私は、中国経済は少なくとも十数年は拡大を続けると思っています。この考えに立って資産運用を考えたときに行き着くのが、中国人が好みそうな現物資産です。(『一緒に歩もう!小富豪への道』田中徹郎)
(株)銀座なみきFP事務所代表、ファイナンシャルプランナー、認定テクニカルアナリスト。1961年神戸生まれ。神戸大学経営学部卒業後、三洋電機入社。本社財務部勤務を経て、1990年ソニー入社。主にマーケティング畑を歩む。2004年に同社退社後、ソニー生命を経て独立。
狙い目は「中国人が好きな現物資産」中国コインや宝石に妙味あり
中国経済の崩壊「まだまだ先」
年頭のメルマガで「中国人が好む金融商品を先回りして買う」ことの意味について少しだけ触れました。これは僕が昨年から意識している考え方で、特に現物資産への投資の際に、有効な方法ではないかと思います。
このメルマガでもたびたびお話ししてきましたが、以前から僕は中国経済に対し、どちらかといえば懐疑的でした。地方政府で膨らむ債務と、それを補填するために異様に発達したシャドーバンキング。国営企業で急速に膨らむ債務問題とそのゆくえ。富の偏在と格差の増大、自国通貨に対する信認の低下からくる、アングラマネーの海外逃避。労働人口の減少と少子高齢化の始まり…。
どれをとっても(ほかの先進諸国と同様)深刻な問題ではありますが、意外といまの共産党一党体制は、社会や経済をうまくコントロールできているように思います。少なくとも今のヨーロッパやアメリカ、わが国などと比較して、中国の政治システムが、突出して機能不全に陥っているようには見えません。
一党独裁による政治はいずれどこかで劣化が始まるのでしょうが、それは例えば5年や10年といった時間軸では起こらず、少なくとも十数年といった比較的先のお話ではないかと僕は考えるようになりました。
つまり中国が抱える諸問題は当面のところ顕在化せず、同国経済はもうしばらく拡大を続けるという考えです。
高騰する「中国コイン」の条件
この考え方に立って資産運用を考えると、どういうことになるでしょうか。やはり、中国人が好みそうな現物資産への投資に行きつかざるをえません。
例えば、年頭のメルマガで申し上げた中国コインです。中国のコインはリーマン・ショックのあと急騰し、なかには数年で10倍以上の値が付いた銘柄もありますが、その後は反動からやや下げ気味でした。
ところが最近は次から次に新しい買い手が現れているようで、特に一部のコイン群では再騰モードに入りました。このあたりは人口14億人のすごさで、新しい富裕層の出現です。
特に、
- 残存枚数の少ない
- 鑑定会社によるケース入り
- しかも高い数字のついた
- デザイン性の高い
といった条件を備えたコインは、ほぼ例外なく高騰しつつあります。おそらくこの水準訂正はこれからが本番ではないでしょうか。
先日あるコイン商の店主に、「中国人以外で中国コインを買う人はいますか?」と尋ねたところ、なにをバカなことを言うんだという顔をされました。だからこそチャンスがあると僕は思うのです。
カラーストーンもねらい目だと僕は思います。歴史的に中国人が玉(ぎょく)と呼んで好んできたヒスイ、なかでも深い緑で透明度の高い「ロウカン」と呼ばれる石は、大変面白いでしょう。
ただしロウカンの産地ミャンマーでも、中国系バイヤーの買い付けが厳しく、10年ほど前なら2カラット=20万円ほどで買えた石が、今では現地でも180万円ほどはいたします。しかも数が少なく、めったに売り物は出ません。中国人が好きな赤い石も相場高騰中です。もちろん非加熱、ミャンマー産が前提ですが、ピジョンブラッドのルビーは現地でもめっきりと売り物が減り、1カラット程度の小粒な石でも見つけるのは至難の業です。ミャンマーの新政府が採掘権の付与を絞っていることや、中国系バイヤーの進出などが影響しているようです。
赤い石ならスピネルもいいでしょう、スピネルはルビーと似ていますが、組成は全く異なります。ルビーやヒスイと同じくミャンマーが最高石の産地ですが、スピネルと同様の理由で希少化しつつあります。先日受けた現地バイヤーからの報告ですと、2カラットなかば程度の中型石ですら、高品位な石なら現地で100万円ほどの値で売られはじめているようです。5年ほど前なら15万円ほどで売られていた石です。
このような中国人が好む現物資産は、少なくとも数年は投資対象として有望ではないかと僕は思います。
Next: コインはなぜ金融ショックに強い? 投資対象としての欠点とは
投資対象としての欠点
僕は理屈抜きにコインが好きなのですが、仕事がら冷静に、資産運用の対象としてコインを見ている部分もあります。
コイン収集歴が長くなりますと、それなりに投資対象としての欠点も見えてくるものです。なにより売り買いのコストが高いのが欠点です。
