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日本を裏切ってAIIB(アジアインフラ銀)に加入するトランプ氏のアメリカ=田代尚機

アメリカは間もなくアジアインフラ設備投資銀行(AIIB)への加入を表明する可能性が高い。聯合早報(11月15日)、人民日報海外版(11月16日)、サウスチャイナ・モーニングポスト(11月11日)など、本土・香港で複数のマスコミが関連ニュースを報じている。(『中国株投資レッスン』田代尚機)

ビジネスマンのトランプ氏が選ぶのは安倍総理ではなく習近平だ

トランプ大統領誕生で活発化するインフラ関連銘柄

A株市場ではこのところ、インフラ建設・エンジニアリング関連銘柄の値動きが活発である。特に、海外業務に強みがあるところの株価上昇が著しい。

アメリカ大統領選挙の結果が明らかになった11月9日の終値と11月25日の終値を比べると、

中国中治(上海A株、601618):20.2%上昇
山東路橋(深センA株、000498):14.5%上昇
中国鉄建(上海A株、601186):14.2%上昇

とそれぞれ上昇している。この間の上海総合指数の4.3%上昇や、深セン総合指数の3.0%上昇と比べると、大きくアウトパフォームしている。

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理由ははっきりしている。トランプ氏が新しい大統領に選ばれることに決まったからである。トランプ氏は大統領就任初日にTPPから離脱することを表明している。それは中国包囲網の大きな後退を意味する。

アメリカ、近くAIIBに参加表明か

さらに重要な話題が一つある。アメリカは間もなくアジアインフラ設備投資銀行(AIIB)への加入を表明する可能性が高いことである。聯合早報(11月15日)、人民日報海外版(11月16日)、サウスチャイナ・モーニングポスト(11月11日)など、本土・香港で複数のマスコミが関連ニュースを報じている。

聯合早報網訊は、「AIIBの金立群総裁は人民日報において、“トランプ氏の幕僚チームにおける多くの人々が、オバマ大統領がAIIBに参加したがらなかったのは間違いであると認識している。また、オバマ政権のある高官はAIIBに賛同していると聞いている。アメリカ政府が今後AIIBを支持したり、AIIBに参加する意思を示したりする可能性を排除することはできない”などと発言した」と報じている。

人民日報海外版では、「外交部の耿爽報道官は15日、記者会見の席上で、アメリカのAIIB加入問題について、“世界最大の経済大国であるアメリカがAIIBに加入することは好事である。中国側は発足当初から一貫して歓迎する態度である”と答えている」などと報道している。

記者がこうした質問をしたのは、サウスチャイナ・モーニングポストが11日、「トランプ氏の側近で上級顧問(安全保障担当)のジェームズ・ウールジー元CIA長官が金立群総裁と会見したときにアメリカがAIIBに参加しなかったのは間違いだと発言した」などと報道したことが背景にある。

Next: ビジネスマンであるトランプ氏はAIIBの利権に乗っかる



ビジネスマンであるトランプ氏はAIIBの利権に乗っかる

AIIBは、主に一帯一路戦略を金融面から支えるために中国が主導して設立された銀行である。一帯一路戦略とは、シルクロード経済ベルト(一帯)21世紀海上シルクロード(一路)の2本のシルクロードを中国が関連各国と協力し、発展させる戦略である。

シルクロード経済ベルトでは、中国とカザフスタン、ウズベキスタン、タジキスタン、トルクメニスタン、アフガニスタン、パキスタン、イラン、イラク、アルメニア、トルコ、ウクライナなど16カ国・地区が対象となる。これらの地域全体で交通網、物流網、通信網、エネルギー供給網を発展させるとともに、合弁事業を促進すべく要所に重点経済貿易産業園区を作る計画である。

21世紀海上シルクロードでは、アセアン諸国、インド、スリランカ、ケニア、ギリシャなどにかけての地域が対象となる。これらの地域において主要港湾を整備し、物流網を発展させる計画である。

中国には世界最大クラスの金融機関、建設・エンジニアリング企業がある。大開発で多くの投資を行い、多くの工事を行い、多くの利益を得るのは中国企業である。ジェームズ・ウールジー元CIA長官が、AIIBに加入しなかったのは間違いであるといったのは、この利権をみすみす逃すのを間違いであると考えているからだろう。

アメリカにはもはや、この地域の大開発を主導できるだけの経済力はない。ならば、それをつぶしにかかるのではなく、それに乗っかった方がアメリカの利益につながる。トランプ氏は不動産事業で財を成した優秀なビジネスマンである。自国や自国企業の利益を考えれば、アメリカがAIIBに加入した方が有利である。加入する日は近いだろう。

Next: トランプ氏と波長が合うのは、安倍総理ではなく習近平国家主席



トランプ氏と波長が合うのは、安倍総理ではなく習近平国家主席

トランプ氏は、インフラ投資を拡大すると明言しているが、財政資金の不足は深刻である。民間の資金を大量に導入する以外に方法はない。ならば、中国のやり方は非常に参考になるはずだ。社会主義国家として、政府が主導して経済を発展させる方法を絶えず模索し続けている中国は、財政政策に関しては世界で最も進んだシステムを有しているといって良いだろう。

アメリカがAIIBに加入する一方で、アメリカは新しくAIIB同様の国際的な開発銀行を設立し、そこに各国から資金を出資させる。その新しい開発銀行の融資を核に、さらに民間から資金を引き出し、官民連携(PPP)で投資を行う。当然、できるだけ安く、効率よく工事を進めなければならないが、そうであれば、中国企業が受注するチャンスは大きい…。

いずれ分かることである。表面的に米中貿易摩擦は激化するだろうが、中国を一方的に排除することは難しい。報復措置を考えればそれは損な選択である。

トランプ氏はビジネスマンである以上、政治もビジネスとして考えるだろう。だとすれば、中国を上手く利用することを考えるだろう。トランプ氏と“波長が合う”のは日本の安倍総理ではなく、中国の習近平国家主席の方ではなかろうか?
(11月26日作成、有料メルマガから一部抜粋)。

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中国株投資レッスン』(2016年12月1日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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TS・チャイナ・リサーチの田代尚機がお届けします。中国経済や中国株投資に関するエッセイを中心に、タイムリーな投資情報、投資戦略などをお伝えします。中国株投資で資産を大きく増やしたいと考える方はもちろん、ただ中国が好きだという方も大歓迎です。

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