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資産運用のプロである私が考えた「2017年型ポートフォリオ」のすべて=田中徹郎

今回は毎年恒例の「今年の相場予想」をお送りします。この年初の予想は手前みそながら毎回精度が高く、今年一年の皆さんの資産運用において、参考にしていただける部分もあるのではないでしょうか。今回の構成は下記となります。

  1. 今年の重要ポイント
  2. 地域別経済の予測
  3. 各種相場の流れと投資スタンス
  4. 2017年型推奨ポートフォリオ

例年通り、今年もソコソコ長くなると思います。内容は後になるほど少しずつ具体的な話になっていきます。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)

プロフィール:田中徹郎(たなか てつろう)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。

先進国の成長加速を想定し、やや積極的なポートフォリオを構築する

2017年世界経済のポイント

まず、今年の世界経済を考えるうえで重要な要素をいくつか挙げたいと思います。

(1)アメリカ新大統領の経済政策

トランプ次期大統領の経済政策の特徴として、

の3点を挙げることができます。おそらくこの経済3点セットは、かなり高いレベルで実行されると思います。

一方で、実体経済への影響という意味ではどうでしょう。これらの政策はいずれも即効性に乏しく、少なくとも2017年の米国経済を大幅に引き上げることはないでしょう。

【関連】トランプ様の「潰すは恥だが役に立つ」劇場。反落からの大相場に備えよ=藤井まり子

昨年の大統領選挙以降、株や債券、為替などはすでに上記を織り込む形で大きく動きました。相場は本来の効果をかなり先食いしてしまった可能性が高いのではないでしょうか。

(2)中国経済のゆくえ

数年前までの話題といえば「中国の外貨準備の膨張」でした。ですが昨今は様変わりし、逆に中国からはマネーが逃避し、「外貨準備の急減」が世界の心配事になりつつあります。中国発の経済危機は起きないか…市場ではこんな声も聞かれはじめました。

ただ、足元の経済を細かく見ればどうでしょう、マネーの流出は止まる気配がありませんが、実体経済のほうは政府の下支え策の効果もあり、循環的な回復過程に入ったと言えそうです。輸出や輸入の実績、製造業の景況感指数、小売売上高などの直近の推移を振り返りますと、どうやら中国経済の底は昨年央だった可能性が高いと思います。

したがって、今年一年という時間軸で申し上げるなら、中国経済が我が国やアメリカ、そして世界経済の足を大きく引っ張る心配はないでしょう。ただし、同国の経済政策に対しては相変わらず注意が必要だと思います。例えば、今年一年で変動相場制に移行することは無いにしても、マネーの流出を止める強めの政策は不可避でしょう。

昨年の前半や一昨年の夏のように、それが世界の株や為替の変動要因になる可能性は高いのではないでしょうか。

(3)ヨーロッパの政治

昨年のBrexit以降、ヨーロッパで孤立主義の動きが台頭してきましたね。今年も年初からフランスの大統領選挙イタリアドイツの総選挙など欧州は政治の季節を迎えます。なかにはイタリアのようにあからさまにEU離脱をうたう政党の台頭もあり、選挙の行方によっては、EU崩壊の懸念が年内どこかで世界を揺るがすかもしれません。

では、上記のような前提に立った場合、世界の各地域の経済はどのように推移していくのでしょうか。

Next: 地域別経済の予測~2017年のアメリカ、日本はどうなる?



