日経平均株価が「一昨年の大天井」と本稿で言ってきたレベルをすんなりと抜いてきた。しかしそれでも、ここから新たな相場が始まるわけではない。(山崎和邦)
※本記事は、有料メルマガ『山崎和邦 週報『投機の流儀』(罫線・資料付)*相場を読み解く2017年10月16日号の一部抜粋です。今月分すべて無料の定期購読はこちらからどうぞ。
日経平均株価は青春期、壮年期、老年期相場の三段上げ大天井へ
老年期相場が壮年期の大天井を抜いた
当メルマガの7月9日号で「老年期相場が壮年期の大天井を抜いたことが、過去5回の大相場の中で1回あった。それは小泉相場の選挙相場だ」と述べたことがあったが、週末までの9日連騰はまさしくこれであろう。「一昨年の大天井」と本稿で言ってきたレベルをすんなりと抜いた。
また先週10月8日号で「日経平均だけは先物主導で釣り上げておいて、踏み上げをさせて上昇させて空売り筋の踏み上げを誘い、それに決済玉をぶつけて一巻の終わりとするというストーリーを想定」したが、まさしくそれが現れている気がする。
97年11月の金融危機(山一證券・三洋証券・北拓銀行などの世界規模の大手が11月に一挙に破綻した)のちょうど1年前の、96年11月の高値21,300円台に迫った。
週末のSQ値は20,957円で決まったから、週末の安値さえもそれはなく、「幻のSQ値」となってクリアし、売買高は相変わらず20億株に満たないまま予想外の活況を呈した。
「空売り」を平気でやれる時代
繰り返しになるが、「ヘッジファンドが日経平均だけを先物主導で釣り上げて、空売り筋の買い戻しを誘う」と先週号で述べた。しかし、今は昔と違って空売りを「博徒のやる行為」という意識もなく、平気でやれる時代が来た。日経ダブルインバースというETF(上場投資信託)があり、これは信用取引でないから6ヶ月の期日もなく、また投信を買うのだから空売りをしている意識をあまり持たずに事実上は空売りをするという投資家が多かったに違いない。以前は、空売り比率が40%を超えるのは異常とされ、踏み上げ必然とされてきた。今は平気になってきた。今は博徒は好餌に困らない。これの踏み上げを狙ったものであろう。
もともと空売りというものは、体制に反逆する反体制の考えであり、上昇相場に逆行しようというものである。筆者は昔の経験で懲りたこともあり、また「上方も見るし下方も見る」ということになると自分の立ち位置が判らなくなるから、原則としては遠ざけてきた。しかし、今はダブルインバース投資信託のおかげで、気安く空売りができるようになってきた。その踏み上げを狙うことになるのであれば、たやすいであろう。博徒のやる行為だという意識がないままに博徒と化している一般投資家が餌食にされる場面であったろう。
日銀が買った6兆円はもう市場に出てこない
日銀が6兆円を買っているということは、これもまた上げ相場に大きく寄与する。つまり日銀は買い煽るわけではないが、買った6兆円は外国投資家と違って凍結される。つまり市場に出てこない。ここが外国筋の買いと根本的に違うところだ。
【図1】信用残高は1兆円水準での高水準が続く
【図2】壮年期相場における2015年6月高値時のETFの信用残を比較すると、日経インバース・日経Dインバースの買残、日経レバレッジの売残が大きく増加
特に直近の日経先物主導による上昇は、このETF踏み上げ・投げ売りを狙って、オーバーシュートを煽る投機筋の動きの側面が強い。
Next: 当面の動きは? チャート、ファンダメンタル両面で分析
当面の動きは? チャート、ファンダメンタル両面で分析
<1. チャート面>
6月20日の高値20,318円と9月8日の安値19,239円、この下げ幅が1,079円、これの「中抜きの倍返し」は「20,218円 + 1,079円 = 21,297円 ≒ 週末の値」ということになろう。9日連騰の結果である。
<2. ファンダメンタル面>
ファンダメンタルな理屈では、こういうことが言えよう。「理屈は貨車で(山積みで)やってくる」という。誰が何を言おうと市場では自由である。
上方修正後の1株当たり純利益EPSは1,420円、これを先進諸国並みの16倍に買うと「1420円 × 16倍 = 22,700円」。
NY並みに19倍に買うと「1420円 × 19倍 = 27,000円弱」となる。
大証券が言うところの年末22,000円、強気筋が言うところの28,000円説はファンダメンタルな根拠としてはこの辺を拠り所とするであろう。
【図3】東証一部 時価総額・日経平均株価推移/バフェット指数
2017年4−6月期名目GDP(542.8兆円)に対して、バフェット指数は116.12%(17年10月13日時点、東証一部時価総額630.3兆円)。日経平均株価での22000円超で、平成バブル以来のバフェット指数での120%超の危険水準入りとなってこよう。
