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円高に垣間見える「ドル高の兆し」と北朝鮮問題のありがちな結末=長谷川雅一

北朝鮮の核実験」が9月3日に行われ、それに翻弄される形で東京株式市場が下落、米ドル/円相場でも円高が進行しています。今回は、ただの核実験ではなく「水爆実験の成功」だったことで、影響が大きくなりました。今は、どこからどう見ても「ドル安、円高」の材料しかない、という状況です。しかしそんな中でも、米ドル/円のチャートは実は「それほど弱くない」形になっています。そして、どんなリスクも市場はやがて忘れるものです。(『長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017年9月4日,6日号より)

プロフィール:長谷川雅一(はせがわまさかず)
1959年、岐阜県生まれ。株式会社プレコオンライン(金融商品取引業)代表取締役社長。2000年より株式投資の研究を始め、日本で初めて「株の自動売買」という言葉を使った著書を出版。株式投資の世界では、「株の自動売買」ブームの火付け役として知られている。現在は、自動売買ソフトの開発、投資教室、メルマガの執筆など、多忙な日々を送っている。

あと北朝鮮に何ができるのか?株もドル円もここは買い場に見える

続かない「ドル買い」

米ドル/円は、8月29日に108.27円の安値を付けたあと反発しました。日足チャートには、29日、30日と、美しく強いロウソク足が並んでおり、このままチャートが上向く(ドル高になる)かに見えました。

9月1日(金)も、雇用統計が悪く、発表直後に米ドル/円レートは下落。いったん109.50円付近まで円高が進みました。しかし、そのあと切り返して、109.20円付近まで反発して引けました。これもやはり「ドル買いが強い」ことを物語る値動きでした。

しかし、4日(月)には北朝鮮の核実験の影響で、米ドル/円はまた109.38円付近までたたき落とされてしまいました。「ドル買い」が続きません

リスク山積

北朝鮮リスクだけでなく、アメリカでは、トランプ政治の混乱や、債務上限問題などが「くすぶって」いますし、雇用統計が悪かったことで、アメリカの利上げ観測も後退しました。これらはすべて「ドル安、円高」材料です。

今は、どこからどう見ても「ドル安、円高」の材料しかない、という状況です。

しかし、米ドル/円のチャートは、実は「それほど弱くない」形になっており、もちろん根強い「ドル安、円高」圧力はあるものの、少しずつ少しずつ「這い上がろう」としている形に見えます。

米ドル/円 日足(SBI証券提供)

「下落トレンド」は終了した

僕は、独自の「長谷川式プライス・ムーブメント・セオリー」という分析手法を用いて、為替相場の値動きを分析しています。

セオリー中の「長谷川式トレンド分析」では、米ドル/円相場を、大きく「上昇トレンド」「下落トレンド」「トレンドなし」の3つに分けます。

この分析手法では、7月19日から米ドル/円に「下落(円高)トレンド」が発生した、と解釈しています(ちなみに、僕のチャート読解では、米ドル/円レートのチャートをそのまま素直に見ますので、ドル高は「上昇」円高は「下落」と表現します)。

その「下落(円高)トレンド」ですが、僕の分析では、8月30日に「終了した」と解釈しています。そして、僕の分析手法では、現在の米ドル/円は「トレンドなし」の状態にある、と判断しています。

Next: 次は「上昇トレンド」の番、いきなりの「方向転換」に要注意



次は「上昇トレンド」の番

通常、相場は、「上昇トレンド」→「トレンドなし」→「下落トレンド」→「トレンドなし」→「上昇トレンド」というサイクルでリピートします。

現在は、「下落トレンド」が終わって「トレンドなし」という場面ですから、次は「上昇トレンド」に進むのが、もっとも「ありがち」な動きです。

4日(月)のロウソク足が、本稿執筆時(4日20時過ぎ)で弱く、「もしかしたら、『下落トレンド』に逆戻りするかもしれない」という位置にありますので、まだ何とも言えませんが、テクニカル的に見ると、「円高圧力」だけでなく、「ドル高(ドル買い)」圧力も、それなりにある、ということをお伝えしたいわけです。

いきなりの「方向転換」に要注意

こういうことを書きますと、「長谷川はドル高論者だ」みたいに「くくられてしまう」のが嫌なのですが、今現在、「リスクオフだ。さらに円高が進むだろう」という見方が多い中、ドル高に向かう「ドル買い圧力」も「垣間見える」状態であるということを、お伝えしておきたいと思うのです。

