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いつもの読みが通用しない!「2017年のルール変更」にはこう立ち向かえ=八木翼

2017年も始まったばかりですが、株式市場はちょこちょこルールが変わるので注意が必要です。この間、麻雀をしていて改めて実感したのですが、ルールの変更が及ぼす影響力というのはやはり巨大なのです。(『バフェットの眼(有料版)』八木翼)

※本記事は、『バフェットの眼(有料版)』2017年1月5日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

2017年は米国と中国に要注意。「ルール変更」で何が起こるか?

いつもの読みが通用しなくなる

2017年も始まったばかりですが、株式市場はちょこちょこルールが変わるので注意が必要です。というのも、この間、麻雀をしていて気づいたのですが、ルールの変更が及ぼす影響力というのはやはり巨大です。

私は趣味で麻雀をやるのですが、お正月は麻雀三昧で、アホみたいに麻雀をしました。麻雀というのは、強さ・弱さというのがわかりにくいようで、よくわかる競技です。力が明らかに違うと、やはり差が出てきます。私はそれほど麻雀が強くないので負けることも多いのですが、お正月は「赤ドラ(その牌を持っているだけで、点数が高くなりやすい)」を入れるので、状況が変わってきます。この赤ドラが曲者なんですよね。

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麻雀の上級者になると、リスクとリターンのバランスを絶妙なところで推し量ることができます。例えば、僕みたいな弱い人間だと「この牌は相手にあたりそうだから切らないでおこう」と考えるところを、「この牌は相手にあたりそうだ。だけど、この牌であたっても相手の点数は3900点が濃厚だ。自分の点数は8000点を狙える。残りの牌の数から考えても、相手よりも早く上がれそうだ」と、正確にリスクを推し量り勝負に出ることができます。

しかし、この読みは普段とは違う「赤ドラ」というルールを忘れてしまっているため、崩壊してしまいます。通常であれば大したことない上がり手でも、赤ドラを持っているというだけで、点数が跳ね上がるのです。そのため、正確に予測したはずの相手に被弾し、まさかの対々和ドラ3の満貫なんてことがあるわけです。

赤ドラが入った場合は、このようなリスクの推し量り戦略は機能しにくく、「とりあえず当たる牌は切らない」という下手くその戦略が機能しやすいのです。

さて、2017年は、株式市場にはどんなルール変更が待ち受けているのでしょうか?

すでに現況のルールで稼いでいる企業を選ぶことは非常に大事ですが、ルール変更が企業にどのように影響してくるかを考えることも非常に重要です。

Next: トランプ新大統領は「法人税引き下げ」でルールを大きく変えようとしている



日本が意識すべき主な国:アメリカ

2015年、日本はどこの国に最も製品を輸出したでしょうか?

それは、米国です。

1位:アメリカ 152,246億円(輸出全体の20.1%)
※財務省貿易統計より

ちなみに2位は中国です。

2位:中国 132,234億円(輸出全体の17.5%)

ルールと言えば、国です。最近は「国家」なんて古い組織と言われていますが、現在では国がルールの根幹を決めています

直近の話題では、フォードモータースも、トランプが課税すると脅せば、メキシコに移転させようとしていた工場をアメリカに残すようになるほどの影響力を持っているわけです。

アメリカの強みは、市場が自分の国にある点です。つまり、お金を集めて使うことが得意なのです。お金を集めて使うというのは、消費だけではありません。価値を生み出すことも得意なので、「投資するお金」も集まってくるのです。

トランプ大統領は、法人税を大幅に下げ、ルールを変えようとしています。法人税を下げることで、企業はキャッシュを手にすることができます。トランプ大統領の減税のパーセンテージだけで、世界の株式市場が大きく動きます。

単純な話ですが、減税は「べき乗」で効いてきます。例えば、これまで100万円稼いだら40%を税金でとられていたとしましょう。手元に残るのは60万円だけです。この60万円から新規の投資をして、稼ぐ金を増やさなければなりません。