地域別経済の予測

(1)アメリカ

上記で申しましたように、トランプ次期大統領の経済3点セット(減税、インフラ投資、規制緩和)に即効性はありません。議会で可決し、施行されるのは早くて年後半ということになるでしょう。ですから、実態経済の成長に貢献するのは来年ということになるはずです。

ただし、だからといって今年、アメリカ経済が停滞するとは思えません。原油価格の回復によって企業の業績は拡大傾向ですし、雇用も好調を維持しています。賃金の上昇も加速しそうな雰囲気です。この流れが途絶えるとは思えず、アメリカ経済は今年やや加速するのではないでしょうか。

FRB年内3回の利上げを想定していますが、上記のような環境を前提にすれば、想定通りのペースで利上げが実施される可能性が高いと思います。利上げのピッチが早すぎて、米国経済を下押してしまうのではないかとの不安も耳にしますが、過去数年のイエレン議長の慎重な姿勢を見ていますと、僕はその心配も不要だと思います。経済の拡大ペースを見ながら、適切な金融引き締めを実行できるのではと期待しております。

したがって、今年のアメリカ経済はやや強めの成長を期待していいと思います。

(2)日本

日本経済は昨年前半から年央にかけて停滞が見られましたが、すでに昨年後半からの循環的な回復過程に入ったようです。昨年の年初に急速に進んだ円高の影響で今年度上期の企業業績は▲7%程度の大幅な減益となりましたが、今後はどうでしょう…。

今期を通期でみれば、逆に増益になる可能性が高いでしょう。しかもその前提となる各社の業績予想は、概ね1ドル=102円程度とずいぶんと円高水準に設定されています。

仮に今年3月まで1ドル=115円程度の円安状態が続けばどうでしょう。おそらく、今期(2017年3月期)は7%程度の増益となるのではないでしょうか。

ただし、今年の日本株を予想するうえでは、2017年3月期(すなわち今期)はすでに過去のお話で、今後の焦点は徐々に来期(2018年3月期)に移っていくことになります。仮に今年いっぱい1ドル=115円程度の円安状態が続けば、来期はさらに二ケタ増益を達成する可能性も十分あるでしょう。

一方で、少し気になることもあります。もし上記のように、今年いっぱい日本経済が好調に推移すればどうでしょう。日銀は過去5回にわたり2%のインフレ達成時期を先送りしてきましたが、今年の秋風が吹くころにインフレ率2%が見えてくるかもしれません。

もちろん、今年や来年に2%インフレを達成できるとは思えませんが、例えば年末あたりに1.0%程度のインフレ傾向が出てくればどうでしょう。相場は先を読んで動きますので、(日銀の量的緩和の縮小=テーパリング)を先読みし、金利が急騰する可能性も十分あるでしょう。

このようなことから、今年の日本経済の最大の懸念として僕は、金利の上昇を挙げておきたいと思います。

Next: 地域別経済の予測~中国、ヨーロッパの懸念点は?



地域別経済の予測:(3)中国

経済の実態だけをみると、今年の中国は決して悪くはないと思います。昨年に続き(公称)6.5~6.7%程度の成長を維持できるのではないでしょうか。特に製造業が昨年後半から好循環モードに入ってきたと思いますし、政府はインフラ投資減税を使いながら、今年も一定の成長性は維持できると思います。

一方で、冒頭に申し上げたようにマネーの流出には注意が必要です。断続的に行ってきた人民元買いの結果、一時は4兆ドルもあった外貨の準備はすでに3兆ドルまで減りました。このままのペースで元を買い支え続ければ、年内のどこかで(2015年夏のような)人民元の切り下げや、極端な場合変動相場制への移行といったビッグニュースが飛び込んでくるかもしれません。

その場合、一昨年のような世界的な株安と円高を覚悟しておかなければなりません。

地域別経済の予測:(4)ヨーロッパ

冒頭に申し上げたように、ヨーロッパは今年政治の季節を迎えます。イタリア、フランス、オランダ、ドイツなどで昨年の英米同様、一国孤立主義の機運が高まるのではないでしょうか。場合によってはEU崩壊の連想から、世界の株、債券、為替は一時的に大きく上下動するかもしれません。そのリスクは頭に入れておきたいと思います。

ただし、経済に注目すればどうでしょう。昨年のBrexitや2012年以降断続的に起きた欧州債務危機などを経験し、すでに欧州は慢性的な低成長地帯に落ち着いてしまった観があります。つまり、世界経済は欧州の低成長や混乱を前提にして成り立ってしまっているわけで、よほど大きなマイナス成長に陥らない限り、欧州発の経済危機はないと思います。

