家電量販店が発行するクレジットカードはたくさんありますが、あなたに合った1枚はどんなカードでしょうか。量販店の特色を絡めながら考えてみます。(『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』岩田昭男)
※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2017年8月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
プロフィール:岩田昭男(いわたあきお)
消費生活評論家。1952年生まれ。早稲田大学卒業。月刊誌記者などを経て独立。クレジットカード研究歴30年。電子マネー、デビットカード、共通ポイントなどにも詳しい。著書に「Suica一人勝ちの秘密」「信用力格差社会」「O2Oの衝撃」など。
岩田昭男の上級カード道場:http://iwataworks.jp/archives/12912
クレカ研究歴30年の岩田明男氏が、家電量販店カードを徹底比較!
変貌著しい「大手家電量販店」のいま
家電量販店の業界は、2010年から2012年にかけて、薄型テレビが売れすぎた反動で、業績が大きく落ち込みました。最近になってようやく回復傾向を見せていますが、まだ、本格復調には至っていません。
長期不振の原因としては、ネット通販の拡大も挙げられます。とくにAmazonに代表されるインターネット通販が、店舗を持たない強みから低価格と品揃えを武器にして伸びています。こちらの影響も大きいと見られています。
この逆風に対して、ヤマダ電機、ビックカメラ、ヨドバシカメラなどの3大家電量販店は、規模の拡大と多角化によって生き残りを図ろうとしています。その結果、家電量販店はその姿を大きく変えました。
【2017年 家電量販店 売上高ランキング】
【売上高】( )内は昨年順位
1位(1位):ヤマダ電機・・・・・1兆5630億円
2位(2位):ビックカメラ・・・・・7790億円
3位(4位):ヨドバシカメラ・・・・6796億円
4位(3位):エディオン・・・・・・6744億円
5位(5位):ケーズデンキ・・・・・6581億円
6位(6位):ノジマ・・・・・・・・4320億円
7位(7位):上新電機・・・・・・・3743億円
8位(8位):コジマ・・・・・・・・2262億円
9位(9位):ベスト電器・・・・・・1595億円
10位(10位):キタムラ・・・・・・1413億円
※2017年3月期決算をもとに作成
売上高比較~3強の戦いに
トップと2位については、ヤマダ電機とビックカメラで昨年と変わりません。昨年4位だったヨドバシカメラが3位に浮上、同3位だったエディオンが4位に下がりました。
その他は順位に変動はありませんが、第8位のコジマはビックカメラの傘下に、第9位のベスト電器はヤマダ電機のグループにそれぞれ入りました。
以下に各社の概要をまとめました。
<第1位 ヤマダ電機>
売上高で首位。全国最多の928店舗(2016年現在)で展開しています。売り場面積3000平方メートルを超える郊外型店舗から始まって、いまはターミナル型の都心店舗「LABI」を池袋、新宿に出すなど幅広い戦略をとっています。
しかも、新たに住宅事業やリフォーム分野に参入したほか、電力小売事業もスタートさせるなど多角化も積極的。ベスト電器を買収して事業規模を拡大しました。
(店舗は全国に広がり、都心・郊外の両方にあるので利用しやすい。また、フロアも広く家族連れで行ってもゆっくり選ぶことができます。)
<第2位 ビックカメラ>
都市型店舗を中心に全国で209店舗(2017年現在)を展開。最近は地方への出店も増えています。繁華街のターミナルに店舗があるために、交通系電子マネーとの相性がよく、それをどう取り込んで使うかがポイントになっています。
また、同業のコジマを買収してグループ傘下に置きました。総合衣料のユニクロとは共同で、新宿に大規模店「ビックロ」を出店し、家電も洋服もなんでも揃う専門店として人気になっています。
(家電製品を買うついでに書籍・雑誌から日用品まで揃うので便利です。)
<第3位 ヨドバシカメラ>
梅田、秋葉原などに巨艦店を出し、収益率の高さでは業界1といわれています。こちらもビックカメラ同様の都市型店舗で全国に約23店舗(2017年現在)あります。また、ネットショッピングの「ヨドバシドットコム」は、配送料無料のサービスが好評で、量販店サイトの中では頭ひとつ抜きん出ました。
