しばしばクローズアップされる「格差婚」。家柄や収入など様々な違いが挙げられますが、一般的には格差婚はうまくいきにくいと私は考えています。(『午堂登紀雄のフリー・キャピタリスト入門』午堂登紀雄)
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プロフィール:午堂登紀雄(ごどう ときお)
米国公認会計士(CPA)。1971年生まれ、岡山県出身。中央大学経済学部 国際経済学科卒。株式会社エディビジョン代表取締役。一般社団法人 事業創造支援機構代表理事。
結婚とは同じ人生を共有すること。解決が難しい価値観の違いとは
一般的にうまくいきにくい「格差婚」
しばしばクローズアップされる「格差婚」。家柄や収入など様々な違いが挙げられますが、一般的には格差婚はうまくいきにくいと私は思います。
ただし私が考える格差とは、家柄や収入といった社会的階層や立場の違いというより、育ちなどによる品性の違いや、努力や向上心といった資質の違い、自己肯定感や自己有能感など自我の成熟度の違い、そして金銭感覚や教育観といった価値観の格差です。
そして格差というからには、「ちょっと違う」では片づけられない大きな差という意味です。
何がすれ違いを生むのか
たとえば家柄の格差で両親から反対されるという話は時々耳にしますが、そもそも自分の親すら説得できないようでは、様々な困難を二人で協力して乗り越えていくのは難しいでしょう。
実家の跡継ぎといった問題があったとしても、それは子の意志の尊重より親が自分の都合を優先させたいということですから、親が自己中なのか子離れできていないわけで、介護等のやむを得ない事情ならともかく、当人は自分の生き方を自分で選べばよいはずです。
芸能人の結婚でよく言われる格差婚は主に収入の違いが挙げられ、女性側が男性よりも圧倒的に稼いでいる場合のみに適用されるようです(逆玉とも言われますが)。
これでうまくいかないのは男性側のプライドが高すぎて卑屈になることや、女性側がわがまますぎて夫が疲弊する場合などですが、自分の自尊心が確立し、お互いに相手を尊重して支え合うという意志があれば、大きなすれ違いにはなりにくいのではないでしょうか。
実際、女社長としてバリバリ働く奥様を陰で支える控え目な旦那、というカップルは私の知人でもいます(その奥様は旦那様に大変感謝しています)。
うまくいかない原因その1:品性の格差
さて、前述した格差婚でうまくいかないと私が考える1つ目の要因の「品性の格差」とは、たとえば言葉遣いや生活態度、マナーやモラルの違いです。
たとえば先日、郊外のショッピングモールのフードコートに寄ったときのこと。隣のテーブルから「ふざけてんじゃねーよ」という声が聞こえたので振り返ったら、二人とも茶髪同士の若い男女が子どもを叱っており、その子はなぜか後ろ髪が長いというファミリー。同席しているその友人と思われるファミリーも、スウェットのパーカースタイルで「バカかっつーの!」などと談笑している。これが最近よく言われるマイルドヤンキーなのかなと思いましたが、それはそれでうまくいっているようです。
しかしそのような言葉遣いが普通の人と、そうでない人が一緒にやっていけるのかというと、やはり「使う言語体系」に大きな違いがあると、受け入れることは難しいのではないでしょうか。
たとえば漫画などでよくある「お父様、お母様」と呼んで育った箱入りお嬢様と、「ジジイ、ババア」と呼んで育ったやんちゃ坊主との組み合わせが、現実として成立するという確率は低いのでは…。
ほかにもたとえば、食べるときに音を出すことに無頓着な人とそうでない人、目上の人に敬語を使える人と使えない人、すぐにキレる人とそうでない人、借りたお金を返す人とそうでない人、人の陰口を言う人とそうでない人、そういう品性の違いはどうしようもなく耐えられないのではないでしょうか。
まあ、実際にはこうした違いがあればそもそも結婚には至らないでしょうし、ある程度は家柄によって左右される部分も大きいですが、成人してからは自分でいかようにも変えることができます。
それが2番目の「努力や向上心といった資質の格差」です。
Next: 努力で埋められる差もある? 本人たちが幸せなら問題はない
