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東京から始まる貧困化。ファーストフードの乱立が示す日本経済の暗い未来=児島康孝

大阪や名古屋では、そこまでデフレは進んでいません。低所得化や貧困化は「東京」で激しく進んでいて、飲食店などもそれに合わせて低価格化が進んでいます。(『『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』連動メルマガ』児島康孝)

※本記事は有料メルマガ『『ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』連動メルマガ』2018年2月28日号の一部抜粋です。ご興味をお持ちの方はぜひこの機会にバックナンバー含め今月分すべて無料のお試し購読をどうぞ。

どの地方より「東京」のデフレが最も深刻。経済を立て直すには?

東京のデフレは激しい

最近、久しぶりに大阪に立ち寄りました。あれ?と思ったのですが、大阪・梅田では、マックや吉野家のようなデフレ系の店がすぐには見当たらないのです。大阪で仕事をしている知人に聞いても、「梅田のマックって、どこやったっけ?」という感じなのです。

大阪・梅田のまわりをぐるぐると歩いてみても、ほとんどデフレ系の店を目にしないのです。大阪には日高屋もありません。

ナビオとか東通り商店街の方へ行ってみても、東京のように「どこへ行ってもデフレ系の店がいっぱい」という感じではないのです(ちなみに、私は中学・高校と大阪府民でしたので、ある程度の土地勘はあります)。

東京の場合は、東京駅(八重洲側)も含め、新宿・渋谷・池袋など大きな駅の周辺は、デフレ系のお店であふれています。お昼の時間帯は、マックや松屋、富士そばなどは満員。行列ができていることもしばしばです。看板も大きく出ているため、場所がどこにあるかはすぐにわかります。

新宿や渋谷ほどの大きな駅でなくても、東京の主な駅の周辺では、立ち食いそば、丼店などが駅前の一等地にいわば「標準装備」。

六本木でも、サイゼリアや幸楽苑、日高屋が、大通りに面した目立つ場所にあります。六本木ヒルズであってもマックの大型店は存在感がありますし、格安衣料のZARAも目立つところにあります。

こうしてみますと、低所得化や貧困化は東京で激しく進んでいて、飲食店もそれに合う価格帯へと業態の変化で「適応」しているようです。

デフレ「適応」の具体的な姿は.

東京を見ていますと、駅周辺のテナントが販売不振によって閉店すると、次に入るのがデフレ系の店という形で変化しています。

逆に言えば、デフレ系の店でないと儲からない・持たないということなのでしょう。明治神宮前のマックや、成城学園前のマックのように、マックでさえ撤退してしまったところもあります。

20年ぐらい前までのお昼代は1000円前後であったのが、300円とか500円ぐらいまで下がってきているのです。

飲食店以外でも、ファミリーマートやナチュラルローソンなどコンビニのイートインは、お昼は満席です。

ランチに1000円は払えない・払う余裕がない。こうした低所得化した国民が、デフレ系の店へと流れているわけです。1000円前後の価格帯の店は、客が少ない・儲からないということになります。

Next: 女性ひとりでも普通に丼店へ。大阪・名古屋は東京よりずいぶんマシ?



女性のおひとり様も「デフレ店」へ

そして最近は、若い女性でもデフレ系の立ち食いそば、丼店などに普通に入っています。それがかつての日本との大きな違いです。

デフレ店の内装が綺麗になってきていることもありますが、以前の日本では、若い女性客はこうした店は入りにくく敬遠していました。

しかし、低所得化が進み、そんなことも言っていられないのでしょう。

とある日、渋谷のカフェに入ったら、隣の女の子2人組が仕事の契約更新がどうとか、賃金未払いになったとか、そんな話をしていました。

特に非正規雇用の更新の話をしている女性は、この日に限らず多いですね。次の仕事がどうなるかわからないとか、隣の席からこぼれ話で聞こえてきます。

東京ほどじゃない、大阪・名古屋のデフレ

一方、大阪や名古屋は、東京ほどではないようです。

デフレ系の店があまり目立たないわけですが、必然的に、お客さんは「相対的に高めの価格帯」のお店を利用しています。

この「相対的に高めの価格帯」というのは、昔の東京と同じレベルで、極端に価格が下がっていないという意味です。

つまり、大阪や名古屋のデフレはマイルドで、横ばいの動きというようにみえます。ですから、大阪の人に、東京のターミナル駅近くのマックや富士そばは満員という話をすると、驚いています。

