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世論は無視できても…中曽根大勲位と米国を敵に回した安倍官邸の誤算=斎藤満

安倍政権は加計学園問題の対応を間違えました。理由として、中曽根康弘元首相の存在と、背後に控える米国の意向が誤算を招いた可能性があります。(『マンさんの経済あらかると』斎藤満)

※本記事は、『マンさんの経済あらかると』2017年6月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

プロフィール:斎藤満(さいとうみつる)
1951年、東京生まれ。グローバル・エコノミスト。一橋大学卒業後、三和銀行に入行。資金為替部時代にニューヨークへ赴任、シニアエコノミストとしてワシントンの動き、とくにFRBの金融政策を探る。その後、三和銀行資金為替部チーフエコノミスト、三和証券調査部長、UFJつばさ証券投資調査部長・チーフエコノミスト、東海東京証券チーフエコノミストを経て2014年6月より独立して現職。為替や金利が動く裏で何が起こっているかを分析している。

アメリカのお墨付き?支持率急落で加速する「ポスト安倍」機運

浮き足立つ官邸

いわゆる「共謀罪」が15日朝、参議院法務委員会の採決を省略して強行採決され、可決成立しました。会期延長できない事情のもとで、米国からの催促もあり、とにかく急いで片づける必要があったようです。

この会期延長の障害となったのが加計学園問題で、安倍政権はこの問題をほじくり返されないうちに国会を閉会したかったものと見られます。

しかし安倍政権は、この加計学園問題のハンドリングを間違えた可能性があります。これまでメディアや野党議員を抑え込んで、何とか総理の先輩が経営する加計学園に獣医学部設置で便宜を図ろうとしたのが、内情が暴露され、思わぬ世間の批判を招いてしまいました。

もともと森友学園問題よりも大きな危険性をはらんでいただけに、官邸も浮足立ってきた感があります。

象徴的だったのが、先々週末の菅官房長官の会見です。女性記者(編注:東京新聞の望月衣塑子記者)からこの問題を執拗に質問され、「同じ問題ばかり質問しないように」と表向きは穏やかに言っていましたが、記者から「国民が納得するようなお答えをいただけないから何度も質問する」と言われ、天下の官房長官としては珍しく動揺の色を隠せませんでした。

「アンダーコントロール」に失敗

この加計学園問題、もともと大きな問題をはらんでいました。

市場評価が37億円もする国有財産としての土地を、総理の先輩、親友とされる加計理事長が経営する加計学園に無償で譲渡し、さらに運営費まで何十億という税金をつぎ込み、支援するだけの「大義」を説明すること自体が困難で、不自然な利益供与、行政の歪み、官邸の関与が疑われました。

このため、当初から野党議員やメディアに対して様々な形で「圧力」をかけ、表ざたにしないようにしてきたのですが、一部の週刊誌などから次第に情報が漏れ始めました。

そしてついに関係省庁である文科省、内閣府の関与情報が「資料」の形で出現し、官邸や担当大臣が「知らぬ存ぜぬ」を通し、「怪文書」の調査は不要、の姿勢を貫きました。

ところが、かつての現場のトップであった前川喜平前文科省事務次官が資料の存在を認めたことから、「事件」は広がりました。

官邸は森友学園問題で籠池理事長夫妻を「信用ならぬ人物」に祭り上げ、抹殺したのと同じ作戦で、前川氏を陥れようとしました。読売新聞に誰が書かせたかはともかく、前川氏は出会い系のバーに出入りするいい加減な人物で信用できない、としました。

中曽根康弘元首相という「誤算」

しかし、前川氏はこの政府の仕打ちにひるまず、「黒を白とは言えない」と頑張り通しました。その裏には、官邸が読み違えた大きな力が働いていた可能性があります。

1つは、元首相である中曽根康弘大勲位の存在です。

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中曽根元首相、文科相、財務省の「反安倍連合」

前川氏の上の妹は、中曽根大勲位の息子で元文部大臣、外務大臣の中曽根弘文氏の夫人にあたります。つまり前川氏は親戚になります。

官邸がその前川叩きをしたことで、大勲位が反安倍に動く可能性があります。

そしてもう1つの力が、文科省の多くの職員が前川前次官を支援していることで、資料の存在を現場の職員が認める結果となり、もはや前川氏個人の「作り事」では片づけられなくなったことです。

この文科省の背後で、財務省が後押ししているとの見方もあります。

米国ネオコンにとって安倍政権は「用済み」

さらに、中曽根大勲位や財務省の後ろには米国がついています。

中曽根大勲位と関係省庁、財務省を敵に回すだけでもかなりの労力を要し、足をすくわれるリスクがありますが、これに米国の後ろ盾がつけば、安倍政権も楽観を許されなくなります。

米国のネオコンが安倍総理を支援し、利用しているのは確かですが、彼らは安倍総理に代わる人間を利用することもできます

こうした状況から、安倍政権のおしりに火がつき、安倍一強長期政権の前提が揺らぎ始めました。

共謀罪のように、なかなか国民の理解が得られず、内外から批判の多い法案については、本来、国会を延長してでも審議を尽くし、国民の理解を得る努力が必要です。

ところが、国会を開けておくと加計学園問題を攻められるので、早々に採決して国会を閉会してしまいたかった、これが野党の反発を呼びましたが、ついには与党内にも安倍総理の暴走にクレームをつける人が現れるようになりました。

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「安倍降ろし」はアメリカのお墨付きか?

口火を切ったのが石破元防衛相

安倍総理の憲法改正の進め方について、「私の趣味ではない」と批判しました。9条の1,2項を残して自衛隊を合法化する項を追加する「加憲」は公明党を取り込むためで、高等教育の無償化は維新を取り込むためと批判しました。さらに――
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マンさんの経済あらかると』(2017年6月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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