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「団地の子と遊んじゃダメ」と我が子を教育する親が見逃していること=午堂登紀雄

団地といっても様々ですが、一部の親たちが我が子に「遊ぶな」と言うのは、いわゆる低所得者向け団地に住む子どもです。この教育方針はどこまで正しいのでしょうか?(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)

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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。

我が子の将来を考えたとき「あの子と遊ぶな」はどこまで正しい?

「親心」か「単なる差別」か

親が子にする注意に「団地の子とは遊んじゃだめ」という言葉があるそうです。最近はあまり聞かれなくなったようですが、昭和の時代に地方ではよくあった、という話を聞きました。

それはなぜかというと、たとえば団地の子が家に遊びに来ると、ゲームソフトやホビーのカードが無くなったり、万引きや火遊びなどに自分の子を誘ったりなど、非行や問題行動を起こすことが多いから、というのがその理由のようです。

ネットでも定期的に話題になるテーマのようで、過去にコラムを読んだり、様々な意見を目にしたことのある人もいると思います。

確かにこのような交友関係では、自分の子が悪い影響を受けるのではないかと大人が心配するのもうなづけます。

では、これは現在でも当てはまるのでしょうか?あるいは単なる差別でしょうか?

ちなみに、たとえばアメリカで人を採用するときに「黒人だから不採用」などと属性によって相手に不利な扱いを強いるのは差別として法に触れる行為です。

「団地」とは何なのか?

それはともかく、そもそも一言で団地といっても様々なタイプがあります。低所得者向けの市営・県営住宅、中所得者向けの公団住宅、構造不況業種から離職し次の職に就く準備者向けの雇用促進住宅、中所得者以上の分譲団地など。

また、住人はほぼ地元民で構成されており近所はみな顔見知りという団地もあれば、外部からやってきた人たちが集まった団地もあるなど、コミュニティの性格も治安も様々なものがあります。

昨今は建て替えも進んでいますが、まだまだ古い団地も残っていて、子どもはおらず高齢者ばかりという団地もあります。

そして、親や近隣の大人が「遊んじゃいけない」と指摘するのは低所得者向けの団地なのですが、「一般論としては」おおむね間違っていないと言えそうです。

なぜなら、親が貧しいと日々の生活を維持させることが最優先となり、子どものしつけまで手が回らないとか、子どもの倫理観の確立や身辺自立を促そうという精神的・時間的余裕が失われやすいからです。

もちろんそうではない親もたくさんいますが、世界を見渡しても犯罪の多いスラム街を構成するのは富裕層ではないことからも、一般的な傾向として「貧すれば鈍する」ということは言えるでしょう。

親がダメなら子もダメになる。だが…

また、そもそも親はなぜ貧しいのでしょうか。確かにシングルマザーとか病気やケガで思うように働けないとか、やむを得ない事情で低所得を強いられている人も少なくないと思います。

しかし、様々な社会福祉支援制度が整備されている昨今で、そうした特段の事情もないのにいつまでも貧困から抜け出せないとすれば、たとえば難しい問題を解決しようとする発想、独創的なアウトプットを出そうという姿勢、人や組織を率いてより生産性を高めようという努力が貧困である可能性があります。

実際求人情報を見ても、高収入の仕事はこれらが求められ、低収入の仕事ではあまり重視されていません。

そして、こうした努力を面倒くさがり怠る親は、当然自分の子どもにもその能力の獲得には無関心でしょう。すると本人が望まなくても、日々の振る舞いや子にかける言葉が下流志向になります。

結果として子どもに適切な倫理観や道徳観が身につかず、冒頭のような問題行動を起こすようになる、といったことは考えられます。

それもあって、ある団地が「事件や事故がよく起こる場所」として地元で有名になり、巻き込まれたり悪影響を受ける危険があるから近づくな、という話が持ち上がるわけです。

Next: それでも我が子を「団地の子」と遊ばせたほうが良いワケ



私は自分の子を「団地の子」と遊ばせる

しかしだからといって「団地の子どもとは遊んではいけない」と子の交友関係を強制するのは、私は支持しない立場です。

なぜなら、個々人の資質を考慮せず属性だけで判断するのは、視野が狭く思考の浅い人間のすることだと考えているからです。

確かに「そういう傾向がある」という先行情報は、普段よりも用心して接するなどといったセキュリティ的な効能があることは否定しません。

だから、そこは多少の注意をするとしても、親が子の様子をよく観察するにとどめておけば良いのではないかと思います(他人には他人の教育方針があるので私が他人の子育てをどうこう言いたいわけではなく、自分の子どもたちには、という意味です)。

