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師走にドル円・株式が下落した「2015年末相場」の再現はあるか?=近藤雅世

昨年のこの時期も12月16日に、2008年以来8年振りの利上げが行われた。昨年も利上げ直前までドル高となり、ダウ平均株価も値上がっていた。必ずしも昨年通りとなるという保証はないが、利上げが行われる前後には似たような動きになるのではないかという仮定も成り立つ。(『グローバルマネー・ジャーナル』近藤雅世)

※本記事は、最新の金融情報・データを大前研一氏をはじめとするプロフェッショナル講師陣の解説とともにお届けする無料メルマガ『グローバルマネー・ジャーナル』2016年12月14日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に定期購読をどうぞ。

プロフィール:近藤雅世(こんどうまさよ)
ビジネス・ブレークスルー大学 資産形成力養成講座講師。早稲田大学政経学部卒業後、三菱商事に入社。主に非鉄金属、貴金属分野に従事。貴金属チームリーダーとして、日本で最初の『商品ファンド』の設定に携わり、プラチナでは世界最大手のトレーダーに。2010年5月に株式会社コモディティー インテリジェンスを設立し、取締役社長に就任。

昨年通りなら、今後ドルは反転下落、株価は米国も日本も下落する

今年末は昨年末の相場展開と同様になるのか?

トランプ新大統領の減税・インフラ投資・規制緩和の政策を囃して、米国株価は史上最高値を更新し、ドルインデックスは101を超えている。しかし、14日に予定される米国連邦準備制度理事会(FRB)による公開市場委員会(FOMC)では、政策金利が利上げされることが確実視されている。(※編注:15日未明にイエレンFRB議長が会見し、フェデラル・ファンド金利を0.25%引き上げることが決定したと発表。2017年の利上げペースについては、金利引き上げを3回見込み、9月時点の見込みである2回から上方修正した。)

昨年のこの時期も12月16日に、2008年以来8年振りの利上げが行われた。昨年も利上げ直前までドル高となり、ダウ平均株価も値上がっていた。下のチャートは昨年の動きと今年の動きを重ねて書いたものである。必ずしも昨年通りとなるという保証はないが、利上げが行われる前後には似たような動きになるのではないかという仮定も成り立つ。

それが成立すれば、今後ドルは反転下落して、ドル安円高となり、株価は米国も日本も下落するというシナリオになる。金価格は昨年の場合、利上げ時期が最安値であった。今年も同じなら今後金価格は反転上昇することになる。

世界の金の需要はそれほど芳しいものではない。インドは廃貨の影響を受けて経済が混乱している。引き出し額は制限され、結婚費用を引き出す場合も結婚を証明した上で25万ルピー、約40万円に限る制限があるため、結婚シーズンは4月までずれ込んでいる。そのため新婚用の贈り物金需要が減退。

中国でも宝飾品の売れ行きが伸び悩む一方で、政府により金の輸入許可証の発給が制限されている。中国からの資金流出が相次ぎ、為替が8年振りの人民元安となっているためだ。また、サウジアラビアでは労働者の3分の2を占める政府職員の給与がカットされ、2018年には湾岸諸国に一律5%のVAT(消費税)が導入される。こうしたことは中近東の消費意欲を減退させている。

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今後のマーケットは幻滅リスクにも注視すべき

原油に関しては、11月30日のOPEC諸国の減産決議に続いて、12月12日、ロシア、メキシコ、カザフスタン、オマーン等が減産を決議し、合計で日量約160万バレルの減産となる見込みである。そのニュースは原油価格を引き上げ、一時1バレル54ドルまで上昇させた。

しかし、米国EIA(エネルギー情報局)はこうした減産を踏まえて、2017年の原油価格予測を上半期49ドル、来年末を54ドルとかなり控え目なものとして公表している。その背景は、米国のタイトオイルは原油価格が50ドルを超えてくると増産するためである。米国石油業者は漁夫の利を得ることになる。また、市場はOPEC諸国や非OPEC諸国の減産決議を懐疑的に見ている。「言うは易し、行うは難し」である。

同様なことは、トランプ次期大統領の言動についても言える。減税、インフラ投資、規制緩和という願ったり叶ったりのトランプ政策も、資金が潤沢にあってのこと。その財源はどうするのかという疑問にトランプ氏はどう応えるのであろうか。口先介入に過ぎず、実行は今後のことである。それなのに、株式市場や為替相場はトランプ氏の言動を夢見て、有頂天になって価格は上昇している。

しかし、1月20日に大統領が就任し、大統領になる前に述べた施策をいざ現実的に実行に移すとなると多くの困難が待ち構えている。言うだけは簡単であるが、それが実行できなかったときのトランプ新大統領の態度や言動に、世界は幻滅するのではなかろうか。今からその時のために投資家は身構えておく必要があると思う。

中国に対しても、また移民政策も、TPPやFTPA離脱も、キューバ問題などオバマ政権が堅実に積み重ねてきた政策をことごとく否定してきた新大統領は、さて何をもって米国をNO.1の国に育て上げるのであろうか。お手並み拝見であるが、もし期待外れに終われば、その失望は大きいどころかこれまでの秩序が破壊される恐れがある。皆はしっかりつかまって、その波動に耐えるべきであると思われる。

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グローバルマネー・ジャーナル』(2016年12月14日号)より抜粋
※記事タイトル、太字はMONEY VOICE編集部による

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