Next: 各種相場の流れと投資スタンス~株式と為替はこう動く



各種相場の流れと投資スタンス

(1)株式と為替

昨年のアメリカ大統領選挙以降、世界の先進国株はずいぶん上がりましたね。ただ、アメリカ株に関していえば、相当先の経済まで株価は先食いしてしまったのではないでしょうか。仮にトランプさんの経済政策が機能したとしても、その効果が表れるのは来年以降になると考えておくべきでしょう。

したがって今年前半のアメリカ株は、よくてせいぜい現状程度のボックス圏ではないかと思います。ただし、年の後半以降は、来年のトランプ効果を織り込む形で上昇に転じる可能性はあると思います、来年度の企業業績が10%増益になると想定し、アメリカ株も年末には現状+10%、すなわちダウ平均ベースで21000ドルはあると思います。

日本株に対して、僕はさらに強気です。前段で申し上げたように、2017年3月期の企業業績は、1ドル=102円を前提に+7%程度の増益を想定しております。ですが、すでに足元のドル円レートは1ドル=115円程度まで円安が進んでいます。このドル円レートに関しては米国の利上げを強く織り込みすぎで、僕は早晩1ドル=105円±10円程度の「ちょうどいい湯加減」レンジに戻ると考えます。それでも先ほどの1ドル=102円からみれば円安です。

この水準が2017年を通して維持されるなら、来期(2018年3月期)の企業業績は、さらに10%程度の増益まであるのではないでしょうか。この場合、日本株もその+10%に向けて収れんするでしょう。すでに現在の日経平均19,400円が2017年3月期の企業業績を織り込んでいるとすれば、そこからさらに+10%…。今年のクリスマス頃の日経平均は21,000円台に乗っていても不思議ではないでしょう。

これに対して、欧州株にはさほど期待しておりません。経済成長は巡航速度の1%程度を維持できると思いますが、なにぶん政治と金融機関の不良債権問題は常に株価の下押し要因です。価格変動が激しい割に株価の上昇は限定的で、リスクとリターンのバランスを欠いた一年になるでしょう。できればこのエリアの株式保有は避けたいところです。

昨年末、マネーが大量に流出した新興国はどうでしょう。参考にしたいのは2013年の「バーナンキ・ショック」時の新興国株急落です。当時FRB議長だったバーナンキさんによる金融引き締め宣言(正確にはQE[流動性供給策]のテーパリングに関する言及でした)によって、新興国から急激にマネーが逃避しましたが、それも数ヶ月のうちに収束しました。

今回もトランプ・ショックで同様の現象が起きましたが、通貨安は経済にとって悪いことばかりではありません。今回はコモディティ相場の上昇もあり、逆に資源型新興国にとって経済の追い風になるでしょう。

新興国株や新興国通貨はやがて買い戻され、一年を振り返ってみれば、まずますの成果を期待できると思います。新興国株投資のスタンスとしては、相場に振り回されることなく我慢強く持ち続けることをお勧めいたします。

Next: 各種相場の流れと投資スタンス~債券と金利が重要な年に



各種相場の流れと投資スタンス:(2)債券と金利

今年は債券相場金利に注意しておきたいと思います。昨年央一時1.5%台まで下がった米国の長期金利(10年物アメリカ国債の利率)ですが、大統領選以降に急騰し、一時は2.6%台に乗せました。

さて、その米国の長期金利…今年はどう動くのでしょう。トランプ次期大統領の目玉経済政策である減税インフラ投資が実行に移された場合、以下のような経路で金利は上がります

市場はすでにこのような流れに沿って動いていますが、少し相場は先走り過ぎではないでしょうか。株と同じ理屈で金利の上昇も当面お休みし、しばらくはボックス圏、年の後半から再び上昇に転じ、年末の予想レンジは2.8%程度と見ております。

