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「海外銀行口座」開設への道~いま日本人であること、国外に資産を置くということ=俣野成敏

日本人が海外に銀行口座を持つ意味は大きく分けて2つあります。しかし、狭き門はより狭く、日本人が国外で口座を開設できる機会はだんだん減ってきているのが実情です。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年6月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

あなたは自分のお金を「自分のもの」と確信を持って言えるか?

日本人の行動はじわじわと「制限」されてきている

実は今、日本人が日本に居ながらにして海外銀行口座をつくれる機会というのは、だんだん減ってきているのが実情です。

今までそれを考えたことのなかった人にとっては、「えっそうなの?」くらいの話かもしれません。しかし自分の知らないところで、じわじわと自分の行動が制限されてきているという事実は、認識しておくべきではないでしょうか。

インターネットを叩けば、すぐに海外口座を開設するのが難しくなってきていることや、「ウチでしたら簡単につくれます」「儲かります」といったお誘いサイトが複数、並んでいることがわかります。

今、なぜ海外銀行口座なのでしょうか?それを開設することによるメリット・デメリットとは何でしょうか?本特集では、こうした疑問にお答えしたいと思います。

これを執筆する目的とは、この特集をお読みいただくことによって、「自分に海外口座が必要なのかどうか?」ということがご自身で判断できるようになることです。では、始めましょう。

1. 年々開設が難しくなっている海外銀行口座

読者の方の中には、「何で海外銀行口座なの?」「別に海外なんて行かないし」といった思いを持たれている方もいらっしゃるでしょう。そこで最初に、日本人を含めた世の中の簡単な流れと日本の現状についてまとめておきます。

【海外銀行口座開設を取り巻く環境の変化】

以前は海外銀行口座は誰でも簡単に開くことができた」と言うと、あなたは驚くかもしれません。かつての銀行は、HSBC(※)といった大手であっても、インターネットや郵送といった手続きだけで、日本人であればすぐに口座を開ける時代がありました。

HSBC…香港上海銀行。1991年にHSBCホールティングスが英国ロンドンに設立され、今では世界有数の金融グループとなっている

こうした流れが変わったのは、HSBCやバークレイズ銀行など世界の大手銀行が、マネーロンダリング犯罪資金の送金に利用されたことによる経済制裁を受けてからです。以来、銀行側としても口座保有者の身元確認や、目的の不明確な口座開設に対するハードルを上げ、非居住者に対する引き締めが国際的に一気に進みました。

また、リーマン・ショックや欧州債務危機などといった世界的な金融危機が続発した結果、先進国を中心に国家財政は逼迫。このような諸々の事情から、特に税務的な面において、お互いの情報を交換するようになりました。それがOECD(経済協力開発機構)が策定したCRS(共通報告基準)です。

CRSとは、加盟各国が自国の金融機関内にある、他の加盟国居住者の口座情報、氏名、住所、納税者番号、残高、利子、年間受け取り配当等の情報をお互いに報告し合う、という仕組みのことです。

なぜ、他の加盟国居住者が対象なのかと言うと、多くの国が属地主義と呼ばれる徴税方法を採っているからです。

属地主義とは、本人の国籍を問わず、居住している当地において課税される方式のことを言い、日本はこの方式を採用しています。

日本居住者は基本的に海外で得た利益等も含めて所得申請をしなくてはなりません。対する属人主義とは、その国の国籍を有する者に対して課税する方式で、たとえばアメリカなどがこちらの課税方式を採用しています。

日本も2018年度より上記のCRSに参加することになっているため、今年(2017年)よりすでに導入が始まっています。

1月1日以降、金融機関等で新しく口座を開設する場合には届出書が必要となっており、万一、虚偽の申告等を行った場合は、「租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(実特法)」第13条第4項に基づき、6ヶ月以下の懲役または50万円以下の罰金が科される可能性があります。

ここで「私は日本人だから関係ない」「今さら新しい口座はつくらないから大丈夫」と安心するのは早いでしょう。すでに口座を持っている人に関しても口座情報等を国税庁に報告される場合があります。