10月末の日経平均は21,000円予測が最多だったが
10日発表されたQUICK月次調査によると、10月末の日経平均を21,000円と予測する市場関係者が最も多かったという。株価の先行きを強気に見る機関投資家が増えているという。12日(木)には遂に日経平均は一昨年の壮年期相場の大天井をすんなり抜いた。
Next: 日経平均株価は青春期、壮年期、老年期相場の三段上げ大天井へ
9日連騰、壮年期相場の大天井をすんなり抜いた
標題の通りの現象となった。木曜日に「選挙相場」が事前の予想と違って、与党が300議席という見込みが出て、「233議席割れたら暴落だ(市場の一般論)」「現状290席から30~50席は減るだろう(筆者)」と言われていたところ、「選挙は水物」であって、小池党が馬脚を現わしたり、現象面としてアベノミクスの経済政策が効いていることが数字面ではっきりしてきたことにより、300議席は大いに見込めるというニュースが11日に伝わると、市況は俄然7日連騰を為し、13日(金)には9日連騰をつくった。
「老年期相場というものは壮年期相場の大天井を抜けないものだ」「老いらくの恋、夢よもう1度であるから、それは無理はない」という意味のことを本稿では言い続けてきた。しかし、平均株価が2倍以上になった大相場は、アベノミクス以前には5回あった。その中で郵政改革相場(小泉相場)は、前年の壮年期相場の大天井を翌年に抜き去って、三段上げの大天井となった。青春期相場、壮年期相場、老年期相場という三段上げの大天井となった。
しかし、重要なことは、ここから新たな相場が始まったというわけではないということだ。相場は強いか弱いかと言えば、強いということを現実が示している。しかし、ここから新たな相場が始まったわけではない。新たな相場が始まるとすれば、4年10ヶ月に及んで株価が2倍半になったアベノミクス相場がいったん幕を引いてからでなくてはならない。
【図4】アベノミクス相場始動以降、ドル円・日経平均の推移
日経平均は高値更新も、ドル円との乖離が顕著に。需給主導による上昇と捉えられよう。
【図5】2015年壮年期相場高値時との比較
現状の為替水準だと、為替面での業績期待に乏しく2015年高値のPER16倍水準まで買い進むことは難しい展開か。
(続きはご購読下さい。初月無料です<残約13,000文字>)
週末までの活況相場の意味するところ――新しい大相場が始まったわけではない
当面の動きとして理屈を付ければ、次のようになるであろう――「理屈は貨車で(山積みで)やってくる」
10月末の日経平均は21,000円予測が最多だったが
9日連騰、壮年期相場の大天井をすんなり抜いた
アベノミクスの大団円が自公議席300席をうかがう事実として結実
踏み上げ相場の起動点は選挙相場だ
本稿創始以来の古い読者、例の「大阪のNさん」との交信(10月12日夜)
大阪のNさんからの「銀行株上昇せず、をいかに読み解くか」の質問(10月12日)
「大阪のNさん」からの追伸(13日夜)
「自由と孤独は二つでセット」
「『金融危機10年』は買いか」
JPモルガンの父の遺訓を想起しよう
強気推奨の日経ヴェリタス紙が「危機に備えよ」の特集として急変し
資産バブルに警戒を――「金融ニッポン・シンポジウム」要約
「2日シンポは荒れる」か
「7の付く年は魔の年か」――「危機に備える投資座談会」日経ヴェリタス紙掲載
今からの上昇・下降に関して確率計算と期待値
任期残り半年の黒田総裁
米国株式市場は上昇が続くか
10月8日号の質疑応答に関する交信(10月10日)
セミナー参加者との交信(10月10日)
古くからの読者Mさんから「保有するトルコリラの急落について」の質問(10月12日)
※本記事は有料メルマガ『山崎和邦 週報 「投機の流儀 (罫線・資料付)」*相場を読み解く』2017年10月16日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。
『山崎和邦 週報「投機の流儀(罫線・資料付)」』(2017年10月16日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
初月無料お試し購読OK!有料メルマガ好評配信中
山崎和邦 週報 「投機の流儀 (罫線・資料付)」
[月額3,000円(税込) 毎週日曜日(年末年始を除く)]
大人気メルマガ『山崎和邦 週報「投機の流儀」』のHTMLデラックス版をお届けします。テキストメルマガではできなかったチャートや図解を用いた解説も掲載。より読みやすく、理解しやすく進化しました。投資歴55年を超える現役投資家だからこそ言える経験に裏打ちされた言葉は投資のヒントが盛りだくさん。ぜひご購読ください。