(ターミナルに立地する店舗が多いので通いやすいのが特徴。ネット通販だけでなく補償サービスも充実しています。)
このように現在の家電量販店は、規模の巨大化と経営の多角化で、熾烈な競争の中にあります。そうした中で、顧客囲い込みの切り札となっているのが、それぞれが発行している提携クレジットカードなのです。各社とも他店との差別化にこのカードを活用しようとしています。
Next: いまや主戦場は提携カード。各社で共通する囲い込み戦略とは
買い物の中心は自店発行の提携クレジットカード
姿を変えつつある大手家電量販店ですが、店を回ってみると、気がつくことがあります。どの店も品揃えがほぼ決まっており、値付けも大差がないことです。「他店よりも1円でも安い商品があったらレシートを持ってきてください。さらに安くいたします」といった表示があったりしますが、目玉商品を除いて、飛び抜けて値段の安い製品はほとんど見かけませんでした。
あったとしても、店員が他店の値段にすぐに対応してくれます。競争が熾烈になっているので、値段的に差をつけるのが難しくなっているのが現状です。
以前は家電量販店に行くと、店員との値引き交渉が楽しみでしたが、今はほとんどありません。
だいたい値引きという概念がなくなったようです。本体価格を引き下げるといったことは少なくて、代わりにポイント10%分をカードに載せるからといった具合になります。
売り場ではオマケはすべてポイントで処理するといった流れになっていて、現金ベースで割り引いて欲しいと願っている私などには、味気ない気がします。
しかし、ポイントサービス中心の、カード中心の時代になったのだから、ある程度は仕方がない、それに合わせるしかないとも思うのです。
家電量販店発行の提携クレジットカードの共通点
各社の提携クレジットカードには、見逃せない点があります。
大手家電量販店ではそれぞれに独自のポイントサービスを用意しており、その多くが現金で買い物をすると、基本的に商品価格の10%分のポイントが付くというものです。
しかし、クレジット払いで買い物をした時は、ポイント還元率が下がって8%にしかなりません。それをカバーするのが、各店の提携クレジットカードなのです。
このカードを使えば、現金で買い物するのと同じ10%の還元率で買い物ができます。これが提携クレジットカードの最大のウリで、この還元率の高さで顧客を囲い込もうとしているのです。
その他にも、これらのカードには様々なサービスが付帯しています。
・2種類のポイントが同時に貯まる
・ネット通販で配送料などが優遇される
・電子マネーとの交換が有利になる
などです。
利用する店が決まっているなら、その店の発行する提携カードを使わないと損をするという構造になっています。
それでは、3社の提携クレジットカードを詳しく見ていきましょう。
Next: ヤマダ、ビックカメラ、ヨドバシ…各カードの機能は?
【ビックカメラ】電子マネーとの合わせ技で11.5%還元
ビックカメラ:ビックカメラSuicaカード
ビックカメラとJR東日本の電子マネーSuicaが合体したカードです。年会費は初年度無料で477円(税別)ですが、年1回使えば翌年も無料になります。公共料金の支払いをこのカードに設定しておけば、永年無料で使えます。
通常利用時はビックポイントとビューサンクスポイントの2種類のポイントが同時に貯まり、合計1%の還元となります(ビックポイントが1000円=5ポイント[5円相当]、ビューサンクスポイント=2ポイント[5円相当])。また、ビックカメラとコジマでの買い物に使う場合には、現金払いと同じ10%還元のポイントが付与されます。
ビックカメラSuicaカードの特色として見逃せないのはチャージです。Suicaをクレジットチャージして1.5%還元をゲットできるのですが(ビューサンクスポイントが貯まります)、チャージしたSuicaで、ビックカメラとコジマで利用すると、現金払いと同率の10%ビックポイントが貯まり、この2つを合わせると11.5%相当の高ポイント還元となります。
さらにJR東日本の定期券購入、Suicaへのチャージ等ではビューサンクスポイントが1000円につき6ポイント(15円相当)と通常の3倍貯まりますから、オートチャージの設定をしておけばポイントがドンドン増えていきます。
また、モバイルSuicaにすると年会費1000円(税別)かかりますが、このカードなら当面無料の特典があります。
- 国際ブランド:Visa、JCB
- 年会費:477円+税 ※初年度無料、年1回の利用で次年度無料
