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【米FOMC】イエレンFRB議長は「トランプは裸の王様だ!」を叫ぶか?=藤井まり子

利上げが確実視されている12月FOMC。イエレンFRB議長は、FOMC後の記者会見で、イケイケ状態のトランプラリーに、いくばくかの「冷や水」を浴びせるかもしれません。(『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』藤井まり子)

※本記事は有料メルマガ『藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』2016年12月13日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にご購読をどうぞ。当月配信済みのバックナンバーもすぐ読めます。

「トランプノミクス」イエレンFRB議長の評価は?FOMCのポイント

本場トランプラリーは「根拠なき熱狂」状態

トランプが米大統領選を制した直後から始まったトランプラリーは、「巨額減税・巨額インフラ投資・金融環境分野をはじめとする規制緩和」を合言葉に、イケイケ状態を続けています。

アメリカ株式市場は2017年の上昇分を、選挙後わずか1カ月で先取りして達成してしまったかもしれません。今現在のアメリカ株式市場は、シラーPERでは27.91倍。サブプライム危機時の水準を上回っています。

ほとんど「根拠なき熱狂状態」ですね。近いうちの大幅調整は必須でしょうが、問題は、その「近いうちの調整」がいつ始まるのかということです。この年末年始か?来年1月20日のトランプ大統領就任式か?はたまた今週12月14日のアメリカFOMCかもしれません。

【関連】ロックフェラーに喧嘩を売るトランプ。2017年のパワーバランスはこう変わる=斎藤満

利上げほぼ確実、米FOMC2つのポイント

12月14日のイエレンFOMCは、ほぼ100%の確率で、1年ぶりの政策金利引き上げ(0.50-0.75%へ)を発表してくることでしょう。

12月14日のイエレンFOMCは、2017年の景気見通しにおいて、失業率と物価上昇率を若干(ほんのちょっとだけ)上方修正するかもしれません。アメリカの実質経済成長率もいくばくか(ほんのちょっとだけ)上昇修正するかもしれません。

が、イエレンFRB議長は、その記者会見で、これら「若干の上方修正」は、イエレンFRBの「高圧経済(=緩和的な金融政策の継続)」のおかげ、効果であると、改めて主張することでしょう。

「トランプノミクスのアメリカ経済への効果は、まだ予測不可能。効果があるとしても、その効果が表れるのは2017年遅くか2018年以降だ」と、記者会見で表明することでしょう。

大統領選挙後初めてのFOMCということで、12月14日のFOMCは、とても注目されています。12月14日のFOMCは、特に以下2つの点が重要です。

まず1つは、記者会見の中身です。イエレンはFOMC後の記者会見で、「トランプ次期大統領の経済政策」について、公式にはどのように評価するのでしょうか?イケイケになりすぎているマーケットを、いくばくかクールダウンさせるのではないでしょうか?このまま熱狂を放置すると、熱狂が覚めた後の政策が面倒になります。

そして2つ目は、「2017年の政策金利の見通し」(いわゆる「ドット・チャート」で有名)です。イエレンFOMCは、イケイケになっているトレーダーたちが予測しているほどには、2017年の政策金利(FF金利)引き上げ回数を増やさない可能性があります。

イエレンFRB議長の難しい立場

今回のFOMCでは、イエレンFRB議長はとても難しい立場に立たされています。

記者会見後のコミュニケーションの仕方次第では、あまりに厳しい発言をすれば、「根拠なき熱狂」のアメリカ株式市場を急速に冷やしてしまう危険があります。それは、彼女も望んでいないでしょう。コミュニケーションにも「さじ加減」が重要なのです。

とはいえ、イエレンFRB議長が、記者会見後のコミュニケーションで、「熱狂に水を差すようなこと」「マーケットをクールダウンさせること」を、まったく発言しないわけにはいかないと思います。それでは「バブル放任」「職務怠慢」になってしまうからです。

学者としての良心が、バブル放任を許さないのではないでしょうか?この日のイエレンFRB議長は、

「FOMCは、緩和的な金融政策を継続する。アメリカ経済は、この緩和的な金融政策の効果で回復している。アメリカ経済は景気が良い。これからも穏やかに改善してゆくだろう。
ただし、今現在の株式は熱狂している。今現在のドル高も行き過ぎだ。今現在のドル高・長期金利の急騰は、金融引き締め的な効果がある。ドル高・長期金利高がこれ以上継続することは、アメリカ経済のみならず、新興国の実体経済をも悪化させる危険がある。
このまま、ドル高や長期金利の上昇が、実体経済を冷やしてゆくことを、FOMCは警戒している」

という旨を、(記者からどんな意地悪問題で突っ込まれても)根気よく伝え続けなければなりません。

そう考えると、12月14日のイエレンFOMCを境に、内外のマーケットはいくばくかクールダウンを開始するのではないでしょうか?

