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日本はなぜ超格差社会になったのか?その「制裁」は1989年に始まった=矢口新

日本社会の格差が固定化、拡大を続けている。負担の大きい中間層はさらに没落しつつある。その背景には20年以上も続く経済停滞があるが、これほど長期に渡って低成長を続けるのは、経済制裁を受けている国を除けば日本だけだ。(『相場はあなたの夢をかなえる ―有料版―』矢口新)

プロフィール:矢口新(やぐちあらた)
1954年和歌山県新宮市生まれ。早稲田大学中退、豪州メルボルン大学卒業。アストリー&ピアス(東京)、野村證券(東京・ニューヨーク)、ソロモン・ブラザーズ(東京)、スイス・ユニオン銀行(東京)、ノムラ・バンク・インターナショナル(ロンドン)にて為替・債券ディーラー、機関投資家セールスとして活躍。現役プロディーラー座右の書として支持され続けるベストセラー『実践・生き残りのディーリング』など著書多数。

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我が国は「経済制裁」を受けているも同然。誰が、何のために?

『不安な個人、立ちすくむ国家』への違和感

2017年5月に発表された、経済産業省の次官と若手有志がまとめたという『不安な個人、立ちすくむ国家(PDF)』には、現在社会の大問題として、「格差の固定化、格差の拡大」などが含まれている。

この提言は、経済産業省でありながら、「経済成長以外の幸せの追求」を語るなど、ツッコミどころ満載のものだった。この提言に関する私が覚えた違和感は、他に提供しているコラムや有料メルマガに詳しく書いたが、ここでも簡単に述べる。

この提言では、価値観の変遷を述べ、経済成長が望めない中で「高齢者は社会保障制度の受け取り手ではなく、支える側にまわれ」と、マインドに解決策を求めている。

こうしたことは日本の政策や、識者の論調に例外的なことではない。例えば、日銀の現状の金融政策は、「人々のデフレマインドを払拭する」と謳っている。つまり、気の持ちようで、インフレにもなり、経済も回復するという考え方だ。景気は「気」だという説もある。

また、若者の結婚離れ、自動車離れなどの理由を、価値観の変化に求める論調も一般的だ。ところが、雇用の安定と婚姻率とが強い相関関係にあることは、下図のような資料を見なくても誰にでも納得できることだ。私自身は就職前に結婚したが、雇用の不安があるのに家庭を持つことになったことを、「本当に大丈夫か?」と言われたものだった。つまり、価値観やマインドだけではなく「先立つもの」が必要なのだ。

消費行動も同じだ。可処分所得の増減と、消費支出の増減に、強い相関関係が見られる。これは健全な現象で、収入が増えないのに借金して支出すれば、将来的に破綻するか、でなければ、将来の支出を抑えるしかない。いずれにせよ、「先立つもの」を整えることが先決だ。マインドだけの精神論、竹槍では、B29とは戦えないのだ。

所得の伸びがない時に、自動車などの大型物件の買い物を控えるのは、これも当然ではないだろうか?また、ローンを組んで大型物件の買い物を行ったなら、他の支出を抑えるのも自然ではないだろうか?つまり、価値観が変わったために、結婚をしない、自動車を買わないというよりは、職の安定がなく、所得が伸びないので、結婚できない、自動車を諦めたというのが、より実態に近い。

今「経済成長以外の幸せの追求」が語られる理由は、経済成長が望めないから仕方なく他の幸せを求めるか、あるいは、経済成長の恩恵を味わい尽くし、もうこれ以上いらないと満足して他に幸せを求めるかのどちらかだ。日本経済の現状がどちらであるかは、可処分所得が増えていないことで、明らかだと言える。

もっとも、経済成長だけで幸せになれるわけでもなければ、経済成長がなくても幸せにはなれるが、これらはあえて今さら言うべき必要もないことであり、よもや経済を担当する省庁が提言することではない

日本は実質的な「経済制裁」を受けている?

では、日本は格差社会なのか?