Next: 日本人の大半が知らない間に、「包囲網」は着実に狭まっている



【徐々に狭まる税金の包囲網】

現在、日本において規制しようとする側の意図としては、税金逃れ以外に「キャピタルフライト(資金流失)を防止したい」という目的があります。

日本人の中には、借金が雪だるま式に膨らんでいく日本に資産を置いておくことに対して不安を感じている人が多くいます。富裕層の間では一時期、国籍を捨てる人が続出しました。

それに対して国が採った対策の1つが、2015年7月より導入された国外転出時課税制度(出国税)です。これは主に、1億円以上の株式等を保有する者の含み益に対して所得税を課すものです。

さらに相続税・贈与税に関して、これまでは相続人(受贈者)、被相続人(贈与者)の双方が海外に5年以上居住していた場合は、国内財産のみが課税対象となる(国外財産には課税されない)という、いわゆる5年ルールがありましたが、それが2017年の税改正により10年へと変更になりました(2017年税制大網)。以後は10年超、海外に居住していないと国内外の全財産に課税されます。

また、これも多くの人が感じていることだと思いますが、現在、日本の金融商品の大半は利回りがよくありません。その理由については、メルマガVol.53「国内生命保険(1)」などでもお話しました。今の日本国債はほとんど利益がなく、経済成長率も低空飛行を続けています。

こうした状況にあって現在、金融業界を中心に「マイナンバーの収集が進んでいない」ということが問題になっています。

2018年より証券口座ではマイナンバーの提出が義務付けられており、銀行口座も任意で顧客に提出を求められるようになります。けれど実際にはNISA口座(少額投資非課税制度)でさえ大手証券会社で半分ほどしかマイナンバーを収集できていないと言います。

特に証券口座で登録しない場合、翌年から取引ができなくなる可能性があります。このままでいくと、証券会社にとっては大きな資金流出を招く事態となるかもしれません。

応じない人が多い理由は、「国に国民の資産を把握する権利があるのか?」という、国民の反発感情があるものと思われます。ここまでお伝えしたような事情が重なり合って、国内では必要のないはずの海外銀行口座に対する需要が増えているのだと考えられます。

Next: 日本人が海外銀行口座を持つことでいったい何が可能になるのか?



2. なぜ今、“海外銀行口座”なのか?

上記でお話したことは、日本人であれば、誰でも大なり小なり感じていることだと思います。

そもそも、なぜ今「海外銀行口座」なのでしょうか?海外口座を持つことによって、何が可能となるのでしょうか?まずはそこからお話したいと思います。

【海外口座を持つと何ができるのか?】

今一度、日本人の海外銀行口座に対する需要が増えている要因を整理しておきましょう。それは主に、

  1. 日本円、日本政府、日本の銀行に対する信頼の低下
  2. 日本国内の投資に、よい選択肢がなくなってきている
  3. そのため、海外に対して投資意欲の高い方が増えてきている

などが考えられます。

続いて、海外銀行口座を持つ意味についてですが、それには大きく分けて2つあります。

1つ目は「本当の意味での外貨を持つ」ということです。これを聞いて「どういう意味?」と思われた方も多いでしょう。

当メルマガでは、誰でもできる資産形成の第一歩として、「外貨を持つ」ということを推奨しています。それには、資産保全の一手段としての「通貨分散」という意味合いがあります。複数の通貨を持つことによって、為替による資産の目減りをある程度防いだり、日本円だけで資産を持つのに比べてリスクを低く抑えられる、といった利点があります。

確かに、今は日本の銀行でも外貨を購入することは可能ですが、外貨を日本円と同じように自由に扱うことはできません。口座から外貨を現金で降ろす際にはいちいち手数料を取られたり、一部の支店でしか取り扱いをしていない場合などがあります。

それは結局、日本の銀行が消費者に代わって両替したり、外貨を海外から輸送しなければならないため、そのための手間賃がかかるからです。

しかも結局、日本の銀行を経由した外貨預金では、本当の意味での通貨分散にはなりません。それは日本の会社が管理している以上、外貨預金と言ってもただ単に「同じ会社のA商品とB商品を買っている」のと同じことだからです。

現状では、日本ですぐに起こる可能性は低いと考えられている「預金封鎖」ですが、万一、日本で発生した場合は、当然、外貨も封鎖の対象となります。しかも日本の銀行であっても、外貨預金はペイオフ(預金保護)の対象外です。