- 基本ポイント:ビックポイント、ビューサンクスポイント通常利用。ビックポイント/1,000円=5ポイント(1P=1円相当)。ビューサンクスポイント/1,000円=2ポイント(1P=2.5円相当)
- 電子マネー機能:Suica
- 付帯保険:海外旅行傷害保険は最高500万円(自動付帯)、国内旅行傷害保険は最高1000万円(利用付帯)
【ヨドバシカメラ】プラス1%の還元、無料の商品補償が大きな魅力
ヨドバシカメラ:ゴールドポイントカード・プラス
ヨドバシカメラでの利用では現金払いと同率のポイントが貯まります。さらに、クレジット払いに対応して1%のポイントも追加になるため、合計11%のポイント還元となります。
ヨドバシカメラ以外でこのカードを使っても1%のポイントがつき、1ポイント=1円で全国のヨドバシカメラの店舗で利用できます。
また、カードを利用して購入した商品が万が一破損、盗難などにあった場合、無料で90日間最高100万円まで補償する「お買い物プロテクション」が付帯しています。これを年会費無料で利用できるのですからお得です。
さらに年会費3900円(税別)の「ヨドバシ・プレミアム」に加入すると、「お買い物プロテクション」がグレードアップ。補償期間が365日となり、ヨドバシカメラ以外で購入した対象商品でも補償を受けられます。また、会員限定のセールやボーナスポイントのキャンペーンにも参加できます。
ネット通販「ヨドバシドットコム」も人気です。送料無料のうえ、即日配送エリアが広がって、さらに利用しやすくなりました。なかでも、書籍は通常3%ポイント還元のところこのカードで購入すると、10%の還元になります。書籍のまとめ買いを考えているなら朗報です。
- 国際ブランド:Visa
- 年会費:無料
- 基本ポイント:ゴールドポイント100円=1P(1P=1円)※ヨドバシカメラでは現金払いと同率のポイントも付与される
- 電子マネー機能:なし
- 付帯保険:お買い物プロテクション:最高100万円
【ヤマダ電機】永久不滅ポイントなど2つのポイントが貯まる
ヤマダ電機:ヤマダLABI ANAマイレージ セゾン・アメリカンエキスプレスカード
ヤマダ電機で利用すると現金払いと同率のヤマダポイントが貯まり、それに加えて、通常のクレジット利用分の永久不滅ポイントも貯まります。
さらにANA、コスモ石油、出光等の「優待加盟店」でも2種類のポイントが貯まり、海外での利用については永久不滅ポイントが2倍になります。その永久不滅ポイント1,000ポイント以上をヤマダポイントに変えると、通常の1.2倍の1ポイント=6円相当になります。
また、ANA航空券をカードで購入すると、永久不滅ポイントとヤマダポイントがダブルで貯まり、実際にフライトすればマイルも獲得できます。
ヤマダポイントが貯まる「ケイタイdeポイント」とヤマダLABI ANAマイレージクラブカードが一体化したために、ヤマダ電機での買い物は、携帯電話を見せるだけでポイントが貯まり、LABIカードでの支払いも提示するだけで完了するようになり、買い物がグンと楽になりました。
- 国際ブランド:アメリカン・エキスプレス
- 年会費:初年度無料。2年目以降は口座維持手数料として500円+税 ※前年度1回以上の利用で次年度口座維持手数料が無料
- 基本ポイント:永久不滅ポイント。月合計1,000円=1P(1P=5~6円相当)
- 電子マネー機能:なし
- 付帯保険:オンライン・プロテクション
Next: よく行くお店のカードを選んで失敗することも?各社の強みと弱み
必ずしも、よく行くお店のカードが正解ではない
家電量販店カードの選び方は、よく通う店で、その店が発行するカードを使うことです。普通に考えると、その店が発行するカードは、他のどのカードよりも一番お得度が高くなっているはずだからです(たまに例外があります)。
ですから、よく行く店のカードを使うのが正解なのです。しかし、実際のところは、本当にお得になる場合もあれば、かなり損になっている場合もあります。その損得勘定を客観的に考えてみました。
<ビックカメラSuicaカード>
このカードは年会費が初年度無料ですが、年に1回使えば翌年の年会費はタダになるので実質無料です。
ポイントの還元率も最大11.5%と高く、チャージをうまく組み合わせるとポイントはみるみる貯まるので、ビックカメラやコジマを使う人、Suicaを使って通勤や買い物する人にはおすすめできます。
長所の多いカードですが、短所もあります。残念なのは、せっかくApple Payに参加できたのに、Apple Payでの利用ではビックポイントが貯まらないことです。