仮に上記の想定通りに米国の10年国債の利回りが2.8%まで上がればどうでしょう。税引き後の手取りベースで約2.2%…不動産に比べればやや物足りない感がありますが、それでもリスクゼロです。分散の対象として有効な選択肢ではないでしょうか。

日本の金利にも注意が必要です。冒頭の繰り返しになりますが、年末あたり日銀のQE縮小が意識され、金利が急騰するというシナリオも十分あると思います。長らくゼロ金利が続いただけに、国内の長期金利が急騰すれば、私たちの生活に大きな影響が出ます。

一番の注意点は、住宅ローンの利払いです。いま変動金利で長期のローンを組んでいる人は、多少支払いが増えても固定金利型への借り換えをおすすめしたいと思います。あと、自己資金を抑えたアパートローン融資を受けている人も…。

現在のような超低金利下では、支払利息<家賃収入 ですので、レバレッジの無限拡大=収益の無限拡大 という構図が描けます。ですが金利が急騰して 支払利息>家賃収入 となると歯車は逆回転し、その先は破たんです。過度な融資には十分お気を付けください。

国のレベルでも同じことが言えます、国が支払う借金の利息(国債の利子)は、金利の上昇時には膨らみ、財政は負の連鎖に陥ります。我が国にとって、税収の拡大と歳出管理の正念場が近づいているように僕は思います。私たち個人も、万一のための対策が求められているのではないでしょうか。つまり現物資産への合理的な資産配分です。

Next: 各種相場の流れと投資スタンス~国際商品相場にマネーが流入する条件とは?



各種相場の流れと投資スタンス:(3)国際商品相場

2012年から2015年まで、国際商品相場下落し続けました。この間、日米欧の中央銀行が市場にマネーを供給し続けたにもかかわらず、なぜ商品相場にマネーが流れ込まなかったのでしょう。僕は以下3つの理由があると思います。

  1. アメリカのシェール革命
  2. 中国経済の成長減速
  3. 商品相場のスーパーサイクルの終焉

では、今年はどうなるのでしょう。原油を例にとって少し考えてみたいと思います。

昨年末「OPEC」と「非OPEC」が原油の減産について合意しましたが、産油国側の財政事情を勘案すれば、この合意は守られる可能性が高いと思います。

一方で需要の方はどうでしょう。中国や新興諸国の需要は今年も伸びが予想されており、世界全体でみれば、需給環境は昨年より改善するのではないでしょうか。したがって今年の原油相場は、アメリカのシェールオイルの産出が増えない水準が上限で、あえて言えば1バーレル=45ドルから上は60ドルといったところではないでしょうか。

次の注目セクターとして「穀物」を挙げたいと思います。昨年は北半球の穀倉地帯が好天に恵まれ、アメリカでトウモロコシ大豆史上最高の豊作を記録しました。一方で、昨年の相場を振り返るとどうでしょう。さぞ下げたのではないかとお思いになるかもしれませんが、意外と下値は堅く、トウモロコシに関しては1ブッシュエル=300セントが底で、年末にかけて幾分の上昇すら見られました。

このようなことから、穀物に関していえば、二年連続の大豊作で下値がほぼ見えたと考えてよいのではないでしょうか。つまり今年また豊作になったとしても、300セントのラインが下値になるという見立てです。逆に、夏場の受粉時期に悪天候が続くようなことがあればどうでしょう…。今年の穀物はそのような観点で臨みたいと思います。

最後に「貴金属」について一言だけ…今年は久々に「」に注目したいと思います、銀の現在の相場は1オンス=16ドル台後半ですが、この水準は2009年以来の安値です。

銀に限らずプラチナも、ドルベースでは安値に放置されていますが、貴金属は全体的に売られすぎているように思います。仮に貴金属全体の水準訂正があるとすれば、その恩恵を最も受けやすいのは、市場が小さく、ボラティリティが高いということになるでしょう。