真の意味での外貨を持つとは、「海外銀行口座で外貨を持つ」ことだと言っても過言ではないでしょう。

Next: もう1つの目的。海外投資をする際の「中継基地」として利用する



【海外投資を行う際には海外銀行口座が必要】

次に、海外銀行口座を持つ意味の2つ目ですが、それは口座に「海外投資をする際の、中継基地的な役割を持たせる」ということです。

一般に、海外投資を行う際には、日本円を現地通貨に両替して投資を行います。実際にお金を投じて、投資に回されている間、そのお金は証券会社や保険会社等、どこかの金融機関に預けられています。しかし投資期間が終了し、お金を受け取る際に、銀行口座が必要となります。

もちろん、現金の着地点・出口として、日本の金融機関を使うことはできます。しかしその場合は、いちいち送金・両替をしなければならないでしょう。

ところが海外に銀行口座があれば、両替せずにそのまま外貨として保有でき、日本に戻すことなく、そこから再投資をすることも可能です。

これが海外口座を「海外投資の中継基地・置き場所として使う」の意味するところです。もし、海外に銀行口座がなかったとしたら、たちまちお金の――
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【仮想通貨の口座を海外投資で使えるのか?】

3. 海外口座は「隠すためのものじゃない」

本日のワンポイントアドバイス


※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年6月29日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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【関連】「海外銀行口座」開設への道(中) 日本人がプロの詐欺師に勝つ方法とは?=俣野成敏

【関連】「海外銀行口座」開設への道(完) 国外資産は隠せない?ぼくらが旅に出る理由=俣野成敏

【Vol.57】「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(上)(6/29)目次

~日本人に海外の窓口は開かれるのか?~

〔1〕イントロ:
これで終わりか、それとも新たな憎悪の始まりなのか?

〔2〕本文:
「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(上)

1. 年々開設が難しくなっている海外銀行口座
◎海外銀行口座開設を取り巻く環境の変化
◎徐々に狭まる税金の包囲網

2. なぜ今、“海外銀行口座”なのか?
◎海外口座を持つと何ができるのか?
◎海外投資を行う際には海外銀行口座が必要
◎仮想通貨の口座を海外投資で使えるのか?

3. 海外口座は「隠すためのものじゃない」

★本日のワンポイントアドバイス☆★
投資を行うに際し、災いをある程度、未然に防ぐための5項目

☆今週の宿題★☆
投資を始める前に、現状を把握しよう

〔3〕次回予告(予定):
「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(中)

〔4〕今週のQ&Aコーナー:
経歴はピカイチな社員が会社のお荷物に!欲しい人材を見抜くには?

〔5〕ニュースのビジネス的着眼点:
GE(ゼネラル・エレクトリック)本当の強さの秘密とは?

〔6〕編集後記:
クイズで投資家脳を活性化!

おまけ:「投資家脳クイズ」

最近、読んだある出版社のオンライン記事に、「50代の方が世帯主のご家庭で、貯蓄なしが3分の1」という衝撃の内容が書かれていました。しかし読み進めるうちに、「はて?」と感じること多数。記事の切り口は素晴らしいですし、いろいろな意見があって当然だとは思うのですが。

たとえば一部を抜粋しますと、このように書かれています。

「3000万円の退職金があるなら半分は預金、半分をインデックス投信に回すことをお勧めします。それも一気にではなく、毎月少しずつ同じ金額で購入していきます。そうした投資方法を『ドル・コスト平均法』といい、損失が一時発生したとしても、長期にわたるトータルの利益でカバーしていくものです」

そもそも、今時「退職金3000万円」が現実的なストーリーと言えるのでしょうか?当メルマガをお読みの方であれば、上記の文章に関する疑問点が最低3つは思い浮かぶと思いますが、いかがでしょう?

そこで「投資家脳クイズ」です!

Q. 上記の文章において、過去、当メルマガでお伝えしてきたことと照らし合わせて、疑問点を最低3つ挙げてください。

あなたもぜひ、考えてみてくださいね。(正解はメルマガVol.57の編集後記で!)

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俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2017年6月29日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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