うまくいかない原因その2:資質の格差
たとえば「やればできる」「努力は報われる」と信じている人と、「自分にはムリ」「努力したって報われないからやっても無駄」と最初から諦めている人とでは、生き方に大きな違いが出てしまい、同じ人生を共有できないでしょう。
先ほどの品性の違いも、本人の意識次第で何とでもなります。テーブルマナーだって学べるし、「自宅に招かれたら必ず手土産を持っていく」という習慣も、周囲をよく観察していれば取り入れられる。「そうありたい」と思えば、いくらでも情報は入ってくる。しかしそういう意識がなければ、周囲を流れる情報も、他人の振る舞いも、ただの景色としてスルーされるだけです。
そのため過去に、何かに没頭し努力して成し遂げたという成功体験を持っているかどうかを確認したほうが良いかもしれません。そういった経験があれば、家庭を前向きに展開させる努力にも積極的に取り組んでくれる可能性が高いと思います。
ただし、一方の成長に対してもう一方の精神の成長が追い付かない場合、離婚に至るケースが見られます。
たとえば不遇な時代に結婚し、のちにどちらかが大成を収めたという場合、本人のあくなき向上欲求に、配偶者がついていけず卑屈になるとか、嫉妬したりして逆に相手にブレーキをかけるようになる、といったケースです。
起業家によく見られる傾向で、私のまわりでも離婚歴のある起業家は頻繁に目にします。とはいえ、これは結婚前には見極めようがないですから、相手がどうなろうと自分がどっしりと構え、全面的に応援するという覚悟が必要です。
うまくいかない原因その3:自我の成熟度の格差
次の自己肯定感や自己有能感などの自我の成熟度の格差も、長い結婚生活を続けるうえでは無視できない要因です。
たとえばDV(家庭内暴力)に走る人、嫉妬心の強い粘着質な人、浮気癖のある人などは、適切な自己肯定感が育っておらず、相手を支配したり縛ったりすることで自分の価値を確認しようとします。
嫉妬心が強いのも、自分に自信がない人の特徴です。だから自分が安心するためには相手の都合などおかまいなく、メール攻撃や執拗な追及など、何でもするのです。
浮気癖も、自我の確立が不十分なため、つねにいろんな人から愛されていないと不安なのです。愛されていると確認したいから、何度でも浮気を繰り返します。
こうした性質は、付き合っている時によく観察していればすぐに見抜くことができますし、自身が正常な自意識を持っていればそういう相手は選びません。
しかし自分も自己肯定感が低ければ、愛情を確認する方法が似てくるので、お互いに惹かれ合って結婚し、表面上はうまくいってしまいます。
いわゆる共依存という関係ですが、相互に依存しあってるゆえに、不満があっても離れられない。これは良い悪いではなく、本人たちが幸せならばそれで問題はありません。しかし、小さな殻を破れずこじんまりとした人生になってしまうのも、またこういう関係の人たちでもあるのです。
Next: 修復できないトラブルに…。お金の使い方にも現れる価値観の違い
うまくいかない原因その4:価値観の格差
最後に、金銭感覚や教育観といった価値観の格差も挙げられます。
当然ながら、浪費ばかりする配偶者なら、計画的な相手からは「もう支え続けられない」と感じます。堅実な人にとって、ギャンブルや買い物に依存する相手を見れば「自己の欲求を制御できない未成熟な人間」と映り、軽蔑の対象になるからです。
むろん、何を堅実か、何を浪費と捉えるかは人それぞれで、「自分の満足のためにお金を使って何が悪い」と言われれば、何も悪くはありません。
ただ、それぞれのお金の使い方が、ある程度共通の価値観に基づくものであり、夫婦の幸福や家族の発展につながらなければ、やはり家庭の維持は難しくなるでしょう。
そこで相手が、今までお金を費やしてきた分野、今費やしている分野は何かを確認し、それは本人にとってどういう意味があったのか、本人のどういう性質や志向を体現しているのか聞いてみる(あるいは想像してみる)。そして今後、どういう分野にお金を使っていこう(投資していこう)と考えているか、話し合ってみることです。そこに自分が納得や共感ができればよいと思います。