Next: 各種相場の流れと投資スタンス~実物資産、ヘッジファンドについて



各種相場の流れと投資スタンス:(4)実物資産

FRBは量的緩和を停止して久しいですが、依然としてFRBがかつて市場に供給したマネーは、高水準で滞留したままです。日本や欧州に至ってはQE自体をまだ続けており、今年も市場に供給されるマネーは増え続けることになります。

したがって、少なくとも今年いっぱいという時間軸でみれば、マネーの量>実物資産 という構図は続き、実物資産の相対的な価値は上がり続けると見ていいでしょう。

では、不動産はどうでしょう。冒頭のようにすでに米国の長期金利は上昇しはじめ、日欧も同様の傾向にあります。不動産価格はある面で国債の金利との比較で値が決まりますので、金利が上がると不動産価格は下がる傾向にあります。

例えば、昨年の都内ワンルームマンションの価格はゆるやかに上昇しましたが、日本の長期金利が今後上がるなら、不動産相場にとってはマイナスです。ただし、金利の上昇は不動産にとって悪い話ばかりではありません。不動産の需要は好況時に高まり、賃貸収入が上がります。一般に金利は景気との連動性が高く、金利が上がるときは家賃も上がる傾向にあると言えるでしょう。これらを総合して考えるなら、今年一年の都内不動産相場は、現状程度を維持する可能性が高いのではないでしょうか。

続いて僕の好きな「コイン」のお話です。昨年日本のコイン市場では、異様な動きがありました。現代コイン相場の急騰です。どうやら一握りの“あおり系コイン商”が相場をあおり、ひと儲けしたようです。

コイン好きな僕としては悲しい限りですが、コインの市場は小さく、実際にこのようなことができてしまいます。市場が大きな海外マーケットではこのようなことは起きず、ときどき海外のコレクターやコイン商からひんしゅくの声が聞こえてきます。ただし、このような相場が長く続くわけはなく、すでに現代コイン相場は急速に正常化しつつあります。

このような異常な相場で高値掴みをしないためにも、例えば、

できればこのような準備をしたうえで、適正価格で投資するようにお願いいたします。

さて、今年のコイン相場はどうでしょう。以下は僕が有望と考えるエリアですので参考にしてみてください。

カラーストーンも引き続き上昇が期待できます。ただし、カラーストーンなら何でもいいというわけではありません。ここ数年徐々に水準をあげてきたミャンマー産の非加熱ルビー、同サファイア、同スピネル…このあたりは年々産出量が減っておりますし、昨年はアメリカによる経済制裁も解除されました。今年あたりから現地ミャンマーにアメリカ人バイヤーの参入も予想され、ますます入手は困難になるでしょう。ルビーなら例え1カラット程度の比較的小粒の石でも、投資対象になるでしょう。スピネルとサファイアは2カラット以上が投資対象です。ただし産地証明、非加熱証明アリのものだけです。ボッタクリも多いのでご注意ください。

各種相場の流れと投資スタンス:(5)ヘッジファンド

昨年は年央にBrexit、年末にはトランプ・ショックと、何かと変動の激しい一年でしたね。ヘッジファンドの成績をみても、WintonやMan、BlueTrendのように、中期のトレンドから収益をあげるタイプのファンドの苦戦が目立ちました。一方で、ボラティリティから収益をあげるタイプのファンドや、複数のヘッジファンドを束ねて運用するファンド・オブ・ヘッジファンドまずまずでした。

では、今年はどうなのでしょう。ヨーロッパの政治、トランプ次期大統領の政策、中国の為替政策、日本金利上昇など市場は混乱要因に事欠かず、今年は昨年以上に変動が激しい一年になるのではないでしょうか。であれば、昨年に続き中期のトレンドフォロワーは苦戦が続くのではないでしょうか。イメージとしてはよくて+5~7%程度にとどまると見ております。これに対して、ボラティリティから収益をあげるタイプのファンド、あと裁定取引型のヘッジファンドは、安定した成果を上げると思います。今年に関してはそのような観点で、銘柄の組み換えが選択肢になるでしょう。

