マネーボイス メニュー

都内ワンルームマンションは「バブル」なのか?アジア競合都市と比較する=田中徹郎

東京都内の不動産は、ここ数年でずいぶん値上がりしたように思います。お客さんからも「バブルじゃないですか?」と聞かれること多々。今回は、収益率と初期投資の回収期間で考えてみましょう。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

香港やシンガポールと比べて「東京のバブル度」はどれくらい?

東京都内の不動産、ここ数年で大きく値上がり

東京都内の不動産は、ここ数年でずいぶん値上がりしたように思います。

例えば日本橋や秋葉原など、いわば都内の準一等地にある中古のワンルームマンションの相場を見ますと、たしか僕がこの事務所を開業した頃は1500万円前後でした。いまから振り返るとずいぶんと安かったものです、いまでは2000万円ほどしますので。

そのせいかここ数年お客さんから、「都内のワンルームマンションはバブルじゃないですか?」などとよく聞かれます。不動産相場がバブルか否か…この点について考える場合、いくつかの視点があります。

全部をお伝えしますとメルマガ3回分ほどになりそうなので、今回は「収益率と初期投資の回収期間」に絞ってお話を進めたいと思います。

都内中古ワンルームマンションの収益率は本当に小さいのか

都内の中古ワンルームマンション(築15年ほどの築浅物件)の手取り収益率は、概ね4〜4.3%程度だと思います。

この値は果たして小さいのでしょうか、それとも大きいのでしょうか。小さすぎれば物件が高すぎるということ。逆に大きすぎれば、物件が安すぎるということです。

例えば、この収益率をアジアの諸都市と比べるとどうでしょう。香港やシンガポールあたりは2%前後まで下がってきていますし、上海や北京も大差ないでしょう。つまりアジアの競合都市と比べ、都内の案件の収益率は際立って高いといってよいでしょう。

まずこの観点から、「都内の不動産にバブル的な要素はない」といってよいと僕は思います。

あるいは、日本の標準的な金利である「10年物日本国債」の金利と比べるという手法も有効です。現在の日本国債10年物の金利水準は概ねゼロ近辺ですから、都内ワンルームはこれに比べて4%ほど高い収益を得ることができるわけです。

国債に対して上乗せされる収益は「リスクプレミアム」と呼ばれ、これは投資家が背負い込むリスクに対する見返りです。現在、都内不動産のリスクプレミアムは4%もあり、これは歴史的に見て高い水準にあるといえるでしょう。言い換えれば、都内不動産は、日本国債に比べて極めて割安な状態にあるということです。

Next: バブルか否かを計るもう1つの指標「投下資金の回収期間」を計算してみる



不動産相場がバブルか否かを計る指標

不動産相場がバブルか否かを計る指標として、「投下した資金の回収に要する期間」も挙げることができます。

例えば1000万円で物件を買って、毎年50万円の家賃をえることができたとすれば、「回収年数」は20年です。※1000万円÷50万円=20年

では、例えば以下のようなワンルームがあったとすれば、回収年数は何年になるでしょう。

この場合、投下した資金2000万円を回収するのに21年ほどかかる計算になります。※2000万円÷96万円≒20.83年

ただし、不動産は建物部分と土地部分に分解でき、土地部分は劣化いたしません(地価が変動しなければですが)

仮に上記の回収計算から土地代金は除外して考えると、どうでしょう。都心の築浅物件は一般的に、土地部分が40%ほど占めますので、この物件の建物部分の価値は、1200万円ほどとみてよいでしょう。価値が償却しない土地部分を除くと、初期投資の回収年数はさらに短くなり、わずか13年で初期投資額を回収できることになります。※1200万円÷96万円=12.5年

一方で、ワンルームマンションの稼働年数は一般的に60年ほどと言われます、少し短めに見積もって50年と考えるとどうでしょう。上記物件は築15年ですから、購入後35年ほどは稼働すると考えられます。仮に上記のように購入後13年で初期投資額を回収できれば、回収が終わった後の22年は、まるまる投資家の儲けになると考えてよいでしょう。※35年-13年=22年

都内の不動産はまだ「バブル」ではない

では例えば香港やシンガポールのように、収益率が2%に下がればどうでしょう

2000万円の物件価格に対して2%の収益ですから、年間の手取り収入は40万円です。東京の事例と同じく購入額2000万円、建物部分を1200万円として回収年数を計算しますと以下のようになります。

1200万円÷40万円=30年

このように初期投資の回収まで30年もかかることになります。この物件の稼働年数は35年残っていますが、そのうち30年は初期投資部分の回収期間であり、回収が終わって5年も経てば物件の稼働期間も終了です。つまり物件の償却という点を考えると、投資家の儲けはほとんどないと考えてよいでしょう。

このような観点から、やはり収益率2%の香港やシンガポールはすでにバブル的な兆候をしめしていると考えてよいでしょう。

逆に申し上げれば収益率4%の都内は、まだ正常な投資行動の対象だと考えております。

【関連】毎年500万円ずつ赤字を作れる「米国不動産」を利用したすごい節税法=田中徹郎

【関連】マレーシア第2の都市・ジョホールバルが「廃墟化」するこれだけの理由=午堂登紀雄

【関連】【書評】老いる家 崩れる街 住宅過剰社会の末路=姫野秀喜

一緒に歩もう!小富豪への道』(2016年12月6日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

無料メルマガ好評配信中

一緒に歩もう!小富豪への道

[無料 毎週火曜日+号外あり]
富裕層むけ、富裕層入りを目指す方むけの究極の資産防衛メルマガ!一国だけに資産を集めておくのは危険な時代がやってきました。海外ヘッジファンド、貴金属、不動産からアンティーク・コインまで、金融不安に負けない世界分散ポートフォリオを、経験豊富なファイナンシャル・プランナーが誠意をもってご案内します。

シェアランキング

編集部のオススメ記事

この記事が気に入ったら
いいね!しよう
MONEY VOICEの最新情報をお届けします。