一方、高学歴同士の同類婚が増えているようです。労働政策研究・研修機構が発表した「第4回子育て世帯全国調査」によると、夫婦の最終学歴を「中学校」「高校」「短大・高専他」「大学・大学院」の4つに分類して比較すると、夫婦ともに「大学・大学院」を卒業している高学歴カップルは17.9%で、初回調査時の12.9%より5ポイント増加したそうです。
それは、大卒が良くて中卒や高卒がダメということではなく、学業経験や学習意欲がお互いに似ていることに加え、子どもへの教育にも同質の価値観を共有しやすいということだと思います。
その教育についても、子どもが様々な能力を獲得することに無関心で自分のパチンコ代を優先させる親もいれば、貧しくても子が夢中になったことを全力で協力する親もいる。塾や受験に一生懸命な親もいれば、学校以外の経験を重視する親もいる。むろん子育てに正解はないのですが、子どもがいる家庭での教育方針の違いは、結婚生活そのものに影響を与えます。
とはいえ、結婚するときに子どもの教育観など持っている人の方が少数派なので、学歴の同類婚が増えているのは、ある意味安全な選択と言えそうです。
そう考えると、同質な教育経験と労働観を持ち、同等の能力の集まりである職場結婚は、実際には失敗しにくい成婚手段のひとつなのかもしれません(同僚の手前もありますし)。
玉の輿に乗っても、進むのは茨の道
冒頭で私は「社会的階層の違いではない」と述べましたが、「同じ価値観を持つ人たちが社会の階層を構成すると考えれば、結果的には階層の違いだろう」という指摘があるなら、あながち否定できないな、とも思います。私個人が「そうではないと思いたいだけ」なのかもしれません。
逆に難しいのは、そういった確認をする時間も余裕もなく結婚したデキ婚やスピード婚、ハイスペック狙い婚です。様々な格差という爆弾を抱えて結婚すると、あとから爆発するリスクがあります。
そんな爆弾を不発処理するには、相手の価値観を尊重し合うこと、お互いの違いを認め、よく話し合って人生設計を刷り合わせる努力が必要でしょう。
お見合い結婚も格差を確認する時間が短い場合が多いのですが、最初から「違う」という認識の元で一緒になるため、むしろお互いに歩み寄ろうとし、長続きしやすいようです。
ハイスペック狙い婚が難しいのは、相手を尊敬し応援したいという思いよりも、単に安全圏に入りたいという安易な発想が根底にあるからです。
特に起業家や経営者は必ず浮き沈みがあるものだし挑戦意欲も旺盛。なのに相手のお金を使って自分が豊かになろう、楽をしようというのでは、思考格差があまりにも大きすぎて、すれ違いも起こるというものです。
とはいえハイスペック人材は危機察知能力も高いので、そういう打算的な異性を敏感に感じ取り、選ばないものですが。
成功者の配偶者の多くは、相手がどのような状況になろうとドンと構え、支え続けるという覚悟を持っています。私の友人の経営者の奥様は専業主婦ですが、「いざとなったら私がパートに出ればいいんだから、アナタは思いっきりやりなさい」と言われているそうです。
Next: 格差にどう向き合うべきか? 後悔しないための心構え
相手のために、自分はどう変化するのか?
なお、格差を論じると必ず出てくるのが「差別だ」「上から目線だ」「見下しているだけだ」「マウンティングだ」などという批判です。
しかし、前述のような格差を抱えたまま結婚することが、当人同士の幸福に寄与しない(ことのほうが多い)のは明らかです。
だから格差があることを知り、自分が受け入れられるかどうかを確認しておくのは、後悔しないためにも有益でしょう。
そして本当に重要なことは、「自分はどういう生き方がしたいのか。そのために自分はどう変化しなければならないのか」を考えて実践することです。
すると、そんな人にフィットした異性が現れる可能性が高くなるのですから。
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本記事は『マネーボイス』のための書き下ろしです(2018年2月27日)
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