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アマゾンのAI食料品店『Amazon Go』はあと5年で世界を何色に塗り替えるか?=吉田繁治

AIを活用したリアル店舗は、1995年から約10年かかったオンラインショッピングのアマゾンよりも、はるかに早く開発が進みます。アマゾンが作ったAI店が世界各地に現れるのは、2年後と想定しなければならないかもしれません。5年後なら100%確実です。(『ビジネス知識源プレミアム』吉田繁治)

※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年12月7日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した内容(約4000文字)もすぐ読めます。

喰われる側に残された時間はあと5年。AI活用のAmazon Goとは

世界からレジが消える

ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)を電子版でとっています。毎日メールで、主要な記事のタイトルが送られてきます。読みたい記事があれば、それをクリックするとWSJのWEBに飛ぶ。

昨日、「数店舗で実験していたアマゾンが、全米に2000店舗の食料品店をオープンする」という記事が目にとまりました。完全自動のレジのないAI店です。新刊書で、2022年からのAIによる広範囲な産業革命を書いているところなので、早速、記事を読んでみると以下の主旨でした。

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Amazon Go(アマゾン ゴー:食料品のAI店舗)』は、実験されているAI店の3つのフォーマット(店舗類型)のひとつ。日本語では店舗フォーマットを「業態」と言っています。これは商品ではなく、販売と経営管理による分類です。例えばコンビニは、食料品、飲料、雑貨を扱っています。食料品店ではない。「コンビニ」という販売方法の業態です。

店舗面積は150平米(約30坪とコンビニ並み)。棚に、美しくグロサリー(腐らない食料品)が陳列され、顧客がそれを手に取ると、スイカのように電子マネーがチャージされたスマートフォン内の「仮想バスケット」から代金が引かれます。棚に戻すと、チャージが解かれる仕組みです。

レジはなく、改札口のような自動チェックのレーンが並んでいます。30坪の店舗面積ですから、陳列商品はセブン・イレブン並みの1600~1700品目くらいでしょう。

買物を終えた人は、レジに並ぶことがない。2000年代の顧客価値になっていて、求められている「3~5分でのショートタイムショッピング」が、人的なコストなく実現します。

現在は、シアトルにあるアマゾンの本社内で、社員向けの店舗として実験中です。30坪の小型店ではなく、150坪や500坪の大型店も、同じAIの仕組みで作ることができます。

リアル店舗のレジコストは売上比2.8%

一般に、食料品スーパーで、8時間労働のフルタイム換算で33人の人が働いているとすると(年商10億円の店舗:1人あたり売上3000万円)、レジ担当はその35~45%です。10人から15人がレジ担当です。

店舗段階の人件費比率は、売上の7%(7000万円)くらいなので、レジの人件費はそのうち約40%(2800万円)でしょう。8時間労働で1人あたり230万円の賃金です。店舗作業員の賃金は、日米ともに大差はありません。伝統的なスーパーより、店舗の人件費コストが売上対比で2.8%は低くなります。
(注)だだしAI化で削減されるコストは、他にも売上の2.2%くらいあります

ソフトは無限複製ができる

AIの追加費用はかかりますが、そのソフトは、無コストで無限複製ができます。現在の開発費は大きいでしょうが、「Amazon Go」の店舗を増やせば、アプリケーションの1店あたりコストは、どんどん低くなっていきます。

最終的には1店舗1000万円程度には下がるでしょう。「2000店×1000万円=200億円」です。

AI書店も

アマゾンは書店分野でも、AIを装備したリアル店舗を、マイクロソフトの牙城シアトルですでに稼働させながら、実験を重ねています。これも400店の展開計画があるという。書店であれ食料品であれ、AIを活用する方法はまったく同じです。

オンラインショッピングは5~10年で普及

アマゾンが、インターネット上の仮想店を始めたのは1995年でした。先行していたアップル製品のように、マウスをクリックすることでコマンドを打ち込む手間が自動化されたWindows95が出たころです。

開始から5年後の2000年に大きくブレークし、リアルのチェーン店(バーンズ&ノブルやボーダーズ:両社とも700店)を駆逐して行きました。アマゾンも2000年頃は物流センター投資で赤字でしたが、株価時価総額はすでに数兆円に高騰していました。

現在の時価総額は$3727億(約37兆円)で、トヨタ自動車($1800億:18兆円)の2倍です。株価の時価総額は、投資家による企業価値の評価です。とんでもなく高く評価されています。理由は、将来利益が数十倍に大きくなるという期待からです。<中略>

AI店舗は、1995年から約10年かかったオンラインショッピングのアマゾンよりも、はるかに早く開発が進みます。アマゾンが作ったAI店が世界各地に現れるのは、2年後と想定しなければならないかもしれません。5年後なら100%確実です。2年後(2019年~)の可能性は60%でしょうか。

これからの5年で起こる大変革

アマゾンの登場で、伝統的なリアル書店のチェーンが倒産に追いやられたような変化は、最長でも5年後には起こるでしょう。この意味で、わが国の主要100万店(総年商130兆円)、大型店2万3000店は、AI店導入の対策を立てておかねばならない。

筆者の近所の、新しく美しいパン屋では、バーコードをスキャンするレジがない。

棚からとってカゴに入れたパンを、白い台の上に置くと、それぞれのパンを形と色(両方を形相という)で自動認識し、瞬間に明細と合計金額を出します。スマホの自動清算ではないので、現金の授受はあります。

