そこで「観測」されているのは、憲法改正を「サポート」するために橋下氏を「民間大臣」として入閣させるという「衝撃の秘策」。
http://www.zakzak.co.jp/society/politics/news/20170601/plt1706011100001-n3.htm

ただし、そこで言われる「橋下氏の力」とは、上述の各種調査・研究で明らかにされたように単なる「デマと隠蔽の力」に過ぎないものです。

だから万一本当に、橋下氏の「デマと隠蔽」の力が憲法改正のために活用されてしまえば、「第2条件」(理性に基づく議論)が完全に蔑ろにされ、「都構想の悪夢」が日本国家のど真ん中で繰り返されることになります。

そうなればもちろん、日本国家の国益は激しく傷つき、「亡国」や「売国」へと早晩至ることは必至です。(※亡国や売国については、是非、佐藤健志著『右の売国、左の亡国』、をご一読ください。
https://www.facebook.com/Prof.Satoshi.FUJII/posts/1063280787106197?pnref=story

ついては憲法改正においては、「デマと隠蔽の力」という「橋下氏の力」の活用という愚か極まりない判断が確実に回避されなければならないのです。

筆者は、そんなデマや隠蔽ではなく、正々堂々とした理性的議論を通して憲法改正がなされんことを心から祈念したいと思います。さもなければ、改憲のために絶対必要な、日本を真剣に護ろうと考える、真の日本国民達の賛同が得られなくなってしまいます。そんな事態は決して、改憲を宣言した安倍総理の本意では無いに違いないのです。

追伸:「大阪都構想の住民投票」がいかに悪夢であったのかにご関心の方は、是非、下記をご一読ください。
https://www.amazon.co.jp/dp/410339661X
https://www.amazon.co.jp/dp/4794968213

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三橋貴明の「新」経世済民新聞』2017年6月6日号より

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