Next: 2017年型ポートフォリオのまとめ



2017年型ポートフォリオのまとめ

以上を踏まえ、最後に今年の推奨ポートフォリオについてまとめさせて頂きます。毎年申し上げていますように、これは一つのサンプルで、実際にはお一人お一人の経済状況やライフプランによって異なります。あくまで一つの投資のヒントとしてご活用ください。

2017年型ポートフォリオ

■先進国株(20%)
1. 日本株ETF
2. 米国株ETF
3. MLP

■新興国株(10%)
1. 新興国分散型ETF
2. ASEAN株ファンド

■コモディティ関連資産(10%)
1. 原油ETF
2. 穀物ETF
3. 非鉄金属ETF

■債券(10%)
1. 米国既発債
2. 米国超長期債ETF

■不動産系資産(30%)
1. 日本不動産現物
2. 米国不動産現物

■オルタナティブ(20%)
1. クラシック・コイン(ヨーロッパ各国、アジア、古代ギリシャ・ローマ)
2. カラーストーン(非加熱ルビー、非加熱サファイア、スピネル)
3. ヘッジファンド(トレンド・フォロー型、ボラティリティ運用型)

昨年まで組み入れなかった債券を今年は10%組み入れました。株は昨年の20%から30%に上げました。その結果、株、債券、コモディティからなる「サイクル性資産」は全体の50%となりました。内訳は、株式30%、債券10%、コモディティ10%です。これに対して非サイクル資産(現物系資産およびオルタナティブ)を20%引き下げ50%といたしました。先進国の経済成長の加速を想定し、「やや積極的なポートフォリオ」です。

先進国株では、日本株を筆頭に、次点を米国株ETFとさせていただきました。日本株は年初から粛々と組み入れてください。アメリカ株は少なくとも年の前半はボックス圏を想定しております。したがって年の前半に下げたところを徐々に買い増しでいいのではないかと思います。また、今年はMLPを組み入れました。MLPは主にアメリカの原油を送るパイプラインへの投資です。原油に対する強めの見通しから、配当狙い、キャピタルゲイン狙いで購入です。

新興国株は特に年の前半は忍耐の時が続くと思いますが、投資は常に長期。一時的に下げたとしてもそこは我慢でいいのではないでしょうか。ただし個別の国はリスクが高く、今回は外しました。新興国分散型なら、コスト優位でVWOでいいでしょう。ASEANはETFの良い銘柄はなく、市販の投信が選択肢です。

コモディティは、原油を筆頭に、穀物を次点にいたしました。穀物ならトウモロコシか大豆がいいでしょう。ETF経由を想定しております。夏場に乾燥すれば暴騰ですが、仕込むなら早い方がいいでしょう。あとは本文で触れませんでしたが、銅やアルミなどからなる非鉄金属ETFです。アメリカと中国でインフラ投資が拡大しますと、非鉄金属は多く使われます。

今年久々に組み込んだ債券は、アメリカ国債です。個別の既発債銘柄でも結構ですし、長期債や超長期債を束ねたETFでも結構です。ただし10年債利回り2.3%の今ではやや物足りず、理想的には年後半2.8%到達時点からの仕込みが有効でしょう。

今年は不動産からREITを外しました。長期金利の上昇は特にREIT相場に悪影響を与えるでしょう。長期で持ち続ける覚悟があれば問題ありませんが、それでも値動きが日々目に入ってしまうREITは精神衛生上よくありません。不動産なら値動きが見えない現物がいいでしょう。不動産をポートフォリオから外すことはできませんので…。

オルタナティブは、筆頭にコイン、次点にカラーストーンです。この順番は人によって好き好きで、反対になっても構いません。時間をかけてひとつずつ加えていく楽しみは、他の金融資産にはない特徴です。勉強を怠りなく!

これでお終いです。なお、昨年の「2016年型ポートフォリオを考える」をサイトにアップしております。長さが苦にならない方はご一読ください。最後になりましたが、今年一年の皆様の投資の成功を心よりお祈りしております。

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一緒に歩もう!小富豪への道』(2017年1月12日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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