結論を述べると、年収550万以上の世帯から、それ以下の世帯へと所得の再分配が行われているものの、格差は固定化、拡大している。

それのみならず、基本的には20年以上、経済成長が止まったなかでの再分配なので、中間層の負担が大きく、中間層が没落しつつある。

つまり、この20年間に行われた国営企業の民営化や、企業の統廃合促進、特区を含めた規制緩和、エコポイントなどを含む、すべての経済政策、財政政策、金融政策は、国内での所得移転を生み、中間層の没落を通じて格差を拡大させただけで、経済成長には役立たなかったのだ。

20年以上も経済成長が止まっているのは、経済制裁を受けている国を除けば日本だけだ。このことは、「もしかすると日本も実質的な経済制裁を受けているのでは?」という合理的な疑問を抱かざるを得ないほどの異常事態だ。

日本が経済制裁の対象?一体どうして?このようなことを、私などが断定できるはずもないが、投資運用の世界で、あらゆるリスクについて突き詰めてきた視点から、その可能性も排除できないことを、ここで述べたい。

Next: 「日本の終わり」は、バブル華やかなりし1989年に始まった



「日本の終わり」は1989年に始まった

ここで、ウィキペディアで、1989年のできごとを検索(2017年6月14日時点)してみよう。その引用が以下だ。

こうして羅列して見ると、ウィキペディアの情報は随分と偏っていると感じられる。とはいえ、年間を通して目立つのは東欧情勢だ。第二次世界大戦後の世界の実情だった「米ソ冷戦構造の終わり」の始まりが見て取れる。その意味では、昭和天皇の崩御も、「戦後の終わり」の象徴だったのかもしれない。

一方このリストからは、日本経済を語る上で、私が最も重要だと見なしている事項が抜け落ちている。あなたは、それに気づくだろうか?「あの頃」を振り返って、少し考えていただきたい。

1989年のできごと

1月:
1月7日 – 昭和天皇が崩御。日本での元号「昭和」の最後の日となった。
1月8日 – 日本で元号法に基づき、元号「平成」が始まる。
1月16日 – 日産自動車がパイクカーの「パオ」、「エスカルゴ」を発売。

2月:
2月1日 – 富士重工業が「レガシィ」を発売し、ワゴンブームの火付け役となる。
2月2日 – ソ連、アフガニスタンから撤退開始。
2月6日 – ポーランドで政府と反体制勢力による円卓会議はじまる。4月5日まで。
2月15日 – ソ連軍のアフガニスタン撤退が完了。
2月20日 – マツダがBG型「ファミリア」系列を発表。

3月:
3月13日 – 大規模な磁気嵐が発生。カナダ・ケベック州で大停電が発生するなど地球各地で被害(1989年3月の磁気嵐)。
3月24日 – エクソンバルディーズ号原油流出事故発生。

4月:
4月17日 – いすゞ自動車が「ミュー」を発売。
4月21日 – 任天堂の携帯型ゲーム機「ゲームボーイ」(GAME BOY) が日本で発売開始(北米では7月、欧州では翌年発売)。

5月:
5月1日 – フロリダ州オーランドにあるウォルト・ディズニー・ワールド・リゾート内に新しいテーマパーク、ディズニー・MGM・スタジオがオープン。
5月2日 – ハンガリー政府がオーストリアとの国境にある鉄条網の撤去に着手。鉄のカーテンが破られる。
5月22日 – 日産自動車がR32型スカイラインを発売(GT-Rは8月21日発売)。
5月23日 – ミッキーマウスの登場する第一作映画『蒸気船ウィリー』の日本国内における著作権の保護期間満了。

6月:
6月4日 – 北京で天安門事件が起きる。中国では1989及び64はネット検閲対象の数字になっている。
6月4日 – 1989年ポーランド議会選挙の1度目の投票行われる。
6月15日 – 18日 – 欧州諸共同体加盟国において欧州議会議員選挙の投票が行われる。
6月18日 – ミャンマーの軍事政権が同国の英語国号を「Burma」から「Myanmar」に改称。
6月18日 – 1989年ポーランド議会選挙の2度目の投票の結果、「連帯」の地滑り的圧勝が確定。
6月 – ポーランドで、自由選挙実施。非労働党政党「連帯」が上院過半数を占める。東欧革命のさきがけ。