それに、子どもにはどうでもいいことなのに、大人の方が余計な心配をしているということもあるかもしれません。

「投資」と「人間関係」の共通点

ちょっと話はそれますが、私は不動産投資家でもあるのですが、「人口が減少する日本での不動産投資は危険だ」という論調を目にすることがあります。

ここで違和感があります。日本といっても地方郊外もあれば、東京のような大都市もある。地方や郊外は確かに人口が減少し、家が余っている。一方、特に東京は日系・外資含め企業の本社が集中し、求人も多い。そのため職を求めて全国から人がやってきますから、人口は流入超過で賃貸需要は底堅い。

また、東京でも23区と都下は違うし、23区でも区によって賃貸事情は異なる。それこそ山手線駅の新橋と有楽町は隣り合った駅なのに風景が全く違い、さらに新橋駅でも虎ノ門側と汐留側では環境が異なり、賃貸需要も変わる。

そして同等の場所でも築年数が古く修繕費がかかる物件もあれば、インテリジェント対応で人気の物件もあり、賃料水準も安定度も収益性も変わる。

そうやって個別性を考察するのは手間も時間もかかるし面倒くさいわけですが、属性だけで判断するのは楽な一方、思考停止と同じですから、優良物件は掴めない。

つまり日本はどうこうなど、おおざっぱな属性だけによる判断では不動産投資の成功はおぼつかないわけで、それは人間関係にも言えるのではないでしょうか。

Next: 子ども時代の分け隔てのない交友関係が「成功の土台」になる



分け隔てのない交友関係が「成功の土台」になる

現実には団地に住んでいてとても礼儀正しい子もいれば、戸建てに住んでいても品性下劣な子もいます。

私も子どもの頃、同じ学校区内に団地があり、そこに住んでいた女の子とはよく遊んでいました。数年後には団地を出て家を建てましたから、おそらく親は住宅資金を貯めるために一時的に団地に住んでいたわけで、そうした親の計画的な姿勢が彼女にも伝わっていたのでしょう。彼女は当時からとてもしっかりしていました。

また、「団地住まいだからといっていたずらに排除しない」という姿勢は、多様性への適応という観点でも意味があると思います。

たとえばですが、私は自分の子は公立小学校に入れようと思っています。

私立小学校は、受験というフィルターを通じ、比較的同質な価値観や社会階層の人たちが選別されます。そのため学校の秩序は保たれやすく、おおむね所得の高い世帯の子でしょうから、自分の子も同級生の良い影響を受けて育つという安心感はあります。

一方、公立小は私立とは違い、様々な社会階層、価値観、育成歴を持つ子どもたちによる異質な集団です。

そのため時には荒れたり問題が起こったりするのですが、子はそうした環境でもまれる中で「いろんな人がいるんだ」と個々の違いを認め、多様性の中での適応力が育まれる期待があるからです。

それはいわゆる「他民族・多宗教国家」みたいな環境なわけで、いわゆる「グローバル志向」のミニ版ですから、子が将来成功する土台作りに貢献するのではないかと思っています。

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醜くて美しいこの世界

もちろん、「朱に交われば…」という懸念をする人もいるでしょうし、そうなるリスクは確かにあります。

しかし私は、世の中のきれいなものや美しいもの、安全なものだけでなく、汚いもの、醜いもの、不公平や不条理もすべて見せ、それでもブレない強い精神軸が持てるような子育てをしたいと思っています。

まあ子育てに正解はありませんし、そもそも私の計画などはどうでもいい話ですが、「属性は参考にしても、最終的には人を見て判断する」という姿勢は、取引先や結婚相手を選ぶ際にも必要な視点ではないでしょうか。

image by: Wikimedia Commons

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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年1月23日)
※太字はMONEY VOICE編集部による

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