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ビットコイン暴落の必然。大荒れの2018年相場で次に狙われる市場は?=近藤駿介

私は年始からビットコイン急落の可能性が高いことを指摘していた。市場価格の急騰急落は何回も繰り返されており、仮想通貨だけで起きた特別な現象ではない。(『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』近藤駿介)

プロフィール:近藤駿介(こんどうしゅんすけ)
ファンドマネージャー、ストラテジストとして金融市場で20年以上の実戦経験。評論活動の傍ら国会議員政策顧問などを歴任。教科書的な評論・解説ではなく、市場参加者の肌感覚を伝える無料メルマガに加え、有料版『元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』を好評配信中。

必然だったビットコイン急落。今年の市場は2017年とは全く違う

仮想通貨相場が総崩れに

仮想通貨全体の時価総額は7日に8100億ドル(約90兆円)を超える水準まで膨らんでいたが、16日は5400億ドルを下回った。ちょうど3分の1の価値を失った格好だ。仮想通貨の変遷をつぶさに眺めてきた京大大学院の岩下直行教授も「こんな『総崩れ』は見たことがない」と驚きを隠さない。

出典:ビットコイン急落、オルトと「共倒れ」 アルゴの売りも – 日本経済新聞(2018年1月17日配信)

金融市場の難しいところは、価格の動きを「つぶさに眺め」ても本質は見えてこないところ。小生が講座等で必ず話すことは、「相場」からアプローチする限り、「金融の本質」に辿り着くことはまずできないということ。私は1月4日に下記の通りに書いた。

ビットコインの急騰劇に対して『バブルである』との警告を発する専門家たちもいる。しかし仮想通貨に限らず、バブルであるかの判断基準は必ずしも価格ではない。(中略)

「バブル」だから価格が急落するのではなく、価格が急騰・急落するから『バブル』と呼ばれるようになるということである。

出典:【新春展望】2018年金融市場は「ビットコイン」と「日銀」が波乱要因に=近藤駿介 – MONEY VOICE(2018年1月4日配信)

仮想通貨で1億円以上の資産を得た「億り人(おくりびと)」がメディア等で取り上げられるようになったが、もし「もはや2017年ではない」というキーワードが現実のものになるとしたら、それを真っ先に痛感するのはこうした人たちかもしれない。

出典:同上

巷の「価格が割高に買われるのがバブルだ」という主張に欠けているのは、なぜその時期にバブルが発生し、そして崩壊したかという時期的な説明がないからである。

出典:同上

年末年始に公開した上記コラムの中で、ビットコインが急落する可能性が高いことを指摘した。もちろん仮想通貨の「総崩れ」は見たことはないが、市場価格の急騰急落は何回も繰り返されていることで、仮想通貨市場だけで起きた特別な現象ではない

ビットコインがどこまで上昇するかという「相場」的視点から考えるのではなく、金融あるいは金融市場がどのように成り立っているのかということから考えると、このタイミングで仮想通貨の急落が起きる可能性があることは予測可能な出来事だったといえる。

Next: なぜ仮想通貨は暴落した? 理由を後付けする専門家たち



なぜ仮想通貨は暴落した? 理由を後付けする専門家たち

ビットコインは1年前に900ドル足らずだったのが昨年12月中旬には1万9000ドル台と20倍以上に上昇した。だが、急騰ぶりが様々なメディアを通じて拡散し、その仕組みの目新しさにまた新たな投資家がひかれたためという以上に、なぜ値上がりしたのかの理由は定かではない

そんな謎に包まれたビットコインブームの実態が徐々に明らかになってきたことも、投資家を幻想から覚ますきっかけになっている。

出典:ビットコイン、薄れる幻想 受け渡しリスクに警鐘も – 日本経済新聞(2018年1月17日配信)

なぜ値上がりしたのかの理由が分からないのに、実態が明らかになって来たことが急落の原因だとする分析はいかがなものだろうか。「専門家」らしいといえば「専門家」らしい分析である。

「2013年の終わりにビットコインを150ドルから1000ドルにつり上げたのは一人の仕業だったらしい」。技術系メディアのテッククランチは16日、「ビットコインはごく少数の人によって価格操作されている」という多くの投資家の疑念を検証した研究者の論文を取り上げ、こんな見出しで伝えた。

出典:同上

ドッグイヤーどころかマウスイヤーともいわれるほど技術進歩が速い中で、2013年の経験を今回の急騰急落劇にそのまま当てはめるというのは無理がある。

「ごく少数の人によって価格操作されている」のであれば、ブームは起きないし、多数の取引所ができたり、日本で多くの「億り人」が誕生することもなかったはずだ。

相場には必然性があるが、価格には必要性はない

昨年末にかけてビットコインの価格が急騰したのには「必然性」があったはずである。それを無視して必要性のない「価格」について論じても、何の進歩もない。同じ過ちを繰り返すことになるだけである。