今回のApple Payには色々な問題があります。VISAのカードが入らないことが最大の疑問ですが、Apple Payでの利用ではポイントが貯まらないクレジットカードもあって、これも困りものです。
しかし、ビックカメラSuicaカードにはうまい解決方法があります。Suicaにチャージして、そのSuicaで買い物をすれば、逆に11.5%の高還元率でポイントを貯めることができるのです。この裏技で乗り切ってください。
<ゴールドポイントカード・プラス>
ヨドバシカメラを利用している人には、このカードが1番のおすすめです。良い点は、「ヨドバシドットコム」が充実しており、書籍をこのカードで購入したときに10%還元を手にできます。他社ではこれほどの高還元は期待できませんから、特筆すべき点でしょう。
もう1つは、他のカードが2種類のポイントを貯めて還元率を上げる仕組みなのに対して、このカードはゴールドポイント1種類が貯まるので、管理面で楽ができることです。あれこれと迷うことはないのです。
短所としてはスマホで使うときに、マネーツリーやマネーフォワードといった家計簿アプリを使えないことです。クレジットカードライフと家計管理サービスとの融合が進んでいるのに残念なことです。早く使えるようにして欲しいものですが、使用していない人にとってはデメリットにはならないでしょう。
また「うっかり延滞」で再引き落としをかけてもらうのに、400円の手数料が必要というところにも不満があります。
<ヤマダLABI ANAマイレージ セゾン・アメリカンエキスプレスカード>
ヤマダポイント、永久不滅ポイント、それにANAマイルの3つが貯まるカードです。しかし、ヤマダ電機の多角化した店舗や広々とした清潔なフロアに比べると、カードのほうは少し見劣りがします。
3つのポイントが貯まるという触れ込みですが、ANAマイルは搭乗しないと貯まらないし、永久不滅ポイントが貯まるといっても、還元率はそれほど高くありません。メリットはポイントをマイルに交換できるというだけです。
そう考えると、マイラーたちがマイルを貯めるためにこのカードを持つかというと、少々疑問です。マイラーなら、ANAのゴールドカードやプラチナカードを使って貯めるでしょう。ですから、このカードはヤマダで買い物して、希望すればANAマイルとの交換もできますよという感じでしょうか。
まずは、ヤマダ電機専用カードとして使うのが良いでしょう。年会費は実質無料になるので負担にはなりません。これはありがたいです。
Next: カードの持ち方の新提案~カード特典で店を変える
カードの持ち方の新提案~カード特典で店を変える
以上、各店が発行する提携カードの損得を考えてきました。じっくり見ると、店が発行するカードでも、その店で使うのに最高のカードになっているかというと、若干疑問が残りました。
すべてが、その店を最高に使い切れるカードではないのです。そうした現状が分かってきましたから、ひとつ提案をしたいのです。それは、逆転の発想で――
※本記事は、『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』2017年8月16日号の一部抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。
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『達人岩田昭男のクレジットカード駆け込み道場』(2017年8月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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世の中すっかりカード社会になりましたが、知っているようで知らないのがクレジットカードの世界。とくにゴールドカードやプラチナカードなどの情報はベールに包まれたままですから、なかなかリーチできません。また、最近は電子マネーや共通ポイントも勢いがあり、それらが複雑に絡み合いますから、こちらの知識も必要になってきました。私は30年にわたってクレジットカードの動向をウォッチしてきました。その体験と知識を総動員して、このメルマガで読者の疑問、質問に答えていこうと思います。ポイントの三重取り、プラチナカード入会の近道、いま一番旬のカードを教えて、などカードに関する疑問にできるだけお答えします。