7月:
7月19日 – ユナイテッド航空232便不時着事故。

8月:
8月14日 – トヨタ自動車が「デリボーイ」を発売。
8月14日 – セガ・エンタープライゼスが“Sega Genesis”(前年に発売された日本のメガドライブに相当)を北米で発売。後に発売された任天堂の“Super Nintendo Entertainment System”(略称:SNES、日本のスーパーファミコンに相当)と互角以上のシェア争いを展開し、セガのゲーム機の中で最大の成功を収めた。
8月19日 – ハンガリーで汎ヨーロッパ・ピクニックが開催、約600人の東ドイツ市民がオーストリア経由で西ドイツへ亡命。
8月24日 – ピート・ローズが監督在任中の野球賭博の廉で、MLBから永久追放される。

9月:
9月1日 – ユーノスが「ロードスター」を発売(10月には「100」、「300」も発売)。
9月12日 – 本田技研工業が「アスコット」を発売。
9月18日 – トヨタ自動車が「コロナEXiV」を発売。
9月19日 – UTA航空772便爆破事件。
9月24日 – フランス国鉄 (SNCF) TGVの第二世代にあたるTGV Atlantique が、世界初の時速300Km/hでの営業運転を開始した。

10月:
10月7日 – ハンガリー社会主義労働者党、ハンガリー社会党への改組を決定し、一党独裁政党としての歴史に終止符を打つ。
10月9日 – トヨタ自動車が「セルシオ」を発売。
10月12日 – 本田技研工業が「インスパイア」を発売。
10月17日 – 東ドイツで強権的な政治を行っていたエーリッヒ・ホーネッカー・ドイツ社会主義統一党書記長の書記長解任が党政治局で決議され、ホーネッカーが失脚。エゴン・クレンツが後任となる。
10月23日 – ハンガリー人民共和国が社会主義体制を完全に放棄し、ハンガリー共和国に。

11月:
11月9日 – 東ドイツがベルリンの壁の通行を自由化。
11月10日 – ベルリンの壁崩壊。ブルガリアで共産党書記長のトドル・ジフコフが失脚。これを機にブルガリアでも民主化が始まる。
11月24日 – チェコスロバキアでビロード革命。共産党政権が崩壊。

12月:
12月1日 – 東ドイツで憲法が改正され、ドイツ社会主義統一党(SED)による国家の指導条項が削除される。SEDの一党独裁制が終焉。
12月3日 – アメリカのジョージ・H・W・ブッシュ大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ最高会議議長がマルタ島で会談し、冷戦の終結を宣言(マルタ会談)。
12月20日 – 米軍パナマ侵攻。
12月22日 – ルーマニアのニコラエ・チャウシェスク政権崩壊(ルーマニア革命 (1989年))

さて、上記をざっと眺めて、「私が最も重要だと見なしている事項」にお気づきいただけただろうか?この一覧から抜け落ちているのは、ずばり「消費税の導入」だ。これが「日本経済の終わり」の始まりとなった。

Next: 日本の成長鈍化と経済規模縮小は「消費税」という大失政がもたらした



「消費税」という大失政がもたらした成長鈍化と経済規模縮小

日本経済は1990年から著しい鈍化を始め、デフレに向けて進み始める。また、経済規模は1997年にピークを付け、2016年に計算方法の見直しで30兆円強を上乗せするまで、19年間更新できなかった。つまり、日本の経済成長は1990年に急ブレーキが踏まれ、1997年からは徐々に縮小していた。この両年に何が起きたか?

1990年の前年1989年に3%の消費税が導入された。1997年には、消費税率が3%から5%に引き上げられた。このことは、個人消費が6割を占める日本経済は、消費税3%で病気になり、5%で死に体になることを示唆している。また内需が死ぬと、為替レートが日本経済を左右するようになる。

それまでの日本は内需が強く、中小企業が強く、零細企業や個人商店も健全だった。消費税は、これら日本の足腰を弱くさせ、為替レートを動かすだけで、景気も株価も左右できるようになった。プラザ合意後の急激な円高でも立ち直り、バブル経済にまでなった日本の底力は昔話となったのだ。

消費税率が8%になってもまだ生き延びているのは、未曽有の金融緩和がカンフル剤となり、一時的に息を吹き返しているに過ぎない。下図の後、2017年6月まで実質成長が4年7カ月続き、バブル期の4年3カ月を抜いて戦後3番目の長さになったとされるが、これはインフレ率が低いための実質成長で、デフレの恩恵だ。

また、消費税の導入は、法人税率引き下げとセットになっていた。これは企業を優遇し、個人を冷遇することだ。すべての人が会社員というわけではなく、会社員もまた消費税を支払うので、「格差拡大政策」だと言える。

法人税率引き下げは、企業に大きな恩恵を与えた。企業収益が急増しても納税負担の伸びは少なく、微増の場合には納税額が減りさえしたからだ。

結果的に、消費税を導入した1989年が、法人税収のピークとなった。

また所得税収も、消費税導入の2年後にピークを付け、以降はほぼ一貫して減り続けている。

もっとも、消費税は増え続けているので、格差拡大政策とはいえ、政府としては何を優先すべきかだけの問題だと、言い訳することができるのだろうか?