Next: 日米株式市場は好スタートも、ファンドマネージャにとって厳しい年に



好調なスタートを切った日米株式市場だが

トランプ大統領誕生を過度に警戒し過ぎて相場に乗り遅れた2017年の反省からなのか、2018年は多くの投資家がスタートと共にダッシュをかけるという「膾吹きに懲りて羹を飲む」かのような展開となった。

2018年大発会で日経平均株価が741円39銭高と1996年以来22年ぶりのロケットスタートを切った日本を追いかけるように、NYダウも2018年に入って12日までの9営業日のうち7回史上最高値更新を記録するという好調なスタートを切った。

トランプ大統領が就任した2017年1月20日以降(248営業日)NYダウの史上最高値更新は77回目で、史上最高値が更新される確率は31%強と実に3営業日に1日のペースで史上最高値を更新してきた計算になっている。特に9月以降から年末まで82営業日では36回、約44%の確率で史上最高値を更新しており、年末に向けて上昇基調に拍車がかかっていることが鮮明となっている。

2017年のNYダウの年間上昇率は約25%と、日本がバブルの絶頂にあった1989年の年間上昇率約29%には及ばなかった。しかし、1989年(249営業日)に日経平均株価が史上最高値を更新したのは68日と、史上最高値更新確率は27%強だった。こうした点にも「トランプ相場」が稀にみる力強いものだったことが表れている。

ファンドマネージャにとって厳しい年になる

ファンドマネージャーにとって強いベンチマーク(BM)は最大の敵である。特にポートフォリオ構成がBMに近付くという宿命を抱えている資金規模が大きいファンドのファンドマネージャーほど、厳しい状況に置かれることになる。

日本で運用先進国と思われている米国だが、パフォーマンスのいいファンドにお金が集まるという順張り傾向の強い国でもある。それは、戦後、ブラックマンデーやリーマン・ショックなど短期的な暴落に見舞われたことはあるものの、トレンドとして下落したことがない国の特徴でもある。

2017年はNYダウが約25%の上昇を記録する一方、ヘッジファンドIndex(Eurekahedge North American Hedge Fund Index)のパフォーマンスは6.6%NYダウの上昇率の4分の1程度にとどまった。

こうした状況から想像されることは、2018年はヘッジファンドなどのアクティブファンドよりもインデックスファンドに資金が集まりやすいということだ。それはアクティブファンドのファンドマネージャーにとっては競争相手が一段とパワーアップすることを意味するものでもあり、2018年も厳しい年になるという覚悟を強いられるということである。

Next: 市場の流れを変えかねない事態が起きる気配



市場の流れを変えかねない事態が起きる気配

ファンドマネージャーが強いインデックスに勝つための必要条件は、インデックスの上昇に遅れず、相場の上昇を享受しつつ、インデックスが下落する局面をうまく避けることである。言い換えれば「神業」が求められるということ。

「神業」が求められるファンドマネージャーにとって、直近3ケ月、40%強の確率で史上最高値を更新し続けている相場に乗らないという選択肢はない。四の五の言わずに取り敢えず上昇相場に乗り遅れないように乗るだけ乗って、あとは下落局面を避ける可能性、自らの運の強さに賭けるというのが現実的な選択肢となる。

こうした状況でロケットスタートを切った2018年の株式市場だが、その陰では市場の流れを変えかねない事態が起きる気配も見え始めている。そうした気配を醸し出しているのは――

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【関連】【新春展望】2018年金融市場は「ビットコイン」と「日銀」が波乱要因に=近藤駿介


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・割高になり過ぎた都心不動産 ~ メザニンで不動産市況は救えない(12/23)
・税制改革に対する過度の期待とFRBが抱えるジレンマ(12/18)
・リスクに備えることを忘れたリスク(12/11)
・2018年は2017年の延長線上にある?(12/4)

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・転換点を迎えた金融政策 ~「出口論」を強いられる異次元の金融緩和(11/9)
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・FRB次期議長問題 ~ 日米で大きく異なる「金融政策の専門家」(10/20)
・リスクが消えた金融市場を演出した「トランプ&シンゾウ」(10/16)
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元ファンドマネージャー近藤駿介の現場感覚』(2018年1月15日号)、『近藤駿介~金融市場を通して見える世界』(2018年1月17日号)より一部抜粋、再構成
※記事タイトル、本文見出し、太字はMONEY VOICE編集部による

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