株の予測は、本当は一人で行うよりも、多くの人が意見を出し合って、様々な批判の中で予測していった方が精度が高まることが、すでに証明されています。そして何より大事なのは、予測するときに「フェルミ推定」を使うということです。(『バフェットの眼(無料)』八木翼)
不確実な未来を常識と論理で見通す。問題を分解して考えよう
フェルミ推定とは何か?
株の予測というのは、本当は一人で行うよりも、多くの人が意見を出し合って、様々な批判の中で予測していった方が予測の精度が高まることが、すでに証明されています。そして、何より大事なのは、予測するときに「フェルミ推定」を使うということです。
フェルミ推定とは、問題を分解して考える能力です。有名な問題の一つに、次の問題があります。
「静岡には何人のピアノの調律師がいるのか?」
この問いを受けた時に、あなたは何と答えるでしょう? 「うーんそうだな。20人くらい?」「いや、100人くらいいるでしょう」という風に、たいていの人はあてずっぽで予測します。
もちろん、このあてずっぽの予測も超大量に集まれば、その中には正確な答えが含まれていて、間違った答えは相殺されるので、真の答えに近づくという考え方もできます。しかし、フェルミ推定を使えば、多くの人がより正確な答えを導き出すことができます。
大事なのは、まず問題を分解する作業です。
問題を分解する作業
フェルミ推定を行っていくために必要な作業は、まず、どのような数字が問題を解決してくれるかを考えることから始めなければならなりません。
- 静岡にあるピアノの台数
- ピアノは年何回調律する必要があるのか
- ピアノを1台調律するのにどれくらいの時間がかかるのか
- 平均的なピアノ調律師は、年何時間働くのか
(1)~(3)で、静岡にあるピアノを調律する回数・時間の合計がわかるので、最後に(4)で割れば答えは出るはずです。そして、もちろん正確な数字を知っている必要はありません。常識で考えることが、実は重要なのです。「静岡にあるピアノの台数」を考える時に、県内に5台しかないとは誰も思わないし、1億台あるとも思わないでしょう。
それでは、私も「フェルミ推定」を行ってみます。もちろん、Googleに頼らずに。
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フェルミ推定の実践例「静岡にいるピアノ調教師の数」を試算する
「(1)静岡にあるピアノの台数」を推定する
静岡県の人口は正確には知りませんが、日本の人口がだいたい1億2000万人で、全国は47都道府県ということは知っています。
静岡県は中部に位置していて、平均的な県として有名ですが、ほぼほぼ関東圏であり、海にも近く、トヨタの工場などもあり、普通に割り出した数・255万人(1億2000万人÷47都道府県)よりも少し多めの300万人だと推定しましょう。
(1)の質問に答えるためには、だいたい何人がピアノを持っているのかということを考えます。私が中学校の時、ピアノが弾ける人というのは、クラスに一人くらいいました。
200人の学校で5クラスあり、5人弾ける人がいるとしましょう。ただ、個人で持っているとは限らないので、2/5の2人がピアノを持っていると推測します。
2人/200人=1/100
1/100くらいの確率でピアノは保有されていると思います。
よって、300万人×1/100=3万台
3万台のピアノが静岡県にあると仮定しましょう。
「(2)ピアノは年何回調律する必要があるのか」を推定する
これは、だいたい3回くらいかなと勝手に予想します。そんなに頻繁にやるものではありませんが、ホールで持っているピアノは、年間そのくらいやるのではないでしょうか?
「(3)ピアノを1台調律するのにどれくらいの時間がかかるのか」を推定する
ピアノの調律はざっくり2時間もあれば終わる気がします。大した知識もなくあてずっぽですが、ギターの音を合わせるよりも難しく、車の車検よりも簡単程度のイメージです。
では、これら(1)~(3)の答えを掛け合わせると、
3万台×3回×2時間=18万時間
という答えが出ます。
「(4)平均的なピアノ調律師は、年何時間働くのか」を推定する
ピアノ調律師は普通の人間だと思いますので、200日くらいが勤務日で、8時間労働時間があると考えると、労働時間は、200日×8時間=1600時間です。これを18万時間で割り返すと、112.5人となります。
だいたい100人くらいいるのかな? という推定ができるわけです。
正しいかどうかはわかりませんが、実際にiタウンページで調べてみると、静岡県内には、57件のピアノ調律可能な店舗があるようです。調律師が各店舗に何人いるか分かりませんが、1人以上のところもあることを考えると、100人というのは、全然的外れな数字ではありません。
今回はGoogleなどの調査も行いませんでしたし、財務諸表も読みこんでいませんが、ここまで精度の高い数字を出すことができました。
今回の件でも、静岡県内の人口、ピアノの調律の頻度、コンサート実施状況、ピアノ保有施設など、さまざまな情報を組みあわせれば、精度はさらに高まると思います。
株式投資の予測でも同じことはできると思います。私は、孫正義さんなんかはこのような予測を割としっかりやっていると思います。ウォーレン・バフェットも同様でしょう。
『バフェットの眼(無料)』(2016年12月23日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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