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「海外銀行口座」開設への道(中) 日本人がプロの詐欺師に勝つ方法とは?=俣野成敏

今回は「海外銀行口座開設」特集の2回目です。前回の記事では「なぜ今、海外銀行口座なのか?」をメインテーマに、現在の社会情勢や海外銀行口座を持つ意味、また「仮想通貨と海外銀行口座は何が違うのか?」といったことについてお話しましたが、今回は、実際の事例をもとに、「暗躍する海外銀行口座開設詐欺」の見分け方について見ていきたいと思います。(俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編

プロフィール:俣野成敏(またのなるとし)
30歳の時に遭遇したリストラと同時に公募された社内ベンチャー制度で一念発起。年商14億円の企業に育てる。33歳で東証一部上場グループ約130社の現役最年少の役員に抜擢され、さらには40歳で本社召還、史上最年少の上級顧問に就任する。2012年の独立後は、フランチャイズ2業態6店舗のビジネスオーナーや投資活動の傍ら、マネープランの実現にコミットしたマネースクールを共催。自らの経験を書にした『プロフェッショナルサラリーマン』及び『一流の人はなぜそこまで、◯◯にこだわるのか?』のシリーズが、それぞれ12万部を超えるベストセラーとなる。近著では、『トップ1%の人だけが知っている』(日本経済新聞出版社)のシリーズが10万部超えに。著作累計は44万部。ビジネス誌の掲載実績多数。『MONEY VOICE』『リクナビNEXTジャーナル』等のオンラインメディアにも数多く寄稿。『まぐまぐ大賞(MONEY VOICE賞)』を3年連続で受賞している。

※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年7月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

海外口座特集(中) 日本人が「鴨ネギ」を回避する方法はあるのか?

はじめに――「海外送金できない国」日本

先日、私が運営しているマネースクールのFacebookコミュニティに、あるメンバーの嘆きが記載されていました。

その書き込みによると、「所用で日本の大手金融機関から海外送金をしようとしたところ、行員から根掘り葉掘り聞かれた挙句、結局、その銀行から海外送金をすることはできなかった」ということです。

銀行から言われたのは、「海外送金の目的が『不正な取引等に関わっていない』ことを証明できるだけの書類を提出してください」とか、「送り先の口座利用者が誰なのかを明らかにしてください」といったことでした。

書類とは、たとえば取引を交わした契約書、請求書、証明書などの類です。また、口座利用者を証明するために、契約に至るまでに当人と交わしたメールやFAXなどの証拠書類の提出を求められました。

メンバーはできる限り対応し、追加の書類も提出しましたが、「証明が不足している」と判断されてしまったようです。ところが他のメンバーの中には、別の銀行から送金した際に、そこまで厳しく言われなかった人もいました。

現状では、銀行ごとに請求される書類に統一性がないようで、さらに行員によっても対応がまちまちの模様です。

この方の例で言うと、もちろん後ろめたい理由など一切なく、世界的にも信用力の高い送金先でしたが、「リスクを取りたくない」という銀行の体質に加え、行員自体が海外送金や英文書類に慣れておらず、「分からないことはやらない」という態度に終始していたように感じます。

「日本でもフィンテックの推進を!」と騒ぐ前に、先にそういった体質の改善を行わない限り、日本の金融業界に未来はないのではないのでしょうか。

「預金の引き出し拒否!」が起きた理由

今から1年ほど前のことですが、当マネースクールのメンバーがネット上で「アメリカで預金封鎖が始まった?!」という記事を見つけ「本当でしょうか?」とFacebookコミュニティ上にアップしてきたことがあります。

それは、あるアメリカ人がバンク・オブ・アメリカの支店にお金を下ろしに行った時のこと。その人はいつも使っていた銀行の行員から突然、パスポートとグリーンカードの提示を求められ、「それがないとお金が下ろせません」と断られてしまいました。それに憤慨したその方のご家族が「アメリカが預金封鎖をしたんじゃないか」とネット上に書き込んだ記事を和訳したものでした。

もちろん、アメリカで預金封鎖は起こっていません。それだけ口座管理がうるさくなってきていた、という話です。実は、お金を下ろしに行った人というのは不法移民の方でした。その方は正規のルートで口座を開いていなかったため、個人情報の登録が適正にできていなかったのです。

その方は善意のあるアメリカ人でも、その人を許してしまうと悪意のあるアメリカ人も口座を持ててしまうことになり、不正な海外送金に使われてしまうかもしれません。それを防止するために、すでに開設していた銀行口座に対してもう一度セキュリティチェックが行われた、というのが真相でした。

これはKYC(Know Your Customer)という個人認証の1つです。万一、銀行がこれを怠っていると判断された場合、ペナルティや多額の罰金を科される他、社会的信用にも大きな傷がつくことになります。

銀行側としては、KYCの手順をマニュアル化するためには、どうしても対応が画一的になってしまうのはやむを得ないことです。たとえ顧客に多少不愉快な思いをさせようとも、社会的制裁を受けるワケにはいかないのが実情なのでしょう。

Next: 賢い人ほど騙される!「海外銀行口座開設詐欺」の実態とは?