残念ながら、消費税導入の翌年には、税収そのものがピークを付け、財政は悪化の一途を辿った。赤字の穴埋めに借金することになったので、国債残高も急増した。

政府の経済運営、財政という観点から見ても、消費税導入と法人税引き下げのセット政策は、取り返しのつかないほどの失政だったと見るのが自然だ。

これが税収不足、財源不足による社会保障制度破綻の直接の原因だ。経済産業省が指摘するような少子高齢化、高齢者優遇では、ここまでの急速な悪化はない

Next: 殺された個人消費、拡大する格差。それで得をしているのは誰か?



殺された個人消費、拡大する格差

繰り返すが、日本経済の最大のエンジンは個人消費だ。消費税導入によりそこに急ブレーキをかけたために、日本経済は失速、消費税率を5%に引き上げ後は、成長そのものが止まった。

現在放映中のテレビのCMに、フリーマーケットのようなところで、出店者と顧客との売買が成立した時、フーテン風の人気俳優が出てきて、「ハイ、手数料ネ」と、売上の10%を巻き上げるというものがある。理不尽さを印象付けるものだが、実社会ではこれを政府が行っている。消費税では売上から、現状では8%、2年後にはCM同様10%を巻き上げるので、販売者と顧客の双方にネガティブな影響を与えるのだ。

日本経済最大のエンジンである個人消費への課税は、財政引き締め政策だといえる。つまり、景気を殺す政策だ。その結果、消費税導入後に赤字企業が急増、税金を払えない欠損法人が一時7割を超えるまでになった。その傾向は特に資本金1億円未満の法人に顕著だ。つまり、消費税導入には中小企業潰しの効果があった。個人商店への悪影響は言うに及ばない。

しかし、実際に潰すと社会に大きな混乱を引き起こすので、資金供給を行い、生存だけはさせている状態だ。とはいえ、赤字企業に勤める人が、所得増を期待することは困難だ。ここでも、大企業と中小企業、正規と非正規の所得格差は拡大した。

赤字だけではない。金融機関を含む企業の破綻も相次いだ。預金保険機構のWebサイトには、「はじめに」と題した、以下のような文章がある。

かつて、金融機関不倒神話が語られた我が国は、平成3(1991)年から同14(2002)年にかけて、合計180にのぼる金融機関の破綻を経験した。とりわけその破綻は平成8(1996)年6月から同14(2002)年3月迄の間(いわゆるペイオフ凍結時代)に集中し、合計164件を数えるなど未曾有の事態となった。このような状況は、破綻金融機関の数のみを見れば、米国の1980年代後半から1990年代初めの金融危機に比べ少ないものの、例えば金融機関全体の収益状況の落ち込みあるいは金融機関数減少度合い等においてはかえって米国の上記事例を上回る深刻さが認められるのであり、その実質的な規模や内外に及ぼした影響(インパクト)、処理コスト等を総合すると、我が国においては、まさに平成金融危機と呼んで差し支えないと考えられる。

出典:預金保険機構 機構の活動 はじめに

1989年に3%の消費税が導入され、1997年に消費税率が3%から5%に引き上げられたことを振り返ってみて欲しい。金融機関の破綻は、比較的身近な出来事なので、銀行や信金、あるいは保険会社、証券会社の破綻をご記憶の方々は多いことと思う。

死に体となった経済は、金融政策で救うしかない。成長が止まり、デフレとなった経済にゼロ金利政策が導入された。

これにより、赤字企業や債務の大きな企業は救われたが、年金、保険の運用が困難になり、貯蓄の金利もほぼゼロとなった。つまり、ここでも個人から法人への所得移転が行われ、中間層の沈下による格差拡大となった。

また、日銀は2016年2月のマイナス金利政策導入により、金融機関の業績悪化は避けられないとした。金融庁は地銀の6割は赤字になると明言した。マイナス金利政策には、大手の金融機関もこぞって音を上げているが、中小は存続そのものが危機的になる。

ここでも、中小潰しが行われ、大小企業間、そこに勤めている人たち、正規、非正規の格差が広がった。

誰が得するか?