もちろん、このところの円買い(ドル売り)圧力は相当なものであり、ちょっと上昇すれば(ドル高になれば)すぐ売りたたかれる動きになっていますが、ドルを買い戻そうとするエネルギーが、「ちらほら」見え隠れしていることに、注意を払う必要があると考えるわけです。

今現在は「ドル高」など考えられない状況である。それはその通りです。しかし、為替相場とは時に、そうした「マトモな見立て」と真逆の方向に、いきなり方向転換することがありますので、「米ドル/円の売り(円買い)は慎重に」と申し上げたいのです。

もちろん「参考意見」として聞き流していただいて結構です。

「決めつけ」は危険

僕は、1日(金)まで、僕は米ドル/円は、このあと「上昇トレンド(ドル高)」に向かう可能性が高い、と予想していました。しかし、北朝鮮の核実験の影響で、現在のところ「どうなるかわからない」微妙な状況に変わっています。

北朝鮮リスクは、金正恩の行動と、トランプ大統領の発言しだいでは、さらにエスカレートする恐れがあり、そうなれば、とりあえず「リスクオフは円買い」という、投資家達のいつもの反射行動により、さらに円高が進む可能性が高いでしょう。

しかし、事態が思わぬ方向に急展開する可能性もありますので、僕は、「円高に決まっている」という「決めつけ」によるトレードは危険である、と考えています。

Next: 北朝鮮もアメリカも「何もできない」リスクはやがて落ち着く



北朝鮮はこれ以上何ができるか?

相変わらず、北朝鮮の「地政学的リスク」が意識された、軟調な相場が続いています。しかし、北朝鮮とアメリカが戦う可能性は低く、軍事衝突は起こらないまま、やがてリスクは落ち着く可能性が高いと思っています。

今回の北朝鮮の核実験は規模が大きかったので、影響が長引いているわけですが、「北朝鮮は、これ以上何ができるか?」と考えたとき、もうあまり「手はない」ように思われます。

グアム島周辺にミサイルを落とすという計画も、もしも失敗してグアム島に着弾してしまったら、アメリカに反撃されかねません。もしもアメリカが北朝鮮を攻撃するとすれば、真っ先に金正恩の命を狙う可能性がありますから、さすがの金正恩も、グアム島を狙うのは恐いのではないかと思います。

先日やったように、日本を「かする」ミサイル発射実験が、ほぼ「限界」でしょう。

アメリカも何もできない

アメリカはアメリカで、なかなか「打つ手」がありません。それなりの軍事力を持つ北朝鮮を攻撃した場合、やはり、自国の人的被害が大きくなる可能性が高いからでしょう。

もしかしたら、特殊部隊を投入して、金正恩を殺すような作戦を実行するかもしれませんが、それも、「今までできなかった」し「今もできていない」ところを見ると、かなり難度が高いのでしょう。そもそも、アメリカが、そこまでやる必要があると思っているかどうか疑問です。

今回、トランプ大統領は、北朝鮮をさかんに「口撃」はしていますが、まだ、ほとんど何もしていません。

結局、アメリカは(そして日本も)北朝鮮に対して、今まで、何もできませんでしたし、これからも「何もできない」のではないかと思います。

北朝鮮リスクはやがて落ち着く

国連で何を決めようが、北朝鮮が従わないことは明白です。経済制裁も「抜け道」がいくらでもあるので効果がない。

中国やロシアにとって、北朝鮮は「必要な国」ですから、いくら金正恩が「やんちゃ」をしも、「しょうがねえなあ」と、最低限の「保護」を続けざるを得ません。

北朝鮮自身も「挑発行動」には莫大なお金がかかります。それほど裕福な国ではありませんから、さすがに毎日、ミサイルをぶっ放すわけにもいかないでしょう。

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こうしたバランスの中で、結局、どの国も一線を越えることはなく、北朝鮮リスクは、やがて落ち着く。それが最も「ありがち」な結末ではないでしょうか。

ここは買い場

どんな「リスク」も、マーケットはやがて忘れます。また、株も為替も、さんざん売られたあとは買い戻されます。連日「真っ暗」な相場ですが、株も為替(ドル円)も、ここは買い場ではないか、と考えています。

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長谷川雅一のハッピーライフマガジン』2017年9月4日,6日号より一部抜粋
※記事タイトル・太字はMONEY VOICE編集部による

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