1. 「海外銀行口座開設詐欺」とは、どのようなものなのか?

これをお読みのあなたは「詐欺なんて、私には関係ない」と思っているかもしれません。しかし実際には、「詐欺師は常にあなたの隣りにいる」と考えていたほうがいいでしょう。彼らはいつも、付け入る隙を狙っています。

【マイナンバーから完全に逃れるには、日本と完全に縁を切るしかない!?】

現在、日本では海外送金をする際に、マイナンバーの提示を求められるようになっています。それを提出すれば、送り先が海外にある自分の銀行口座だった場合、それとマイナンバーが紐付けされることになります。

この制度の導入によって、特に困っているのは海外に移住をした方や、日本に居住していない方々です。今、日本から海外送金をするか、または逆の場合でもマイナンバーが必要ですが、国外居住者はマイナンバーを持っていません。

本来、日本国内に住んでいた方が海外に転居する場合は、金融機関に対して住所を海外に移すことを届け出る必要があります。しかし、多くの方がそれをしていないために、日本の金融機関のサービスを受けられない場合があるようです。

マイナンバーに関しては現在、3年の経過処置があるものの、実際の対応は銀行によって異なっているようです。さらにこの後、経過処置が終了する2018年末以降がどうなるのかは、いまだに明確には示されていない模様です。

さて。それでは本題に入りたいと思います。もし、あなたが「海外に銀行口座を持ちたい」と考えた場合、どのようなリアクションを取るでしょうか?おそらく、まずはご自身でお調べになると思いますが、今なら、最初にインターネットで調べるのが一般的ではないかと思います。

人が「海外に口座を持ちたい」と思った際に、始めのウチは純粋に「信頼性のあるところ」「安心なところ」を探します。ところがいろいろ見ているウチに、やがて「どうせこのお金は使わないから、だったら定期預金にしておこう」と思いつきます。すぐ使うお金であれば、海外の銀行口座に置こうとは思いませんから。

すると、「どうせなら高い金利がいいな」とが出始めます。そこに万一、投資商品でも絡んでくれば、たいていの人は、完全にその美味しそうな話の虜になってしまいます。それがどんなに危険なことであるのかも考えずに…。

私たちがこれからお話する、その危険な匂いのする海外銀行口座に着目するようになったのは、当マネースクールに所属している、ある方の相談を受けたことがきっかけでした。

Next: 巧妙な詐欺案件に潜むワナ。海外口座を作るなら対処法を身につけよ



【「海外口座開設が便利で簡単」なワケ】

それは去年(2016年)の春先のこと。ある日、自営業をやっている経営者の方から、「こんなに良い投資案件を見つけました」というお話をいただきました。

案件は「フィリピンのマニラに1000万円でコンドミニアムを買う」というものでしたが、スキームがとても魅力的な内容でした。

それはまず、フィリピンのある銀行で1000万円を預けて5年間の定期預金を組み、その預金金利で不動産投資のローンを支払う、というものでした。その銀行は、1000万円以上を5年定期で預けると、何と利息を年利11.5%もつけてくれると言うのです。

しかし、その話にはいろいろとおかしな点がありました。

現地の一般的な金融商品と比べても高すぎる金利、わざわざ日本人向けにつくられたネットの銀行口座開設申し込みページ、これでもかというほどの優遇キャンペーン…。

私は、相談された方には「その案件には不明瞭な部分が多いため、当マネースクールとしてはその投資はオススメできません」とご返答しました。

さらに調べてみると、当コミュニティ内でこの案件を検討している人が他にも複数名いたため、実態調査を行った後に、こちらの見解をお伝えしておきました。

約半年経過後、その銀行は破綻しました。知らずに投資をしていれば、当コミュニティだけで数千万円の被害が出ていたでしょう。それがフィリピンのイースタンリザール銀行です。
フィリピンの地域銀行、今年22行目の破綻 預金は99%保護 – マニラ経済新聞

2. 巧妙な詐欺案件に潜むワナとその防止法

現在、日本人の海外銀行口座開設が年々、難しくなっているのは前回メルマガ(Vol.57)でご紹介した通りです。

そうなると、日本人が海外口座を開設するには、基本的には仲介業者を使うか、もしくはコネを頼るしかなくなります。そこに、詐欺師の付け入る隙が生まれるのです。

Next: 日本人詐欺グループが関与か?「これ以上ない好条件」の真の目的



【「これ以上ない好条件」の裏に潜む真の目的】

イースタンリザール銀行は、フィリピンの1地域銀行に過ぎなかったにもかかわらず、日本人向けに、実によくできたネットの口座開設ページを作成していました。おそらく、日本人の詐欺グループが絡んでいたのでしょう。

破綻してしまったため、すでにそのページを見ることはできませんが、そこには「開設する4つのメリット」として、このように書かれていました。

(1)郵送のみで米ドル口座開設
(2)共同名義の口座が開設可能
(3)高金利の米ドル定期預金(最高5年で11.5%)
(4)フィリピンのペイオフ対象(最高100万円まで)