また、地下街の通勤客の流れを見ても、大阪の方が人の雰囲気が明るく見えるのですが、これは主観も入るので何とも言えません.。

ちなみに去年立ち寄った福岡は、デフレ系の店の量はちょうど中間の感じです。東京と、大阪・名古屋の、ちょうど間のような感じでした。

Next: 世界的に見ても「日本のインフレ率」は低すぎる



アベノミクスの継続は不可欠

まだこのようにデフレ色が濃い状況ですから、アベノミクスの継続は不可欠です。アベノミクスをしたからこうなっているのだという論調も見かけますが、そうではなくて、アベノミクスでデフレからの脱却が始まりかけているのです。

新卒の採用などはここ数年で見違えるように良くなってきていますし、20代・30代の雇用も好転してきています。

しかし、あまりにも誤った経済政策、緊縮・リストラ路線の期間が長かったために、アベノミクスを何年も続けないとなかなか元には戻りません

とくに40代・50代の雇用や仕事は良くなっているようには思えませんし、中小企業・零細企業への融資や仕事の需要も低調な状態であって、東京オリンピック効果も全く見えません。

さらに、この40代・50代の低所得化というのが、その子ども世代の授業料が払えないなどで貧困化とリンクしています。

不況期に緊縮・リストラ路線をとるとまさに逆効果なわけですが、これがあたり前のように、バブル崩壊後の日本で実施されてきました。

アメリカやヨーロッパ、中国などは、このような緊縮・リストラ路線はとっていません。

そして、アベノミクスでようやくデフレ脱却がはかられているのですが、ここにきて、森友問題と絡めて、デフレ路線に戻そうとする内外の勢力の動きも顕在化しています。

世界的に低すぎる「日本のインフレ率」

IMFの統計では、各国のインフレ率は次のようになっています。

日本:2016年がマイナス0.11%、2017年がプラス0.37%
アメリカ:2016年がプラス1.28%、2017年がプラス2.11%
ドイツ:2016年がプラス0.38%、2017年が1.56%
英国:2016年がプラス0.66%、2017年が2.63%

2017年の数字を多い順に並べてみますと、次のとおりです。
英国(+2.63%)
アメリカ(+2.11%)
ドイツ(+1.56%)
日本(+0.37%)

これを見てわかるとおり、日本のインフレ率は異常な低さです。東京の現状を見る限り、このインフレ率は納得の数字です。

まあ、とても、日本のインフレ率が上がったり、円安がどんどん進むような状況ではないということです。これは、日銀がよく言う「デフレマインド」ではなく、実際の「デフレ」なのです。

国民は「マインド」でカネを使わないのではなくて、日本の低所得化と貧困化で「実際」に使えないのです。

Next: まったく足りないマネー供給量。このデフレはなぜ生まれた?



誤った経済政策が生み出すデフレ

この現実のデフレの大きな原因は、雇用の破壊「リストラ」という誤った経済政策を、バブル崩壊後にずっと継続したことです。

他の要因で見れば、低所得者への給付が少ないマネーの供給が不足しているということです。

マネー供給の話をすると、「日銀が大量に供給しているではないか」という話になりますが、今の日本のインフレ率では、本当はまったく足りていないということを示しています。

実態をしっかり見てマネー供給量を調節する必要がある

これは、金融政策の測定基準が、実態に即していないためです。

例えば、内部留保で動かないマネーは、除いてカウントする必要があるわけです。簡単な例えでは、記念切手を大量に発行して、使われずに保管されている場合、これを発行量全体の中でカウントすると、切手の流通量は不足してしまうということです。

ですから、測定基準は、インフレ率や実際の流通量を見ることにして、マネーの発行量を調整する必要があります。

かつて日銀は、1990年以前、実際のマネー流通量が増えすぎていた(=発行量を減らす必要があった)のに、それをカウントせずに失敗しています。

最近の場合は、実際の流通量が少ない(デフレになっている)のに、発行量を増やさない(増やし足りない)ので、インフレ率が低迷したままとなっているのです。

さらにもっと先の話では、インフレ率が上昇して内部留保が溶け始めたら、その分が過剰に出てくるわけですから、逆に発行量を必要以上に減らすことが不可欠となります。

東京の経済を立て直せば、日本全体が救われる

さて、この日本の異常に低いインフレ率は、日本経済の低迷やデフレを示しています。

東京のデフレが転換すれば、日本全体のデフレも脱却できる可能性が高いわけですから、東京で思い切った政策を打ち、低所得者にマネーが回れば状況も変わってきます。

日本国民の疲弊は、長年のデフレで限界に達しています。

もし森友問題を受けて安倍政権が退陣し、アベノミクスをやめることになったら外国勢が喜ぶだけです。

アベノミクスを継続しながら補完する、新たな経済政策を期待したいものです。

image by:marcociannarel / Shutterstock.com

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ニューヨーク1本勝負、きょうのニュースはコレ!』(2018年4月1日号)より抜粋、再構成
※太字はMONEY VOICE編集部による

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