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家賃保証の魔法がとけた「かぼちゃの馬車」、被害が拡大した4つの問題点=姫野秀喜

家賃保証のサブリース業者が破たんした「かぼちゃの馬車」問題。被害が出て拡大してしまった理由を1つずつ整理し、どこまで保証がされるのかを考えてみました。(『1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』姫野秀喜)

プロフィール:姫野秀喜(ひめの ひでき)
姫屋不動産コンサルティング(株)代表。1978年生まれ、福岡市出身。九州大学経済学部卒。アクセンチュア(株)で売上3,000億円超え企業の会計・経営計画策定などコンサルティングに従事。合間の不動産投資で資産1億円を達成し独立。年間100件以上行う現地調査の情報と高い問題解決力で、顧客ごとに戦略策定から実行までを一貫してサポートしている。

自己責任で見捨てる世の中はおかしい。問題点4つを丁寧に考察

被害者の会「集団訴訟」を準備

先日の朝日新聞や、全国賃貸住宅新聞にすっぱ抜かれていましたが、投資用シェアハウス被害者の会が集団訴訟を起こす可能性があるとのことです。

会では、女性専用の新築シェアハウスをサブリースで売るという「かぼちゃの馬車」を運営していたスマートデイズという会社および、その融資を担当していたスルガ銀行を相手取り、被害を訴えていくということです。

心情的には全面的にオーナーを支持したい気持ちですが、なかなか現実問題としてどこまで保証してもらえるのかは難しいところです。

このサブリースの被害が出て、拡大してしまった理由を1つずつ整理し、どこまで保証がされるのかを考えてみました。

1. 新築シェアハウス業者の売り方・サブリースの問題

まず、最初に問題なのは、新築シェアハウスを販売していた業者とサブリース業者です。

私がずっと言い続けているように、23区内のちゃんとした場所に、普通の賃貸物件で8%以上の利回りがないと、そもそもフルローンではキャッシュフロー的に厳しいです。業者はそれをわかっていながら、シェアハウスで見かけ上の利回りを8%以上にして売っていた点です。

シェアハウスは何かあったときに通常の賃貸物件に変更すると利回りが減るので、シェアハウスの状態で「8%」では、とてもではないけど採算が合いません。

この数字の意味は、不動産業者として投資物件を取り扱っていれば、当然、理解しているはずです。また、この程度の数字がわからない人は、不動産業をやってはいけないと思います。

ですので、そもそもシェアハウスをやめたら利回りが8%未満になってしまうようなものを売っている時点で、倫理的にどうなん?と思うわけです。

それに加えて、サブリースについても約束した内容を反故にするわけですが、それが可能な契約状況になっている可能性があります。

Next: 過剰融資をした銀行の罪/私文書偽造などの不正もあった?



2. 過剰融資の問題

以前にも当メルマガで書きましたが、仮にも銀行の免許を取得しているものが、業者の立てた楽観的見通しで作られたシェアハウス事業計画のリスクを見抜けないとしたら、それは能力不足といえます。

見抜いていたとしたら、それは最初から破たんする可能性がある事業に融資したということで、どうなん? と思います。

ただ、銀行の融資は、あくまで個人への融資なので、シェアハウスの事業が破たんしても、サラリーマン投資家が務めている会社の給与から支払えると踏んでいたかもしれません。

融資対象となるもともとの年収基準がとても高いので、シェアハウスが回らなくても、会社の給料から払えるかを、ちゃんと計算していたのかもしません。

個人の給与所得を加味して、とりっぱぐれがない状態であれば融資してしまうのは、銀行も営利企業である以上、当然のことと言えます。ですので、この点について私は銀行を非難することはできないと思います。

3. 私文書偽造などの不正

報道によれば、資産の内容を改ざんし、実際の預金額よりも多めに見せるということを示唆されたオーナーもいたとのこと。

仮に、本当に私文書偽造を行っていた場合、懲役罰金などが科せられる可能性もありますし、示唆した不動産業者やそれを受け入れたオーナーなども危ういです。

また銀行がその事実を知っていたにもかかわらず隠していたとしたら、銀行もまずいことになります。よって、銀行側は絶対に事実は知らなかったと主張するはずです。

この不正は結構危険です。仮に銀行が不動産業者とオーナーから資産状況についてだまされただけであると主張された場合、オーナーや不動産業者のみに責任が被さってしまう可能性があるからです。

資産の水増しや森友学園のような金額の違う二重契約書などは絶対にやってはいけないのです。

Next: オーナーも勉強不足と言わざるを得ない。保証の糸口を掴むには…?



4. 事業者としてのオーナーの責任

今回の被害者は一般消費者ではなく、事業者、経営者としての立場となります。レオパレス問題でもそうですが、この事業者というのは、かなり立場が弱いんですよね。

一般消費者であれば保護されるようなことも、事業者同士での契約の場合は保護されないので、正直、状況は厳しいと思います。

世の中に不動産投資の本や情報があふれかえっているのですから、「かぼちゃの馬車」と契約する前に、不動産投資の本を10冊、いや3冊でもいいから読んで欲しかった

本を読めば、新築シェアハウスの事業を成功できるのか、そもそも販売価格は割高ではないか、家賃相場が下がったときや、需要が変動した時のコンティンジェンシープランは何かなど、考える機会が得られたはずです。

学ばなかった代償は計り知れません。

この中で、オーナーが販売業者に対して責任を追及できる可能性があるとしたら、「新築シェアハウス業者の売り方・サブリースの問題」かもしれません。

提示された事業計画があまりに現実的ではないということを事実に基づき説明し、かつサブリースを反故にしたことについて追及できれば、保証の糸口をつかむことができるかもしれません。

「過剰融資の問題」は、銀行内部で、このシェアハウスに対して、破たんの懸念があると認識したタイミングはいつからかによるでしょう。

事業が破たんすることが明らかなのに融資したということが立証されれば、もしかしたら銀行に対して保証を要求することができるかもしれません。

とはいえ、その可能性はそれほど高くないかなと個人的には考えています。

Next: なぜ「かぼちゃの馬車」問題はほとんど報道されないのか



意外に世の中の人は、この問題に関心がない

最後に、このかぼちゃの馬車の問題は、意外に世の中の人には関心がない問題のようだという話をします。

レオパレスの集団訴訟の時もそうですが、ほとんど報道されることはなく、今は冬季オリンピックの声援にかき消されています。

というのも、世の中の大多数は大家さんではないからです。

自分自身が大家さんでなければ、シェアハウスの破たんや、レオパレスの訴訟にはまったく興味がないのが人間というものです。

それどころか取材をしていると「欲を出した人が失敗しただけ」という、きわめて乱暴な意見すら耳にしました。そういった乱暴な意見には、個人的には憤りを感じます

年金やリストラの不安などがある中で、誰だって、少しでもお金の不安を解消したいと願ってよいはずです。

結果として、やり方は正しくなかったかもしれないけれど、お金の不安を解消するために、リスクを取って挑戦した投資家を、自己責任の一言で見捨てる世の中は、ちょっと違うのではないかと思います。

不動産投資では、頑張って努力した人が報われる、そういう世の中になって欲しいと思っています。

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1億円大家さん姫ちゃん☆不動産ノウハウ』(2018年2月15日号)より一部抜粋
※太字はMONEY VOICE編集部による

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