(1)は、「もしかしたら発展途上国はKYCがうるさくないのかも」と勘違いする人がいるかもしれませんが、正規の銀行ならば基本はどこも同じです。

(2)の共同名義口座というのは、たとえば夫婦連名などで1つの口座をつくり、資産を共有できる仕組みのことを言います。世界では一般的ですが、日本の銀行にはない概念です。日本の場合は、当人が亡くなるとすぐに口座が凍結されます。それは相続税・贈与税があるためです。他の国は、そもそも相続税・贈与税がない国が多いために、このような仕組みが用意されています。

(3)の高金利とは、10万ドル(約1000万円以上)を5年定期で預けると米ドル建てで年利11.5%が利息でつく、という触れ込みでした。

(4)は、フィリピンの法律でペイオフ(預金保護)対象額が100万円までと決まっており、預金が「その対象となっていた」ということです。

イースタンリザール銀行の日本語ネット口座開設ページでは、さかんに「業界最安値の3万円で、郵送にて口座開設をサポート」「先着5名様までは3000円の定期預金手続きサポートプレゼント中」といったキャンペーンを打ち出し熱心に日本人の顧客を募っていました。なぜなのかはもう、お分かりですね?最初から、計画倒産をするつもりだったからです――
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【「その投資が本物かどうか?」を見分ける指標とは】

3. 詐欺に遭わないために「自分の本心はどこにあるのか?」を考える

本日のワンポイントアドバイス


※本記事は有料メルマガ『俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』2017年7月6日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会に初月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

【関連】「海外銀行口座」開設への道~いま日本人であること、国外に資産を置くということ=俣野成敏

【関連】「海外銀行口座」開設への道(完) 国外資産は隠せない?ぼくらが旅に出る理由=俣野成敏

【Vol.58】「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(中)(7/6) 目次

~日本人に海外の窓口は開かれるのか?~

〔1〕イントロ:
「預金の引き出し拒否!」が起きた理由

〔2〕本文:
「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(中)

1. 「海外銀行口座開設詐欺」とは、どのようなものなのか?
◎マイナンバーから完全に逃れるには、日本と完全に縁を切るしかない?!
◎「海外口座開設が便利で簡単」なワケ

2. 巧妙な詐欺案件に潜むワナとその防止法
◎「これ以上ない好条件」の裏に潜む真の目的
◎「その投資が本物かどうか?」を見分ける指標とは

3. 詐欺に遭わないために「自分の本心はどこにあるのか?」を考える

★本日のワンポイントアドバイス☆★
海外投資商品のチェックポイント4項目

☆今週の宿題★☆
投資詐欺に振り回されないように、目的を考えてみよう

〔3〕次回予告(予定):
「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(下)
◎日本人は海外銀行口座を持つことは可能なのか?
◎開設するメリットとデメリットを比較すると?
◎なぜ、他国の銀行がアメリカに罰金を支払うのか?
◎海外投資に成功している人とそうでない人を分けるものとは?

〔4〕今週のQ&Aコーナー:
確定拠出年金の節税ってどれくらい効果があるの?

〔5〕ニュースのビジネス的着眼点:
「仮想通貨狂想曲」の火つけ役は日本?!

〔6〕編集後記:
仕事においてもっとも大切なこと

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6月配信分
【Vol.57】「海外銀行口座開設」徹底攻略法!(上) ~日本人に海外の窓口は開かれるのか?~
【Vol.56】「生命保険は結局、入った方が得?損?」(4) ~2017年の保険料改定がもたらすもの~
【Vol.55】「生命保険は結局、入った方が得?損?」(3)~2017年の保険料改定がもたらすもの~
【Vol.54】「生命保険は結局、入った方が得?損?」(2) ~2017年の保険料改定がもたらすもの~
【Vol.53】「生命保険は結局、入った方が得?損?」(1)~2017年の保険料改定がもたらすもの~

5月配信分
【Vol.52】「やっぱりオーナーになりたい!」(下)~フランチャイズビジネスの成功法則とは?~
【Vol.51】「やっぱりオーナーになりたい!」(上) ~フランチャイズビジネスの成功法則とは?~
【Vol.50】「今から不動産って間に合うの?」(下)~人口減少時代の不動産投資とは~
【Vol.49】「今から不動産って間に合うの?」(上) ~人口減少時代の不動産投資とは~

4月配信分
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【Vol.46】「実物資産投資ってどうよ?」 ~実物資産の正しい考え方と活かし方~
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【関連】日本人が知らない「生命保険の真実」お得なプランで大損していませんか?=俣野成敏

【関連】儲かるフランチャイズビジネスの見抜き方~「コンビニはヤバイ」の先にある成功法則=俣野成敏

【関連】日本のサラリーマンが知るべき「持ち家貧乏」と不動産投資の甘い罠=俣野成敏

俣野成敏の『トップ1%の人だけが知っている「お金の真実」』実践編』(2017年7月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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