これを、スマホに電子マネーでチャージする仕組み(仮想カート機能)と連結すれば、アマゾンの食料品AI店のようになります。そのような日常はもう、そこまで来ているのです。(ベーカリー・ファクトリー:開発はダスキン)

このベーカリー・ファクトリーの自動認識は、不定型で個々にバーコードがつけにくい生鮮類(青果、鮮魚、精肉、総菜、お弁当)に応用できます。皿にバーコードがついた回転寿司と、同じ仕組みです。商品の認識をカメラで、判断をAIで行う。回転寿司も在庫補充部分はハイテク産業です。

Next: 消費者にとっても実はお得? AI店が成功する条件が明らかに



AI店での買い物の流れ

食料品のAmazon Goや、AI書店では、バーコードのついてないパンを自動識別できる「ベーカリー・ファクトリー(ダスキン)」と同じセンサーが、天井のカメラで棚を常時、見ています。

入店時に、スマートフォンに表示したバーコードで本人認証を行います。それが盗難されたものでないことを証明するためでしょう。
(注)わが国でAI店を作るときは、この個人認証の仕組みは省略し、スイカのようなスマートフォン内の電子マネーに、自動チャージするようにできます。スマートフォン自体がWiFiで個別認証されるのでほぼ同じですが…

ある食料品のパッケージが棚から取られると、商品名、価格、数量を、顧客のスマートフォンにWiFiで送りながら、スマートフォン毎の「仮想ショッピングバスケット」を、本部のクラウドの中に自動生成する。

取った商品を戻せば、代金の引き落としはキャンセルされます。これが、「SelfyCart(個人カート)」の機能です。

顧客が商品を選んで、レーンのようなレジか、空港の金属探知機のような囲い(顧客の目からは見えないようにできる)を通ると、買い物の完了です。

AI店が成功する条件

こうしたAI店が成功する条件として、リアル店舗に対する設備コストと維持コストの低さがポイントになります。コスト率が低ければ、商品価格を下げることができ、商品価格が平均で5%下がると売れ数は増加するからです。

(1)全国1万3000店の大型食料品スーパーでは、売上に対する総コスト率は15%~25%です。競争力ある店舗で20%としましょう。
(2)コンビニでは、売上のほぼ15%あたりが店舗の総コスト率です。

直感的な概算ですが、AI食料品スーパーの店舗段階の総コスト率は、さらに5%下がり、売上比で10%から15%にできるように感じます。コンビニでもやはり5%下がり、10%でしょう。その分、安く売ることができるということです。平均5%も安く売れる店舗は売上が増えます。
(注)ウォルマートの価格が総平均すれば5%安です。この総平均は20%の商品で10%から15%安いことを意味します

食料品スーパーでは、今、都市部型の小型店(150坪:コンビニの約5倍)に出店のチャンスが大きい。都市部にコンビニ(5万4000店:2016年)やドラッグストア(2万店:2015年)が増えている理由は、高齢化で「住まいの都市部回帰」が生じているからです。

都市の中心部では、400坪や500坪の大型店は、敷地と駐車場の課関係で、可能な立地が限定されています。このため、せいぜい150坪店になります。これが不足しているので、コンビニとグロサリー併設型のメガドラッグストアが増えているのです。

Anazon GoのようなAI店化によって、今は400坪クラスと大型である食料品スーパーでも、圧縮した150坪店を作ることができる可能性が高くなります。

Next: あと5年で、レジだけでなく店頭在庫管理や補充もAI任せに



AI化はレジだけではなく、店頭在庫管理と補充にも使える

Anazon Goの在庫管理システムがどうなっているか、当然に極秘です。しかし、ディープラーンニング型のAIが持つ商品の自動識別機能を使うと、生鮮の店頭在庫管理(鮮度管理)と商品補充にも使うことができます。

生鮮の棚の上に、商品識別器を設置する。店舗の監視システムのようなイメージです。

[カメラで棚を写す]
   ↓
[画像情報から商品、展示数、売れ数、鮮度切れをリルタイムで認識させる]
   ↓
[そのデータをWiFiで、地域プロセスセンターに送信する]
   ↓
[店舗別、棚別の補充必要数を自動計算する]
   ↓
[商品毎に、必要補充数数と補充時刻を決定する]
・補充数=(リードタイム)×売れ数予測数+安全在庫数
・売れ数予測では指数平滑を使います
・天候やイベントなど、その商品の売れ数に影響ある要因も数値化
(売れ数予測=指数平滑数±売れ数要因1の加味±売れ数要因2の加味……)
   ↓
[プロセスセンターで配送車に積み付けする]
   ↓
[該当店舗に配送する(2022年からは小型の配送車を利用)]

これら7ステップが「AIサプライチェーン」です。DCの倉庫内も完全自動化ができます。現在のAI技術で可能です。

ほぼ5年後には、「AIサプライチェーン」に接続されたAI店が、わが国でも増えるでしょう。

コンビニが最初に行うでしょう。セブンイレブンは、システムの開発費に数百億円(600億円)をかけてきたからです。次がメガドラッグストア、食料品スーパーでしょう。<後略>
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※本記事は有料メルマガ『ビジネス知識源プレミアム』2016年12月7日号の一部抜粋です。興味を持たれた方は、ぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。本記事で割愛した内容(約4000文字・人工知能の仕組みや、小売業・卸売業における対策の必要性)もすぐ読めます。

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ビジネス知識源プレミアム:1ヶ月ビジネス書5冊を超える情報価値をe-Mailで』(2016年12月7日号)より一部抜粋、再構成
※記事タイトル、本文見出し、太字はマネーボイス編集部による

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