コイン商の店頭でコインを売り買いすれば、良心的な店ですら、私たちは片道20%程度のコストを支払う勘定になります。あおり系コイン商なら、仕入れたコインに対し、2倍程度の売値を設定することも珍しくはありません。
仮にコインに「本来の価格」というものがあるとして、私たちがその2割増しで買い、出口で2割引きで売るとすればどうでしょう。この場合コインが購入価格の1.5倍にならなければ、儲けは出ない勘定になります(注:1.2÷0.8=1.5倍)。
幸いコイン相場は順調に推移していますが、少なくとも数年手元に置いておかなければ、コイン投資で儲けることはできません。
このことからわかるように、投資商品としてコインを見た場合、長期保有が前提となり、私たちの資産を全体でみれば、それだけ流動性が低くなるわけです。これもコイン投資の欠点に挙げておくべきではないかと思います。
コインは経済的ショックに強い
一方でコイン投資の優位点もたくさんあります。まずは経済的なショックに強いという点です。
たとえば先の金融ショックです。2008年リーマン・ショックの前後の値動きを見ますと、例えばアメリカのコイン相場を指数化したPCGS3000も、確かに2008年をピークに下げました。が、その下げ幅は10%ほどに過ぎません。イギリスのコイン指数(GB200)に至っては、リーマン・ショックのさなかですら順調に上昇しました。
ショックに強い理由の1つは、機関投資家がコイン市場に入ってこないからだと思います。コインの市場規模は小さいとよく言われますが、せいぜい世界全体で1兆円あるかないかではないでしょうか。
対して、例えば株式市場の時価総額は1京円、債券市場の規模もまた1京円ほどあります。もしこの1兆円説が正しければ、コインの市場規模は、株式市場や債券市場のたったの0.01%に過ぎません。そんな狭い市場に機関投資家は入ってきませんし、おそらく今後もないでしょう。
機関投資家に対してコインコレクターはどうでしょう。彼らはたとえ保有する株の価値が半分になったとしても、慌ててコインを売るということは致しません。僕自身がそうだったのでよくわかります。
リーマン・ショックの際も、含み益(含み損ではないところがミソです)を抱えたまま、コインを持ち続けた方が大半だったのではないでしょうか。ですから市場のバランスは崩れず、相場も下がらなかったのでしょう。
Next: コインが経済ショックに強い2つ目の理由とは?
価値の源泉は「希少性」
コインがショックに強い2つ目の理由は、コインの価値の源泉が希少性にあるという点ではないかと思います。
確かにコインを物質的な側面で見れば、金であり、銀であり、場合にっては銅や亜鉛などではありますが、コインの価値全体に占めるこれら金属の価値などたかだが知れています。
極端な事例として神聖ローマの10ダカット金貨を挙げますと、このコインの重量は35グラムほどに過ぎませんが、コインの価値は2000万円ほどいたします。
金35グラムの価値は20万円以下ですので、金属としての価値は、このコインの場合たったの1%に過ぎません。では、残りに99%部分は一体どこから来ているのでしょう。
答えは希少性です。
コインを手に入れたい望む人は、物質としてのコインに魅力を感じているのではなく、コインのデザインであったり、歴史であったり(例えばナポレオン家の収集品だったなど)に魅力を感じます。でも仮に、そのコインがザクザクあればどうでしょう。この場合、そのコインに1000万円、2000万円の値がつくとは到底思えません。
つまり欲しいと望む人がたくさんいる一方で、そのコインの枚数が極めて限定されている状態。ここでは一種のオークション的な環境が生まれ、コインの価格は高騰するわけです。
多くの収集家が好むデザイン、歴史、来歴を備える一方で、コインがホンのわずかしか残っていない状態…。これを一言でいえば「希少性が高い」ということになるでしょう。
先ほどの例に当てはめれば、10ダカット金貨2000万円のうち、99%は希少性が占めているといってよいでしょう。
この希少性は人が本源的に持つ嗜好性によっているだけに、景気の変動や金融ショック、もっといえば浮ついたマネーの世界からも遠い距離にあり、これがコイン相場がショックの影響を受けにくい2つ目の理由です。
このようなコインが備えた特徴は、資産運用における分散効果という点でも、大変意味のある性質ではないかと僕は思います。
『一緒に歩もう!小富豪への道』(2018年1月18日, 23日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による
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