未曽有の低利回りが長期化する運用難は、調達側から見れば借り手優位の時代が長く続くことを意味する。

最大の赤字に苦しむ、最大の資金調達者は日本政府だ。また米国政府の資金調達にも、ジャパンマネーが使われた。日本の米国債保有額は2017年4月末時点で1兆1070億ドルと、世界一の規模を誇っている。

日本のそうした対外純資産の大きさから、日本は世界一の金持ちだと主張する輩がいるが、それは大きな間違いだ。個人を見ても、企業を見ても、国を見ても、世界一の金持ちは米国だ。日本の対外資産が大きいのは、20年以上も国内に運用先がないために、やむなく海外資産を保有しているに過ぎない。米国債や、ウェスティングハウスなどの企業を保有しているゆえの対外資産だ。

マイナス金利政策で、対外資産の購入は加速しているが、それは同時にリスクが増大していることも意味している。しばしば取り沙汰されている「有事の円買い」の根っこは、そうした外貨建て資産の為替ヘッジなのだ。

Next: 日本は「実質的な経済制裁」を受けているのか?



日本は「実質的な経済制裁」を受けているのか?

歴史は残酷だ。イラクのフセイン政権は難癖をつけられて潰され、大統領は処刑されたが、忘れ去られつつある。エジプトなどのアラブの春は民主化運動の象徴的なものだったが、反米色が強く、軍事クーデターで潰された後は、「原理主義」だと言われている。米政府が軍事援助をしている相手国は、イスラエルとエジプトの軍事政権が他を大きく引き離している。ここに米国の本音を見ることが出来ないだろうか?

ベトナム戦争で米国が悪く言われるのは、負けたからだ。米国が勝っていれば、ベトナムは属国扱いとなり、歴史は塗り替えられていたはずだ。

その米国に負けた日本が、一時、「Japan as No1」などと持ち上げられた時代があった。1980年代後半だ。危険な兆候だった。その辺りから、米国と国際機関の日本に対する「助言」や「提言」は、国際化のためグローバル・スタンダードなどと言われたが、必ずしも日本のためにはならなかった。プラザ合意しかり、BIS規制しかり、税制改革しかりだ。

これは当然で、歴史を見れば、隣国や友好国への助言が相手国のためだった試しはなく、すべては自国(この場合は米国)のために行われるものだからだ。

またその頃、1991年には、もう1つの歴史的な大事件があった。ソ連邦の崩壊だ。ソ連邦は米国の政治上、軍事上のライバルだったが、それが消えた。ソ連邦に対抗するための極東の要だった日本の存在価値は大きく下がった。また、米国に政治上、軍事上のライバルがなくなってからは、ライバルは経済的に自国を脅かす国だけとなった。「Japan as No1」とは、米国人作家が言い出したことだが、危険な兆候だった。

私はメディアなどで、「親日的」「親中派」などと聞く度に、違和感を覚える。好き嫌いがあるとしても、好き嫌いで政治をするのだろうか。政治は、結局のところ損得だろう。私の見方では、日本の根本的な政策で、最も恩恵を受けているのは米国だ。日本の政治家は、米国に負けているのだ。

消費税の廃止が日本を救う

冒頭で紹介した、経済産業省の次官と若手有志による『不安な個人、立ちすくむ国家』には、「自分で選択しているつもりが誰かに操作されている?」との項目がある。

しかし私としては、日本の政治家、官庁にこそ「自分で選択しているつもりが誰かに操作されている?」のではと疑っていただきたい。そして、日本経済の低迷、格差拡大、財政破綻、社会保障制度破綻問題と、1989年から始まった「税制改悪」との関連を、自分のその目で確かめていただきたい。

政治家や経済人の多くが、社会保障制度の維持のためには消費税率の更なる引き上げが必要だと主張するが、上記の資料を見れば、それは妄言、あるいは虚言だと断言できる

私は、消費税を廃止し、格差是正の税制に方向転換することが日本を救うと見ている。

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2017年6月20日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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