資本効率が20%だったとしましょう。100万円の稼ぎから60万円を投資に回し、次の年は 100万円+60万円×20%=112万円 の利益を手にします。

しかし、これも利益の40%を税金でとられるとすると、残るのは67.2万円です。これを10年後まで行っていくと、10年後には166.384万円稼げるまでになります。

さて、この税率が15%になるとどうなるでしょうか? なんと10年後の稼ぎは、246.504万円稼げるようになっているんです。

税率40%の場合は、10年後の稼ぎが、
60万円→166.384万円(約106万円増加)

税率15%の場合は、10年後の稼ぎが、
60万円→246.504万円(約186万円増加)

そりゃ当然、稼ぎが増える速度が上がるのですから、株価は上昇します。2倍とまでは行きませんが、期間をさらに伸ばしていけば、この差は指数関数的に広がっていきます。

減税とは、企業の投資資金を確保させ、未来を大きく変える可能性に満ちた政策です。現代では、政府がお金を使うよりも、GoogleAppleが自分でお金を使ったほうがより効率的になりました。一昔前までは、国がインフラを整えるという役割を担っていたのですが、今はその様子は変わってきています。

そういう意味で、この減税政策を甘く見てはいけませんし、個人的には、日本も積極的に減税すべきだと思います。こうなれば、ポっと出てきた企業が、投資の力を使って勢いよく成長する可能性も高まります。

つまり、世の中の動きが加速するのです。成長できない企業は淘汰され、成長できる企業はどんどん成長していきます。ソフトバンクは、10兆円規模の投資ファンドで、それら企業への投資を考えているのでしょう。

現在は、明らかに投資が有利な世界になっています。株価が割高だから投資しないという人もいますが、「割高」とは、何をもって「割高」と言っているのでしょうか? 「法人税が高い」という以前のルールでの割高であれば、それは「赤ドラ」を考慮しないで玄人の読みを行う雀士と同じです。

一方、もう一つの巨大市場はどこでしょうか? そう、お隣の国「中国」です。

Next: 日本の輸入先ダントツ1位の中国。「世界の工場」という位置づけに変化はあるのか



日本が意識すべき主な国:中国

さて、日本は中国との貿易が非常に盛んです。輸入額は、なんと米国を圧倒的に抑えて完全にトップです。

1位:中国   194,288億円(輸入全体の24.8%)
2位:アメリカ  80,598億円(輸入全体の10.3%)

なんと、アメリカを14.5%も引き離しています。輸入品の多くは中国からと言っても過言ではありません。輸入品には、食品、衣料品、家具、原材料など多岐にわたるモノが挙げられます。

日本が最も多く輸入している製品は、

1位:原粗油      81,848 億円(10.4%)
2位:液化天然ガス   55,141 億円(7.0%)
3位:衣類・同付属品  34,154 億円(4.4%)
4位:半導体等電子部品 29,962 億円(3.8%)
5位:通信機      29,328 億円(3.7%)

となっている中で、中国からは、多くの衣類・同付属品、通信機を輸入しています。なんと、衣料品の67%・22,866億円(全体は34,154億円)は中国製品です。

では、なぜ中国から輸入しているのかというと、それは安いからです。

このルールが変わる兆候はあるか? 元高になるのであれば、それはあり得るのかもしれませんが、現在のところその兆しはありません。むしろ、中国富裕層は、中国からマネーをどうやって出してやろうかに必死であり、中国政府も元の価値を保つことに必死です。

そのため、これからも中国が世界の工場であるという位置づけは変わらないでしょう。これは、中国に工場を置くメーカーにとっては良い兆しと言えるでしょう。逆に、ドルを製造拠点にしているメーカーは厳しいでしょう。

また、米国が主要市場のメーカーは、ドル高により有利になります。もちろん、製造拠点が米国にあってはいけませんが。ユニクロなんかは、個人的には強気です。
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・【株価工学】ABCマートは割高?(1/14)
・「予測を科学する」ことは可能なのか?(1/2)


※本記事は、『バフェットの眼(有料版)』2017年1月5日号の抜粋です。ご興味を持たれた方はぜひこの機会に今月すべて無料のお試し購読をどうぞ。

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バフェットの眼(有料版)』2016年1月5日号より抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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