Next: トランプノミクスをFOMCはどう評価?/「王様は裸だ」発言はあるか



FOMCによる「トランプの経済政策への評価」

ここからは、さらに詳しい解説です。

まず、1つ目の注目点は、FOMCによる「トランプの経済政策への評価」についてです。
イエレンFRB議長は、これを記者会見でいかように伝えるのでしょうか?

これについては以下のように、すでに幾人かの連銀関係者が、学者らしく、次期政権に媚びることなく、いくつかの評価(メッセージ)を次期大統領に送っています。すなわち、

「アメリカ経済はほぼ完全雇用を達成(需給ギャップもほとんどない)。今のアメリカ経済は景気が良い。だから、トランプ次期大統領の掲げるような(不況期向けの)景気刺激的な政策(大型減税や巨額なインフラ投資)は必要ない」

「今の時点では、次期政権の政策の行方が不明確なので、2017年以降の景気予測は、とても不透明、予測は不可能」

「次期大統領の財政政策が景気全般に影響を及ぼし始めるのは、議会の承認が必要なことを考えると、2017年中ではなく、2018年に入ってからではないのか?」

「構造改革につながるような、すなわち、生産性をアップするような(投資減税などの)減税策ならば、(FRBとしては大歓迎で)2018年のアメリカ経済を若干上向かせるだろう」

「生産性をアップさせるようなインフラ投資ならば、(FRBとしては大歓迎で)2018年のアメリカ経済を若干は上向かせるだろう」

「生産性をアップさせないような、正しくない財政出動ならば、今のところそれは必要ない」

「近い将来、アメリカ経済がリセッション入りするような状態になったら、その時こそは、FRBは財政刺激策を歓迎する」

などなどです。

以上のことは、マクロ経済学的には至極当たり前のこと。「マクロ経済学の真実(常識)」です。が、マーケットが「根拠なき熱狂」の渦の中でイケイケになっている状態では、こういった「当たり前」のことをきっぱり指摘できる人が少なくなっています。連銀関係者を除けば、皆無かもしれません。

海外のマスメディア報道では、「今回のFOMCでイエレンFRB議長は、トランプ大統領と真っ向から対峙することを避けるために、マーケットをクールダウンさせるようなことは発言しないだろう」と予測している向きもあります。

「王様は裸だ」発言はあるか

こういった「マーケットに水を差すようなこと」とは、一言でいうならば「王様は裸だ」発言をすることでしょう。イエレンFRB議長は、今回のFOMCでは、とりあえず「王様は裸だ」発言を控えるだろうと予測するメディア報道が少なくないのです。

でも、果たしてそうでしょうか?

「王様は裸だ」と言うことが、次期大統領と対峙することなのでしょうか?

「王様は裸ですよ」発言、すなわち「トランプ様の経済政策はFRBとの擦り合わせができていないので未完成ですよ」と、真摯に穏やかに伝えるほうが、王様(トランプ様)から感謝されるのではないでしょうか?

イエレンFRB議長は、この12月14日の記者会見で、学者らしく、次期政権に媚びることなく、「マクロ経済学の真実」を毅然と語るのではないでしょうか?

Next: 市場の熱狂に水を差す?イエレンFRB議長のこんな発言に要注意



市場の熱狂に水を差す?イエレンFRB議長の発言に要注意

かくして、この日のイエレン議長は、記者会見で、イケイケのトランプラリーに、いくばくかの「冷や水」を浴びせるかもしれません。
(そしてこういう苦言を意外と真剣に、素直に聞いたりするのが、「元やり手のビジネスマン」であるトランプ次期大統領なのです)

さらに、もっと明快に、イエレン女史は「今現在のアメリカ株式市場はバブルの領域に入り始めている」「株式市場では、根拠なき熱狂が巻き起こっている」と警告するかもしれません。

さらにさらに、イエレンFRB議長は「急速に進行するドル高と長期金利の急騰を警戒する」と明言するかもしれません。

こうなれば、為替市場では、「ドル安円高、ドル安ユーロ高への揺り戻し」が始まることでしょう。内外の株式市場は、「トランプノミクスの幻想」からいくばくか覚めて、日本株式市場も含めて、「トランプオフ(=リスクオフ)」になるかもしれません。

もちろん、今現在進行形の「トランプラリー」は、苛烈極まりない状態。イエレンFRB議長が、控えめに「王様は裸だ」発言を行っても、この発言を熱狂が弾き飛ばしてしまう可能性は否定できませんが――
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藤井まり子の資産形成プレミアム・レポート』(2016年12月13日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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